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2018年04月29日

ミッチェル・パターン・ヘルメット・カバー(Mitchell pattern camo helmet cover)

こんにちは。
さあ、金正恩さん、どうなるのでしょうか。期待していいのでしょうか。ヴィジュアル的にも劇的な南北首脳会談のニュースが駆け巡りましたが、この後どう展開するのでしょうか。
ビクトリーショー行きたかったなー。

さて、季節が暑い時期へ移りつつある中、米軍ファンがサバゲでの装いとして用いやすいのはやっぱりヴェトナム戦争モノかWWⅡ太平洋戦線モノになって来ますでしょうか。
それに合わせたわけではありませんが、今回の投稿ネタはヴェトナム戦争時に用いられた、いわゆるミッチェル・パターン・カモフラージュ・ヘルメット・カバー(Mitchell pattern camouflage helmet cover)です。定刻より2時間余り過ぎての投稿です。

↓これはミッチェル・パターン・カモフラージュ・ヘルメット・カバー(Mitchell pattern camo helmet cover(以下「ミッチェル・カモ・カバー」と略します)を被せたM1ヘルメットです。
https://www.ebay.com/itm/ORIGINAL-LATE-VIETNAM-ERA-M1-HELMET-W-LINER-CAMO-COVER/222935272943?hash=item33e7fa4def:g:jl8AAOSw64ha2lDP#viTabs_0
↑この画像はeBayでbbmilitariaさんが現在出品中のページからの引用です。→こちらがそのURLです。 I hope his/her items sold successfully. bbmilitariaさま、宣伝しましたのでどうぞ引用をお許し下さい。

ミッチェル・パターン(Mitchell pattern)とは何か?という方もおいでかと思いますが、ここでは詳しくは申しません。元々は朝鮮戦争中に開発され、1953年に海兵隊用のシェルター・ハーフ(いわゆるテントです)に用いられたカモフラージュ・パターンでしたが、その後官給の戦闘服には採用されず、今回採り上げるヘルメット・カバーや、若干の装備品にのみ採用されるに留まりました。ただし民間業者がこのパターンを活かしたシャツ、ジャケット等幅広く製造販売しておりまして、兵士が個人レベルでそれらを着用していたというケースがありますから注意が必要です。ヘルメット・カバーとしては1959年に採用されました。

↓米国のナショナル・アーカイブより「Da Nang, Vietnam - A young Marine private waits on the beach during the Marine landing. - August 3, 1965.」。カバーの詳解をするための適切な画像が無いかなーと探していましたらこの画像を見つけました。

ミッチェル・カモ・カバーを装着したM1ヘルメットを着用している海兵隊兵士です。陸軍では冒頭の画像のようにヘルメットの下端部に細いバンドを留めていたのが一般的でしたが、このバンドの海兵隊への支給が始まったのは陸軍よりも大幅に後れてからの事で、この画像のようにバンド無しで、もしくは手近なゴムチューブを加工してバンド替わりに使っていました。またヘルメットそのものについてですが、ライナー・ヘルメットがWWⅡ型であることを示す茶革チン・ストラップが見えます。1965年当時まだ旧式のWWⅡ型のライナー・ヘルメットが使用されていたことが分かります。カバー側面に落書きの一部が確認できます。背中にはヘルメット・カバーと同じミッチェル・パターンのシェルター・ハーフが担がれているのが分かります。

↓では幾つか現物をご覧いただきます。まず一つ目です。カバーはグリーン系蔓草柄(vine leaf)のサマー面と、ブラウン系雲形柄のウィンター面の両面リバーシブル生地を用いた2枚ハギ仕様です。グリーン系の面を表にして装着している例の方が圧倒的によく見られます。水色丸で示しているのはfoliage slit(枝葉孔)で、擬装用の植物等を挿すためのものです。片側に8つずつ設えられています。


赤矢印で示した褪色・摩耗が激しく白っぽく見える部分は、ヘルメットにカバーを装着した時(被せて、下部のヒラヒラをヘルメット・シェルとライナー・ヘルメットの間に托し込んで装着した時)にヘルメットの縁が当たる部分なのですが、そのままではヘルメット本体のチン・ストラップ・ループがカバーの外に出ないので、これを通すために緑丸の所に兵士が各自で入れたスリットがあります。あとでご紹介する2つ目のモノでは、カバー下側の緑弧線で示した裁断上の切れ込みがチン・ストラップ・ループの部分まで深く達していて、そこからループを通せるので、わざわざ切れ込みを入れてやる必要はありません。

↓そのままひっくり返しました。当然ながらこちらにもヘルメット本体のチン・ストラップ・ループをカバーの外に出すためのスリットが入れられています(緑丸部分)。

グリーン系迷彩は薄緑地に濃緑、緑、黄緑と黄土色の葉形と茶色の小枝柄で構成されます。

↓何か文字があります。


↓逆さにすると「BYRNE. M」。M.バーンさんが名前を記したと思われます。


↓裏表を返してブラウン系の面です。迷彩のパターンは雲形で、タン色地に焦茶、朽葉、ベージュ、茶と黄土色の雲形柄で構成されます。


↓ブラウン系の面にスタンプが押されています。

曰く、
COVER HELMET
CAMOUFLAGE
CONTRACT No. 5656
FSN 8415-261-6833
契約番号から見た製造年は1964年とする資料がありますが、自身で直接は確認しておりません。


↓2つ目です。1つ目よりも消耗度が低く、カモフラージュ・パターンがしっかり確認できます。1つ目のモノの説明で触れましたが、裁断上の切れ込みがチン・ストラップ・ループの部分にまで深く達しており、そこからループを通せるので、わざわざ切れ込みを入れてやる必要はありません。ミッチェル・パターンは他のカモフラージュ・パターンが抽象的な模様の組み合わせとなっているのと異なり、「葉っぱ」という具体的な形がそのまま活かされたカモフラージュ・パターンであるという点で特徴的です。

白く線状に褪色・摩耗しているヘルメット縁ラインまで生地の切れ込みがありますね。

↓取り敢えず反対側です。特記事項無しです。擬装用のfoliage slit(枝葉孔)も同じように片側に8つずつあります。


↓ブラウン系の面です。雲形のパターンがよく分かります。


↓スタンプの拡大です。

曰く、
COVER, HELMET CAMOUFLAGE
CONTRACT NO. 8027
FSN 8415-261-6833
100% COTTON
DPSC DIR OF MFG
とあります。資料によれば契約番号8027は1964年から1965年にかけての製造のようです。FSN(Federal Stock Number)は8415-261-6833で、このカバーの管理上の固有の「制式番号」です。上の1つ目のモノのスタンプにはこれが含まれていませんでしたが、「記すまでもないやろ?」ということです。「100% COTTON」、はい、100%コットン製です。但しまたあとで触れますが、コットンといってもその生地の種類は幾つか異なるモノが用いられています。最後の行の先頭の「DPSC」とはフィラデルフィアの「Defense Personnel Support Center」の略で、1965年7月にDSA(The Defense Supply Agency)の衣料繊維・医薬品・需品供給の3つのサプライ・センターを統合して設立されました。DIR.OF MFG.と続きますので、「DPSC製造部局長」てなところでしょうか。 向こうの官庁等の名前を日本語で正確に、日本の外務省が公的にどう訳しているかまで調べるのは困難なので、あくまでも我流での訳ですので参考程度にして下さい。

↓最後3つ目です。消耗度は中程度で、カモフラージュ・パターンもよく確認できます。上の2つ目のモノと同様裁断上の切れ込みがチン・ストラップ・ループの部分にまで深く達しているように見えますが、実は浅い切れ込みの先端部分の生地がチン・ストラップの所まで切り取られてあります。カバーの縁取りのロックミシン・ステッチが途中で消えて、「生地切りっぱなし」になっているのがお分かりいただけますでしょうか。


↓反対側です。擬装用のfoliage slit(枝葉孔)が片側に8つずつあるのはミッチェル・カモ・カバー共通の仕様です。


↓ブラウン系の面です。ヘルメットから貰った錆が若干付着しています。


↓スタンプです。

曰く、
COVER HELMET CAMOUFLAGE
CONTRACT NO. 8116
8415-261-6833
契約番号8116は1965年初めの製造と資料にあります。あとはFSNが記されているのみです。

↓使用されている生地が、今まで見て来た1つ目2つ目のモノが目の細かいダックであるのと違い、サテン地となっています。


↓2つ目のモノの拡大です。コットン・ダックですね。


↓3つ目のサテンのモノ。↑2つ目のダックは比較的堅く、生地を縦横斜めに伸ばそうとしても伸びにくいですが、サテンはその織り方の特性上斜めには伸びます。


↓上がダック、下がサテン。ダックはややゴワ付く感じですがサテンは柔らかい感触です。スペック上の違いはどの資料を見ても無いように思われます。



エッジの切れ込み具合や使用素材の違い、製造時期、また今回は採り上げませんでしたが2枚ハギの合わせ部分の縫製の違い等については現在もいろんなフォーラムで議論されており、体系的な確定的検証が完了している訳ではありませんが、通説、多数説、少数説については皆さんで各自お調べになってみて下さい。嵌り込むともう複雑で頭がこんがらがりそうです。

また、ミッチェル・パターンの「Mitchell」とは何か?という件についても今回いろいろ調べましたが、これも確定判断するのに十分な資料には行き当たりませんでした。海外の研究者によれば「Mitchell」はアカネ科の開花植物の属である学名Mitchella(和名表記:ツルアリドオシ(蔓蟻通し)属)から来ているとされておられる方があります。Wikipediaで「ツルアリドオシ属」の項を見て下さい。その画像を見る限りでは、ヘルメット・カバーに用いられているほどの大きい葉っぱではなく、小さい可愛い葉っぱなので、個人的には「ウ~ン」の域を出ません。

更にそもそも「Mitchell Pattern」と括られて巷間通用していますが、この呼称も研究者によっては「言い間違いである」と仰る方もあり、「グリーン系面は『wine leaf(ワインの品種の元となる葡萄の葉)』もしくは『vine leaf(蔓系植物の葉)』である。」とし、ブラウン系面を指して「『Mitchell』若しくは『clouds pattern』は…」などと仰っておられることもあって、もうどうにも訳が分からなくなって来ました。


現在そこそこの程度であれば$10も出せば比較的簡単に入手できます。ただ近時中国製等の良く出来たレプリカ品が出てきており、実物にこだわる方は注意が必要です。スタンプも精巧に再現され、もはやFakeの域にあるモノもあります。

以上何ともまとまらないまま、今回はこの辺で失礼致します。







参考書籍・サイト等:Mark A Reynosa著「Post-World War II M-1 Helmets: An Illustrated Study」 Schiffer Publishing刊、U.S. Militaria Forum「Mitchell Cover Contract List」、WW2-ETO forum「'Mitchell' camo pattern M1 helmet Cover Contract List, 1959-1977」等々。  

Posted by Sgt. Saunders at 14:17Comments(0)米軍(U.S.)Headgears

2018年04月15日

US VN戦バンダナ/ネッカチーフ(OG-109 Knitted cotton man's neckerchief)

皆さんこんにちは。

当地大阪ではお花見シーズンは例年より早く到来し、さっさと終わってしまいました。一般的な桜の開花シーズンからは例年と同様1週間ほど遅れて始まる造幣局の通り抜けも、今年は始まる時にはもうかなり咲きほころんでおりました。17日火曜日まで、平日は午前10時から午後9時まで、 土曜日・日曜日は午前9時から午後9時までやってます。

さて、今回ご覧いただきますのはヴェトナム戦争では名称本来のネッカチーフとしてよりもむしろバンダナとして使われた印象の方が強い「OG-109 コットン・ネッカチーフ(Neckerchief, Man's, Cotton, Knitted, OG-109)」です。

↓この画像はeBayからの引用です。制式名称は「ネッカチーフ」ですが、首に巻いてる写真よりもこの画像のようにバンダナとして利用されている例が多い気がします。


↓U.S. Navyのアーカイブから。1968年10月。Navy SEALsメンバーが頭に巻いています。SEALsとしては一般的なタイガーストライプに身を包み、ドラム・マガジンを装着したストーナー63を携えています。今回いろいろ画像を見てみましたが、陸軍や海兵隊よりもこのようなSEALs等の特殊部隊が頭に巻いて利用している例が多いようです。


↓現物です。折ってあるのを拡げました。真ん中に置いているのはポケット・ナイフです。大きさは36インチ×24インチ(約91cm×61cm)。


↓大きいので普段はこのように8つ折りにして保管しています。縁はしっかりロックされています。


↓スタンプです。

曰く、
NECKERCHIEF, MAN'S, CTN., KNITTED
OG-109 36" LONG, 24" WIDE
DSA-100-69-C-0918
8440-935-6374(←FSNです)
色はOG(Olive Green) shade #109で、ファティーグに用いられた107よりも緑味がやや強い(深い)印象です。1969年度契約分です。

↓生地の拡大です。ネッカチーフとして柔軟性が求められますので、ガーゼのハンカチ位の生地・手触りになってます。コットン100%なので吸水性は優れていますし、ガーゼ状なので干せば比較的乾きやすいです。


↓もう一つ参考画像です。生地の下に光が反射するようにポケット・ナイフと手鏡を置いて撮影しました。生地の薄さ・質感がお分かりいただけますでしょうか?薄手のTシャツよりも更に薄い感じです。



以上見て参りました。
近時オークションでも良く出品されていますが、値段はピンキリで、9ドル前後から、高いモノでは20ドル超えも見られます。
基本的に現存量は多くありそうに思われますので、「サープラスモノ」と言うことが出来、「一枚20ドルは如何なものか」と思います。
ヴェトナムモノの中にはもちろん希少品はありますが、今回採り上げましたようなサープラスの域を超えてないモノは、まだまだ探しようによっては比較的廉価で入手できる余地がありますので、ネットでこまめに調べるのがいいですね。

それでは今回はこの辺で失礼します。





  

Posted by Sgt. Saunders at 12:24Comments(0)米軍(U.S.)Individual Tools

2018年04月01日

トンプソン短機関銃用Kerrスリング(Thompson Kerr Sling)

皆さんこんにちは。
平年よりも全国的にかなり早く桜が開花しているとの事で、当地大阪もこの週末には既に満開の時期を迎え、花弁が風にハラハラと吹かれ始めています。近所の桜並木にも多くの見物客がいらしています。

さて、トンプソン絡みモノのネタばっかりで辟易とされておられる方が多いでしょうか?
取り敢えず今回で一旦トンプソン絡みモノネタは終わりますので、どうぞご勘弁ください。今回はスリングです。

トンプソン用のスリングとしては、いわゆるKerrスリングとM1923ウェブ・スリングが代表格になろうかと思います。KerrスリングはM1914スリングとも呼ばれ、WWⅡに入ってからはM3という名称でトンプソン用に制式化された比較的薄手のウェブ製のスリングです。一方のM1923ウェブ・スリングもKerrスリングと同様、一般的に革がスリング素材として良く用いられていた時代に、Kerrスリングよりもブ厚いウェブ素材を用いて、元来はM1903スプリングフィールド小銃用に制式化され、後にトンプソン用のスリングとしても用いられたモノですが、あまり製造されなかったのか現存例は多くなく、どちらかと言えばレア・アイテムになるかと思います。今回はレアでないKerrスリングの方についての徒然です。

↓この画像、もう見飽きましたか。今回はスリングに注目して下さい。

トンプソンに装着するスリングと言えば、私はM1923ウェブ・スリングよりも、このいわゆるKerrスリングを思い浮かべます。バット・ストックに繋がっている方の短いスリング部と、その末端のリングに、フォア・グリップに繋がってる長い方のスリング部とが連結して構成されます。

↓今ではもう見慣れましたが、最初にこの装着図を見たときは「これ、どうなってんの?」と思いました。行って戻ってまた行って...グルグル巡ってるのは何のため?という感じです。バックル無しで自在に長さを調節できるということが分かるのに数秒かかりました…。


↓フロント・スイベルにはスリングが一度通ってからスナップがまたやって来て留まります。


↓スナップの拡大。先ほど触れました「バックル不要」の意味から名付けられた「NOBUCKL」の商標と1914年7月21日特許取得済みとの刻印。材質は黄銅で亜鉛メッキ処理されているのではないかと思います。


↓スナップの裏側です。薄い板バネの部分にだけ黒く塗装がされたかのように見えます。スリング自体の色目はWWⅡになってから製造されたM3の初期のマスタード色ではなく、もっと淡い「バフ」に近いです。M3は、後期には他の装備品と同じようにOD色へと変更されました。


↓長い方のスリングの末端リング部。先ほどと同様の商標と刻印。若干圧が甘い部分があります。


↓裏側です。特記事項無しです。


↓短い方のスリング末端のリング部です。今見た長い方のスリングの末端リング部と全く同じ作りです。刻印に甘いところがあるのも瓜二つです。同じロットで製造されたということだと思います。


↓裏側も同様です。特記事項無しです...。


↓バット・ストックのスイベルに留められている短い方のスリング末端のスナップ。これもフォア・グリップのスイベルに留められている長い方のスリング末端のスナップと同じです。


↓「NOBUCKL」の商標と1914年7月21日特許取得済みとの刻印も同じです...。


「このスリング、どのようにして銃に装着するの?」というスレッドが周期的に銃関係のフォーラムで出て来ますが、画像をよく見れば分かりそうなものなのですけれども、いざ取り付けるとなると、やっぱりちょっと手こずる事もあります。

↓以下の画像はウェブ(U.S. Militaria ForumのKerr Sing Instructions)から引用したものを加工したものです。まず、M1903スプリングフィールド小銃へのスリングの取り付け方の説明図です。
注目すべきは、上から2つ目の「Second Operation」の図の、バット・ストックのスイベルに連結されている短い方のスリングです(赤丸部分)。


↓短い方のスリング末端のスナップをただ単にスイベルに留めるのではなく、スイベルを通過させて折り返してループを作って、スリングのもう一方の端に戻り、長い方のスリングに連結しているリング基部の金具に噛ませてあります。


↓ところが一方、こちらはM1917エンフィールド小銃への取り付け方の説明図です。すぐ上で↑見ましたのと同じように、短い方のスリングがループ状になってバット・ストックのスイベルに連結されています。
しかし、良ーく見て下さい。ここに挙げられているスリングは、今まで見てきましたKerrスリングと異なるところがあります。それは長い方のスリングにフリーのリングがある点です(赤丸部分)。上↑では短い方のスリングのスナップは、もう一方の端のリング基部の金具に噛ませてありましたが、こちらでは長い方のスリングにあるフリーのリングにスナップを留めてループが形成されています。

さらに、緑丸の部分にありますように、「前後のスイベル間の長さが短いM1903スプリングフィールド小銃やKrag小銃(筆者注:M1892小銃)に使う場合は、短い方のスリング(the short extension piece)は図のように取り付けよ」と説明されています。つまりスナップをリングに留めずに通過させて折り返し、バット・ストックのスイベルに連結させることにより、スリング全体が長すぎてダブつかないようにしなさいということです。長い方のスリングをフロント・スイベルに取り付けるのと同じ形になります。

このように、Kerrスリングと言っても、フリーのリングがあるモノ無いモノの2種類があったことが分かります。フリーのリングがあるタイプのKerrスリングが、WWⅡに入って新たにM3スリングとして採用された形になります。M3スリングにある「このリングは何のため?」と思えるフリーのリングのルーツはここにありました。短い方のスリングを、このリングを使って更に寸法を詰めて使えるようになっているのです。

↓そのM3スリングのレプリカです。フリーのリングがありまして、


↓このようにバット・ストックのスイベルを通過させてきたスナップを、このフリー・リングに留めてループを作れます。


さらに細かく言えばKerrスリングの中にも長さの異なるバリエーションがいくつかあったようです。全貌は掴めていませんが色んな資料を見ますと、実際に長さ違いバージョンが数多く認められます。

近時「NOBUCKL」の刻印がしっかり入っている精巧なレプリカが見られます。スリングに限らず、一昔前までは一見してレプリカ(悪意があればフェイク)とわかるモノが多かったですが、最近は再現の難しかった金具の形状やその表面処理・塗装、縫製がとても見事に蘇っていて、一見ではなかなか判別できない程の出来栄えのモノが数多く出てきています。実物かレプリカの吟味には相当の注意が必要です。
長く蒐集を続けているとある程度直感で「ん?これは...怪しい」と分かる部分もありますが、「ん~~?これは~~…...、ん~?」と考え込んでしまう程の精巧なモノは、製造業者の努力の賜物であり、リエナクト・コスプレには最適なのですが、それらを「本物」として販売しアブク銭を手にする手段にしている者も存在しますので、我々「コレクター」は鑑識能力を磨き続けねばなりませんね。

それでは今回はこの辺で失礼いたします。












  

Posted by Sgt. Saunders at 12:03Comments(0)米軍(U.S.)Fire arms-Related