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2015年07月26日

M15 グレネード・ランチャー・サイト(US M15 Grenade Launcher Sight)

こんにちは。
すぐ近くの公園から夏を謳歌する蝉の元気な鳴き声が何十何百と重なり合って間断なく聞こえてきます。四季の中で夏が一番良いんだと洗脳されてしまいそうです。

さて、以前拙稿ライフル・グレネード(Rifle Grenades)でグレネード弾の方について触れましたが、今回はそれを射出する際に必要な擲弾発射器用照準器、M15グレネード・ランチャー・サイトを採り上げます(正しくは『ローンチャ―』ですが)。
実戦への投入は遅く、1943年8月頃です。それ以前の対人攻撃に際してはこのような照準器などは特に必要なく、銃を肩付けして直接照準を合わせたり、また、歩兵向けのマニュアルにおいても、肩付けせずに地面に銃床を固定して射出する場合に射角が30度・45度・60度となるような目印をスリングに付けておくよう指示されている程度でした。しかし、対戦車グレネードの必要性が出てきた大戦後期になると、「大体の目安」では直接戦車に当てる事が難しいため、あらためて新しい照準システムの必要性が発生しました。これに対応して制式化されたのが今回のM15グレネード・ランチャー・サイトです。

↓まずこれを。

右上から時計回りにキャリング・ケース(CASE, CARRYING)、M15グレネード・ランチャー・サイト本体、座金と銃への取付用木ネジ、説明書/射程表シート。

↓本体を観る前に、まず説明書/射程表シートから。

こちらの面にはサイトを銃へ取り付けるための座金の銃への固定方法と、取り付け後の微調整の方法について書かれています。イラストはM1カービンですが、このM15グレネード・ランチャー・サイトはM1カービンの他M1903小銃、M1903A1小銃、M1903A3小銃、M1小銃に使えます。

↓銃への座金の取り付け方、座金へのサイト本体の取り付け方・・・、


↓座金をストック左側面(画像はM1カービン)に木ネジで固定します。ストックへの取り付けネジのネジ穴の位置を定めるのには専用の治具(Locating Jig)があります。

MGC製のM1カービンに生贄になってもらって座金を取り付けたのは、もう10年以上前です。


↓座金の切り欠きにサイトのクリック・スプリングを合わせて取り付けます。


↓続いて水平方向のゼロ・インの方法と・・・、


↓垂直方向のゼロ・インの方法が書かれています。

文末には「機密(RESTRICTED)の文字があります。現物の構造を見ればおのずと分かることなので、こちらの面はそれほど機密性は無いと思うのですが・・・。

微調整の必要がある時このネジで調整します。


↓シートを裏返すと射程表が載っています。


↓まず、「M1グレネード・アダプターを付けたMkⅡ 破片手榴弾」の射程表。
左から「射角」、「ランチャーのポジション」、「各銃(M1903小銃、M1小銃, M1カービン)を用いた場合の射程」が表になっています。
例えば「M1カービンで35ヤード先に撃ち込もう」と思えば、表の最上段にある通り、「射角を45度」にして「ランチャー・ポジションは6」にすれば良いことが分かります。

表の中ほどに「手榴弾の遅延時間(4.0から4.8秒)よりも飛翔時間の方が長くなるので、これらの射角とポジションでは撃ってはならない」との注釈がありますね。榴弾が放物線を描いて飛んでいる間に空中で爆発してしまうためです。また、最下段には「M7榴弾補助カートリッジ」を用いる場合の射程が載ってます。これを使うことで飛距離を伸ばすことができます。

↓2つ目は「M17破片瞬発ライフル・グレネード弾」の射程表。

ここでも下の3行が「M7榴弾補助カートリッジ」を用いての射程になってます。

↓3つ目は「M9A1対戦車グレネード弾とM11A1およびM11A2訓練弾(対戦車‐低射角射出)」のモノ。

これも下の3行が「M7榴弾補助カートリッジ」を用いての射程になってます。

↓最後の4つ目は「M9A1対戦車グレネード弾とM11A1およびM11A2訓練弾(対人‐高射角射出)」のモノ。

表の下には「注意」として、
1.M7榴弾補助カートリッジを用いる際は、ライフルを肩付けして撃ってはならない。射手に重大な怪我をもたらす可能性がある。
2.M7榴弾補助カートリッジをカービン銃で使用するのは、射程の増加が必要不可欠な非常時においてのみとすること。使用の際は銃床の破損を防ぐため、床尾を横に倒し、サンドバッグの支えか同等のものを台にして射出すること。
3.榴弾発射の際は実弾を使わないこと

「3.」は恐ろしいですね。でも実際には沢山あったのではないかと推察します。私がやってしまいそうな気がします。
最下段に「機密(RESTRICTED)」とあります。こちらの面の情報を機密扱いとすることは納得できます。

↓さてサイトの方を詳しく見ていきましょう。上がサイト本体、下は座金と銃への取付用の木ネジ。

木ネジを使って銃のストックに取り付けるというところが、「銃が鋼と木で出来ている時代」を感じさせてくれます。

↓サイト本体の下面に「SIGHT, GRENADE LAUNCHER, M15」の制式名称表記。ダイヤの中に「N」のメーカーロゴは、イリノイ州フリーポートのWestern Newell Manufacturing社のものです。 現在は名称が「Newell Rubbermaid」と変わっています。ヘルスケア、工具、筆記具ほか広範囲に業態を展開しています。


↓左端は照星(フロント・サイト)。そのすぐ右の2つのマイナス・ネジは次の画像で触れる照門の固定と水平方向のゼロ・イン調整のためのもの。泡の入った透明の管は水平器。正確な射角を保つのに必要です。泡が二つの目盛りの間にあれば水平が保たれているという仕組み。建築施工関係のかたなら説明は要りませんね。


↓ピープ型の照門(リア・サイト)はそれ自体が板バネになっており、上の画像で見たように先端がネジ留めされていて、手前に見える太いネジを廻して照門を上下させて調整できます。



↓因みにこれがM1、M1903A1、M1903A3、(M1)カービン共通の座金固定ネジ穴の位置決めに使う穿孔治具(Locating Jig)です。

↑ストックのレシーバー部分の左側面にこれを上から噛ませて、


↑右下のネジを回して固定して左の2つの穴にドリルを通して穿孔します。ドリルの刃の規格が記されてます。


↑裏面に「M1、M1903A1、M1903A3、カービンのストックの左側に使いなさい」と。

↓例えば、M11A1訓練用グレネードをM1カービンから110ヤード先へ高射角で撃ちこもうとするならば、射程表を見ると、射角は「45度」で、ポジションは「4」です。


↓まず座金にサイトを取り付け、



↓45度に合わせて、


↓グレネードをポジション「4」まで挿し込んで、


↓水平を保持して、


↓射出方向の照準を合わせて、

発射~!ということになります。

最後にキャリング・ケースを。
↓汎用のケースなので、特に「M15グレネード・ランチャー・サイト用」といった文言はありません。

「CASE, CARRYING」、パーツナンバーは7160198(NSNだと1005-00-716-0198)。メーカーは「BEARSE MFG. CO.」で1944年製。因みにこのメーカーは現在もBearse USAという社名でミリタリー関連のバッグ類やボディアーマーなどの製造を行っています。1921年創業。

↓この汎用キャリング・ケースですが、同一メーカー、同一製造年で、微妙に縫製が異なっているのが面白いです。

一見しただけでは分かりにくいですが、

↓フラップを開けると、お分かり頂けると思います。


↓一番上。縁取り全周・両サイドとも露見、ポケット上端縁取り無し。


↓真ん中。縁取り全周・両サイドとも露見、ポケット上端縁取り有り。


↓一番下。縁取りフラップ部のみ露見・両サイドは内側向きに処理、ポケット上端部縁取り無し。

スタンプは全て同内容です。

↓裏面。ダブル・フック・ワイヤーが設えられています。


以上M15グレネード・ランチャー・サイトについて観て参りました。

現在はUS本国でケース入りで且つ油紙・グリスまみれのデッド・ストックのものが1個10ドルから高くても20ドル前後で売られています。
恐らくあまり需要が無いのでしょう、10個1ロット、50個1ロットで売り捌いているサープラス屋さんもあり、価格の面では入手しやすいと言えます。
ヤフオクなんかでも3,000円から5,000円で出品されていますが、US本国での販売価格を知ると「ご、ご、5,000円!」と驚いてしまいます。
ただ、個人輸入となると、「銃砲刀剣類所持等取締法」により輸入許可証を求められることになりますから要注意です。
私がこれを入手した20年くらい前なら何ともなかったんですが。

しかも、入手しても使おうと思えば(もちろん実際に発射するのではなく、銃に装着してムフフと悦に入るという意味です)、大事にコレクションしているモデルガン等のストックに穴をブチ開けて座金を取り付けなくてはなりません。
しかし、しばらくはストックに穴を穿つなどという、モデルガン・ファンには到底受け入れられない事を自らがすることはありませんでした。「取り敢えずサイトが入手できて嬉しいな」という喜びに浸り、ストックの側面にサイトをあてがって悦に入る程度でした。

ところが運良く(悪く?)、上の本文で触れました「座金固定ネジ穴の位置決めに使う穿孔治具(Locating Jig)」を入手する機会を得てしまいました。座金を今取り付けるためではなく、座金の取り付けをするとなった場合に、適当に穴を穿つのではなく「軍の規格の通り正しく穴を穿つ事が出来る喜び」を感じれるようにこの治具を入手しました。

入手時は座金を取り付けようと思ってた訳ではありませんでした。しかしそのうち「やはり究極的に”reenact"を志す者としては避けて通れぬ道ではないか」との思いに至りました。
悩みました。個人的には、「天から授かった身体に(耳に)ピアスの穴を開けるのに躊躇する」のと同じ感覚でした。見栄えをちょっと良くするために事実上傷を付けてしまう、しかも元には戻らない。しかし”re-enact"の精神も貫きたい・・・・・。
私は熟考の末、CMC製でなく、MGC製のM1カービンに犠牲になってもらうことにしました。
「済まぬ!MGC・M1カービン!」
断腸の思いで穿孔した時のことは今でも忘れ・・・・、いや、だいぶ記憶は薄れました。


それでは、また・・・。






  

Posted by Sgt. Saunders at 11:59Comments(0)米軍(U.S.)Fire arms-Related

2015年07月12日

U.S. ショットガン・シェル・パウチ(Shotgun Shell Pouch)

こんにちは。
いわゆるコレクターにはひたすら「珍しいモノ」の蒐集に心血を注いでおられる方がいます。珍品は当然高価であり、熱意・情動だけでは入手は叶いません。
私も決して懐が暖かい訳ではなく、珍品が売りに出されていても「これは私でない他の誰かにその保存を委ねた方がいいのだ」と自分に言い聞かせています。

今回ご覧いただきますモノも、これがWWⅡ時製造のモノならば未だにその入手は躊躇するところ、それよりあとの製造のモノなので比較的容易に入手出来たという経緯があります。
ショットガン・シェル・パウチ(OD Cotton Duck Shotgun Ammunition Case)です。

↓M1897 ウィンチェスター・トレンチ・ガン(M1897 Winchester Trench Gun) とショットガン・シェル・パウチです。

銃はタナカ製のモデルガンです。ショットガン・シェル・パウチも、本当はWWⅡ以前製の「カーキ色(タンもしくはo.d.#3)」が欲しいのですが、財政的問題等により未入手です。ヤフオクで比較的廉価で出品されているのですが・・・。因みにWWⅡ時のモノは制式名称が「Pouch, Ammunition, Shotgun(ストック・ナンバー:74-P-240)」です。
このパウチだけでなく、WWⅡ以前の装備品がそのまま或いは若干の改良が加えられ、それ以降も製造され続けられるうちに制式名称が変わり、物品管理がストック・ナンバーからDA(Department of the Army)ナンバー、FSN(Federal Stock Number)へと変わっていったモノはほかにもたくさんあります。

↓本題のショットガン・シェル・パウチ(OD Cotton Duck Shotgun Ammunition Case)です。

基本的な構造は上述のWWⅡのPouch, Ammunition, Shotgunと同じです。本体はその名の通りコットン・ダック製。フラップは2個のLift the Dot留め。「US」がフラップにスタンプされています。

↓フラップを開けると制式名称、DSAナンバー、FSNナンバーのスタンプがあります。

WWⅡモノであれば、本体収納部表面に「POUCH, AMMUNITION, SHOTGUN」とスタンプされているモノもあります。

↓スタンプの拡大。

CASE, SHOTGUN AMMUNITION, COTTON DUCK, O.D.
DSA100-68-C-1496
8465-261-6944 (←FSNです)

↓内側です。本体前後面にシェルを保持するコットン・ウェブ・テープがループ状に縫い付けられています。前後各6発合計12発収納できます。底には水抜き用のハトメ穴。

このループは取り去られていることが多いです。シェルをいちいち一発ずつ入れておいても、咄嗟の時に抜き出しにくそうだなぁと私も思います。

↓モデルガンのシェルを入れてみました。

WWⅡ時のモノでは、このシェル保持のループが本体に直接縫い付けられず、同じ素材で若干幅の広い「土台テープ」にループが縫い付けられて、それが本体に縫い付けられる形となっていました。

↓この様にです。(これは私の所有物ではありません。eBayから画像を引用しました。)


↓マニュアルから引用。上の画像と前後(上下)が逆さですが、前後ループ(FRONT RETAINER と BACK RETAINER)が本体(BODY)の内側にそれぞれ前後の「土台テープ(FRONT REINFORCE、BACK REINFORCE)」 を介して縫い付けられているのがお解り頂けると思います。


ですから、↓本品ではループが直接縫われている縦の縫い目が表側に7本見えますが・・・、


↓WWⅡ時モノでは「土台テープ」の上辺・下辺・両端と中央部の縫い目が見えます。(これもeBayからの引用画像です。)

この点がWWⅡ以前の「Pouch, Ammunition, Shotgun 」と「CASE, SHOTGUN AMMUNITION, COTTON DUCK, O.D.」との決定的差異です。

↓背面。コットン・ウェブ製のベルト・ループが2本設えられています。


↓シェルを入れた時は、丈がこんなに小さくなります。


↓底面には水抜きハトメ穴。


↓フラップの留め具は「Lift-The-Dot」。ブランド「KliKit」で著名な「RAU FASTENER CO.」製です。


↓裏側です。製造者が分かります。「RAU FASTENER CO. PROVIDENCE R.I.」ロードアイランド州プロビデンスの会社です。



以上駆け足で見て参りました。ショットガンはWWⅡではPTO(Pacific Theater of Operations:太平洋戦区)におけるジャングル戦で多用されました。またその後もヴェトナム戦で同じくジャングル戦で重宝されましたので、弾薬シェル・パウチも制式名称が変わりながらも生産され続けました。
なおM1897ウィンチェスター・トレンチガンのアクセサリーとして、その銃剣についての拙稿「Model of 1917銃剣とM1917鞘(M1917 Bayonet & Scabbard)」が過去記事にありますのでご興味がある方はどうぞご覧ください。



それでは、また・・・。