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2021年01月11日

U.S. M-Q1 OD・パイル・フィールド・キャップ(Cap, Field, Pile, OD, M-Q1)

みなさま、新年明けましておめでとうございます。
新たな年を迎えられたのはおめでたく嬉しいですが、やはりどうしても触れずにはいられないのが新型コロナウィルス関連の話題です。
感染者数の増加の勢いがもの凄く、7日に関東の1都3県に「非常事態宣言」が出され、大阪・京都・兵庫も政府に対し宣言を出すよう求めるそうです。一般市民レベルで出来る外出自粛・マスク着用・家庭内感染防止を徹底して、感染者数の増加防止に努めたいと思います。コロナ禍の中生活に困窮している方々への経済的支援をしっかりと行うよう国・自治体にお願いします。

さて今年もまたこれまで得て来たまだまだ乏しい知識を交えながら蒐集品をご覧に入れたいと思います。よろしければお付き合いください。引き続き隔週日曜日正午投稿を目標にしております。間違い等のご指摘は大歓迎です。

新年最初のネタは何にしようかと考えましたが、ネタ探しに行き詰った時に時々頼っております故川越のりと先生の「コンバット・マガジン巻末イラスト・ポスター」シリーズを見まして、急激な寒波到来とも相俟って「そうだ、これにしよう!」と決めましたのがアメリカ軍が朝鮮戦争時に使い始めました「M-Q1 ODパイル・フィールド・キャップ(Cap, Field, Pile, OD, M-Q1)」です。新年早々いきなり目標から一日遅れでお送り致します。

↓故川越のりと先生の「コンバット・マガジン巻末イラスト・ポスター」シリーズの「B.A.R. MAN」です。この米陸軍兵士が頭に被っている…


↓この帽子、これが「M-Q1 OD・パイル・フィールド・キャップ(Cap, Field, Pile, OD, M-Q1)(Stock No.73-C-16736-xx)」です。イラストのキャプションには「FieldとOD」の語がありませんが。


↓1943年に開発されWW2末期に採用されていた先輩モデル「Cap, Field, Pile, OD(Stock No.73-C-16350~73-C-16375)」と仕様・形状はよく似ていますが、バイザー内側にもパイルが施されていて着用者の視界の妨げになり不快であるというクレームを受け、Quartermaster(補給部・需品部)がバイザーからパイルを取り去り、後頭部から顎周りの裁断等を若干見直して1948年にこのMQ-1を開発しました。なので「M-1」ではなく「M-Q1」なのだそうです。ただ朝鮮戦争勃発時にはまだ先輩モデルの在庫も沢山ありましたのでそちらも同時に供用されています。さらに本MQ-1も程無く特に改修されることも無く標準化され、名前も新たに「Cap, Field, Pile, OD, M-1951(Stock No.73-C-16240)」となります。よって朝鮮戦争中には「Cap, Field, Pile, OD」、「Cap, Field, Pile, OD, M-Q1」、「Cap, Field, Pile, OD, M-1951」の3種が使用されたことになります。



↓ウェブからの拾い画です。おそらくアメリカのナショナル・アーカイブだと思います。違ってたらスミマセン。右の空軍将校が被っているのがM-Q1若しくはM-1951です。バイザーを上に裏返していますが、パイルがありません。一方左の将校はバイザーにパイルの張られている先輩モデル「Cap, Field, Pile, OD」を被っています。二人ともバイザー裏面に階級章を着けています。軍制式なのかはまだ調べてませんが一般的なスタイルです。


↓フラップ(earlap)を下ろすとパイルが寒さから耳・頬・顎・後頭部を守ってくれます。右フラップにあるコードと表地の間のループ部に左フラップの先端を滑り込ませ、両フラップからのコードを顎下で結んで顔に密着させます。暖かいですよ。冬のサバゲはM1ヘルメットではなく、これを被って朝鮮戦争コスチュームでもいいかも。BB弾からも耳・頬をガードしてくれますし。


↓繰り返しになりますが、このM-Q1にはバイザー内側にはパイルは張られていません。また、バイザーの付け根には細い三日月状のスウェットバンドが見えます。帽子本体の内張はコットン混紡のウールです。表地はコットン・ポプリンです。


↓先程の写真の将校のように、フラップを下ろさず頭頂部へ上げてコードを使って固定します。


↓パイルはM1967ナイロン・ウォーター・キャンティーン・カバーの内張りアクリル・フリースと同じような毛足です。但し化学繊維のアクリル・フリースとは違ってもっと暖かいような気がします。


↓バイザーは帽子をちゃんと被るとピン!と上へ反ってくれます。


↓内側の拡大。コットン・ツイルのスウェット・バンド真後ろの箇所にスタンプによるサイズ表記「7 1/4」。帽体内側左右にラベルがあります。


↓右側に名称と使用上の注意書きです。


↓曰く、(1)フラップ上留め-右のフラップのループに左のフラップを通し、紐穴を合わせる。左のコードを両方の紐穴に通して結ぶ。(2)フラップを下ろす-左のフラップの両方の紐穴にコードを通し、左のフラップを(右の)ループに通して結ぶ。(3)ヘルメットと共に着用する時-パイル・フラップは下ろすべし。パイル・キャップにフィットするようにヘルメット・ライナーを調節せよ。(4)このキャップは洗濯してはならない。ドライ・クリーニングだけ。


↓帽体左内側のタグ。名称やサイズ表記、製造者等の情報が書かれてあります。


↓名称は「Cap, Field, Pile, OD, MQ-1」。何故かさっきまで見て来た「M-Q1」ではなくハイフンの位置が違っています。どっちが本当なんでしょうか。ウェブを眺めると「M-Q1」の方が多いようです。サイズは7 1/4インチ、製造者はHAMELCO INC.。ほか契約日・契約番号、調達仕様書日付、ストック・ナンバー(73-C-16376-55(このサイズで))、ニューヨーク補給品部(需品部)調達庁(NYQMPA:New York QuarterMaster Procurement Agency)の表示。あと、ALPACA(パイル)の素材が60%ウール、40%コットンで、帽体ライニングの素材が80%ウール、20%コットンであるとのこと。ライニングはM41フィールド・ジャケットのライニングと似た感じのやや薄手なものです。



はい、新年一回目はいかがでしたでしょうか。実はこのアイテムは極最近入手いたしましたモノです。
WEBではM-1951もM-Q1もゴッチャにされている印象です。レプリカも沢山出ていて、その値段も「一万五千円!」などと驚愕のお値段が付いているモノがあったり、びっくりしました。実物デッドストックがまだまだソコソコebayなどで入手可能です。私もさる海外のショップからUS$30程で買いました。送料を加えても日本で5,000円で売れたらコーヒー2杯分くらいは儲かる?

このパイル・キャップは「M-1951」の後DSA・FNS時代以降も名称や若干の素材変更こそあれ供用が続いています(例えば「CAP, FIELD, COTTON POPLIN, WOOL PILE, OG」等)。価格は程度にもよりますが、朝鮮戦争時から60年代のモノ全部ひっくるめて大体5,000円くらいから8,000円位でしょうか。結構高値だなと感じます。レプリカで一万円越えもあるほどですから、ファッション・アイテムとしての人気があるんでしょうね。

また、老婆心ながらコレクション初心者の方に注意喚起いたしますが、同じ「M-1951」でも帽体に内張の無い、耳当て部分が内側に折り畳める薄手の「M-1951 コットン・フィールド・キャップ」やその派生モノとは全く別モノですので注意が必要です。まあビジュアルが全く違いますので見て間違う事は無いと思いますが、カタログなどの文字ヅラだけで見てると間違いそうです。


それでは今回はこの辺で失礼いたします。また2週間後にお目に掛りたいと思います。ご機嫌宜しゅう。



  

Posted by Sgt. Saunders at 12:47Comments(0)Headgears

2019年04月07日

US M1ヘルメット-その2-(US M-1 Steel Helmet -vol.2-)

みなさんこんにちは。
新元号が令和に決まり、桜が満開となりましてお花見には絶好の機会が到来しました当地大阪から、定刻を2時間余り過ぎてお送りします。

さて今回のネタは察しのいい方なら既にお分かりかと思いますが、前回の投稿で少し見え隠れしておりましたミッチェル・カモ・カバーを纏っておりました別のM-1ヘルメットです。
ひと口にM-1ヘルメットと申しましてもアウター・シェルとライナー・ヘルメット、それに内装のバリエーションとの組み合わせにより様々なパターンが存在し得るという事についてはご承知の通りです。そのすべてのパターンを蒐集し尽くすのは私などには到底不可能です。

ただ今回のこのM-1ヘルメット、「変わった取り合わせだな」、「ナニコレ?」とお感じになられる方もあるかもしれません。私も当初「え?これ何か違和感…」と思いました。ただそれは偏に知識経験の少なさに由来するものでありました。

↓これです。

「ミッチェル・カモ・カバーなのに茶革チンストラップ付き?」と思いました。でも以前の投稿「ミッチェル・パターン・カモフラージュ・ヘルメット・カバー」でも掲げました下の画像↓を見た時以来「まあ、この組み合わせが在ってもおかしくは無いわな」と納得しました。勝手に「違う時代のモノの組み合わせだ」と思い込んでいたのです。

米国のナショナル・アーカイブより「Da Nang, Vietnam - A young Marine private waits on the beach during the Marine landing. - August 3, 1965.」。1965年8月においてもまだこのタイプのライナー・ヘルメットが現役であったという事に少し驚きました。

↓この個体はまさに今上で見た海兵隊員の被っているM-1ヘルメットと同じです(海兵隊への支給はずっと後になってからとなるヘルメットバンド(カモフラージュ・ヘルメット・バンド)を除いて)。


↓前回の投稿の中で文章による紹介をいたしましたWWII中に改良されたT-1リリース・チン・ストラップが装着されています。


↓ベトナム戦争中に広く使用されたこの「ミッチェル・パターン・カモフラージュ・ヘルメット・カバー」(←以前の記事にリンクしてます)は現在いい値段でレプリカが出てます。スタンプまで実物そっくりに再現されていますので「本物」にこだわる方はご注意ください。


↓内側のライナー・ヘルメットを見ていきましょう。前回記事でも出て来ました「Liner, Helmet, M-1, New Type」の「OD#7内装タイプ」です。また、このライナー・ヘルメットの内装に用いられている素材はコットン・ウェブです。


↓これがその前回記事でも出しました「Liner, Helmet, M-1, New Type」の「OD#3内装タイプ」です。構成要素がほぼ同じなのがお分かりいただけますでしょうか。そして、こちらの内装に用いられている素材はコットンのHBT(ヘリンボーン・ツイル)です。


↓頭頂部付近のメーカー・ロゴ(Firestone Tire and Rubber Company)と1962年製であることを示すエンボス。Firestone Tire and Rubber CompanyはWWII時代もライナー・ヘルメットのメーカーでもありました。


↓上で「構成要素が『ほぼ同じ』」としたのはここが違うからです。後頭部の装着感向上および衝撃緩和のためのネック・バンドに改良が加えられ、この様にバックルでその長さを調節できるようになっています。カタログ上の制式名称は「Band, Liner, Helmet, M-1, Neck, Adjustable」。



↓バックルが付く前のモデル。上下2つ並ぶスナップの間隔を当初は5つ(のちに3つ)のサイズ展開で用意されたネック・バンド「Band, Neck, Liner, Helmet, M-1」です。これをバックルを用いて長さを変えられるようにしたのが上で見たモノです。サイズごとの在庫管理を不要にするためです。

 
↓バックルで折り返す長さを変える事でスナップの間隔を自在に調節できます。


↓片側のスナップを外しました。


↓どっちも外しました。


↓何やらスタンプがあります。


↓曰く、「NECKBAND SOLDIER'S STEEL <改行>HELMET LINER  QM(CTM)<改行>40765-E-62   8415-153-6670」。制式名称がSoldier's Steel Helmet Neckbandとなっております。米軍装備品にはよくある例ですが、「モノ」は同じでも新たなカタログに搭載される際などに名称が変更されることが多いですし、また名称の一部が省略されてスタンプがなされたりするのもよくあります。ですからこのネック・バンドも1946年5月版のQuartermaster Supply Catalog「QM 3-1」では制式名称は「Band, Liner, Helmet, M-1, Neck, Adjustable」ですが、M-1ヘルメットの制式名称が変化したことにも伴ってこの表記になってます。品名の後ろ、「QM(CTM)40756-E-62」とあるのは、のちのDSAになる前のQM(CTM)時代の契約番号表示で1962年度契約の意。「8415-153-6670」はFSNです。


↓WWII以来のファスナー・メーカーの刻印「RAU FASTENER CO. PROVIDENCE R.I.」。


↓こちらはヘッド・バンドのサイズ調整用バックル部分です。


↓裏側にスタンプがありますがフェードアウトしており、判読不能です。


↓ライナー・ヘルメット外観です。前回の投稿でも同じ「LINER, HELMET, M-1, NEW TYPE」をご紹介しましたが、それとは違い、こちらのモノには正面上部のアイレット(ハトメ穴)がありません。無駄だと省かれたのだと思われます。


↓また、ヘッド・バンドを支えるハーネスを固定するリベットの頭の径が小さくなっています。チン・ストラップを留めるためのスタッドを固定するリベットの大きさは変わっていません。


↓ライナー・ヘルメットのチン・ストラップです。前回の投稿で掲げたモノと差異はありません。因みにこの茶革チン・ストラップはWWII時にはライナー・ヘルメットの構成要素としてはカタログを見る限りでは独立したストック・ナンバーは与えられていなかったようなのですが、FSN制度が定められた1954年以降は「8415-153-6673」というFSN番号が与えられ、且つ「Strap, Chin, Leather, Russet」という名称が付けられています。


↓バックルに錨の刻印。North & Judd Manufacturing Company社製です。


↓裏側のリベット。お馴染み「DOT」の刻印はUNITED CARR社です。


↓ミッチェル・カモ・カバーを着けてライナー・ヘルメットを嵌めようかという状態です。シェル内側にオリジナル塗装が鮮やかに残っています。かなり明るいODです。もはやライム・グリーンです。


↓前回の投稿で触れました、WWII中に改良されたT-1リリース・チン・ストラップが装着されています。


↓チン・ストラップのループへの取付けは「縫い付け」から「金具連結」に変わってます。取替が楽です。


↓T-1リリース・チン・ストラップのアップ。左の爪が右のボールを掴んでいるのがお分かりいただけますか?


↓撮影の角度を変えました。


↓つなぐ前。


↓爪の側には画像で示している通り「切れ目」が入れてあります。


↓つないで、この画像は今まさにボールの付いているストラップを右方向へ思いっきり引っ張っていまして、それにより隙間が開き、もっと力を掛けて引っ張れば、ボールを掴んでいる爪の間からボールがすり抜けて外れる、という仕組みです。14ポンド(6.35キログラム)の力が掛かると外れるという事です。

前回の投稿のキャプションをもう一度流用します。チン・ストラップをしっかり留めていると、「付近で砲弾の炸裂があった場合等による衝撃波を受けた際、ヘルメットと頭部との間にその風圧を受け、その風圧がチン・ストラップを介して顎をアッパーカットするように作用する形となり、その結果顎のみならず頸椎の損傷や脳震盪をもたらす…...」という戦場からのレポートを受けて緊急的・暫定的に「チン・ストラップを留めずに垂らしておくかヘルメット後端等に留め置いておくように」との指示に繋がったのでしたが、このレポートをもとに上述の通り、チン・ストラップを留めていても14ポンド(6.35キログラム)の力が掛かると自動的に外れて受傷を回避できるようにしたのがこのT-1リリース・チン・ストラップです。

↓お馴染み1946年5月版のQuartermaster Supply Catalog「QM 3-1」のT-1リリース・チン・ストラップのキャプションです。


↓ストラップの金具は鋼板打ち抜きプレス・OD塗装です。


↓カバーを外しました。いわゆるフロント・シームです。なので、WWIIの比較的初期の製造で、のちに明るめのODでリペイントされ、チン・ストラップも換装されたのだと思っています。


↓フロント・シームとロット番号(ヒート・スタンプ)。


↓ロット番号(ヒート・スタンプ)については近時急速に研究が進んでいるようですが、私の頭は追いついてません。


↓アウター・シェルの外観です。高さが低くなったりする前の元祖M-1型です。塗装の一部が剥げてて明ODの下に濃ODが見えています。


↓アウター・シェル正面。特筆無しです。


↓ついでにミッチェル・カモ・カバーです。以前の投稿で触れていますのでよろしければご覧ください。



この個体は、この組み合わせで6、7年前にeBayで購入しました。当時やはりミッチェル・カモ・カバーと茶革チンストラップライナー・ヘルメットとの組み合わせが忌避されたのか、入札はあまりなく、確かUS$150もしなかったように記憶しています。
M-1ヘルメットについてはアウター・シェル、ライナー・ヘルメット、それぞれの「バージョン」、各種内装部品、塗装など、非常に多くの要素が絡んでいて、その組み合わせによって歴史的な価値も異なってきますので、コレクションする上ではいろいろ吟味する面白さ(嬉しい面倒臭さ)がありますね。
当時のパーツを使って古くなったヘルメットをレストアしてくれる業者や、パーツを販売している業者が沢山あって、研究も進み、環境としては良い要素があるのですが、中には粗悪なレプリカ・パーツを実物として売ってたりする業者もありますので注意が必要です。

それでは今回はこの辺で失礼いたします。またお会いしましょう。




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Posted by Sgt. Saunders at 14:43Comments(0)Headgears

2019年03月24日

US M-1ヘルメット(US M-1 Steel Helmet)

みなさんこんにちは。
寒さがぶり返して、3日前の最高気温は21度だったのに今朝の最低気温が3度という当地大阪・某郊外都市より、投稿定刻(自主目標)から約1時間遅れてお送りいたします今回、「そう言えばまだだった」シリーズ?として今さらながらご紹介致しますのはWWII時以降長らく米軍兵士のアイコンとなっていたと言える「M-1ヘルメット」です。

WWII当時フランス国民が、上陸してきたアメリカ兵を見て「フットボール選手が被るようなまん丸いヘルメットを被り、野球選手が着るようなジャンパーを着て…」と名状したように、トサカやツノの無いそのまん丸い形状のM-1ヘルメットはヨーロッパ諸国においては当時珍しいモノであったのは確かでしょう。日本軍なんかは多少トンガリ気味ではあったものの飾り気の無い丸い鉄帽でしたが。
私がWWII時代のM-1ヘルメットをやっとのことで入手できたのは働き出して可処分所得が格段に上がってからです。それまではかの中田商店で売られていたどこの国のモノかよく分からない、高さが低くなってからのM-1ヘルメットのアウター・ヘルメットと、それに合わせることのできるプラスティック製の、これまた中田商店製?のライナー・ヘルメットを買って、なんちゃってGIとなってマルシンのM-1カービン(大昔のカート式エアガンです)を携えてサバゲを楽しんでいました。

↓「M-1ヘルメット」です。TV映画「コンバット!(COMBAT!)」ではケイジらが擬装網(カモフラージュ・ネット)を着けたりサンダース軍曹は擬装カバー(カモフラージュ・カバー)を着けたりと色々なアレンジが見られるアイテムです。もちろんヘルメット本体に直にペイントや標記を施したりすることもあったのは皆さん周知の通りです。1980年代前半にケブラー製のPASGTヘルメットに取って替えられるまで、若干のスペック変更を経ながらGIの頭を守り続けました。後ろに見えているのは、また後日…。



↓取り敢えずグルリを眺めます。「本体は高マンガン鋼製で磁性を持たず、縁(リム)は当初はステンレス鋼でのちにマンガン鋼になった…」などというカタログ・スペック的な講釈はここでは敢えて致しません。Wikipediaや他の方のHP等を参照して下さい。


↓ヘルメット本体のチン・ストラップは本来その名の通り顎の下で留めてヘルメットをしっかり頭部に被せて固定させるためのモノですが、このように後ろ側の縁に沿わせて固定させておくか、もしくは顎に廻して留めることなく重量にまかせてダランと垂らしておくようにするなどして、とにかく顎下で留めるなと戦中に指示が出されたのも、コレクターの方ならご存知の通りです。初心者の方のために僭越ながら念のため講釈めいたことを申しますと、「チン・ストラップをしっかり留めていると、付近で砲弾の炸裂があった場合等で衝撃波を受けた際、ヘルメットと頭部との間にその風圧を受け、その風圧がチン・ストラップを介して顎をアッパーカットするように作用する形となり、その結果顎のみならず頸椎の損傷や脳震盪をもたらす…...」という戦場からのレポートを受けて緊急的・暫定的に「チン・ストラップを留めずに垂らしておくかヘルメット後端等に留め置いておけ」との指示が出されるに至ったのでした。

のちに14ポンド(約6.35キログラム)の力が掛かると外れるように設計された『T-1リリース・チン・ストラップ』が開発されました。またの機会に触れるかと思います。

↓前にある革製のライナー・ヘルメットのチン・ストラップ。ライナー・ヘルメットのチン・ストラップはこのようにヘルメット本体(アウター・シェル)の庇に引っ掛けておくのが一般的です。

と、ここまで書いてふと思い出しました。この「M-1ヘルメット」、私がWWIIUS装備品に興味を持ち始めた当初まだ実物を見たことの無い頃は、これが外側のヘルメット本体と内側のライナーとに分かれる、外側と内側の二重構造!なんてことは思いもよりませんで、ドイツ軍のヘルメットのように本体の内側にサスペンションが取り付けられているものだと思い込んでおりました。ひと口に「M-1ヘルメット」と言いましても、実はアウター・シェル(外帽:制式名称は「Helmet, Steel, M-1」(のちには「Helmet, Steel, M-1, with Flexible Loop」))にライナー・ヘルメット(中帽、或いは内帽:制式名称は「Liner, Fiber, Helmet, M-1 」(のちには「Liner, Helmet, M-1, New Type」))を嵌め込んで、セットになって初めて「M-1ヘルメット(制式名称:「Helmet, Steel, M-1, Complete」)」となることを知ったのは渋谷のアルバンから「米軍カタログ」を郵便で取り寄せてからでした。 昔は今のようにインターネットで調べるとすぐ分かる!という環境なんかは無く、ほとんど全て紙媒体の資料しか無くて、しかも微に入り細を穿つような資料は簡単に入手できませんでした…(シミジミ)。

↓内側、正しくはライナー・ヘルメットの内側です。画像右側が額側、左側がうなじ側です。今回お見せするモノは、カテゴリ―としては「Liner, Helmet, M-1, New Type」になるのですが、これもまたひと口に「Liner, Helmet, M-1, New Type」と言っても製造者や製造時期によって細かい差異がありまして、とてもここではすべてを網羅することはできません。詳しくは例によって他の研究者の方のHP等を参照して下さい。使用される金具や仕上げの差異により細かく分けて論じられています。

先ほど見たライナー・ヘルメットのチン・ストラップと、頭の周囲のサイズに合わせる茶革のヘッド・バンド(芯材はHBTコットン・テープ)、被る深さを頭頂部のコードで緩く締めるかキツく締めあげるかで張り具合を調節して使うサスペンション、うなじ部分のクッションとなるネック・バンドが設えられています。HBTコットン・テープの色調は全てOD#3です。のちの製造時期ではOD#7へと変わっていくのは一般的な装備品の例と同じです。ライナー・ヘルメット自体はいくつもの細長いキャンバス生地を球状に重ね合わせてフェノール樹脂を染み込ませてからプレス成型して作られます。因みにこの「New Type」の前のモデル「Liner, Fiber, Helmet, M-1 」は素材としてカードボード(ボール紙)を用い、表面を薄い布でカバーして圧縮成形して作られ、ネック・バンドなどの内装素材にはレーヨンが用いられていました。使用された金具などの差異で前期型後期型と分けて論じられることがあります。

↓本体がコットン生地から作られているのが納得できます。繊維が良く見えます。HBTテープをライナーに固定している逆Aの字型のリベット受け板はホワイトメタル製のモノ、鋼製のモノや、本件のようなブロンズ製のモノなど数種類あります。


↓ライナー・ヘルメット内側の頭頂部付近にある製造者のロゴマーク。十字型の中に縦と横で「CAPAC」との表記があり、ミシガン州のCapac Manufacturing Company製であることを示します。飛行機のプラスティック製シートやB-29の窓枠なんかも製造していたそうです。このタイプのライナーの製造者は10者に及びます。


↓上はうなじへの衝撃を緩和するネック・バンド。サイズは当初は5段階、最終的には3段階で用意されていました。上下2つ並んだスナップの列が両端にありますが、この間隔を5段階あるいは3段階で作ってサイズ展開を図りました。のちには更に最終進化形として、バックルを用いてサイズ調節できるモノが開発されます。下は各サイズが固定されて作られていたモノから、バックルを附属させて寸法を調節可能なモノへと改良された型式のサイズ可変式ヘッド・バンド、「Band, Head, Liner, Helmet, M-1, New Type」です。


↓ネックバンドのスナップの片側を外してみました。スタンプがあります。


↓見にくいので逆さまにします。上段に「W11-009 QM16874」とあります。シカゴ・クオーターマスター・デポが起案した契約書に基づいて陸軍省が陸軍需品科向けに契約番号16874で契約したという意味です。「W」はWar Department、「11-009」はChicago Quartermaster Depotを表すコード(1943年6月30日までなら「199」)、「QM16874」は「陸軍需品科向け契約・番号16874」を表します。下段の「S.M.C.」は製造者「Scholl Manufacturing Company」 の意。「LARGE」はいわずもがな「大」の意。


↓バックルが附属したサイズ可変式のヘッド・バンドの拡大。バックルに通っていた部分を全部引っ張り出してみました。スタンプがありますが、残念ながら掠れてしまって幾つか番号が見える程度で詳細が分かりません。


↓こちらはアウター・シェル(外帽)に設えられているチン・ストラップとその留め具(バックルとフック)です。ストラップの色調はOD#3。バックルは打ち抜きプレスの真鍮製。形状は同じでM-1ヘルメット制式化以前の皿型M1917(A1)ヘルメットで用いられた鋳造の真鍮製のバックルもM-1ヘルメット制式化当初には用いられました。フックも真鍮製です。時代が下るとストラップの色調はOD#7へ、留め具の素材は鋼へと変化していき、形状も変化します。


↓フックです。この個体は「返り」がとても小さいです。


↓アウター・シェルのループにチン・ストラップが縫い付けられている部分の拡大と、アウター・シェルとライナー・ヘルメットとの「ハマり具合」をご覧頂く画像です。アウター・シェルとライナー・ヘルメットとの「ハマり具合」はそれぞれが別個独立したモノとして複数の製造者により製造されたこともあり、ピシッとハマる組み合わせ、今一つぴったりハマらない組み合わせがあったりと若干の「相性」があります。


↓ライナー・ヘルメットを外しました。両耳に当たる辺りの箇所にチン・ストラップが縫い付けられているループがあるのが分かります。↑今上の画像でも見ましたが、内側外側に揺り動かせるようにヒンジで留められたループを持つアウター・シェルが制式名称「Helmet, Steel, M-1, with Flexible Loop(Stock No.:74-H-120)」です。まさにフレキシブル、ループが動かせます。これの改良前モデル「Body, Helmet, Steel, M-1(Stock No.:74-H-115)」では、ループと言うか『コ』の字型のワイヤーがその末端部分だけでヘルメット本体に直接熔接されていて揺り動かすことは出来ません。衝撃に弱く取れやすかったため、本体にヒンジを熔接し、そこにループが通る形にして、衝撃を受けてもそれを逃がしやすい構造へと改良されたのでした。単なる仕様変更ではなく、別アイテムとして開発製造されたという事です。あとでカタログ表示を見てみましょう。

この形状を見れば、洗面器、鍋、バケツ、ショベル等々前線の兵士によって色んな用に供されることになったのも無理は無いと素直に頷けます。

↓ここで少し資料を見てみましょう。まず1943年8月版のQuartermaster Supply Catalog Section 1から。当ブログではしばしば出て来ます。


↓ヘルメットのページ。M-1ヘルメット関連はこの部分(1/2ページほどです)。私がで囲ったキャプション「Helmet, Steel, M-1, Complete」は、四角で囲われているモノすべてを含んでのキャプションです(すぐ下の説明文でも言及されていますがで囲っている4つのアイテムで構成されているという事です)。Fig.1の「BODY, HELMET, STEEL, M-1(本体)」、Fig.2の「LINER, HELMET, M-1, NEW TYPE(ライナー・ヘルメット)」、「BAND, HEAD, LINER, HELMET, M-1, NEW TYPE(ヘッド・バンド)」、「BAND, NECK, LINER, HELMET, M-1(ネック・バンド)」の4つが組み合わさって「M-1ヘルメット」が一つ出来上がります。


で囲った「Fig.1」がヘルメット本体(「BODY」:アウター・シェル(外帽))で、で囲った「Fig.2」がライナー・ヘルメット(「LINER」:中帽または内帽)です。ストックナンバーがそれぞれ別個独立して与えられており、アイテムとしては一つひとつが単体で管理されている事が分かります。Fig.1ではライナー・ヘルメットのチン・ストラップもアウター・シェルのチン・ストラップもどちらも顎に回して留めています。これが本来の着用方法なのでしょうけど、実際は冒頭の画像にありますようにライナー・ヘルメットのチン・ストラップはアウター・シェルの庇部分に掛けていたのが通例でした。


↓一方、こちらは1946年5月版のQuartermaster Supply Catalog「QM 3-1」です。


↓こちらでもヘルメットの項は1/2ページほどです。上の1943年8月版のQuartermaster Supply Catalog Section 1で見たアウター・シェルは、こちらでは赤下線の通り「BODY」の語が抜けて、代わりに「Until Exhausted(費消限り)」との注記が付いてます。どちらのカタログでも同じストックナンバーですから名称が変わったという事が分かります。そしてすぐ下青下線の方では「Helmet, Steel, M-1, with Flexible Loop」とあり、赤下線の「Helmet, Steel, M-1」に「フレキシブル・ループ」が付いたモノとして新しいアウター・シェルが別途開発されたという事が分かります。ストックナンバーも別のモノがちゃんと割り振られています。以上から「フレキシブル・ループ」が付いていない「Helmet, Steel, M-1」はループが直接アウターに熔接留めされているアウター・シェルである事が分かります。カタログへの搭載以前に実際は1943年中頃から製造が始まっています。

また右上の着用画像を見ると、ライナー・ヘルメットのチン・ストラップはライナー・ヘルメット自体の庇に掛けた状態で、その上からアウター・シェルを被せています。実際にこんなことをするとストラップの固定バックルが嵩張ってアウター・シェルとしっかり嵌め合わせられないのでは?と思います。やってみたことありませんが。先ほど見た1943年8月版のカタログではどちらのチン・ストラップも顎に回していましたね。

↓現物に戻ります。アウター・シェルはリム部分の全周が薄い金属テープで巻き覆われて処理されますが、その金属テープをどこから巻き始めてどこで巻き終わるか、「始点終点」がどこになっているかで2種類に大別されています。この個体は前の庇に始点終点のあるいわゆる「front seam敢えて訳せば『正面縫い目』」で、のちにWWII末期ごろからは真後ろ「rear seam『後面縫い目』」になったと言われています。指で示している先にテープの切れ目があるのがお分かりいただけますか?また、すでに触れましたが金属テープの素材も当初はステンレス鋼で、のちにマンガン鋼になっていきました。


↓大体ほとんどのアウター・シェルの庇の内側のこの辺りにロット番号が打刻されています。


↓再びアウター・シェルの外観。この背の高いフォルムとコルク粒・おが屑のブツブツが好きです。のちにM-1ヘルメットは安定性向上等の為に形状変更を施されて若干高さが低くなったり庇が少し長くなったりするのですが、WWII時代が好きな私はこのシルエットがたまりません。そう言えば大昔1980年代くらいまでは、業界もコレクターも、今申し上げたM-1ヘルメットをマイナーチェンジしたとも言えるやや高さが低くなったモノを新しいタイプのライナー・ヘルメットとセットにして「M-2ヘルメット」とか「M-1956ヘルメット」などと呼んでいましたね。現在ではM-2は全く別モノ(M-1C空挺隊用ヘルメットの前身)として認識されていますが、昔は違いました。


↓左真横から。この個体は階級章や師団章・部隊章など何らのステンシルも加えられていません。チン・ストラップの色調は1944年11月ごろからはOD#3からOD#7へと替えられていきます。


↓本体の塗装はWWII終期でコルク粒・おが屑とのコンビでのダークODが終わり、その後は砂・シリカ粒とライト・グリーン(OD#8(OD319))とのコンビに替わります。この個体はブツブツはコルク・おが屑+ダークOD塗装の上からライト・グリーンを後塗りされたと思われます。ライト・グリーンの下にダークODが見えている部分が多数見受けられます。


↓ではライナー・ヘルメットを見ていきましょう。アウター・シェルと合わせずに、ライナー・ヘルメットだけを単体で被って使用する例は、例えば後方の兵士などに見られました。この個体にはOD塗装がなされていますが、色調についてはアウター・シェルの例と同じく、リペイントされている可能性もあり、もともとどんな色調であったかは精査しないとなかなか分かりません。


↓ライナー・ヘルメットのチン・ストラップ。茶革製で、縁の仕上げ、バックル金具、ヘルメットへの取付け金具に細かい差異があり、もちろん私がすべてのパターンのモノを蒐集することはできませんで、図解するのは無理です。この辺りについても詳しくは他の研究者の方のHPをご参照ください。この個体のバックルは黒塗り・「ロール仕上げクラスプ」で、ストラップは「型押し縁」です。クラスプに錨のメーカーロゴ刻印がありますのでNorth & Judd Manufacturing Company社製である事が分かります。


↓裏側のリベット。お馴染み「DOT」の刻印はUNITED CARR社です。


↓ライナー・ヘルメットを正面から。ここは眺めるだけにします。


↓右側面です。


↓後面です。


↓左側面です。リベットは内装を固定するためのモノです。


↓縁が傷んで繊維がほつれています。


↓ライナー・ヘルメットの塗装法についてもいろいろな方法が試され、採用されました。色調も然りです。




以上縷々見て参りました。
今回ご覧いただいた個体には、階級章や師団章・部隊章など何らのステンシルも加えられていません。それらがあれば一般的にお値段にプレミア分が加算されるのは皆さんご承知の通りです。
私がこの世界(入り口はWWIIUS歩兵装備品)に首を突っ込んだ頃はM-1ヘルメットは大体18,000円もあれば程度の良いものが入手出来ました。「戦艦〇〇の格納庫から未支給・未使用のM-1ヘルメットが発見さる!」と、海軍ペイントのM-1ヘルメットが40,000円で販売されたこともありましたねぇ。内装はODだったような気がします。
今日ではM-1ヘルメット、特にWWII時代のモノは、もうすっかりレア・アイテムの域にあります。価格の高騰に驚きます。

実物から傷んだ内装や部材を丁寧に取り外し、精巧にリメイクされた部材や、僅かに現存する実物デッド・ストック部材等を使い、塗装などもしっかり当時のスペックに則って「レストア」を行う業者さんが近時たくさん出現されました。
リエンナクターには実に良い環境が出来上がっていますが、適度にウェザリングを施せば最早「実物」と見まがう程のモノとなり、「偽物」になってしまわないか常に心配です。見分けられる眼を養わないとカモにされてしまいます。

それでは今回はこの辺で失礼いたします。またお会いしましょう。ご機嫌よう。さようなら。



  

Posted by Sgt. Saunders at 13:20Comments(2)Headgears

2018年04月29日

ミッチェル・パターン・ヘルメット・カバー(Mitchell pattern camo helmet cover)

こんにちは。
さあ、金正恩さん、どうなるのでしょうか。期待していいのでしょうか。ヴィジュアル的にも劇的な南北首脳会談のニュースが駆け巡りましたが、この後どう展開するのでしょうか。
ビクトリーショー行きたかったなー。

さて、季節が暑い時期へ移りつつある中、米軍ファンがサバゲでの装いとして用いやすいのはやっぱりヴェトナム戦争モノかWWⅡ太平洋戦線モノになって来ますでしょうか。
それに合わせたわけではありませんが、今回の投稿ネタはヴェトナム戦争時に用いられた、いわゆるミッチェル・パターン・カモフラージュ・ヘルメット・カバー(Mitchell pattern camouflage helmet cover)です。定刻より2時間余り過ぎての投稿です。

↓これはミッチェル・パターン・カモフラージュ・ヘルメット・カバー(Mitchell pattern camo helmet cover(以下「ミッチェル・カモ・カバー」と略します)を被せたM1ヘルメットです。
https://www.ebay.com/itm/ORIGINAL-LATE-VIETNAM-ERA-M1-HELMET-W-LINER-CAMO-COVER/222935272943?hash=item33e7fa4def:g:jl8AAOSw64ha2lDP#viTabs_0
↑この画像はeBayでbbmilitariaさんが現在出品中のページからの引用です。→こちらがそのURLです。 I hope his/her items sold successfully. bbmilitariaさま、宣伝しましたのでどうぞ引用をお許し下さい。

ミッチェル・パターン(Mitchell pattern)とは何か?という方もおいでかと思いますが、ここでは詳しくは申しません。元々は朝鮮戦争中に開発され、1953年に海兵隊用のシェルター・ハーフ(いわゆるテントです)に用いられたカモフラージュ・パターンでしたが、その後官給の戦闘服には採用されず、今回採り上げるヘルメット・カバーや、若干の装備品にのみ採用されるに留まりました。ただし民間業者がこのパターンを活かしたシャツ、ジャケット等幅広く製造販売しておりまして、兵士が個人レベルでそれらを着用していたというケースがありますから注意が必要です。ヘルメット・カバーとしては1959年に採用されました。

↓米国のナショナル・アーカイブより「Da Nang, Vietnam - A young Marine private waits on the beach during the Marine landing. - August 3, 1965.」。カバーの詳解をするための適切な画像が無いかなーと探していましたらこの画像を見つけました。

ミッチェル・カモ・カバーを装着したM1ヘルメットを着用している海兵隊兵士です。陸軍では冒頭の画像のようにヘルメットの下端部に細いバンドを留めていたのが一般的でしたが、このバンドの海兵隊への支給が始まったのは陸軍よりも大幅に後れてからの事で、この画像のようにバンド無しで、もしくは手近なゴムチューブを加工してバンド替わりに使っていました。またヘルメットそのものについてですが、ライナー・ヘルメットがWWⅡ型であることを示す茶革チン・ストラップが見えます。1965年当時まだ旧式のWWⅡ型のライナー・ヘルメットが使用されていたことが分かります。カバー側面に落書きの一部が確認できます。背中にはヘルメット・カバーと同じミッチェル・パターンのシェルター・ハーフが担がれているのが分かります。

↓では幾つか現物をご覧いただきます。まず一つ目です。カバーはグリーン系蔓草柄(vine leaf)のサマー面と、ブラウン系雲形柄のウィンター面の両面リバーシブル生地を用いた2枚ハギ仕様です。グリーン系の面を表にして装着している例の方が圧倒的によく見られます。水色丸で示しているのはfoliage slit(枝葉孔)で、擬装用の植物等を挿すためのものです。片側に8つずつ設えられています。


赤矢印で示した褪色・摩耗が激しく白っぽく見える部分は、ヘルメットにカバーを装着した時(被せて、下部のヒラヒラをヘルメット・シェルとライナー・ヘルメットの間に托し込んで装着した時)にヘルメットの縁が当たる部分なのですが、そのままではヘルメット本体のチン・ストラップ・ループがカバーの外に出ないので、これを通すために緑丸の所に兵士が各自で入れたスリットがあります。あとでご紹介する2つ目のモノでは、カバー下側の緑弧線で示した裁断上の切れ込みがチン・ストラップ・ループの部分まで深く達していて、そこからループを通せるので、わざわざ切れ込みを入れてやる必要はありません。

↓そのままひっくり返しました。当然ながらこちらにもヘルメット本体のチン・ストラップ・ループをカバーの外に出すためのスリットが入れられています(緑丸部分)。

グリーン系迷彩は薄緑地に濃緑、緑、黄緑と黄土色の葉形と茶色の小枝柄で構成されます。

↓何か文字があります。


↓逆さにすると「BYRNE. M」。M.バーンさんが名前を記したと思われます。


↓裏表を返してブラウン系の面です。迷彩のパターンは雲形で、タン色地に焦茶、朽葉、ベージュ、茶と黄土色の雲形柄で構成されます。


↓ブラウン系の面にスタンプが押されています。

曰く、
COVER HELMET
CAMOUFLAGE
CONTRACT No. 5656
FSN 8415-261-6833
契約番号から見た製造年は1964年とする資料がありますが、自身で直接は確認しておりません。


↓2つ目です。1つ目よりも消耗度が低く、カモフラージュ・パターンがしっかり確認できます。1つ目のモノの説明で触れましたが、裁断上の切れ込みがチン・ストラップ・ループの部分にまで深く達しており、そこからループを通せるので、わざわざ切れ込みを入れてやる必要はありません。ミッチェル・パターンは他のカモフラージュ・パターンが抽象的な模様の組み合わせとなっているのと異なり、「葉っぱ」という具体的な形がそのまま活かされたカモフラージュ・パターンであるという点で特徴的です。

白く線状に褪色・摩耗しているヘルメット縁ラインまで生地の切れ込みがありますね。

↓取り敢えず反対側です。特記事項無しです。擬装用のfoliage slit(枝葉孔)も同じように片側に8つずつあります。


↓ブラウン系の面です。雲形のパターンがよく分かります。


↓スタンプの拡大です。

曰く、
COVER, HELMET CAMOUFLAGE
CONTRACT NO. 8027
FSN 8415-261-6833
100% COTTON
DPSC DIR OF MFG
とあります。資料によれば契約番号8027は1964年から1965年にかけての製造のようです。FSN(Federal Stock Number)は8415-261-6833で、このカバーの管理上の固有の「制式番号」です。上の1つ目のモノのスタンプにはこれが含まれていませんでしたが、「記すまでもないやろ?」ということです。「100% COTTON」、はい、100%コットン製です。但しまたあとで触れますが、コットンといってもその生地の種類は幾つか異なるモノが用いられています。最後の行の先頭の「DPSC」とはフィラデルフィアの「Defense Personnel Support Center」の略で、1965年7月にDSA(The Defense Supply Agency)の衣料繊維・医薬品・需品供給の3つのサプライ・センターを統合して設立されました。DIR.OF MFG.と続きますので、「DPSC製造部局長」てなところでしょうか。 向こうの官庁等の名前を日本語で正確に、日本の外務省が公的にどう訳しているかまで調べるのは困難なので、あくまでも我流での訳ですので参考程度にして下さい。

↓最後3つ目です。消耗度は中程度で、カモフラージュ・パターンもよく確認できます。上の2つ目のモノと同様裁断上の切れ込みがチン・ストラップ・ループの部分にまで深く達しているように見えますが、実は浅い切れ込みの先端部分の生地がチン・ストラップの所まで切り取られてあります。カバーの縁取りのロックミシン・ステッチが途中で消えて、「生地切りっぱなし」になっているのがお分かりいただけますでしょうか。


↓反対側です。擬装用のfoliage slit(枝葉孔)が片側に8つずつあるのはミッチェル・カモ・カバー共通の仕様です。


↓ブラウン系の面です。ヘルメットから貰った錆が若干付着しています。


↓スタンプです。

曰く、
COVER HELMET CAMOUFLAGE
CONTRACT NO. 8116
8415-261-6833
契約番号8116は1965年初めの製造と資料にあります。あとはFSNが記されているのみです。

↓使用されている生地が、今まで見て来た1つ目2つ目のモノが目の細かいダックであるのと違い、サテン地となっています。


↓2つ目のモノの拡大です。コットン・ダックですね。


↓3つ目のサテンのモノ。↑2つ目のダックは比較的堅く、生地を縦横斜めに伸ばそうとしても伸びにくいですが、サテンはその織り方の特性上斜めには伸びます。


↓上がダック、下がサテン。ダックはややゴワ付く感じですがサテンは柔らかい感触です。スペック上の違いはどの資料を見ても無いように思われます。



エッジの切れ込み具合や使用素材の違い、製造時期、また今回は採り上げませんでしたが2枚ハギの合わせ部分の縫製の違い等については現在もいろんなフォーラムで議論されており、体系的な確定的検証が完了している訳ではありませんが、通説、多数説、少数説については皆さんで各自お調べになってみて下さい。嵌り込むともう複雑で頭がこんがらがりそうです。

また、ミッチェル・パターンの「Mitchell」とは何か?という件についても今回いろいろ調べましたが、これも確定判断するのに十分な資料には行き当たりませんでした。海外の研究者によれば「Mitchell」はアカネ科の開花植物の属である学名Mitchella(和名表記:ツルアリドオシ(蔓蟻通し)属)から来ているとされておられる方があります。Wikipediaで「ツルアリドオシ属」の項を見て下さい。その画像を見る限りでは、ヘルメット・カバーに用いられているほどの大きい葉っぱではなく、小さい可愛い葉っぱなので、個人的には「ウ~ン」の域を出ません。

更にそもそも「Mitchell Pattern」と括られて巷間通用していますが、この呼称も研究者によっては「言い間違いである」と仰る方もあり、「グリーン系面は『wine leaf(ワインの品種の元となる葡萄の葉)』もしくは『vine leaf(蔓系植物の葉)』である。」とし、ブラウン系面を指して「『Mitchell』若しくは『clouds pattern』は…」などと仰っておられることもあって、もうどうにも訳が分からなくなって来ました。


現在そこそこの程度であれば$10も出せば比較的簡単に入手できます。ただ近時中国製等の良く出来たレプリカ品が出てきており、実物にこだわる方は注意が必要です。スタンプも精巧に再現され、もはやFakeの域にあるモノもあります。

以上何ともまとまらないまま、今回はこの辺で失礼致します。







参考書籍・サイト等:Mark A Reynosa著「Post-World War II M-1 Helmets: An Illustrated Study」 Schiffer Publishing刊、U.S. Militaria Forum「Mitchell Cover Contract List」、WW2-ETO forum「'Mitchell' camo pattern M1 helmet Cover Contract List, 1959-1977」等々。  

Posted by Sgt. Saunders at 14:17Comments(0)Headgears

2014年11月30日

ERDLパターン・ブーニー・ハット(Hat, Camouflage(Tropical Combat) Type II)

こんにちは。当地大阪はお昼頃は穏やかに晴れて寒さは和らいでいます。ただいま少し曇って来まして15時50分の気温は19度と11月上旬の暖かさだそうです。
また今回も定刻を4時間ほど過ぎての投稿となってしまいました。

さて今回は、自分でも驚きましたが、初めてのユニフォーム関係のネタとなります。
投稿するにあたって、そういえばヘルメットやフィールド・ジャケット、トラウザーズなどの衣類関係を今までネタにしていなかった事に気がつきました。今後ちょくちょくネタにしていきたいと思います。

今回はヴェトナム戦時に使われた俗称ブーニー・ハット(Boonie Hat)のERDL迷彩版である「Hat, Camouflage(Tropical Combat) Type II)」です。
これが世に出る前には、ERDL迷彩ではなくOD色で虫除けネット付きの「Hat, Jungle, with Headnet 」や、それがリップ・ストップ生地で作られた「Hat, Jungle, with Insect Net, Cotton Wind Resistant Poplin Rip-Stop, Quarpel Treated, OG-107」などがあります。
いわゆるジャングル・ファティーグがOD色からERDL迷彩に移行していく流れと同じくして帽子の方もERDL迷彩になったものです。

↓まずは全景。

程良く褪色しています。入手時は使用痕がほとんどない状態でしたが、コレクションとしてではなく「日常用」に普通に使っていましたのでこのようになりました。

↓もう少し真上に近い方から。ERDL迷彩についてはここでは敢えて詳しく触れませんが(初耳のかたはひとまずこちら→Wikipediaをご参照ください。他にもいろんな方のブログやHPがあるので探して見て下さい。)、いわゆるERDLの「グリーン優性パターン」(グリーン・リーフ)の生地が使われています。


↓左側面から。通気のための非常に目の細かい「金属メッシュ・ハトメ」が両側に2つずつ設けてあります。また、ぐるりをODナイロン製ウェブ・テープで巻かれていますが、これはさらなるカモフラージュ用に植物の小枝などを挿すためのものです。

ツバは前身のモノより大きくなり約3インチ幅となり、一層日光や雨を凌ぐのに効果的です。日焼けに弱い私もこの夏野外では手放せませんでした。

↓通気孔たる「金属メッシュ・ハトメ」の拡大。結構大きいので実際蒸れを感じたことはありません。


↓裏面。目がとても細かいです。


↓頭にかぶさる帽体のてっぺんは、前になだらかに傾いています(画像左側が前です)。


↓正面から。

↓後面から。帽体の前と後ろの高さの違いがお分かり頂けると思います。


↓帽体もツバもリップ・ストップ生地製です。


↓内側です。画像の上方向が前、下方向が後ろです。


↓角度を変えての内側です。

上の画像はストロボを焚きました。↓下の画像はストロボなし。帽体のてっぺん部分は生地一枚仕立てなので裏側に迷彩柄は出てませんが、帽体側面は生地が両裏合わせで、ツバも芯を挟んで裏面も迷彩生地を当てて仕立てられていますので迷彩柄が出ています。


↓ナイロン製の顎紐があります。手の上に見えるのは長さ調節用の革製のタブです。


↓このようになっていて・・・、

↓余分な部分の顎紐を引っ張って顎にフィットさせて着用します。

顎紐として使わずに、ツバが耳に被さって聴覚が鈍くならないようにするため、顎紐をツバの縁から帽子の上に廻して、ツバが水平よりも上向きになるようになったところで顎紐を帽体の上で締める使い方をした例もあります。

↓ラベル類は後ろ側にあります。


↓まずこちら。制式名称、DSAナンバー、コントラクト・ナンバー、製造者名とサイズ表記。


↓こちらは注意書きと洗濯方法について。

曰く、「注意 最初のルース・フィットが以後の快適さのために必要です。(←注:洗濯すると縮むので最初は大きめを選べという意)」、「洗濯 部分洗いは生地を傷める。石鹸や洗剤を用いて華氏140度(60℃)の湯で洗うこと。撥水性を回復させるため少なくとも3回はすすぐこと。脱水機にかけるか手で絞ること。中温で乾燥機にかけるか干して乾かすこと。糊づけしないこと。」


この帽子は本当に実用に向いてます。夏の強い日差しの下でも、ツバが広いので頬や耳の後ろ、首筋にかけての日焼けを防いでくれますし、通気性が良いので頭皮が蒸れません。洗濯も楽で重宝しています。ただ、最近はサイズの良いモノがあまり無いのか、値段が高騰しているようです。時々eBayでも見かけますが、レプリカでは?と思われるモノもあるようで注意が必要です。

それでは今回の初の衣類ネタ、この辺で失礼します。また・・・。




  

Posted by Sgt. Saunders at 15:55Comments(0)Headgears