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2017年10月22日

M-1943 ショベル・キャリア(Carrier, Shovel, Intrenching, M-1943)

みなさん、こんばんは。
台風21号が猛烈な勢力でやって来ています。当地大阪でも各所で避難勧告が出ております。
折しも衆議院議員選挙・最高裁判所裁判官国民審査が本日執行されていますが、有権者の方投票は済まされましたか?天候が厳しいですが、是非投票所に足を運んで、国民の一人として意思表示を行いましょう。と言っても、もうこの時間ですが。

さて、今回定刻を大幅に過ぎての投稿ネタは、コレクションの中ではどちらかと言えば地味な部類?にありますWWⅡ米陸軍(海兵隊も)が使用したM-1943イントレンチング・ショベル・キャリア(Carrier, Shovel, Intrenching, M-1943)です。

↓バージョン違いの2種を並べました。例によってWWⅡUSモノで必ず出てくる「カーキ・ODバージョン違い」のようですが、実はちょっと違います。表側だけ見ればバージョン違いかな?というところですが…。

左のキャリアにはショベル本体を挿しています。このM-1943イントレンチング・ショベルは、その先代M-1910イントレンチング・ショベル(通称Tボーン・ショベル)に替わり、匙部を折りたたみ式にすることにより収納時の全体の長さを短くしたモノで、これはドイツ軍の折りたたみショベル「Klappspaten(クラップシュパーテン:折り畳み式スコップ)」のフルコピーと言っても過言ではありません。ドイツ軍も1938年にその先代の「Kleines Schanzzeug(クライネス・シャンツォイク:小型塹壕構築具)」から折りたたみ式のKlappspatenに替えていったのですが、その目的はどちらも省スペース化と多機能化であったと思われます。

↓拡大しました。コットン・ダック製、フラップはlift-the-dot留め。他の布製装備品と同じく、43年後期頃を境にカーキ(ODシェード#3)からOD(ODシェード#7)に色調が変わります。


↓裏側です。さっき「『カーキ・ODバージョン違い』のようですが、実はちょっと違います。」と申しましたのはこれです。ダブル・フック・ワイヤ・ハンガーの設え方が違います。左は先代のM-1910イントレンチング・ショベル・キャリアーのようにその位置が固定されていますが、右のモノは3つの位置のうち任意の位置を選んでハンガーを取り付けられるようになっています。このようにハンガーの取り付けられ方・仕組みが異なるモノ同士ですから、単に「色のバージョン違い」とは言えないのです。現在遅れ馳せながらハンガー固定バージョンでODのモノを捜しております。なお、右の位置可変バージョンでカーキ色のモノも、私はまだ見たことがありません。この位置可変バージョンが出る頃には布装備品の色調は殆どODに替わってしまっている頃なので品薄だからだと思うのですが。、もしあれば、ハンガー固定バージョンでODのモノ同様、かなりレアなモノであると思います。

ショベルを収納した際にブレードの先端が当たる部分(キャリア下部)には、左のカーキ色バージョンではOD色のコットン・ウェブが張られ、右のODのモノにはコットン・ダック生地が2重に当てられて補強が図られています。

↓では順にじっくり見て行きます。まず左のモノ。この個体は前述のようにカーキ・バージョンなのですが、内側の茶革の部材が張られてある部分から革の染料が表に滲み出てきて、画像のキャリアの左右両側がやや焦げ茶色染みているのがお分かりいただけると思います。


↓所有者(正しくは占有者、ないしは借用者)の名前と認識番号と思われる数列「BAJIC 36988697」の記述。


↓フラップを開いたところ。左に製造者・製造年のスタンプ「J.A. SHOE」、「1943」。右にさっき見たのと同じ借用者の名前と認識番号「BAJIC」、「36988697」の記述。


↓畳んだショベルを収納したところ。ブレードの縁が触れる部分には茶革を当てて、ヒンジ部分が触れる部分にはコットン・ウェブ・テープを当てて補強しています。


↓内側をもう少し覗き込んでみました。ブレード縁が触れる部分は下の方まで茶革の補強が張られています。


↓ストロボ焚いてさらに一枚。


↓ショベルの柄が通って出てくる部分です。重さのかかる部分にはリベット打ちが施されていて強度が上げられています。


↓さて、もう一方のOD・ハンガー位置可変バージョン。色のほかは今見て来たカーキ・バージョンと外観は同じです。フラップも同じくまだlift-the-dot留めです。


↓フラップを開けたところ。ブレード縁対策の茶革の補強とヒンジ対策の補強もカーキ・バージョンと同じです。


↓ほんの少し違うところはブレード縁対策の下まで伸びる茶革補強が、背面側には無いこと。手前側にはずっと下まで張られてます。


↓フラップの内側に制式名称「CARRIER, SHOVEL, INTRENCH, M1943」、ストック・ナンバー「STOCK NO.74-C-1」(上)、製造者、製造年「AVERY 9」。ただ、ストック・ナンバーは本来「74-C-165」なのに最後の2ケタがキチンとスタンプされてません。プリントミスでしょうか?また製造年は「9」しかありませんが、これは特にAVERY社の場合によく見られる省略で、「1949年」の意です。


↓裏側です。ダブル・フック・ワイヤ・ハンガーの位置を変えれるようにアイレット(鳩目穴)が三列設えられています。ベルトに下げるも良し、フィールド・パックやハバーサック、リュックサックに下げるも良し。好きな位置にハンガーを取り付けられます。


↓ハンガーの取り外し・取り付けはこんな風にチョチョイの...


↓チョチョイの...クククッ...


↓チョ、チョイの...あ、裏表間違えた...、


↓チョーーーイッと。はぁはぁ(*´Д`)。


↓これ位余裕があるので、比較的、比較的やりやすいです。


↓さっきも記しましたが、ブレード先端が当たる部分はコットン・ダック生地を重ねてあります。あと、この部分にある6つのリベットが菊割カシメリベットになっています。




いかがでしたでしょうか?ショベル本体については、また項を改めてご紹介したいと思います。
このM-1943イントレンチング・ショベル・キャリア、WWⅡ以降マイナー、メジャーな変更を経て1960年代過ぎまで細かく形を変えて進化していきます。また改めてご紹介すると思います。

それでは、また次回お会いしましょう。




本稿では「Entrench」ではなく「Intrench」と表記していますが、米軍が制式名称で「Intrench」を使用しているためであり、通常「entrench」の方が一般的に使われています。意味は全く同じですが念のため注釈としておきます。  

Posted by Sgt. Saunders at 19:43Comments(0)米軍(U.S.)Intrenching tools

2017年10月08日

ドイツ軍機関銃用弾薬ベルトリンク・その2(Munitiongurt für Maschinengewehr:Nr.2)

みなさん、こんにちは。
朝晩の虫の声が秋の到来を教えてくれますが、当地大阪は日中は気温が26度近辺までに達し、なかなか秋の涼やかな気候にはなりません。
隔週日曜日正午の投稿を目標にしている当ブログ、仕事・体調絡みの理由で、なかなか思い通りにいきません。


さて、今回の投稿は もう3年ほど前に投稿したもの(←クリックすると別ウィンドウで開きます)の「続編」です。3年も空けて何が続編じゃと仰るのも当然です。申し訳ございません。

↓これ何? ドイツ軍の歩兵用主力機関銃であるMG34・MG42用の50連給弾ベルトリンク(Munitiongurt für Maschinengewehr, Zwischenstück für 50 Patronen)を、長ーく伸ばしたままでは収納に困るので、前後に少しずらしながらクルクルとこのように巻いています。

幾つかある中からグリスをある程度奇麗に拭っているモノを見て行きます。「その2」とのタイトルですが、単なる画像の羅列になりそうな予感…。

↓ほどくとこの様になります。カートのリム部に噛むツメをカート本体を掴む部分に嵌めて巻き上げています。


↓リンクは50発分が一本になっていて、この末端にあるタブを使って別のリンクに連結できる構造になっています。連結の仕組みについては、もう3年ほど前に投稿したものの上から1/3ぐらいのところで詳解していますのでご覧ください。


↓そのタブに製造年月、アルファベットか数字による製造者秘匿コード、ヴァッフェンアムト(Waffenamt)等の刻印が打たれており、いつ誰が製造したのかを突き止める材料になります。それらの刻印のうち、幾つ刻印されているかはその時期により異なります。この個体には「dwc」とあり、ノルトライン‐ヴェストファーレン州リューデンシャイトにあったDr. Ing. Böhme und Co.製であることが分かります。刻印はこの「dwc」だけです。


↓こちらはまず「bkg」とあり、鉄道模型で有名なゲッピンゲンのメルクリン社(Märklin & Cie., Gebr., GmbH )製であることが分かります。次行に「8.41」とあり、1941年8月製造であることを示します。さらに…、


↓その下にWaffenamt(以下WaAと略します)の刻印。ただ、「WaAB71」と読めるのですが、手持ちの資料にはこのWaAコードがMärklin社であるとするものが無いのです。今後の研究にその究明を委ねます。


↓この個体には「12. 41」と1941年12月製造を示す刻印とそのすぐ下にWaAの刻印が...


↓「WaA279」とありますが、これは1941年12月の製造であれば、チューリンゲン州オードラフ(Ohrdruf)のG.J. Ensink-u. Co.の『軍装備品特別工場』製と判断できます。但しWaA195とWaA183というコードも1941年中に同社に割り当てられています。また逆にWaA279は別の年にはまた別の複数のメーカーに割り当てられています。このようにWaAコードは異なる年度で、場合によっては同一年中に別のメーカーに割り当てられましたので、製造者を特定する上で製造年と一体にして考察しなければなりません。


↓この個体ではWaAの鷲部分がうまく刻まれておらず、「WaA710」のように見えます。WaA710ならばベルリンの「Siemens-Schukert-Werke AG」社製を示します。さらにその下に…


↓「5. 40」と、1940年5月製造を示す刻印があり、さらにその下に…


↓「993」と刻まれているのですが、これが分かりません。手持ちの資料には、993がどの製造者であるのかを示すものがありません。因みに製造者秘匿コードは、1940年頃に数字(2ケタ或いは3ケタ)からアルファベット(2文字或いは3文字)に変わっています。


↓この個体も謎です。「ara」のコードはどの資料を見ても見当たりません。その下「9.40」は1940年9月を示すのは間違いないと思います。さらにその下に…


↓WaAA65と読めると思うのですが(A66かA68かA85か、はたまたA86か?)確証を持てませんし。いずれの場合であっても製造者を特定できていません。


↓この個体は「12. 40」と、1940年12月製を示す刻印。その下に「WaA101」とあり、1940年中に異なるメーカーに割り振られているコードなので、製造者を特定できません。


↓1940年中の製造であればWaA101はライプチヒのEhrhardt u. Kirsten, Koffer- u. Lederwarenfabrikか、 Hawig, Hauswirthschafts-Maschinen GmbHか、というところです。


↓この個体の「ST」はStocko Metallwarenfabriken Henkels & Sohn GmbH & Co. 社の意。「4.40」は1940年4月製の意だと分かります。


↓その下にうっすらとWaAコードの刻印がありますが、この「WaA253」がStocko社製であることを示す資料が手持ちの中にはないのです。WaA253は年代により10以上の企業に割り当てられていたのですが、その中にStocko社を含んでいる資料がありません。253ではないのでしょうか?


↓この個体には古いタイプのWaAコード刻印が打たれています。鷲の下に「4」で製造年が1936年6月でその下に…、


↓「BSW」の意匠があるので、「Berlin-Suhler Waffen-und Fahrzeugwerke GmbH」社製であることが分かります。


↓最後にもう一度こんな画像を。このリンクは理論的には何本でも連結できます。ドイツ陸軍は一般的に5本繋いで250発を一まとまりとして弾薬箱に収納して運用したそうです。



最近でもこの50連リンクはヨーロッパにはまだ多くの量が流通しているみたいです。WaAコードがあるモノ、メーカーコード(数字、アルファベット)があるモノ等いろいろで、ミリタリーショップのネット通販サイトでもよく見ます。程度の良いモノで、安いところでは1本が大体10ドル前後から、高いところでも20ドル以下ぐらいで販売されています。
ただ注意しないと戦後版のモノを掴まされたりしますから、詳細な画像・商品説明で戦後版のモノでないかをよく確認する必要があります。刻印は実際にそれを見るしかありませんが、戦後版との外見的な差異は、WW2モノの連結タブは今上で見てきましたように四角いスクエア型ですが、戦後版はL型(俗に『犬の足』)になっています。

私が現在所持しているモノはもうカレコレ15、6年以上前に海外のショップから購ったもので、ひょっとしたら個人輸入では、今ではやっぱり税関で(外郵出張所で)銃砲刀剣類所持等取締法の云々・・・と言われて個人輸入できないかもしれません。

WaAコード、製造者コードについては今後も徐々に解明されていくかと思いますが、近時WaAコードを打刻するダイス型ポンチをネット上で堂々と売っているショップがあります(WAFFENAMT-SHOPなど)。要注意です。

それでは、また…。