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2020年05月10日

U.S.将校用アイク・ジャケット(Jacket, Field, Wool, Serge, O.D. Officers')

5月に入り、このGWは例年に比べ自粛要請を受けて全国的に人の出足・移動が極端に減ったそうで、私めも不要不急の外出は控え、食料品の買い出し、切れた電球の購入もコソコソおこないました。
当初5月6日を期限としていた緊急事態宣言が5月末まで延長されましたが、もうしばらく耐え忍び、衛生面に留意して事態の鎮静化に努めるほかありません。
しかし何と言っても「働けない=収入が無い=生計費が払えない」、自分の労働力を売ることでしか生計を図ることができない一般人にとって生計費の援助が喫緊の課題であります。ひとり一律10万円の特別給付金だけでは到底足りませんし、「営業できない=売上が無い=固定費が払えない」一般企業についても早急な手厚い支援策が望まれます。

さて、そんな中で今回定刻を1時間半過ぎてお送りするのはU.S. 将校用アイク・ジャケット(制式名称:Jacket, Field, Wool, Serge, O.D. Officers')です。とは言え、色々注釈付きのモノなのですが。
でも今回このジャケットについて記事を書き始めた時に、まずは普通の、兵・下士官用の(Enlisted men's)アイク・ジャケットを先に記事にしてからの方が良いのかなと思いましたが、もう画像もアップしたし、後回しでもいいかなと判断しました。兵・下士官用のアイク・ジャケット(制式名称:Jacket, Field, Wool, od)についてはまた後日記事にすることにします。因みにこのアイク・ジャケットはその採用年から「M1944フィールド・ジャケット」と呼ばれることもあります。兵・下士官用のアイク・ジャケットと今回の将校用アイク・ジャケットの差異は、表生地の質以外では「将校用」のラベルが付いているか否かと、ライニングが兵・下士官用がコットンなのに対して将校用はレーヨンであった事くらいです。以下追い追い触れます。

↓今回も写真というモノは本当に光の微妙な具合で色調が変わるものだと痛感しています。この画像ではジャケットが若干赤味がかっています。まるであずき色になっていますね。本当はもう少しODが強いです。以下の画像で一番現物に近い色味のモノが出てきたらその旨お知らせします。と言っても皆さんがご覧になってるモニタの具合によってもまた変化するでしょうし、どうしたものでしょうか。

色調OD33の18オンスのウール・サージ生地製です。シルエットは兵用のアイク・ジャケットとほぼ同じです。因みに「アイク・ジャケット」の「アイク(Ike)」とはアイゼンハワー将軍(のちに大統領)の愛称「アイク」に由来するというのはある程度は有名?な話です。ここでは詳しくは申しません。Wikipediaなどでご覧下さい。

↓フロントはサービス・コートと違いフライ・フロントとなっており、着用時にはボタンは表からは直接見えません。元々アイク・ジャケットは野戦服(フィールド・ジャケット)として開発されたものですから、ボタンがブッシュの枝などに引っ掛からないようにするため、この仕様になっています。M1943フィールド・ジャケットやトロピカル・コンバット・ユニフォーム(ジャングル・ファティーグ)等と同じコンセプトです。一番下だけボタンとボタンホールの付き方が逆になっています。ボタンが取れちゃってますが…。これは「パターン違い」による仕様の差で、一番下のボタンもそれ以外のボタンと同じように右身頃に付いているパターンもあります。この辺は兵・下士官用のアイク・ジャケットも同様です。


↓フライ・フロント。いわゆる隠しボタンです。このようになってます。


↓一番下の裾のウェスト・バンドの左側先端は円くタブ状になっていて…


↓タブ先端はスナップで留めるようになっています。先ほども触れましたが一番下のボタンだけボタンとボタンホールの付き方が逆になっています。このパターンとは別に、全部のボタンが右身頃に付いているパターンもあります。ボタンを付けないとカッコ悪いですね。


↓スナップ雄金具の裏面。かのScovill社製でした。


↓雌金具には何の表記もありません。


↓カフです。袖のボタンはフロントのボタンより一回り小さいです。


↓本切羽になっています。


↓一般的にアイク・ジャケットの袖にはボタンが2つ付いていて、袖口の絞り加減を「通常」と「細目」とに調節できるようになっているのですが、私がこの将校用アイク・ジャケットを入手した際には、左右ともボタンは1つしか無く、取り去った形跡が認められませんでした。もう一つのボタンは供用を始める前に綺麗に取り去られたのか、最初から付いていなかったのか不明です。おそらく前者だと思います。


↓胸にはプリーツのあるパッチ・ポケット。


↓フラップもフロントと同じくボタンが露出しないようにM1943フィールド・ジャケットと同じように隠しボタン(コンシールド)になっています。


↓そしてまたこの個体はフラップの両端にスナップ・ボタンが付け加えられていて、フラップのバタつきを封じ込めようという強い熱意を感じます。


↓この仕上がりですので、多分プロではなくアマチュアの仕事だと思います。


↓内側を見て行きます。裏地はレーヨンです。兵・下士官用のアイク・ジャケットの場合はコットン・サテンです。まず左から。水平に内ポケットが設えられています。


↓アーム・ホールの下には汗とり布があります。しかしまあ、裏地も写り具合が上の画像とこの画像で全然違いますね。上の画像では茶色?、この画像ではゴールド?。


↓ポケットの内部はコットン製の袋です。


↓右側です。こちらにも水平の内ポケットと汗とり布があります。この画像の色合いが裏地も表地も一番現物に近いと思います。裏地はレーヨンのサテンなので色ムラがあるように見えますが、一番自然に見えます。


↓はい、ひときわ目立つラベルです。陸軍のシンボル(合衆国国璽)と「REGURATION ARMY OFFICER’S JACKET(正規の陸軍将校用ジャケット)」との表記。


↓そしてポケット内側には…


↓きれいにタグが残っています。


↓曰く、1行目から2行目に制式名称「Jacket, Field, Wool, Serge, O.D. Officers'」、3行目にサイズは38S。4行目の「Code No 1188」は製造者を示すコードで、ニューヨーク州ロチェスターのTimely Clothes Co.社製であることを表します。将校用の衣服の製造者はその多くが実名ではなくコードで表されました。5行目「Patt. Date 11/1/44」は縫製パターンの日附1944年11月1日を意味します。これとは別にパターン「1945年3月5日」があります。6行目「P. O. 20588」はPurchase Orders(通常の契約手続きよりも急を要する場合に用いられた「発注書」)の番号が20588であることを示します。WWII中、このPOはかなり多用されています。7行目はその日附1945年4月21日の意。

8行目はQuartermaster Corps Tentative Specification(陸軍補給部暫定仕様)、9行目Philadelphia Quartermaster Depot No.472(フィラデルフィア補給デポ番号472番)、10行目はその日附1944年10月28日、11行目から12行目はストックナンバーが55-J-386-80(末尾の80はサイズ38Sを示します)、最終行に本品についての責任部署であるPhiladelphia Quartermaster Depot(フィラデルフィア補給デポ)の表示。一つ上の画像で分かりますが、この下に「Inspecter(検査員)」の欄があり、何も記されていませんが、寧ろ何も記入が無いのが通常です。

↓ハンガーループがあります。


↓ショルダー・ループ(エポレット)です。


↓背面です。本来は兵・下士官用のアイク・ジャケットと同様に両腰部に裾絞り具合調節用のストラップとバックルが設えられているのですが、この個体では綺麗に取り去られています。上述しましたカフのボタンの例とは異なり、こちらには元々の縫製の痕が僅かに認められました。画像のウェスト・バンドの左右の端に若干色目が濃くなっている長方形があるのがお分かりいただけると思います。



以上本ブログではまだまだ採り上げる機会の少ない衣料モノの一つを見て頂きました。
入手したのはもうカレコレ15年くらい前で、まだその頃は知識もそれほどなく(今もですが)、両腰の裾調整ストラップとバックルが取り払われていることには気付かず、全体的に綺麗で虫食いも無かったのでebayかどこかで贖ったモノだと思います。今だったらこのように部品が取り払われているモノと分かっていればまず購入しないです。でももう入手してしまったので、綺麗なので持っておきます。
WWII当時(今でも?)将校はレギュレーションに大体沿っていれば自費で仕立てたモノを着用することが許されていたので、今回のモノのような官製のモノではなく、パットン将軍のようにサービス・コートに付いているようなキラキラのギルト・ボタンを露出させたモノを着用するなど出来ました。


それでは今回はこの辺で失礼いたします。