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2015年01月18日

ドイツ軍M30ガスマスク(1)(Gasmaske 30 und Tragbüchse(1))

こんにちは。遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。
今年もおっさんの戯言・放言にお付き合いくだされば幸いです。
ご注文・間違いのご指摘等遠慮無きよう、お願い申し上げます。

さて新年一回目は、前年末に続いて「寄り道コレクション」の方からドイツ軍のM30ガスマスクと携行缶他(Gasmaske 30 und Tragbüchse, usw.〈German M30 gasmask and carrying canister, etc.〉)を解剖していきます。タイトルでお分かりの通り何回かに分けて投稿します。


いきなりレイアウトが上下逆さまで申し訳ありません。蓋の留め具も一目で分かりやすいようにと思ったのです。兵士が身に装備する時の状態に近いのは下↓の画像です。

携行缶右側から人体の背中・左肩・胸を廻って掛かる長い方のストラップと、缶左側から腰のベルトへ引っ掛けるための短いストラップが見えます。また、蓋の留め具を引っ張るためのストラップが見えます。この携行缶自体は1941年末頃以降に出た「長くなった」バージョンです。面体に装着する吸気缶の丈が長くなった事に対応するため缶の方も約3cmほど旧のモノより長くなりました。今回取り上げますM30ガスマスクは面体がゴム引き布であるのに対し後継のM38ガスマスクは面体が総ゴム製に替わるのですが、それにより「ゴワゴワ」感が増して旧の携行缶では面体を押し込んで収納するには長さが足りないので、缶の長さを伸ばしたのだとする方もおられます。旧の缶については蓋の留め具に「クランプ式」と上の画像のような「ばねラチェット引っ掛け式」がありましたが、本稿では「クランプ式」の画像は省略します(と言いますか、所有していませんので、他のサイトをご参照ください)。

入手時は「こんなに小さいのか」というのが第一印象でした。タミヤのミリタリーミニチュアシリーズのドイツ軍兵士のフィギュアを作っていると長さで10cm、太さで3cmほどはもっとデカイものだと勝手に思っていました。
この携行缶を目にする時に考えるのが、携行用ストラップを通すために缶に熔接されているリングの「向き」です。
腰のベルトへ引っ掛ける方の短いストラップを缶に固定するためのリングは、腰ベルトと平行になるように熔接すれば、ストラップが捻じれてリングの下方に接する部分に荷重が偏ることなくベルトへ引っ掛けられますし、肩廻りストラップの固定用の2つのリングの向きも、「く」の字になるように熔接されていますが、逆「く」の字( 「 〉」 )にした方が、やはり素直にストラップに荷重が掛かるようになるのではと思うのですが。実際1936年には、リングによる摩耗からストラップを守るために「Verstärkungschieber(『補強スライダー』といったところ)」という革製の当て具が開発・支給されています。わざとストラップが捻じれるようにさせて、その復元力をもって携行時の振動に起因して缶がブラブラ動くのを抑制するためだったのかも?とも考えます。ドイツ人が設計したものですので、何か正当な目的があったと思うのです。

↓蓋上部。

いつ誰が書いたのか、鉛筆で「Oberndorfer」との記載があります。「オベルンドルフ人」もしくは固有名詞?

↓蓋の留め具。引っ張る為のストラップがかなり傷んでいます。最近では質の良いレプリカが出ていますのでオリジナルにこだわる際は要注意です。


↓この内部にバネが仕込んであります。製造者のロゴマーク。


↓更に拡大。このロゴマークがどの製造者のものかまだ判りません。


↓蓋を開けます。まずストラップをしっかり持って、


↓ぐっと引っ張って、留め具の穴がポストから抜けるようにして、


↓留め具を上にあげて、


↓解放します。これで蓋を開くことができます。


↓蓋を開けるとこんな感じです。面体に包まれるようにしてある黒っぽいモノは皮膚解毒剤ケース。


↓蓋と本体とをつなぐ蝶番部分。


↓底です。「D」の文字は「Dicht(気密)」の意。中身のガスマスクは放棄して、この缶を食料品などのコンテナに流用する兵士が多く、軍当局がそんな用途には使うなと通達を出したのはご存じの通りです。蓋にあった鉛筆書きの「Oberndorfer」がこちらにもあります。


↓蓋の裏には曇り止め「透明ディスク」収納用のポケットがあります。


↓拡大。


↓上下逆さまにして更に拡大。

「els41」とあり、1941年チェコの「Stadt Rokycaner Eisenwerke」製であることが分かります。

↓開けるとありました。硫酸紙で出来た小袋。


↓ 開けても小袋が飛び出さないように細いバネが押さえています。大戦後期には予備の小袋は4つ携行するよう規定されていましたが、この個体には3つ小袋が収められています。


↓小袋です。

曰く、
「"透明ディスク"
湿気から守るために;拭わない、縁のみを触る。」

↓裏面の表記。

曰く、
「透明ディスクは、マスクの内側から「内側」と書いてあるのが読めるようにして取り付けること。」

↓開けてみました。


↓白い(経年により黄ばんでいますが)ボール紙を挟むようにして両面に「透明ディスク」が1ペアでセットされています。

何か書かれています。

↓表裏反対でした。「44 hrr Innenseite 1210(下線部は推測読みです。本当のところは不明です。)」とあり、「44」は製造年の下2桁?「1210」はロット番号等?。3つ上の画像の説明にあった「内側(Innenseite)」の表記があります。レンズにセットする際に裏表を間違えないように、マスクを被った時に「内側」という文字が読めるようにセットしなさいよ、ということです。


↓さきほど触れましたようにこの携行缶には3つ入っていました。表はどれも同じ表記ですが、


↓裏は少し異なっています。左端の袋には上で先ほど触れました「透明ディスクは、マスクの内側から「内側」と書いてあるのが読めるようにして取り付けること。」との表記のみですが、右2つの袋には、その表記に加えて、更に表記が追加されています。


↓右2つの袋の表記です。上3行は左端の袋と共通ですが、その下に追加の表記が。

4行目から。曰く、
「38式ガスマスクの2重透明ディスクとして使用するための、最初に1枚透明ディスク、そして間隙材としてボール紙を挟み、続いて2枚目の透明ディスクが入っている。
バネ座金がしっかり留める」(大意)
38式との記述ですが、30式マスクにも装着できます。これらの他にも小袋の表記パターンは数種類あります。

↓吸気缶を下にして突っ込んで収納します。


↓引っ張り出します。


↓面体が見えました。


↓吸気缶が見えてきました。


↓並べてみました。面体は30式で、携行缶は38式面体に対応した「長くなったバージョン」ですので若干丈に余裕があります。

(汚い背景には目をつぶって下さい。)

↓面体を正面から。


↓着用した時ほどに広げてみました。重量バランスをとるため吸気缶を外しました。

両眼間の上(眉間)の数字の「2」はサイズ表示です。大きい方から「1」から「3」まであって…といった類の講釈は今回はやめます。もう皆さんご存じであったり、既に他のかたがたのHPなどで詳解されていますので。着用者の鼻が押し潰されないように鼻筋にはゴムで凸になるように形成されています。

面体は後回しにして、これを。↓

缶の中です。缶の口から4cmくらいのところから下側にはブリキ(?)の内張りがあります。兵士個人により取り去られている場合もあるそうで、コレクションとして入手の際には要注意です。

↓底に四つ葉のクローバーと布切れが。

清掃用の木綿布(Reinigungslappen)と底面に押さえつけておくためのバネ(Lappenhalter)です。

↓バネを取り出すとこんな形に拡がります。このバネは1939年11月に制式化されました。


↓清掃用布は約22cm平方くらいの大きさです。縁はきちんと始末してあります。



今回はここで一旦終わります。続きは次回へ。
どうぞよろしくお願い申し上げます。では、また。