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2015年02月15日

ドイツ軍M30ガスマスク(3)(Gasmaske 30 und Tragbüchse(3))

こんにちは。ただいま午前10時過ぎ。当地大阪は曇り空で、日中は気温が12度まで上がるそうなんですが、なーんか寒いです。
定刻よりちょっと早い投稿です。

さて前回に続いて、ドイツ軍の「M30ガスマスク(Gasmaske 30 und Tragbüchse)」について、今回が最後の探索となります。
今回はレンズ部分の解剖と、マスク本体と併せて携行された皮膚解毒剤に触れたいと思います。


まずは投稿記事のアタマ用の画像を置きました。

↓まず、内側からバラしていきます。画像は内側の眉間部分です。

「bwz」は前回の最後にも出ましたがAuer社のオラニエン工場のコード。 左側の防曇ディスクの縁に前々回(1)で触れました「Innenseite(『内側』)」の文字が見えます("I"が切れていますが)。

↓「Innenseite」の文字が内側から読めますので、裏表正しく取り付けられていることが分かりますね。

「byd」はHeinrich & Bernhard Drägerwerk社製の意。1944年製です。

↓防曇ディスクを固定しているリムを外します。リム自体がバネになっていて少し力を加えると外れます。


↓取れました。


↓こんな作りです。


↓レンズの内側に固定されていた防曇ディスクが外れました。


↓面体をひっくり返して、こちらは面体外側のレンズの枠部品です。


↓ネジ式になっていますので、普通に左回しで外します。


↓手で回してますが、本来的には4か所に設けられた穴凹に専用工具を嵌めて締め弛めします(しっかり締めないと気密性が保てませんので)。


↓外れました。


↓枠部品の刻印。「hkb41」は 金属製品製造会社であるJ. Weisensee 社1941年製の意。


↓座金とプラスティック製レンズです。


↓プラスティック製レンズの表記。「bwz 11. 1941」、またしてもAuer社のオラニエン工場のコード。


↓レンズの厚さは約1.5mmほど。


↓スカスカになりました。


↓さて、茶色いベークライト製容器入りの「皮膚解毒剤(Hautentgiftungsmittel)」。マスタード・ガス等の水膨れを起こすようなガス攻撃に対応するもので、カルシウムハイポクロライト(次亜塩素酸カルシウム)錠剤が10個入っています。Losantin Tablettenという名の方が通りが良いようです。

画像では右、ケースの上から15mm程がキャップ部で、本品ではそのキャップ部分に白いテープを巻いて密封しています。未使用品であればこのテープの色で製造年が分かるのですが、手元の資料ではどうやら「白」は1944年か1945年製になるかと思われます(40年なら赤、41年なら黒、42年は黄緑、43年は黄色であることははっきりしているのですが)。ただ、この個体に巻かれている白テープは、次の画像の説明にもありますが、一度開けた後に手近にあったテープを使って再度栓をした時のものかも知れません。たまたまそれが白いテープだっただけかも。容器の大きさは75mm×25mm×15mmほどです。

↓ラベルの拡大です。

曰く、
皮膚解毒剤
外用にのみ用いること!
眼や口や陰部に塗らないこと!使用後は粘着テープを使って再びケースを密栓すること。

↓裏面。


↓その拡大です。

曰く、
使用法:錠剤をくぼめた手のひらで細かくすりつぶし、ほぼ同量の水か唾液でペースト状にする。汚染部分にペーストをやさしく数回擦り込む。約10分後洗い落とすか拭き取る。(下から2行目左端、小文字のLが綺麗に剥がれて「eicht」になっていますが本来は「leicht」です。)

↓ケースのキャップ部の型押し刻印、「I.G.G」と「1942」。残念ながら「I.G.G.」がどこの製造者かまだ分かりません。1942年製であるのは明白ですけど。


↓底面の刻印。上と同じです。


因みにこの解毒剤は制服上衣の胸ポケットに入れて携帯するようマニュアルで指示されています。
また、この解毒剤と並んで、1941年からはオレンジ色の軟プラスティック製のボトル入りで、小さい消毒済綿布とともに茶色ベークライト製の四角形ケース(縦90mm横80mm厚さ16mm位)に収められた解毒軟膏(Hautentgiftungssalbe)が支給されました。こちらはまだ蒐集していません。水で溶く作業が無くなって使いやすそうです。


以上で3回に分けてお送りしましたドイツ軍の「M30ガスマスク(Gasmaske 30)」、如何でしたでしょうか?
ドイツ軍モノは至れり尽くせり感が堪りません。小物一つ部品一つとっても、工夫あるいは考え尽くされていて「妥協」の跡が見えないのが魅力です。
で、まぁ今回もドイツ語辞書と首っ引きで色々訳しましたが、学校で第2外国語をドイツ語にして良かったなぁと思います。もう既にその時ドイツ軍モノに興味があったからなのですが。分離動詞とか強変化・混合変化なんかが出てきても何とか大丈夫でした。




今後は今回のガスマスクに限らず、大雑把な構造や仕組みについては世界中の他の諸兄方が既に詳しくご紹介されておられますので、そこでは触れられていないような、あんまり注目されないような、あるいは個々の品々固有の特徴についての紹介に重きを置いて行こうと思います。

それでは、また・・・。


  

2015年02月01日

ドイツ軍M30ガスマスク(2)(Gasmaske 30 und Tragbüchse(2))

ジャーナリストが人質にされ殺されるという理不尽な事件に言葉がありません。交渉過程がどうのこうのということもさることながら、ジャーナリストを捕らえ殺害するという行為そのものを最大限に非難します。公式には未確認ですが、恐らく不幸にして殺害されたと思われます後藤さんのご冥福をお祈りし、ご遺族の方に深い哀悼の意を表します。

 


こんにちは。
当地大阪は現在13時30分気温6℃。寒いです。
メールを下さったOさま、近々あらためてそれらについて米軍(US)カテゴリーで触れてみたいと思います。ありがとうございます。

さて前回に続き、ドイツ軍の「M30ガスマスク(gasmaske 30 und Tragbüchse)」について見て参ります。

↓M30は内側がゴム引きになっている綿布製の面体を持つWWⅡドイツ軍のガスマスクです。


↓口吻部の吸気フィルター缶を外して面体を拡げました。

面体は緑の強いフィールド・グレイ(Feldgrau)色、眼鏡周り・口吻部の金具の塗装は灰色の強いフィールド・グレイ色です。因みにM30型では見たことがありませんが、総ゴム面体のM38型では、金具が群青色で塗装されているモノを見ることがあります。当初「なんで青いのか?」と疑問に思いましたが、ちゃんと意味がありました。物資不足が進み、非鉄金属を節約するため鉄(鋼)を使うようになり、「この部品は鉄ですよ」と知らしめるために青で塗装したのでした(コンパスを使うときなんかに注意しないといけないため。1943年7月5日付陸軍総司令部通達による。)。

↓吸気フィルター缶はネジ込み式になっています。ネジの奥に黒い吸気弁が見えます。画像では上側に見える、小さい穴がたくさん開いている部分は排気口です。M30型でも初期のモノは、この小穴が沢山開けられた部分が無くて縦に粗い格子状になっています。また、それに本画像にあるような小穴パンチ部品が後付けされたモノがあります。本品はM30型では最後期のモノで最初からこのようになっています。この口吻部部品は後継のM38型ガスマスクにも引き継がれます。


↓吸気フィルター缶に施されたスタンプ・刻印など。たくさんの表記が見られます。

画像で3時の位置の「FE41」は吸気缶(フィルター)の型式番号です。「FE」とはFiltereinsatz(「挿し込み濾過器?」)の略で、大戦中は大きく分けてFE37、FE41、FE42の3タイプがありました。FE37Rという熱帯地方用のモノもあります。その横の△印スタンプの意味はまだ判りません。「長方形枠の中に国家鷲章と並んでWaAナンバー」は次の画像で拡大します。9時の位置の「Fe」は「鉄の」という意味の「Ferro」の略です。やはりこれも「鉄」を含んでるので注意せよと促すための表示です。10時の位置には「fcc」の文字。ザクセンのバイアーフェルトにあったNier Hermann Metallwarenfabrik社製であることを示す製造者秘匿コードです。ガスマスクフィルターの他にも弾薬や手榴弾の部品等も製造していました。現在も「Feuerhand」ブランドで有名な、元々はランタンの製造会社です。12時の所には「2662」のスタンプ。

↓国家鷲章とWaAナンバー702。ところが参照可能な資料の中には「702」が「fcc」であるとするものはありません。


↓Nier Hermann Metallwarenfabrik社の製造者秘匿コード「fcc」とロットナンバー?「2662」のスタンプ。


↓フィルターの吸気孔。前身のFE37までは真ん中の穴から見えているシャワーヘッドようの部分が露出していましたが、FE37RからはこのFE41のようにカバーが被さるようになりました。


↓口吻部の拡大。「btc」の刻印と「〇に41」の凸モールド。「btc」はMeschendeのHonsel Werke社のコード。フォルクスワーゲンのエンジンブロックを製造しましたし、現在もMartinrea Honsel社として自動車のエンジンブロックなど軽金属製品の分野では著名です。「〇に41」は恐らく1941年製を示していると思います。


↓面体内側から。内側は青灰色のゴム引きです。面体固定用のハーネス、額・こめかみ・頬・顎との気密性を保つために密着するように張られた茶色の革(スエード)、頬・顎の大きさに合わせて調節するためのストラップが見えます。


↓その調節ストラップの拡大。エラの張った人、頬のこけている人、色んな人に対応できます。

上のカマボコ断面部分が吸気孔で、下の円形部分が排気口です。

↓排気口のネジ止めの黒い金属メッシュカバーを外しました。


↓こんな部品です。


↓排気口の部品精度は高そうです。直ぐ下に見えているプラスチック板は排気弁です。


↓その部品の拡大。1939年製を示すと思われる「39」と、いま一つ鮮明でないメーカーロゴのような意匠の刻印。


↓吸気孔のゴム部品の左下の「41」(1941年製)と、


↓右下の「bwz」はAuer社のオラニエン工場のコード。同じAuer社でも例えばダンツィヒ製造だと「gnh」です。Auer社は他にも数多くの工場がありましたので、製造者秘匿コードも沢山あります。


今回ボリュームが少ないですが、次回レンズ部分と皮膚解毒剤に触れて終わりにする予定です。
それでは、また・・・。