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2021年12月12日

US M6バイオネット(続き)(U.S. M6 Bayonet-Knife(Cont.))

みなさん、こんにちは。
師走に入り、イヤでも何か気忙しい雰囲気のなかで生活しなければなりません。
当地大阪郊外都市は気温は平年より暖かいんだそうで、そういえば少し前にかなり冷え込んだ朝以外はまだ手袋が欲しいと思いません。オミクロン株、どうなるんでしょうか。尾身さんは再び苦労なさるんでしょうか?


今回は前回記事「US M6バイオネット(U.S. M6 Bayonet-Knife)」の続きです。本来は続き物にするほどのボリュームじゃないんですが、準備不足で2回に分かれることになりました。

↓M8A1スキャバードに収まったM6バイオネットです。FSN(Federal Stock Number)は1005-722-3097です。スキャバードの方は過去記事「M8とM8A1スキャバード(M8 Scabbard, M8A1 Scabbard)」で少しだけ触れていますのでご覧下さい。スキャバードだけまたいつか纏めてみたいと思います。


↓前回記事の最後の画像から始めます。グリップ・スクリューを外してバラしました。刀身長は6.625インチ(約16.8cm)、刃長は6インチ(約15.2cm)、刃先の3インチ(約7.6cm)は両刃になっています。前回でも触れましたが、私が本個体を入手した30年程前は米軍物資払下店では銃刀法の定めにより刀身長が15cmに収まるように切先が2cm程切断された状態で販売されていました。お店によっては、その切断された切先部分も一緒に付けて送ってくれました。画像では切断された先っちょをセロテープでつなぎ合わせて、何とか一本の刀身のように見えるようにしてます。


↓グリップ部分は、左右のプラスティック製グリップが茎(なかご・中子)を挟み、2本のスクリューで固定されます。茎には銃への装着固定のためのラッチング・ロック・リリース・レバーが取り付けられています。仕組みは単純です。のちほど触れます。画像左にあるクロスガードは、茎にラッチング・ロック・リリース・レバーやアンダーカット・グルーブの部品、ポンメルを取り付ける前に後方から刀身後端まで通し入れられ、すぐ後ろに見える楔形の部品により固定され、中空のリベットで留められています。この中空リベットにはグリップを固定するスクリューが通ります。


↓これがその楔形の部品がクロスガードを押さえているの図です。


↓テクニカル・マニュアル(TM-9-1005-237-23&P)から引用のパーツ一覧・展開図です。7番に「M6 blade assenbly」として、刀身部分から茎、クロスガード(鍔)、アンダーカット・グルーヴを形成する部品、ポンメルまでがまとめて一体のモノとして銘打たれています。


↓2つ上で見たモノの反対面です。


↓グリップは左右に個別のパーツナンバーが割り振られています。先程のパーツ分解図にある通り、画像で上の右側グリップはパーツ・ナンバーが7267652、画像下の左側グリップはパーツナンバーが7267653です。このグリップはM1ガーランド小銃用のM5(M5A1)バヨネットと共通です。さらに言えばM6バイオネットは、クロスガード以外はM5(M5A1)バヨネットと同じモノです。


↓ポンメル部品の裏側に「B」(上下逆さまですが)の刻印があります。調べましたが何の「B」か、まだ突き止められていません。


↓M14ライフルへの脱着ラッチの仕組みは至極簡単です。シーソー状のラッチング・ロック‐リリース・レバーの後端が銃の着剣ラグに噛み合う鉤になっていて、前端はプッシュ・ボタンになっています。画像手前側のプッシュ・ボタンの内側に収まっているバネにより、中間の支点ピンを回転軸として、後端の鉤は常時ロック・オン位置にあるよう上向きにテンションが掛けられています。


↓常態がこの状態で…(シャレじゃないです)


↓レバー後端の鉤が銃の着剣ラグへ噛み合う位置にあります。


↓後方からアンダーカット・グルーブを見ると鉤が出っ張っているのが見えます。


↓プッシュ・ボタンを押さえると中間の支点ピンを回転軸として後端の鉤が下がり…


↓このように…


↓アンダーカット・グルーブからは鉤が下へ引っ込みました。


↓クロスガードのすぐ手前にラッチング・ロック‐リリース・レバー末端のプッシュ・ボタンが位置します。


↓先ほどグリップはM5(M5A1)バイオネットと共通の部品であると申しましたが、正しくは「M5(M5A1)バイオネットの後期グリップと同じパーツ」です。因みにM5(M5A1)バイオネットの初期グリップのパーツナンバーは右が7266552、左が7266553で、後期のモノよりも厚みがあり、チェッカリングがこの画像にある後期のモノのようにグリップ上面まで広がっていません。


↓米軍のフィールド・マニュアル「Field Manual(FM) 23-8 U.S. RIFLE 7.62MM, M14 AND M14E2」の1965年5月版の第7章「アクセサリー」のページです。本バイオネットと、収まるM8A1スキャバードの図およびM14ライフルへの着剣状態の図。着剣している図を見るとM1カービンとM4バイオネットの組み合わせと同じくらいの「華奢さ」を感じます。


↓クロスガードのオブバース側に施されたモデル名称の「U.S. M6」。


↓反対のリバース面には製造者「IMPERIAL」の刻印。他にはAERIAL社、MILPAR社が製造したそうです。



以上でございます。
銃への取付け・ロック・リリースの仕組み(グリップ中心部にレバーの軸を置き、クロスガードの直ぐ手前にリリース・ボタン、軸と反対側のポンメルの方にロックを置く)は、古くはM1903スプリングフィールド小銃用(のちにはM1ガーランド小銃も)のM1905バイオネットや、それを短くしただけとも言えるM1バイオネット、M1バイオネットを更に短くしたM5(M5A1)バイオネット・ナイフと同じ仕組み・構造・原理です。これに対してM1カービン用のM4バイオネット・ナイフやM16A1ライフル用のM7バイオネット・ナイフは、銃のバイオネット・ラグを洗濯バサミのように摘まんで固定する簡素な仕組み・構造・原理です。また「稿」をあらためてお示しできればいいなと思います。

2001年のアメリカ同時多発テロ事件以来銃剣の出物が少なくなったように感じています。ebayなど海外では結構売りに出されているのですが、日本へは通関時にアウトになりますので新規購入は不可能です。今国内にあるモノを大事にするしかありません。稀に刃の根元から3cm程のところで無残にも切断された銃剣の売り出しを見ることがありますが、切断面を見るにつけ悲しくなります。今私の手元にあるものもなるべく切断されたことを意識しないように切断面からは目を背けて触っています。キャンピング・ナイフなどは、必要・目的も無いのに市中で持つのは違法ですが、所持そのものは違法ではありません。銃剣もそうならないもんでしょうか?

それでは今回はこの辺で失礼いたします。また上手くいけば年内にお会いしましょう。大掃除は何からやり始めましょうか…。 ご機嫌宜しゅう。




  

Posted by Sgt. Saunders at 12:06Comments(0)Fire arms-RelatedBayonets, Knives

2021年11月28日

US M6バイオネット(U.S. M6 Bayonet-Knife)

みなさん、こんにちは。紅葉が色付きはじめて暫く経ちまして、当地の周辺でも南か北か・高いか低いかで「色付き始め」から「落葉近し」までバリエーション豊富な紅葉スポットが存在しますが、先週にまだ一回しか見物に行っておりません。投稿完了後どこかに行こうかと思います。

さて高気圧が広がって快晴の大阪某郊外から今回お届けするのは米軍が1957年に制式採用したM14口径7.62mmライフル(United States Rifle, Caliber 7.62 mm, M14)用の銃剣「M6バイヨネット(M6 Bayonet-Knife)」です。制式名称は「バイオネット-ナイフ」なんだそうで、バイオネットでもありナイフでもあるということでしょう。
私は外来語として「バイオネット」と言うよりも実は「銃剣」と言う方が好きなのですが、普段「グレネード・ローンチャー」と言っておいて「榴弾発射器」とはあまり言わない事に対比させると、やはり「バイオネット」と言うべきか…まぁそんなことはどうでもいい事ですね。済みません。

↓はい、M8A1スキャバードに収まったM6バイオネットです。


↓抜きました。みなさんお気付きでしょうが、銃砲刀剣類所持等取締法により、哀れにも刀身長が15cmに収まるように先端が切断されています。大昔は放出品のバイオネットを買うと、この切断された先っちょも一緒に付けてくれてました。セロテープでくっ付けてますが、見る度に悲しい気持ちになります。またこの個体の刀身部分は何か黒い塗料で塗られていて折角のパーカライジング仕上げが隠れてしまってます。これも悲しい事です。変に剥がすともっと見栄えが悪くなるかもと、「塗料剥がし剤」などは使ってません。どうしたらいいでしょう。


↓お尻(ポンメル)です。刀身のタン(tang:なかご)の延長部分がポンメルを突き出たところをカシメて固定してあります。これはM4バイオネット、M5バイオネットやM7バイオネットと同じです。上側の凸型の切り欠き部分(アンダーカット・グルーブ)にM14ライフルのバイオネット・ラグを挿し込んで装着します。


↓グリップの下にあるボタン状に加工されているラッチング・ロック・リリース・レバー先端を押して銃とのロッキングを開放します。仕組みはM1ガーランド小銃用のM1905やその子供のM1、孫のM5(M5A1)などと同じです。


↓グリップを上から。プラスティック製のグリップは左右分割のモナカ式パーツです。右の方に先程見たバイオネット・ラグを通すアンダーカット・グルーブがあります。


↓M14ライフルのバイオネット・ラグを…


↓アンダーカット・グルーブに噛み合わせて…


↓サプレッサー先端がクロス・ガード(鍔)のバレル・ホールに通るように真っ直ぐ最後まで押し込むとロックされます。


↓パーツを分解しました。


というところで投稿時刻になってしまいました。申し訳ありません。ちょっと準備が間に合いませんでした。
投稿を丸々来週に遅らせるよりは、一応「隔週日曜日の正午に新規記事投稿」という自己ルールを守ることに致します。厳密に言えば「守っている」のか疑念がありますが。
この続きは次回お送りしますので、どうかお許し下さい。それでは今回はこの辺で一旦失礼いたします。







  

Posted by Sgt. Saunders at 12:00Comments(0)Fire arms-RelatedBayonets, Knives

2021年09月19日

US GI ポケット・ナイフ(US General Purpose Pocket Knife)

みなさん、こんにちは。
この季節には珍しく台風が西日本を西から横断し、和歌山での竜巻被害などそこそこの爪痕を残して関東の南の沖へ抜けて行きました。
自民党の総裁選挙が喧伝されてますが、どんな結果になるのでしょうか。私にはどの顔ぶれを見ても「……。」という感じです。

さて、まだ日中の最高気温は30℃前後をウロウロしております当地大阪から世界中へ発信いたします今回のネタは、米軍がWW2中の1943年にその調達・採用を始めたユティリティ・ポケット・ナイフ、をその始祖として若干の「進化」を遂げた後のユティリティ・ポケット・ナイフです。追い追いその辺にも触れて参ります。今回もモノが小さいのでフローリングの表面加工が一部剥げてきたリビングルーム・スタジオで撮影しています。

↓はい、「最終形態」のポケット・ナイフです。全ステンレス・スティール製で、熱湯にドボンと入れての滅菌が出来るようになってます。シャックルがアルミ合金製であるほかは全ステンレス製です。WW2中の始祖以来全金属製であるのは同じです。初期製造品の一部にはライナーが真鍮製であったモノもありました。


↓折り畳んだ状態で全長約9.5cmで、4つのブレードがあります。シャックルも付いていて便利です。私がこのナイフを入手したのは、WW2以来のGIの手にあったナイフ(から殆ど変わりのない現用モデル)というミリタリー・コレクションとしての観点と、実際キャンプなどで役に立つだろうなという観点の両方からの理由でした。いわゆるビクトリノックスに代表される「〇〇徳ナイフ」ほど多くのブレードが無くても、基本のブレードが4つ揃っているこのナイフは、実に頼りになります。武骨な感じが実にイイです。


↓ここでebayからの画像引用です。ドライバー/ボトル・オープナー・ブレードを引っ張り出す際、他のブレードを引っ張り出す際と同じく、ブレードの背にある爪掛けを使うのは基本的仕様ではあったものの、このドライバー/ボトル・オープナーのブレードだけは、ブレードの回転軸から爪掛け部分までの距離が短か過ぎて、テコの原理上爪を引っ掛けて引き出すのには物凄い力が必要で、「爪じゃ引き起こせんわ!爪が剥がれるわ!」という意見があったのか知りませんが、爪でなく指先が掛かる大きさの凸ポッチがすぐ横に設えられてました。上の画像のモノにはありませんね。この凸ポッチは、私の狭いリサーチによれば1973年頃には無くなりました。その代わり爪掛けの位置が回転軸から少しだけ遠くなるように変更され(上の画像と比べるとお分かりいただけます)、何とか爪や指先で引き起こせるようになりました。


↓反対側です。こちら側の中央上端は、リーマー・ブレードの爪掛け部分が露出するようにカットされています。この切り欠きが無い時代のモノは、リーマー・ブレード自体の幅が大きくて爪掛け部分がサイド・プレートからはみ出していたので、このような切り欠きはありません。


↓上から。4つのブレードが隙間なく互い違いに上手く収まっています。画像上からリーマー・ブレード、ナイフ・ブレード、ドライバー/ボトル・オープナー・ブレード、缶オープナー・ブレードの順です。


↓下面です。上からサイド・プレート、ライナー、スプリング、ライナー、スプリング、ライナー、サイド・プレートです。


↓左のサイド・プレートがややたわんでますが、本来は真っ直ぐです。


↓各ブレードを全・半開させました。WW2の出始めからしばらくのモデルは、この画像の缶オープナーの位置にドライバー/ボトル・オープナー・ブレードが、ドライバー/ボトル・オープナー・ブレードの位置に缶オープナー・ブレードが付いてました。つまり両者が入れ違ってました。


↓反対から。リーマー・ブレードだけがこちら側から爪を掛けて引き出すようになってます。


↓ナイフ・ブレードのブレード長は約6cmです。


↓ナイフ・ブレードの基部のタン・スタンプ。刃物製造会社として有名な「CAMILLUS」の1988年製です。因みにWW2の当初はUlster社とImperial社の合弁事業体であるKingston社が製造しておりまして、1949年にその発展形としてCAMILLUS社が自社の製品Model 1760を、新たなスペック「MIL-K-818」に適合させて開発しました。この時に前述の缶オープナーとドライバー/ボトル・オープナー・ブレードの位置変更がなされました。

更に因みに1876年創業のCAMILLUS社はこの種の小型ナイフや軍用刀剣を創業以来製造していましたが、2007年に経営破綻し、ACME UNITED CORPORATION社が「CAMILLUS」ブランドを買い取り、以降「CAMILLUS」の名前で2009年から製品製造を続けています。なお、前述のKingston社製のポケット・ナイフの在庫が沢山あったせいか、朝鮮戦争で再び需要が起こる1957年になるまでは、新たな製造は無かったんだそうです。

↓缶オープナーです。今の世の中缶詰はプルトップになってるモノが多くて、「缶切り」など不要かも知れませんが、まだ缶切りが必要な缶詰は多いですし、使用後の缶を細工してほかのモノに転用する際には缶切りがあった方が便利です。因みにこの缶オープナー・ブレードを起こすのにも結構爪が厳しいです。気合が必要です。こっちには凸ポッチが付いていたという歴史はありません。


↓左のまっすぐ伸ばしているのがドライバー/ボトル・オープナー・ブレードです。このドライバーは銃器のマイナス・ネジを外したいなと思ったとき等に便利です。ボトル・オープナーもペットボトル全盛の今ではあまり出番が無いでしょうか。でも瓶ビールは今でも王冠が使われていますし、まだまだ出番はあります。私が子供の頃はジュースの容器はガラス瓶か缶でした。ファンタやコカ・コーラ、ペプシ・コーラ、ミリンダ、カルピスの瓶などで、蓋は全部王冠でしたなぁ。


↓リーマー・ブレードです。私にとってはこのブレードが唯一、も一つあんまり出番のないブレードです。突き刺して孔を開け、グリグリ大きく拡げることが出来ます。私は手指の爪の甘皮処理に重宝してます。



以上定刻に合わせようと必死で綴ってまいりました(結局約1時間ほど遅刻しましたけど)。
私が入手したのは大昔もう30年くらいも前です。その頃は日本国内でもミリタリーショップで普通に3,000円位で売ってたような。
少しでも安く買おうとアメリカのミリタリー通販会社「US Cavalry」で、確か10ドル台で買ったような気がします。コレクションとしてではなくキャンプ用の実用品としてでした。冒頭でも述べましたが、コレクションとしてならばWW2中製造モノを求めていましたが、なかなか出物は無かったです。
今回ネットで見ましたらUS$300越え!なんていう事になっています。また現在ebayで「1960年Camillus製、1981年再パッケージの未使用品」がUS$297.50で「Buy-It-Now」出品されています。
私としてはそこそこ程度の良いWW2モノや凸ポッチ付きの1960年代製のモノを狙っています。今後手に入れられたらまたご覧いただければなと思います。

今回の記事を書くのにネットでサープラス品(未使用品)として売られているのを見つけようとしましたが、とうとう見つけられませんでした。ebayなどで見たモノの中で一番新しいモノは「2007年Camillus製」でした。ちょうど経営破綻した年のモノです。
なお、現在はNSN番号5110-00-162-2205「KNIFE, Pocket」として管理されているようです。色んなメーカーがそのスペックに従って製造販売されているケースが散見されますが、ブレードにウジャウジャ書かれてあったりしてて、欲しいなとは思いませんでした。値段もUS$60もします。やはり官給(GI)のビンテージモノの方に魅力を感じます。

それでは今回はこの辺で失礼いたします。またお会いしましょう。ご機嫌宜しゅう。



  

Posted by Sgt. Saunders at 12:56Comments(0)Bayonets, KnivesIndividual Tools

2019年12月14日

U.S. M1939 マシェット(U.S. M1939 Machete)

みなさん、こんにちは。
ここ何日間で急に冷え込みが強くなってきました当地大阪、今朝は2.6℃まで気温が下がりました。昼間は陽射しがあるものの家の中は冷えております。大阪・心斎橋ではショット・ショーが先週の土日に開催されていましたが、今年も行けませんでした。

さて年の瀬も押し迫り、定刻を2週間余り過ぎようとする本日お送りする今回の投稿ネタは、最近入手する機会を得ました「U.S. M1939マシェット(M1939 Machete)」です。
みなさんは「マシェット」ですか?「マチェット」ですか?「マチェーテ」ですか?今回私も気になってWikiやWeblioなどを見ましたら英語では「マシェティ、マチェティ」で、原語であるスペイン語では「マチェーテ」なんだそうです。当ブログでは米語発音の「マシェティ」に敬意を払いつつ、Yahoo!検索に掛けた場合のヒット数の多い方で、且つ外来語として確立している「マシェット」を用いることとします。

WWIIUS陸軍の一般的歩兵の一般的装備品をコレクションの中心としています私ですが、重きを置いておりますのはどちらかと言えばヨーロッパ戦区(ETO)でありまして、マシェットはジャングルの藪を切り開く目的のためのモノでありますから、その点から見ればコレクションの対象としての優先順位としては劣後になるところです。しかしながら太平洋戦区(PTO)の装備品の中で、ジャングル戦の象徴的な装備品の一つであるマシェットを、一つくらいは手に入れたいとは長年思い続けておりました。ただ、eBayでは出品も結構ありますマシェットですが、銃刀法により個人での輸入はまず「無理」ですので、国内での出物を窺うしかありません。この度オークションで出品されているのを見まして何とか入手出来、とてもうれしく思っております。

↓はい、やっと現物をご覧いただきます。M1939マシェットです。このM1939は峰が半分ほどの部分から刀先へ向かって反り返っている所謂「ホーク・ビル(鷹の嘴)」でありまして、刃先まで峰がほぼ直線である後継モデルのM1942マシェットとはシルエットが異なります。刀身はパーカライジング処理ではなく、荒く黒染め処理されていたようなのですが、今ではこのように殆どギラギラです。鞘(シース)はラセット・ブラウン色の革製で、M1910装備品以来のダブル・フック・ワイヤ・ハンガーが設えられています。


↓鞘に納めました。言わば「佩き裏」になります。力の掛かる箇所は真鍮のリベット留めで、鞘本体を構成する表側の革と裏側の革とは縁で糸で縫い合わされたうえで、6cm程の間隔でピン留めされています。


↓「佩き表」側です。至ってシンプルなデザインです。


↓再び抜きました。刀身の長さを測ってみます。


↓昔DHCのプロテインダイエットをやっていた時に貰ったメジャーです。


↓グリップまでの刀長は約555mm(約21.8インチ)。一般的にM1939は「22インチ・ブレード」とされます。後継のM1942などは「18インチ」にまで短くされました。「22インチはちょっと長すぎ」との評判に対応した結果です。日本古来の太刀とは逆で、佩き裏側に製造者の名・ロゴ等があります。


↓ピントがボケて済みません。グリップ末端までは約680mmです。


↓「佩き裏」側の刻印を見ます。「US」と「ニギリ矢」ならぬ「握りハンマー」のメーカーロゴ、「LEGITIMUS」「COLLINS & CO」の文字と製造年「1942」。 コリンズ&カンパニーは1826年にコネチカット州で創業された斧やマシェットのメーカーで、ロゴのモチーフは「王冠」と「鍛冶屋のハンマーを持つ腕」です。「LEGITIMUS」はラテン語で「正統」を意味する語で(英語の「legitimate」に相当)、同社のトレードマークやモットーとして用いられています。1955年コネチカットを襲った大洪水で工場の3分の1を失った結果業況は悪化し、1966年には事業譲渡の後廃業に至りました。


↓「佩き表」側には刻印はありません。


↓グリップは合計5つのリベットで留められています。後継のM1942のような革紐などを通すための孔はありません。


↓刀身をグリップで挟み、リベットで固定後、大雑把にグラインドがけしてツライチにしてる感があります。


↓刀身の厚さは1.5mm程で2mmはありません。


↓鞘の先端部分です。前述しましたが、縁を糸で縫ったうえでほぼ等間隔でステイプラー留めされています。


↓鞘のスロート部分です。不意に抜刀しないようにするための仕掛けじみたモノはありません。ピストル・ベルトなどのグロメット(ハトメ孔)にぶら下げるためのダブル・フック・ワイヤ・ハンガーが設えられています。


↓ダブル・フック・ワイヤ・ハンガーを支えるため4つのリベットと絹糸でしっかり鞘本体に留められています。


↓上で「鞘本体」と申しましたが、本体の上に1つ土台がありました。


↓「U.S.」、「BOYT」、「42」との刻印。言わずもがな1942年・Boyt社製を表します。



冒頭にも申し上げましたが、PTOのジャングル戦を想定したコスプレやリエナクトメントをするとしたら、その象徴的な装備品の一つになるであろうマシェットは、いつかは一つは手に入れたいと長年思っておりました。でも今般程度の良いモノを入手出来ましたら、やっぱりM1942も欲しいなぁとなってきました。
しかしこのような長い刃物は海外からの個人輸入はこのご時世ではまず無理で、国内での出物にその入手機会を頼らなければならず、そうなるとなかなか難しくなります。

それでは今回はこの辺で失礼いたします。また次回、運が良ければ本年中にもう一回投稿できればいいなと思っております。
ご覧いただきありがとうございました。






  

Posted by Sgt. Saunders at 12:05Comments(0)Bayonets, Knives

2014年07月27日

マークⅠ トレンチ・ナイフ(U.S. Mark ⅠTrench Knife)

こんにちは。
さっき久々にやや強い雨がざーっと降りました。昨日の最高気温36度からすれば、ただいま気温29度で、かなり涼しく感じます。

さて今回は、念願叶ってやっと入手できた、WWⅠからWWⅡにおいても使用されたマークⅠ白兵戦ナイフ(トレンチ・ナイフ)です?!
ナックル・ダスターが付いてて、しかも両刃。これが手に入る日が来るとは~!


↑グリップ部に「U.S.1918」の刻印。製造者としては「L.F.&C.(Landars, Frary and Clark)」や「Au Lion」らがメジャーなところですが、この個体には「U.S.1918」の刻印のほかには刻印はありません。


↑グリップは真鍮の鋳造。刀身はパーカライズ処理?ダークグレイの艶消しサンドブラスト?良く判りません。


↑4つのナックル・ダスターの先端は鈍く尖り、円錐状の柄頭のナットとともに、拳銃なんかよりも、より一層「武器」らしさを醸し出しています。


















実は………















これ………、















ミニチュアのレターナイフでした!当然刃は付いてません。
すみません。どうかお許し下さい。担ぐつもりはありません。まあ、たまにはこんなのも良いですよね?駄目ですか?

銃刀法上、本物の所持は不可能です。
これを今話題の3Dプリンターを使って、実物大にスケールアップしてプラスチックとゴムで作れないかなぁと思っている今日この頃です。
もう既にどこかのショップで売られてたりして…。

次回は真面目にネタ投稿します。

それでは、また……。







  

Posted by Sgt. Saunders at 12:55Comments(0)Bayonets, Knives

2014年07月21日

Model of 1917銃剣とM1917鞘(M1917 Bayonet & Scabbard)

こんにちは。
毎日曜日の正午の更新(新規投稿)を目標にしております当ブログ。ただいま月曜日の午後3時2分。当地大阪は現在晴れ、気温32度。暑いですが比較的湿気が少なく不快感もまだ少ない方です。1日と3時間遅れの投稿です…。

今回は装備品です。当初「『Model of ~』と『M~』の謎」というタイトルにしようかと考えましたが、論点がぼやけるのでまたあらためて取り上げることにします。

↓まずは、これをご覧ください。

これは何でしょう?

↓参考にこの画像を。

画像の上側はM1903ライフル(スプリングフィールド)用として採用されていたM1905銃剣用のM3鞘(WWⅡ時制式化)です。M1ライフル(ガーランド)が正式採用されてもそのままその銃剣・鞘として使われました(これについては以前の当ブログ拙稿「短くなるのは良いこと。」をご参照下さい)。
ではでは下のモノは何?

タイトルにある「Model of 1917銃剣とM1917鞘(樹脂浸潤成型版)(Model of 1917 Bayonet & M1917 Scabbard(resin-impregnated cotton duck body version))」です。

イギリス軍の口径.303の制式小銃たるP14ライフルを、米軍の.30口径弾に適合するよう改良して造られたM1917ライフル(エンフィールド:Enfield)用の銃剣として制式化されたモノです(もちろん銃剣はレプリカです。また、鞘についてはのちに触れますが、WWⅠ当時のモノではなくWWⅡヴァージョンです(Model of 1917ではなくM1917です))。
米軍はそれより前にM1903ライフル(スプリングフィールド)を制式化していましたが、WWⅠへの参戦に伴って小銃の必要量が増加し、その対応策として当時イギリス軍向けに生産していたP14ライフルに上記の小改良を加えM1917ライフルとして採用しました。つまりWWⅠ当時M1903ライフルとM1917ライフルの2種類のライフルが並行採用されていたのです。

で、M1903ライフル用にModel of 1905銃剣がありまして、この銃剣をM1917ライフルに取り付けられるように、口径の改良と同じく小銃側の着剣具に改良を行ったかと言えばそのようにはせず、イギリス軍が使用していたP14ライフル用の銃剣「P13銃剣」を大量に調達してそれに小さな改良を加えて「Model of 1917銃剣」として制式化したのでした。
つまり結局、ライフルも銃剣もイギリス軍のモノであった物をちょっとだけ改良して、従前の独自制式分と並行して制式化して使っていたということです。調達のしやすさでは手っ取り早いのでしょうが、自軍の中でライフルと銃剣が2種類ずつ存在するというのは合理的なのか非合理的なのか、よくわかりません。
そしてまた、このModel of 1917銃剣はM1897トレンチガン(ショットガン)にも着剣できました。



←上がM1903ライフルとModel of 1905銃剣。下がショットガンに着剣されたModel of 1917銃剣。(画像はWikipediaより引用)






↓銃剣はもちろん本物ではなく、ずっと昔オークションで手に入れたタナカ製のモデルガン「Winchester M1897 ショットガン」に付いてきたレプリカです。

↓銃剣だけでも別売りされてたのでしょうか、箱も立派でした。

鞘は実物です。


さて、Model of 1917鞘の方ですが、WWⅠ当時は本体が革製でした。これがWWⅠ当時のモノです。(eBayより引用。)↓

全体に黒く見えますが、鯉口と先端部は金属製で、本体は革製です。いわゆるフレッシュサイド・アウト(裏革仕様)のオリーブ・ドラブ塗装仕上げです。本体を構成する革は裏側中央で縫い合わされています。この辺はもっと時代を遡った「エンピール銃」用の銃剣の鞘と同じ造りです。
Model of 1905銃剣用の、セカンド・モデルたる、本体が木製でカーキ色キャンバス地でカバーされ先端が革で補強されたModel of 1910鞘が、その複雑な構造の割に破損しやすかったことから、WWⅡ中に新たにコットン・ダック地に樹脂を浸み込ませて成型された本体を持つ「M3鞘(「Model of ~」式ではなく「M3」となります)に取って代わられたのと同様に、上の画像のModel of 1917銃剣用のModel of 1917鞘も、革製たるゆえ湿度に弱く耐久性に難があることから、WWⅡ末期(1944年頃)に上記の樹脂浸潤成型の本体を持つモノに代えられました。ただ、こちらの方は新たな制式名は、「M1917鞘」と、「Model of ~」の表現ではなくなったものの西暦年4ケタを使用し続けています。
また、M3鞘とM1917鞘は、実は本体部分は同じモノです。刀身の長さがほんの少し(0.5インチ(約1.3センチ))長い分鯉口の金具を長くして銃剣が収まるように調整してあるだけです。


↑上がM3鞘。下がM1917鞘。鞘本体は共通(同じモノ)で、刀身の長さ分だけ鯉口の長さを変えて作り分けていました。


↑鯉口の拡大。左のM3には「Flaming Bomb」の刻印。右のM1917の鯉口には同じく「Flaming Bomb」と「M-1917」の刻印。また、表側裏側ともに鞘の内部で刀身を保持する板バネを固定するためのリベットが2つずつあります。


↑見にくいので更に拡大。


↑裏側。


↑左のM3には銃剣が不意に抜けないようにするための鉤爪がありますが右のM1917にはありません。鞘の内側の板バネが刀身をガッチリ挟むため問題は無いのですが、むしろバネのテンションが強すぎてすぐに抜くのが難しいくらいです。

ただModel of 1917銃剣の方はWWⅡ中にM1917銃剣として製造されることは無かったようで、後で記しますように制式名が「Model of 1917」から「M1917」と代わって製造されるようになるのはヴェトナム戦争の頃のようです。Model of 1917銃剣とM1917銃剣との決定的差異としては、Model of 1917銃剣はグリップが縦に二本のグルーヴの入ったウォルナット製であり、M1917銃剣のグリップはチェッカー入りの黒色プラスティック製である点を挙げることができます。刀身自体の仕上げにも差異があり、前者は明るめのグレーであるのに対し後者はパーカライズ処理されているということです。その他の違いについてはまた別の機会に…。

WWⅠ休戦後、M1917ライフルは一部が二線装備として使用され続けたほかは殆どが余剰装備として処分されると(WWⅡ時まで保管していた分の中にはイギリスへ貸与されることとなったモノもあるとのこと)、WWⅡにおいてはModel of 1917銃剣は専らM1897ショットガンに着剣しての用途しかなく、WWⅡ中に新たに製造されることはありませんでした。しかし、太平洋戦線においてはショットガンが有用であったことから、その後の朝鮮戦争まで使用が続けられました。


↑タナカのM1897ショットガンに着剣。


↑銃口の直下の「偽銃身」に銃剣のマズル・ホールを通して、スイベル・リングの下部のラグに銃剣のアンダーカット・グルーヴを通して着剣します。




↑アンダーカット・グルーヴの拡大。M1905系の銃剣と同じような形ですが、マズル・ホールの大きさなどの寸法が違うのでスプリングフィールドやガーランドには合いません。


↑タナカさんはここまでやってくれていました。「US」と「Flaming Bomb」と「1917」の刻印。しかし、このような刻印はこの銃剣の刻印としては不適切。でも「らしさ」を醸し出す面でおおいに貢献しています。


そしてヴェトナム戦争時には、再び新規製造が開始されます。WWⅡの太平洋戦線と同じくヴェトナムのトロピカル地帯におけるショットガンの有効性からショットガンが再び脚光を浴び、それに付随してModel of 1917銃剣とそれ用の鞘(WWⅡ時に既に名称が「M1917鞘」となっていてWWⅡ後期には18万本程が製造されました)の需要が再発生したためです。しかしながらその量はさほど多くありませんでした。と言うのもこの前時代的な旧式のM1917銃剣でなく、M1ライフル用のM5銃剣を取り付けられるM77Eスティーブンス・ショットガンや、M16ライフル用のM7銃剣を取り付けられるM870レミントン・ショットガンがM1897ショットガンに代わって使われるようになったからです。
M1917鞘のWWⅡ製造分とヴェトナム戦時製造分との差異は、WWⅡ製造分には鯉口の部分に「Flaming bomb」と「M-1917」の刻印があるのに対してヴェトナム戦争時製造分には「U.S.-M1917」と製造者略号文字(「B.M.CO.(Beckwith Mfg. Co.)」や「V.P.CO.(Victory Plastic Co.)」など)の刻印がある点です。

↓因みに今回のモノは鯉口の各刻印から「WWⅡ時Beckwith Mfg. Co.製」であることが判ります↓(「B /1 N」はBeckwith Mfg. Co.の品質管理用の記番号です。




以上、駆け足でしたが、ここまででトップの画像の「Model of 1917銃剣」と「M1917鞘」の組み合わせは、WWⅡ後期(1944年以降)からヴェトナム戦争の頃までに見られる形であることが理解できると思います。

今回はこの辺で。
それでは、また…。






  

Posted by Sgt. Saunders at 15:03Comments(0)Bayonets, Knives

2013年09月08日

短くなるのは良いこと。(Bayonet, M1 - It's good to be shortened.)

M1ライフル(ガーランド)が正式採用されたのは1936年ですが、その生産ペースは遅く、WWⅡ開戦時ほとんどの部隊ではM1903ライフル(スプリングフィールド)が主力小銃となっていました。

M1903ライフル用として採用されていたM1905バイヨネット(銃剣)とM3スキャバード(鞘)ですが、M1ライフルが正式採用されてもそのままその銃剣・鞘として使われました。

M1903ライフルが採用されたWWⅠ当時とWWⅡとではその用兵・戦術は大きく変わり、M1905バイヨネットのその16インチ(約40.6cm)に及ぶ刀身長はメリットをデメリットが上回ることとなり(重い、座った時につっかえて不快、長すぎて扱いにくい、等)、試しに刀身を10インチ(25.4cm)にしてM1905E1として試作してみるとその評判がよく、1943年3月にM1バイヨネットとして制式化されました。

これにより使用中及び在庫のM1905バイヨネットは廃棄されたわけではなく、試作されたM1905E1と同じ長さになるように刀身を先端から6インチのところで切断し、切先の形状を整えて、実質的にM1バイヨネットと同様のものとして使われました(「M1905改M1バイヨネット」といったところ)。
初めから10インチのM1バイヨネットか、M1905バイヨネットの先端を6インチだけカットして出来た「M1905改M1バイヨネット」かを見分ける方法は簡単。刀身に走っているフュラー(ブラッド・グルーブ(血溝)とも)が刀身先端の手前(先端から7㎝位)で終わっていれば生粋のM1、刀身先端まで走っていれば「「M1905改M1」です。長いM1905の刀身を途中でカットするのですからフュラーもそこまで走っているのは当然ですね。

また、切先の整形も2通りあり、切先の先端が峰にあり、日本刀のように峰から刃へ向かって「片刃」形状になっているものと(海外ではknife pointとかchisel(のみ、たがね)pointとかbeak(くちばし)pointなどと呼ばれています)、もう一つは生粋のM1バイヨネット同様に切先の先端が刀身中央にあって切先が「両刃」のようになっているもの(海外ではspear(鑓) pointと呼ばれています)がありました。

一方同時にスキャバード(鞘)も、銃剣の長さに合わせたM7スキャバード(当初はM3A1が制式名でありましたが混乱を避けるため程無く改称)が制式化されましたが、こちらもバイヨネットと同じく、使用中及び在庫のM3スキャバードも全長を6インチ短くして使ってやらねば勿体ないと、マウスピース部分から鞘本体を一旦分離させ、上から6インチで切断し、もう一度マウスピースに差し込んで固定して、これまた実質的にM7(「M3改M7」と言うべきところ)と同様のものとして使われました。

1865
↑上からM1905バイヨネット&M3スキャバード、
M7(M3A1)スキャバード、
「M3改M7」スキャバード。
長さの差は6インチ(約15.2cm)。


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↑上の画像のものの裏返し。


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↑左からM3、「M3改M7」、生粋のM7の各スキャバード。


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↑上の画像の拡大。真ん中の「M3改M7」スキャバードのマウスピース部の左右の下端部分が、隣にあるM3あるいは生粋のM7スキャバードのそれらと違うのがお分かりになりますか?


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↑上の画像のさらに拡大。左がM3、右が「M3改M7」。
左のM3は、鞘本体の切り欠き部分にマウスピースの小さい爪が噛み込んで固定されています。右の「M3改M7」は鞘本体に切り欠きが無く、マウスピースの下端を絞り込み、挟み込ませるようにして本体に固定されています。

M3をM7化するプロセスは、次の通り。
まず鞘本体と結合されているマウスピースの爪の部分を開いて鞘本体を引き抜き、鞘本体の上部は6インチ分カットされます。開かれた爪部分は金属疲労で脆いため取り外され、逆に上方向へ5mmほど切込みを入れられます。カットされた鞘本体は切り欠きを入れられないままマウスピースへ再び差込まれます。差し込まれた鞘本体を、マウスピースの切込みを入れられた部分で挟み込むようにして固定し完了です。
つまり、マウスピースの下端が直角になって爪が鞘本体の切り欠きに引っ掛かっていれば「生粋のM7」であり、鞘本体に切り欠きがなく、マウスピースの下端が斜めになって鞘本体を包み込むようになっていれば「M3改M7」であるという事になります。


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↑M3スキャバードのマウスピースを裏下側から見る。「B 1/5 N」の刻印。製造者Beckwith Manufacturing社の品質管理用の記番号。


1871
↑「M3改M7」を同じアングルから。「B /3 N」。画像下側には「REP」とありますが、これについては様々な文献等を調べましたが、今のところまだ確認できていません…。


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↑M7を。「vP /5」のvPはBeckwithの子会社のVictory Plastics 社です。この「vP」のロゴはすぐ下にバッチナンバーの数字を伴って鞘本体の裏側にも凸モールドで表示されています。この画像の左の方にも、ぼやけて見にくいですが「29」という数字の上に「vP」の凸モールドがあります。

M3スキャバードやM1905バイヨネットが改造されずに16インチのまま残っている例は当然あります。まだまだ価格面でもコレクションはしやすい方だと思いますが、鞘はともかく、銃剣の方は日本では銃刀法により刀身が無残にも切断されていないとコレクションに入れることが出来ないのが、とても残念な事です。
  

Posted by Sgt. Saunders at 21:31Comments(2)Bayonets, Knives

2013年08月24日

M8とM8A1スキャバード(M8 Scabbard, M8A1 Scabbard)

前回ちらっと出ましたM8スキャバード(scabbard/鞘)。
M3ファイティング・ナイフ用の、革でできたM6スキャバードに替わるものとして生まれたM8スキャバードですが、M3ファイティング・ナイフの鍔を改めてポメル部分に着剣部品を付けてM1カービン銃に着剣できるようにと生まれたM4バイヨネット用の鞘としても使われました。
しかし、M8スキャバードにはベルトに通すためのキャンバスで出来たベルトループが付いているのみで、各種ベルトのアイレットに通してぶら下げるためのワイヤーハンガーは付けられていませんでした。
当然使い勝手が悪いため、兵士レベルあるいはそれ以上の組織レベルですぐさまベルトループの上端部にワイヤーハンガーが付け加えられます。これを受けてはじめからワイヤーハンガー付きで作られるようになったのがM8A1スキャバードです。

こうして各種ベルトのアイレットに通してぶら下げて携行することもでき、ピストルベルトやトラウザース用のベルトに通して携行することもできるようになりました。

よって、現存するのは
①ワイヤーハンガー無しのままで改変されていない「生粋のM8」、
②M8にワイヤーハンガーを後付けした「M8改めM8A1」、
③はじめからワイヤーハンガー付きで作られた「生粋のM8A1」
3種となりそうですが、実はもう一つ

②のワイヤーハンガー後付けの「M8改めM8A1」だとベルトループの上端にワイヤーハンガーを後付けすることによりベルトループの長さ(ベルトに通すための実質的な長さ)が短くなってしまい、ピストルベルトに通すのが困難になりました。そこでM8のベルトループ部を鞘本体から取り去り、「生粋のM8A1」用のベルトループ部品を付けた「M8A1用ベルトループ部品挿げ替えM8」があります。

よって纏めると
①ワイヤーハンガー無しのままで改変されていない「生粋のM8」、
②M8にワイヤーハンガーを後付けした「M8改めM8A1」、
③はじめからワイヤーハンガー付きで作られた「生粋のM8A1」、
④「M8A1用ベルトループ部品挿げ替えM8」

の4つが現存することとなります。

③と④の見分け方は、鞘本体のスロート(鯉口)部の刻印がU.S.M8なら④、U.S.M8A1なら③ということになります。

因みに私はまだ上記①と②は持ってません。


↑左が④「M8A1用ベルトループ部品挿げ替えM8」、右が③はじめからワイヤーハンガー付きで作られた「生粋のM8A1」。「M8A1」は、鞘本体先端の補強のためにメタル・チップも施されることとなりました。
ほかにもワイヤーハンガーの材質、バイヨネットの柄の部分を固定するストラップのドットボタンの大きさや、そのオスメスの配し方が異なります。
M8A1はその後M5、M6、M7の各バイヨネット用として、M1ライフル(ガランド)、M14ライフル、M16ライフルと共に兵士たちに携行されました。1944年から1980年代半ばまでの約40年間にわたって使われたということです。  

Posted by Sgt. Saunders at 23:03Comments(0)Bayonets, Knives

2013年08月18日

M4バイヨネット(革グリップ)(M4 Bayonet w/leather grip)

これは何でしょう?

コアラ?

実は…


M1カービン用のM4バイヨネット(銃剣)のポメル(pommel/柄頭)でした!



今回はM4バイヨネットです。

銃に着剣した場合に上側になる方は半分まで刃が付いています。下側はフルに付いています。
グリップの部分は革で出来ています。使い込まれて黒っぽく見えますが元来は茶色の革です。
左端にあるのはM8スキャバード(鞘)。ワイヤーハンガーを後付けされ「M8A1」化されています。





「M8A1」化されていますが、元来はこの通り「M8」です(メーカーは「B.M.Co(Beckwith Manufacturing Co.)」。



この個体はUTICA社製であることがわかります。左端のマークは米軍の補給部の兵科章モチーフ「フレイミング・ボム」。



M1カービンに着剣するときは「顔」は上下逆さまになり、「口」の部分が銃の着剣具(ラグ)に
はまりラッチで固定されます。
同じ仕組みを持つM16ライフル系用のM7バイヨネットも似たような「顔」を持ってます。

↑左からM4、M7、M6(M14ライフル用)。M7はエラが角ばってて「クマ」?M6は他とはラッチの仕組みが違い、目も耳もなくのっぺらぼうです。M4、M7、M6と、ここには在りませんがM5(M1ライフル用でM1バイヨネットの後継モデル)は、「ナイフ形バイヨネット」という意味では同じような外見ですが、着脱する仕組みが下記のように異なります。



M4、M7はラッチを直接手で洗濯バサミをつまむようにして開放しますが、M5とM6ではクロス・ガード(鍔)のすぐ後ろにあるリリース・ボタンを押してラッチを開放します。
上の画像の左がM6、右はM4です。


近年は銃剣類の出モノが少ないです。M16系用のM7ですら最近見ません。さびしい限りです。
では、また!



  

Posted by Sgt. Saunders at 20:40Comments(0)Bayonets, Knives