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2017年07月17日

US X型サスペンダー(Suspenders, Pack, Field, Cargo-and-Combat)

近所の公園からは朝の6時を待たずしてシャンシャンシャンシャンと蝉の声が大音量で聞こえてきます。
梅雨明け前の猛暑と熱帯夜に辟易とさせられる大阪から、久々に前回の投稿から1か月と間を置かずにお送りいたします。

今回は米陸軍がWWⅡ時に使用していたX型サスペンダーのうち、末期ギリギリに供用の始まったカーゴ・アンド・コンバット・フィールド・パック・サスペンダー(Suspenders, Pack, Field, Cargo-and-Combat (ストック・ナンバー:74-S-392-300))を採り上げます。

WWⅡ時に米陸軍が使用したいわゆるX型サスペンダーには大別して「M-1936(Suspenders, Belt, M-1936、ストック・ナンバー:74-S-389 )」とその改修版である処のいわゆる「M-1943」或いは「M-1944」と呼ばれているモノ、それに今回のカーゴ・アンド・コンバット・フィールド・パック・サスペンダーがあります。

今回採り上げますカーゴ・アンド・コンバット・フィールド・パック・サスペンダーの事を指して「M-1943」或いは「M-1944」と称しておられる方もありますが(Kenneth Lewis氏は「M-1944」と紹介("DOUGHBOY TO GI"、P.184))、元来「M-1943」や「M-1944」という制式名称は無く、コレクターが差異を区別して呼ぶために勝手に(便宜的に)造った俗称です。
上で述べました「(M-1936の)改修版である処のいわゆる『M-1943』或いは『M-1944』」とはどんなモノかと申しますと、M-1936の肩部分にクッションとなるパッドを縫い付けたモノや、M-1936の胸部分の金属パーツやリベットを廃し、同じく肩部分にクッション・パッドを縫い付けたようなモノ等の派生版モノに対してコレクターが独自に与えた名称です。今回の記事とは直接関係が無いのでこれ以上の言及は省きますが、いずれまた別の機会に採り上げたいと思います。

↓カーゴ&コンバット・フィールド・パック・サスペンダー(Suspenders, Pack, Field, Cargo-and-Combat)です。M-1936と同じく前側(画像では下側)の左右2本のストラップのうち内側のものは臍に近い位置でベルトに連結し、外側1本ずつは画像の状態よりもうちょっと伸ばして背嚢へ連結するようになってます。背嚢を背負わない場合は画像の状態の長さくらいにして両腰真横あたりでベルトに連結しました。
US X型サスペンダー(Suspenders, Pack, Field, Cargo-and-Combat)
このサスペンダーがそれまでのM-1936及びその派生版と大きく異なるのは、重いカートリッジ・ベルトやピストル・ベルトを肩で支えるという単純な役目だけでなく、背嚢との連結をより高度な仕組みにした点にあります。
M-1936にもM-1936 od フィールド・キャンバス・バッグ(通称ミュゼット・バッグ)を背負うために左右の胸部分にDリンクが設えられていて、バッグの上端に設えられたストラップの先端のクリップを背中から肩を越して連結させる仕組みでしたが、そのM-1936 od フィールド・キャンバス・バッグと、旧式のM-1928ハバーサックとを発展的に統合した後継の「コンバット・フィールド・パック(Pack, Field, Combat)」が、それを背負うための当サスペンダーと一体で開発されました。新しい背嚢(コンバット・フィールド・パック(Pack, Field, Combat))は、その直下にカーゴ・フィールド・パック(Pack, Field, Cargo)を連結してフル・パックを構成できるようになっており、それらを背負うための当サスペンダーなので、名称もそれに合わせて「Suspenders, Pack, Field, Cargo-and-Combat 」となった訳です。

↓両肩辺りの金属バックルとそのすぐ下のスロット(上中下3つあります)を使って、コンバット・フィールド・パックをサスペンダーに連結します。
US X型サスペンダー(Suspenders, Pack, Field, Cargo-and-Combat)

↓背景が汚くてすみません。これは連結しようとしているコンバット・フィールド・パックの背面です。パック背面上部を横に走っているクロス・ストラップをサスペンダーのスロットに通し、パック背面左端のバックルを使ってしっかり締め付けて固定します。体格により3つのスロットのどれにクロス・ストラップを通すかを選べます。さらにパック背面上端左右に設えられている薄手のサスペンション・ストラップをサスペンダーの肩部分のバックルに通すことにより、パックがサスペンダーに吊り下がる(サスペンド)ように固定します。

US X型サスペンダー(Suspenders, Pack, Field, Cargo-and-Combat)

↓このバックルにパックのサスペンション・ストラップをくぐらせて前へ通します。通したあと余分なストラップは…
US X型サスペンダー(Suspenders, Pack, Field, Cargo-and-Combat)

↓サスペンダー左右にあるループの下に潜らせてブラつかせないようにします。このループは手榴弾を引っ掛けたりするのにも使われました。
US X型サスペンダー(Suspenders, Pack, Field, Cargo-and-Combat)

↓パック内側にあるラベルのイラストです。こんな感じにサスペンダーとパックが連結されます。(但しこれはM-1945カーゴ・フィールド・パックのラベルです)
US X型サスペンダー(Suspenders, Pack, Field, Cargo-and-Combat)

↓USスタンプと製造者「HOOSIER」および製造年「1944」。色はOD#7です。が、ずっと見てきました画像でお気づきだと思いますがウェブかダック(ズック)かHBT生地かによって染まり加減・褪色具合が異なってます。ですから一口に「OD#7」とか言っても実に色んな見え方がします。
US X型サスペンダー(Suspenders, Pack, Field, Cargo-and-Combat)

↓前部ストラップに付いている連結クリップは普通のモノです。長さ調節用のバックルも「目」型のごく普通のモノで、亜鉛合金製の鋳造タイプです。大戦以前からは青銅や真鍮の鋳造タイプがありましたし、その後大戦勃発以降スチール製のプレス製造タイプが出て、続いて亜鉛合金製の鋳造タイプが出てきます。連結クリップも同様に素材については青銅製、真鍮製、スチール製、亜鉛合金製がありました(もちろんバネ部分は除きます)。
US X型サスペンダー(Suspenders, Pack, Field, Cargo-and-Combat)

↓後部ストラップは前部と同じく連結クリップは普通のモノ。但しM-1936では長さ調節のためには、ストラップ上をスライドさせて任意の位置で留めることのできるセルフ・ロッキング・バックルがストラップ末端に設けられていたのに対し、当サスペンダーでは前部ストラップと同じ「目」型バックルが用いられています。間違いなく部品種類削減・製造工程省略のためでしょう。
US X型サスペンダー(Suspenders, Pack, Field, Cargo-and-Combat)

↓裏返してみました。のちに朝鮮戦争が勃発する前頃あたりには肩に当たる部分にクッションになるようなパッドが縫い付けられるようになります。冒頭で出てきましたいわゆる「M-1943」や「M-1944」と呼ばれているサスペンダーと同様のモノです。
US X型サスペンダー(Suspenders, Pack, Field, Cargo-and-Combat)

↓ここでオフィシャルなマニュアルを見てみます。当ブログでたびたび登場するQM3-1 Quartermaster Supply Catalog (May 1946)から当サスペンダーの項を抜き出してみました。少々ピンボケなのはお許しください。
US X型サスペンダー(Suspenders, Pack, Field, Cargo-and-Combat)

↓同じカタログにM-1936サスペンダーも載っていますが、「BELTS AND SUSPENDERS」のページに掲載されているのに対し、当サスペンダーは「INDIVIDUAL EQUIPMENT」のページに載っています。
上述してきました通り、背嚢との一体装備として当サスペンダーが詳解されています。この解説文を読めば、サスペンダーについて巷間言われている処の「M-1943」、「M-1944」呼称が本当は「俗称」であることが分かると思います(コレクターが便宜的に呼称するのを否定する訳ではありませんが、あくまでも便宜的な呼称である事に注意する必要があると思います。)。
US X型サスペンダー(Suspenders, Pack, Field, Cargo-and-Combat)

↓曰く
コンバット・フィールド・パックはサスペンダーを伴って背嚢を形成するのに使用出来、あるいは、フル・パックを形成するためにクイック・リリース・ストラップを用いてカーゴ・フィールド・パックを装着することも出来る。コンバット・パックには塹壕堀りショベルや銃剣を保持するためのタブとストラップが設えられている。ホースシュー・ロールを保持するためのストラップが設えられている。カーゴ・フィールド・パックは単体で休暇鞄として使える。サスペンダーは単体でカートリッジ・ベルトを吊り上げるのに使える 。
カーゴ・フィールド・パックとコンバット・フィールド・パックは、非常に酷似しているM-1945カーゴ・フィールド・パックとM-1945コンバット・フィールド・パックにとって替えられた。しかしながら、カーゴ・パックとコンバット・パックとを結合させるためのクイック・リリース・バックルのあった部分には、M-1945カーゴ・フィールド・パックとM-1945コンバット・フィールド・パックではダブル・バー・バックルが使われているため、それらは互換出来ない。
US X型サスペンダー(Suspenders, Pack, Field, Cargo-and-Combat)
(筆者注:下2つの画像でも分かりますが、「M-1944カーゴ・フィールド・パック」や「M-1944コンバット・フィールド・パック」というモノはありません。ただ「M-1945カーゴ・フィールド・パック」と「M-1945コンバット・フィールド・パック」と対比する上で「M-1944」と俗称で呼ばれている事が、このキャプションからもお分かりいただけると思います。)

↓上の記述にありますように、(極めて短時間のうちに)カーゴ・フィールド・パックは世に出てから間もなくM-1945カーゴ・フィールド・パックにとって替えられ、限定採用扱い(Limited Standard)にされてしまっています。
US X型サスペンダー(Suspenders, Pack, Field, Cargo-and-Combat)

↓コンバット・フィールド・パックも同様にM-1945コンバット・フィールド・パックにとって替えられてしまいます。同じく限定採用扱いにされています。1年余りの極めて短命に終わったカーゴ・パックとコンバット・パックです。その代わり後継のM-1945は後のM-1956コンバット・フィールド・パックの採用まで使用されますが、容量不足である点、パック単体では背負えない点であまり兵士からの評判は芳しくなかったようです。
US X型サスペンダー(Suspenders, Pack, Field, Cargo-and-Combat)
これら「M-1945」の付かないカーゴ・フィールド・パックとコンバット・フィールド・パックのことを「M-1944」と呼称するコレクターやショップがあるのは前述のとおりですが、上の詳解にもあったように、クイック・リリース・バーが付いていればいわゆる「M-1944」、ダブル・バー・バックルが付いていれば「M-1945」であると判別することができます。
今回の記事の主役はサスペンダーなのに背嚢の方に話が逸れてしまいました。済みません。


↓ここでレア(?)なモノを。上で見て来ましたモノとは前(下)4本のストラップの縫製が異なってます。メイン・ストラップの上からあと付けされる、本来臍の方を向いているはずのストラップが外側に向かって付いています。
US X型サスペンダー(Suspenders, Pack, Field, Cargo-and-Combat)
製造ミスなのでしょうか、バージョン違いの極レア物なのか?


実は…
通常のサスペンダーをこのように交差部分で…
US X型サスペンダー(Suspenders, Pack, Field, Cargo-and-Combat)
くぐらせて…
US X型サスペンダー(Suspenders, Pack, Field, Cargo-and-Combat)
もう一方の方もくぐらせると…
US X型サスペンダー(Suspenders, Pack, Field, Cargo-and-Combat)
まともに交差したように見えて…
US X型サスペンダー(Suspenders, Pack, Field, Cargo-and-Combat)
↓このようになるのです。もう一度同じようにすると元にに戻りますよ。持ってらっしゃる方はお試しを。
US X型サスペンダー(Suspenders, Pack, Field, Cargo-and-Combat)


いかがでしたか?
本記事の個体は状態から見て恐らく未使用のデッド・ストックだと思われます。私がWWⅡUS陸軍装備に興味を持ちだした1985年前後の頃、沖縄のアメリカ屋さんで肩パッドの付いていない大戦時製造モノの中古良品が2,500円でした。現在では肩パッド無しの大戦時製造モノの出品は滅多に見ることはありませんね。朝鮮戦争前頃以降製造の肩パッド付バージョンならば程度の良いものが結構出回っていますが、値段は下は2,000円位から上は6,000円位と、かなりバラつきがあります。金具に緑青が吹き出まくっていてもです。肩パッド無しのモノの出品があれば程度にもよりますが押さえておこうかなと思います。

それでは今回はこの辺で失礼します。ありがとうございました。







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Posted by Sgt. Saunders at 10:18│Comments(0)米軍(U.S.)Suspenders
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