QRコード
QRCODE
< 2024年04月 >
S M T W T F S
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        
オーナーへメッセージ

コレクション ブログランキングへ

2021年08月01日

U.S.ステンレス・スティール・カップ(U.S. Stainless steel Cup)

みなさん、こんにちは。
温暖な気候(JOC曰く)が続いております。定刻を1時間過ぎてしまいました。済みません。

選手の頑張りを称える事と、感染拡大防止の為にオリンピックを中止すべきでは?という考えを表明する事は、何ら矛盾していません。巷間「中止を叫んでたメディアが手のひらを返して競技結果の報道をしている」との何ともチンプンカンプンな事を言う人がありますが、何を言ってるんでしょうかねぇ。同じ手のひらの上で言い得ることです。温暖な気候で頭がおかしくなったんでしょうか。
東京では1日の感染者数が4,000人を超えました。わが大阪の吉村知事は「『このまま行けば(大阪の)医療も間違いなく逼迫する』との認識を示している」んだそうで、まるで他人事のような物言いになっています。


さて今回はいつもより少しあっさりとお届けします。
WW2中に米軍が貴重なアルミ合金の節約のために水筒やカップ、ユテンシル類の新たな材料開発をおこなった結果、ステンレス鋼を材料として製造が始められましたが、今回その中から「カップ」を採り上げます。

↓ステンレス・スティール・カップ(Cup, stainless steel)(ストックナンバー:74-C-317-25)です。かなり程度の良いモノです。カップ本体は表面処理により薄く被膜が出来ていて、いわゆるツヤはありません。


↓「ステンレス・スティール・カップ」ですが、折り畳み式のハンドル(取っ手)は普通の炭素鋼に亜鉛メッキです。


↓ハンドルを展開したこの形ですと、カップの底面に加えハンドルの末端とで大きな三点支持となり、安定して平面に置くことが出来ます。


↓ハンドルに打たれたプロパティ表示、製造者名、製造年の刻印。製造者名はFoley Manufacturing Company、1945年製造。Foley社は食器関係のメーカーとして有名です。


↓カップの縁は玉縁仕上げ(bead)です。アルミ・カップの場合のロール仕上げとは異なります。


↓ハンドルを折り畳んだ状態。スライディング・ロックが下端に落ちています。ハンドルを使う際はこのスライディング・ロックの左右両側の円い爪をハンドル・ヒンジ上端左右両側の四角い爪の向こうに嵌めてハンドルを固定します。


↓折り畳んだ状態の反対側です。ハンドルに穿ってある細長い孔。水平の方の孔(画像では下部)は、カップの中身を温めようと火にかけた時に、ハンドルも熱く熱されて、ハンドルを直に持つと火傷してしまうのを避けるため、ここにフォークの先を通し入れて、フォークを持って火傷せずに火から下ろせるように穿かれた、という事らしいですが、実際やってみるとかなりブラブラしてちょっと危なっかしいです。ハンドルの先(画像では上部)の縦の孔は、ミート・カンやユテンシルと同じく、熱湯等にくぐらせて丸洗い洗浄する際にメス・キットのハンドルなどを通すためのものです。


↓最後に最近(もうやがて半年ほどは経ちますか)手に入れたQuartermasters Corps(需品部)の公式製図面です。と言っても、実は右下の記載の通り、正しくは1950年10月30日付のドローイングです。すぐ上に「1943年8月7日版付図面の9月18日付改訂1の更新」との記載があります。なお、その上のタイトルが「CUP, CANTEEN, CORROSION-RESISTING STEEL(カップ、キャンティーン、耐食鋼)」と、「ステンレス」という語ではなく「CORROSIN-RESISTING(耐食)」となっていることに注意です。


↓この1943年8月版Quartermasters Supply Catalogでも「ステンレス(stainless)」だったのが...


↓1946年5月版Quartermasters Supply Catalogでは「耐食(Corrosion-resistant)」という語に変わっています。ストックナンバーはどちらの版でも同じ「74-C-317-25」です。先ほどの図面上では、これまた微妙に異なる「Corrosion-resisting」と表記しており、意味は同じなのに語が変わっているのは何故なのでしょうか。



以上見て参りました。
ステンレス・スティール・カップは、WW2中製造分もWW2以降製造分も現在では出物は割と多いと思われますが、まとまった数が出るのは少ないでしょうか。ハンドルがワイヤー製になっていく1970年頃までは製造され続けた筈なので、流通量は多いと思うのですが。
カップ単品で売られるよりも、水筒本体とセット、或いはカバーもろともセットで売られることも多いようです。
本個体はもう10年程も前にアメリカのebayで他の商品と併せて購入したモノで、確かUS$10.00程度だったと思います。WW2中モノなら今でしたら国内で2,000円位は必要でしょうか。実例をあまり見ないので分かりません。ヴェトナム戦頃製造分ならもうちょっと手に入れやすいかも知れません。


それでは今回はこの辺で失礼いたします。また2週間後にお会いしましょう。ご機嫌宜しゅう。



  

Posted by Sgt. Saunders at 13:00Comments(0)Canteens

2020年04月19日

US M1967ナイロン・キャンティーン・カバー(Cover, Water Canteen, Nylon, M1967)

みなさん、こんにちは。
新型コロナウィルスの猛威は当初東京や大阪など7都道府県に限り緊急事態宣言を出さしめましたが、遂に緊急事態宣言の対象が日本全国に拡大されるに至らしめました。
医療体制の崩壊が現実的なものになり始めている危機の中で、私のとり得る感染防止策と言えば「手洗い」「手指消毒」「マスク着用」の励行しかありません。たまたま今回のウィルス禍の起こる前に花粉対策用として多めに買っていたマスクも底が見えてきました。品薄の続いている現状では新たに購入することは能わず、使い捨てにしていてはマスク無しで仕事に行かなくてはなりません。洗って再利用することにします。

安倍晋三首相が公式ツイッターに、星野源がインスタグラムに投稿した曲「うちで踊ろう」の動画に自身が自宅でくつろぐ姿をコラボさせた動画を投稿して、ゆっくり自宅で愛犬と戯れる姿を見た多くの方から反感を買ってしまいました。
休業すればその分確実に所得が無くなる人の事に思いを巡らすことなど全く頭の中に無いんでしょうか。休業や外出自粛などは「知人・友人と会えなくなる」程度の影響しか無いぐらいに考えているのでしょう。やっぱりボンボンです。浮世離れしてます。我々が選挙で首相にさせてしまった者の正体です。

さて「3密」を避けて北河内の陋居からひっそりとお送りしますのは、M1967ナイロン・ウォーター・キャンティーン・カバー(Cover, Water Canteen, 1 Quart, M1967(FSN:8465-860-0256))です。
前回の記事でプラスティック製キャンティーン(水筒)本体についてお送りしましたが、今回はカバーについての徒然です。

↓前回の記事のトップ画像と同じ画像です。ヴェトナム戦中の1968年頃からこの組み合わせのキャンティーンが見られ始めます。


↓キャンティーン本体を取り去りました。カバーはOG106ナイロン・ダック製。水浄化剤のボトルを入れる小ポケットがあるほかは、見た目・基本的構造はM1956ウォーター・キャンティーン・カバーとほぼ同じです。正面の縦ステッチがそれまでの伝統的な7本から4本に減りました。このステッチには中に納めるカップのハンドルによる摩耗を減らす目的があります。余談ですが、本体中央部に水平に約2cm幅のステッチが加わっているモノは、このM1967の1972年12月20日付改修版、いわゆる「M1972」です。中のカップの縁による摩耗対策としてナイロン・ウェブ・テープが内側に貼り付けられたモノです。仕様に変更が加えられましたが、FSNの変更はありませんでした。


↓文章より現物をご覧いただいた方がいいですね。左に先代のM1956(Cover, Water Canteen, M-1956(FSN:8465-860-0256))を置いてみました。M1956はコットン製で(1967年頃からは縁取りのテープがナイロン製になったモノが出て来ます)、本体中央の縦のステッチが7本で、フラップのスナップは金属製。右のM1967はナイロン製で中央のステッチが4本、フラップのスナップは当初プラスチック製で、ヴェトナム戦末期頃には強度の問題から再び金属製に戻ります。右下に水浄化剤のボトルを入れるベルクロ留めフラップ付きの小ポケットが新たに設えられました。それまではキャンティーン・キャップと本体とを繋ぐ連結ストラップにボトルをテープ留めされる例もありました。


↓裏面です。こちら側はコットンとナイロンの質感以外の差異は殆どありません。強いて言うならば、M1967のスライド・キーパーの土台のウェブ・テープの末端処理が、ナイロンという特性を活かして熱溶断処理されているので左のM1956のコットン製のウェブ・テープのように末端を裏側に巻き込ませて縫い合わす手数が省けています。左のM1956はDSAスタンプから1963年度予算製、右のM1967はスタンプが掠れて名称が微かに読み取れる程度しか見えません。


↓M1956の内側の断熱材は、1961年頃まではグレイ色のウール混コットンのフェルト製、以降はOG色のアクリル製フリースになります。本個体は後者です。M1956の更に先代であるM1910もフェルトでした。ウール混コットンよりもアクリル製フリースの方が乾きやすい利点があります。過去記事「US 水筒カバーWWII‐VN (US Canteen Cover, WWII~VN)」(←クリックで別ウィンドウが開きます)もご覧下さい。



↓M1967の内側の断熱材は当初からOG色アクリル製フリースです。


↓では細かく見て行きます。フラップのスナップはプラスチック製です。1969年過ぎくらいより強度の問題からM1956のモノと同じ真鍮製のスナップに改められていきます。縁取りのテープは本体より若干明るいトーンのOG色です。


↓水浄化剤ボトル入れ小ポケット。


↓ヨード系水浄化剤の小瓶が入ります。フラップの留め具はベルクロです。ちなみに水浄化剤はWWII後1950年代初頭に塩素系(ハラゾン)からヨード系に替わっていきました。


↓先ほどM1956との対比でも見ましたがM1967の内側をもう一度。アクリル製のパイルが断熱材として貼り付けられています。この断熱材の貼り方はWW1時代以前からのM1910からM1956を経てM1967にも継承されています。


↓底面には水抜き穴はありません。上で述べました1972年12月20日改修版、通称「M1972」では水抜き穴(ハトメ穴)が設えられました。


↓「US」のスタンプは判読が非常に難しいくらいに掠れてしまってます。


↓ここです。ナイロンに施されたスタンプは簡単にフェイドアウトしてしまうのでモノの程度は良くてもスタンプが読み取りにくいのが残念な点です。


↓背面です。2つのベルト・キーパーでピストルベルト等に固定できます。


↓ベルト・キーパーの下側にスタンプがありますが、掠れて判読し辛いです。辛うじて読めるのは上2行がやっと。

1行目:COVER, WATER CANTEEN
2行目:NYLON, 1 QUART
3行目・4行目、ひょっとすると5行目があるかもしれません。DSAやFSNのほか製造者名がプリントされていると思います。


以上M1967ナイロン・ウォーター・キャンティーン・カバーについて見て参りました。
今回のカバーですが、まだ市場にも結構出回っているようで、eBayでもUS$25程度で十分良いモノがあります。プラスティック製キャンティーンとのセットであれば実質US$10前後で手に入ることもザラです。

私の米軍歩兵科一般装備品のコレクション対象範囲はヴェトナム戦までの米軍歩兵科一般兵士ですので、M1967以降のいわゆるLC-1やLC-2装備までは蒐集しておりません。今回のM1967や、ギリギリ「M1972」が付く装備品が私のコレクションの中で一番「最新」という事になります。
その一方で米軍の制式小火器にも興味がありますので、「実銃は持てないのでせめてアクセサリーは…コレクション」の一環で小火器周りの装備品、例えばM9ピストル用のPocket, Ammunition Magazine, 9mmなんかはヴェトナム戦中には出現していませんが、蒐集対象になってます。
米軍のコレクションを始めたのがもう30年も前になるのですが、その当時はまだヴェトナム戦モノは「サープラス(余剰品)」の域を出ていなく、沖縄などの払下げ店などに在庫が豊富にあって価格も低廉でした。今はもう「ビンテージ品」になっておりまして、安いうちに買っておけばよかったなーと思うことがしばしばです。


それでは今回はこの辺で失礼いたします。早く新型コロナウィルス禍が収まるように願いつつ。




  

Posted by Sgt. Saunders at 12:02Comments(0)Canteens

2020年04月05日

U.S. ウォーター・キャンティーン(Canteen, Water, One-quart, M1961)

みなさん、こんにちは。
当地大阪・北河内は桜が満開です。昨日桜並木の河川敷などを歩いて花見を楽しんでまいりました。
新型コロナウィルスの勢いがますます増している中「3密」を避け、手洗い・マスク励行で一生懸命罹患・感染を防いでおります。ドラッグストアなどではマスクの入荷を朝早くから行列を作って待つ人々の姿が未だに見られます。公衆衛生施策やマスクの安定供給も大事ですし、活動自粛要請による経済活動の停滞からの「不況」対策・経済施策も早急に行いませんと「時機に遅れたヘボ行政」と言われてしまいます。そんな中安倍首相が決断したのは「全世帯に布マスクを2枚ずつ戸別郵送!」。なんと素晴らしい!?


さて今回の投稿ネタはU.S.ウォーター・キャンティーン(U.S. 1-Quart Water Canteen, M1961)とのタイトルを付けましたが、詳しく言えば「U.S. 1クォート・ポリエチレン・ウォーター・キャンティーン(FSN:8465-889-3744)」です。「M1961」というのが軍の制式名称なのか、今回調べましたがまだよく分かりません。
米軍のキャンティーン(水筒)で「プラスチック製」のモノと言えばWWII中1942年に出現した、やや黄色味を帯びた透明エチルセルロース製の「Canteen, Plastic (Stock No:74-C-85)」を思い浮かべる方も多いかと思いますが、今回お見せする「プラスチック製」キャンティーンはそれではなく、ヴェトナム戦中に多用され始めましたOD色のポリエチレン製キャンティーンです。

↓ブログのサムネイル画像としてカバー付きでお見せします。本題のキャンティーンから離れますが、このカバーはヴェトナム戦の後期も後期のM1967 Individual Load-Carring Equipmentの一つであるM1967 water canteen cover(FSN:8465-860-0256)(←クリックで別ウィンドウが開きます)です。
キャンティーン本体は金属からプラスチックへ、カバーはコットンからナイロンへと素材が変わっていく丁度その過渡期にヴェトナム戦がありました。と言いますか、ヴェトナム戦がその過渡期となるべき必然性を有していたと言うべきでしょう。WWII中のプラスチック製キャンティーンは金属材料の不足を補う「代替素材」の観点からの産物でした。


↓はい、キャンティーン本体です。基本的形状はそれまでのM1910等の金属製キャンティーン(←クリックで過去記事が別ウィンドウで開きます)と変わりません。容量は1クォート(約946㎖)。キャップと本体とを繋ぐ連結具もすべてポリエチレン製です。年代が下ると色調はもっと茶色味が強くなります。いつ頃かは何とも申せません。偏に調査不足です。


↓表側上部に曰く、「水専用。キャンティーンを裸火やバーナープレートに近付けてはならない。」熱による変形に注意せよという事に他ならないです。その注意書きの上に「DM」と、使用者による刻銘があります。


↓背面です。こちらの上の方にも「DM」との刻銘があり、下の方にも赤い筆記具で「D???… MIL??…」と書いてあります。


↓飲み口とキャップの拡大です。オーソドックスなスクリューキャップです。キャップには縦に10本の滑り止めが付けられています。


↓真上から。キャップと本体、連結具の色調が微妙に異なっていますが、よくある事です。


↓キャップと本体を繋ぐ連結具の帯部分は少しオフ・センターですね。今更ながら気付きました。〇=〇ではなく、〇⁼〇ですね。


↓底面です。表側と背側の前後合わせで作られています。上に「U.S. 1968」と、1968年製であるとの表示と、下に「横菱の中にZARN」のメーカー・ロゴ。ZARN社について調べてみましたが、まだ良く分かっていません。1990年代の製品にもその名を認めます。右側の「2」は単なる製造ロットか何かだろうと思います。


↓カップに収まるのも従来からのモノと同じです。このカップについてもまたいづれ採り上げます。



以上、いつも以上に(シャレじゃないですよ)駆け足気味で見て参りました。
このプラスチック製キャンティーンのスタイルはLC-1、LC-2時代へと若干の改良を経て引き継がれ、現代でもその進化形が使用され、一般向けにも販売されていたりとかなりメジャーな存在になっています。
サープラス品としてもまだかなりの量があるように思えますが、製造年を1970年より前に絞って言えば「ビンテージ品」になってきているのも事実で、価格もそれなりに高騰しつつあります。
一方で50年余りも前のモノが非常に綺麗な状態のまま残っているという「実物」という触れ込みで販売されているモノも目にしますが、果たして「ホンモノ」なのか、ちょーーっと疑ってしまいます。

それでは今回はこの辺で失礼いたします。ご機嫌宜しゅう。


  

Posted by Sgt. Saunders at 12:00Comments(0)Canteens

2017年09月10日

M-1910水筒とステンレス水筒(M-1910 Canteen & Stainless steel Canteen)

こんにちは。
当地大阪では昼間はまだ最高気温が32、3度くらいにはなりますが、朝晩は随分涼しくなりました。
このまま秋になってくれたらいいんですけど、そうはいかないのが浮世の習い。またしつこく残暑が戻ってくるのでしょうね。

9月一杯はクールビズで、勤めも半袖のワイシャツ姿で良いんですけど、行き帰りの電車の空調加減が車掌さんの体感温度次第なので、車掌室は窓が開けられて風を入れて涼しくできても、乗客のいる車両は窓は開くことなく、朝の陽射しがサンサンと入ってくる頃は、車内がまるでサウナの様になっていることがあります。気配りのできる車掌とそうでない車掌では全然快適度が違ってきます。

さて今回採り上げますモノは、米軍が第一次大戦から使用し、その形状は現在まで受け継がれている水筒(キャンティーン:canteen)です。
↓まずこの画像をご覧ください。両方とも「M-1910キャンティーン」です。左は1918年製造でアルミ製キャップ付き、右は1945年製でベークライト製キャップ付きのモノです。容量は1クォート(1/4ガロンまたは2パイント:0.9463ℓ)です。

WW1からヴェトナム戦争中に樹脂製のモノに替えられるまで使用されました。

↓立てて背面上から。制式名称は「Canteen, M-1910」、ストック・ナンバーは74‐C-80です。製造時期により細部が異なっていますが、分類上この2つは「同じモノ」です。


↓左のモノは本体が前後合わせ製法、右のモノは本体が上下合わせ製法で作られています。キャップをネジ留めする口金部分は、本体の口にネジを切ってあるのではなくて、ネジ部品が口金部分の上からすっぽり嵌め込まれています。


↓左のモノ、第一次大戦から採用されたアルミ製キャップと、本体とをつなぐチェーン。キャップ側面には滑り止めのための平目ローレットが刻まれています。チェーンは洋白(ジャーマン・シルバー)製です。


↓一方右のWW2時製造分には黒色ベークライト製のキャップと、成分比の若干異なる洋白製のチェーン。


↓左の第一次大戦時製造分の本体背面の刻印。「9」はロット番号?「U.S.」、「ACA 1918」。ACAはThe Aluminum Company of America社 の略です。製造者等の刻印は背面に打たれる場合のほか、底部に打たれることもありました。The Aluminum Company of America社は、現在はAlcoa Inc.となっており、アルミニウムと関連製品の生産加工販売会社としてニューヨーク証券取引所に上場しています。


↓右のWW2モノの底部の刻印。「U.S.」、「R.S.E.」、「1945」。「R.S.E.」はRepublic Stamping and Enameling Co.の略です。現在もいくつかのブランド名で家庭用調理器具・業務用厨房機器などの製造を行っています。


↓もう一つ一次大戦中製造のM-1910キャンティーンを持ってきました。左のモノはデッド・ストックとして入手したモノです。まだ表面の艶消しのためのフロスト加工がかなり残っています。


↓背面側を斜め上から。見た感じ「未使用」という印象です。


↓お腹側です。


↓背面側。


↓デッド・ストックの方の刻印。ロットが「7」であること以外、内容はさっき見た右のモノと同じです。


↓底面も特に違いは無いですがついでに…。


↓さて、やっとステンレス水筒の登場です。左がステンレス水筒(Stainless steel Canteen、ストック・ナンバー:74‐C-87)です。右のモノと同じく上下合わせ製法です。右は冒頭で見ましたアルミ製上下合わせのモノ。ベークライト製キャップは共通です。


↓左のステンレス水筒では口金はアルミ製のモノの様に別部品とはなっておらず、本体からの続きで口金が成形され、且つキャップを締めるためのネジが直接プレスされています。また、本体に熔接された小さいループにキャップから伸びるチェーンのリングが通されています。


↓右のアルミ製のモノは口金部品の根本で真鍮ピンで固定されています。


↓ステンレス水筒の方のキャップ。上面に「U.S.」の凸モールドがあります。このモールドがあるモノははWW2最末期あるいは戦後製造のモノなのではないかと思っています。


↓ステンレス水筒の底面の刻印です。「U.S.」、「VOLLRATH」、「1944」。VOLLRATH社は現在The Vollrath Company, LLCとなり、業務用厨房機器・家庭用調理器具・什器製造メーカーとして頑張ってらっしゃいます。



以上駆け足気味で見て参りました。
現在日本ではアルミキャップのモノの入手はなかなか難しいですが、アメリカでは比較的安価で入手できます(40ドルも出せばかなり良いものが手に入ります)。ベークライト製キャップ付きのモノなら更に安価で手に入ります。

私がWW2米陸軍兵士装備のコレクションを始めてから、この水筒本体の入手は意外に簡単だったことをよく覚えています。
最初に本体を入手したのは地元大阪・アメリカ村の「ナニワ・ガラクター」での事でした。今回ご紹介したR.S.E.刻印のM-1910がそれです。価格は当時(30年前)2,000円でした。現在ではお店によってはものすごい値段になっているようですが、海外、特にアメリカでの市場価格を見れば適正価格というのは自ずと分かってきます。個人輸入の場合でも税関を通すのに困難はありませんし、関税も値段にすると苦にはならないレベルです。と言うかこんな水筒一個だけだと通常は課税されることはありません。
一方、カバー(特にカーキ色)は高価で、出物も少なく、私が入手したのはコレクションを始めてからかなり時間がたってからでした。

まだまだ国内でのミリタリーモノ蒐集という趣味がメジャーと言えるレベルには達していない現状に鑑みれば、海外のミリタリーアンティーク店の価格に比べて国内のショップでの売り出し価格が高くならざるを得ないのは理解できます。関税・通関料等々が掛かるのも理解できますが、あまりにも「盛って」いる売り出し価格を見ると、足元見過ぎーと突っ込みたくなります。

それでは今回はこの辺で失礼します。また次回お会いしましょう。














  

Posted by Sgt. Saunders at 08:00Comments(0)Canteens

2015年12月27日

US 水筒カバーWWII‐VN (US Canteen Cover, WWII~VN)

こんにちは。
歳末の大掃除の合間を縫って何とか上梓します今年最後のネタは、米軍によりWWIIからヴェトナム戦に至るまでに使用された水筒カバーです。

ひと言で申しますと、その基本的形状はほぼ同じままで推移しています。もっとも水筒本体の形状がほぼ同じで推移しているのですから、それを保護するカバーの形状も大きく変化する余地は少ないからなのですが。

↓左がM1956、右がM1910です。


正式には左が「Cover, Water Canteen, M-1956」(『Water』が省略されることもあります。)、右が「Cover, Canteen, Dismounted, M-1910」です。「Dismounted」とは直訳すれば「降ろされた」ですが、これは即ち「乗馬部隊」用でなく、馬から降りた「徒歩部隊」用である、ということを意味します。WWIIより前、まだまだ馬が移動手段として多く用いられていた頃、機械化されてゆく過渡期に馬に乗った部隊「Mounted」と、馬から降りた部隊「Dismounted」のそれぞれに適した装備が考案・供用されました(水筒カバーのみならず弾薬ベルト等も)。

↓そのDismounted部隊用のモノについて。画像は補給部発行の装備品カタログの中の1ページ(当ブログではおなじみ、1943年8月発行の「Quartermaster Supply Catalog 」Section 1 - Enlisted Men's Clothing and Equipment - )です。

右側に縦に水筒カバーが並んでいます。一番上が「Cover, Canteen, Dismounted, M-1910」、次が「Cover, Canteen, Mounted, M-1917」、下がその後継「Cover, Canteen, Mounted, M-1941」です。まぁ後継と言っても上のM-1910に専用ストラップを付けただけのようなモノなのですけれども。この専用ストラップは現在でも単体で売られているのをよく見ます。下2つは馬の鞍嚢(サドル・バッグ)に取り付けるためのスナップ・フックの付いたストラップが備えられています。

↓話がちょっと横に逸れたのでもう一度この画像を。本体はコットン・ダック、縁取りがコットン・テープ。M-1956は1960年後半ごろには縁取りにナイロン・テープが用いられるようになります。

縫製パターンはどちらも同じです。違いはフラップを留める金具が右の旧式の「Lift-the-Dot」から左のスナップ・ボタンへと変わったことくらいです。「US」スタンプは、左のM-1956では「U.S.」だったり「US」だったり、またフォントもゴシック体やCentury体のようなヒゲのあるものであったりとさまざまです。一方のM-1910ではCentury体ようの、省略の「.」付きの「U.S.」がほとんどです。ブリティッシュ・メイドのモノや、US製のごく一部のモノに例外的にゴシック体が用いられていることもあります。

↓裏面です。左のM-1956カバーはM1956 Load-Carrying Equipmentシステムのうちの一つで、2個のスライド・キーパーを用いてピストル・ベルトに装着します。一方右のM-1910カバーはダブル・ワイヤー・フックを用いてピストル・ベルトやカートリッジ・ベルトの下端のアイレット(ハトメ穴)にぶら下げる形で装着します。左のM-1956は「ベルトにくっつける」、右のM-1910は「ベルトにぶらさげる」、という感じで、身体への装着位置で言えば、上下に7~8cmほど違ってきます。

左のM-1956の下部のスタンプ「COVER, WATER CANTEEN, M-1956〈改行〉DSA 1-1148-63-E〈改行〉FSN 8465-577-4926」。(DSA、FSNについては当ブログ内で以前採り上げていますので検索してみて下さい。)
右のM-1910にはスタンプが辛うじて「ここにあったかな」程度にしか残っていません。

↓これがその辛うじて残っている部分。「~Co.」と、製造者の名前の最後部だと思います。


↓M-1956の内部。カップを入れた状態です。断熱材として化繊のフリース(時期によりフェルトの場合も)が内張りされています。


↓M-1910の内部。ウール・フェルトが内張りされています。


今回M-1910はカーキ(o.d.#3)だけしかお見せしていませんが、OD色(o.d.#7)のモノは朝鮮戦争を経てヴェトナム戦初期頃まで使用されました。またM-1956は上の説明にもありましたが、縁取りにナイロンが使われるようになった後、そのナイロン素材による装備品体系の再構築となるM-1967装備シリーズに取って代わられました。M-1967カバーについてはまた改めてご紹介したいと思います。(※2020年4月19日付記事「US M1967ナイロン・キャンティーン・カバー(Cover, Water Canteen, Nylon, M1967)」(←クリックで別ウィンドウが開きます)もご覧下さい。)

↓M-1910だけ、これらの画像を。これを手に入れるのにはずいぶん苦労しました...。


大昔私がWWII・US装備のコレクションを始めた時、このカーキの水筒カバーはなかなか蒐集できずにいました。
出物が少なく、また、出たとしても可処分所得の乏しい身ではなかなか手が出ない価格でした。ある時大阪の某有名ショップの〇〇〇〇さんが良品のカーキ色のカバーを破格(確か4,800円程)で雑誌広告に出された時に飛び付いたのですが、注文が殺到したのか次回入荷待ちとなり、その後結局半年ほど待って、「お待たせして済みませんでした。その代わり新品同様です。」としてやっと送ってきてくれたのが、どう見ても近時製造されたレプリカとしか思えないシロモノで、「こんな有名な店でもこんなことするんだ」と落胆したことを思い出します。今でもまだ持ってます。


今年最後のネタは如何でしたでしょうか?準備不足で若干やっつけ仕事気味になってしまったのは申し訳ありません。
ではまた新年お会いしましょう。さよーならー。


  

Posted by Sgt. Saunders at 15:50Comments(2)Canteens

2015年09月20日

WWⅡ米海兵隊の水筒カバー(WWⅡU.S.M.C. Canteen Cover )

こんにちは。
「シルバー・ウィーク」2日目です。
当地大阪は、朝晩はヒンヤリすることが多くなってきました。
私儀、ちょっと体調に変調を来たしまして、ひっさし振りに病院のお世話になりました。と言っても風邪の類ではありません。通院は2週間おきでよく、薬でボチボチ治して行く途上です。

いわゆる安保法制が参院でも可決され、成立しました。「国民の安全を守るため云々・・・」というのが立法趣旨だと安部総理は説明しますが、私は懐疑的です。隣国がわが国の固有の領土を現実に不当に占拠し、あるいは占拠しようかという勢いを示威している現在、この法律・法制が、それらに対して如何程の抑止効果をあげることが出来るのか、甚だ疑問です。


さて今回は私の守備範囲からは少し外れるものの、最低限押さえておきたいなと蒐集しましたWWⅡUSMC(United States Marine Corps:米海兵隊)の水筒カバーの通称クロス・フラップバージョンです。
海兵隊の水筒カバーには、大戦初期まで製造された、通常の陸軍用のM-1910型と外見は非常に似ていながら、背面のワイヤー・ハンガーが真鍮ではなく鋼製、その位置が陸軍のモノよりより上の方に付けられている、内張りが無い(これには例外がありますが)といった特徴のある独自のM-1910型や、大戦中期頃からは今回採り上げます「クロス・フラップ」型が、また、ワイヤー・ハンガーの取り付け位置が高くなっているのと、正面に「USMC」のスタンプがあるほかは陸軍のM-1910と同じ造りのモノなど、幾つもの種類がありまして、今回のモノはその内のほんの一例です。

↓背景のタン・カモに溶け込んでやや見にくいですね。すみません。フラップが交差しているからクロス・フラップです。


↓背面です。背面からだと外見は一般的なM-1910カバーと良く似ています。


↓陸軍のM-1910と並べました。全然装いが違います。パイルの内張りが無い分スマートです。


↓後ろ姿は、右のM-1910の「襟」にはプリーツがある点、ワイヤー・ハンガーの位置が違う点のほかは同じように見えます。


↓底面です。本個体のパターンのものとは別に、この底の部分に直径が2.5cm程のドレイン・ホール(水抜き穴)が穿ってあるパターンのモノもあります。残念ながら未入手です(「水抜き穴」ではなく、この穴に水筒の口を差し込み、カバーをあたかも漏斗(ろうと)として水を移し替えるために使うのだとする説明を目にしますが、私は眉唾に思います(「カバーを漏斗にして入れられた水」なんて衛生的に?)。『そのように使われることもあった』という説明ならまだ分かりますが、『そのためだけに設えられた』のではないと思います)。


↓フラップを外しました。中身の水筒は陸軍が使用したモノと同じです。海兵隊専用というモノはありません。

アルミ製キャップ付きの水筒は昨今価格が高騰して来てはいますが、まだ比較的に入手しやすい方だと思います。

↓まずカップを入れ、そこへ水筒を収納するのも陸軍と同じです。


↓陸軍のM-1910カバーと異なり、内側に保温用のパイル張りはありません。これは恐らくパイル張りによって得られる保温効果というメリットよりも、海水等が浸み込んで重くなってしまうというデメリットの方を重く見たからだと思います。


↓カップの縁が当たる部分は生地が二重になっています。本体はコットン・ダック製。フラップの留め具は言わずと知れた「Lift the Dot」。


↓上の画像のモノと下の画像のモノの違いがお解り頂けますか?


上は男性兵士用、下は女性兵士用...というのは嘘です。左前・右前でもどちらでも構いません。でももし皇軍兵士が使用するならば間違いなく験(げん)担ぎで右前にするでしょうね。


もう十数年ほど前になりますでしょうか、アメリカのサープラス店のHPでこのクロス・フラップが売られているのを見た時は「海兵隊装備かぁ。まぁ、いつかは最低限一式揃えたいけど陸軍の装備すらまだ未完成だしなぁ。財政的に無理だわなぁ」と考えながら値段を見ると確か$15くらいで、「なぬ!15ドル?買お買お」と、即買いしました。このサープラス店はいわゆるコレクター相場を知らなかったらしく、安価に投げ売りしてました。
アメリカ本国のサープラス店ではこんな感じの「相場」知らずの価格設定がよくありましたが、今やeBayなどで田舎のサープラスショップでも相場が容易に分かる時代、そのようなお店・品物を見つけるのはとても難しくなりましたね。
海兵隊装備は資料も少なくて未知の分野が広すぎます。私にはとても手が回りません(財政的にも)。

それからUSMC絡みで思い出したのでご参考まで。USMCのC(Corps)ですが、くれぐれも「コープス」と発音しないようにご注意ください。「コープス」だと「死体(corpse)」の音になります。

今回は短いですが、お彼岸のお墓参りにも行かなくてはなりませんので、これにて終わります。
それでは、また...。



  

Posted by Sgt. Saunders at 11:08Comments(0)Canteens