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2018年09月23日

M-1943/M-1956ショベル・キャリア(Carrier, Intrenching Tool, M-1943/56)

M-1943/M-1956ショベル・キャリアの変遷(The changes on M-1943/M-1956 shovel carriers' features)

みなさんこんにちは。
自民党総裁選挙、おめでたい安倍総裁におめでとうと申し上げます。
近所の児童公園の真ん中に1本そびえていた大きなモミジバフウの木が、先日近畿地方を縦断した台風21号の猛烈な風を受けながらも必死に耐え抜いたように見えたのですが、風で幹が10度ほど傾き、その反対側の根の中・末端部分が地面を割って地表へせり上がって露出してしまいました。元通りに埋め戻されるのかどうか心配しておりましたが、根を埋め戻す労を厭うたのか、我が自治体の公園管理担当部署は幹を根元から80cm辺りの所で切断して撤去してしまいました。公園のシンボルにもなっていた大木が無くなってしまい、寂しさを禁じ得ません。


さて、定刻を一週間と1時間ほど過ぎて今回お送りするのはまたショベル絡みモノです...。もう飽きましたか?いやしかし最近のショベル本体の投稿に伴って手元にブツが集まっている今これをやらなければ、次にやろうと思う機会が訪れないのではと思いますので今やります。どうかお付き合いください。

↓まず「M-1943」のヴァリエーション違い4種を一挙にご覧いただきます。説明の便宜上①から④の番号を付けました。製造時期順になっています。なおお断りしておきますが、スタンプや縫製等に係るヴァリエーション違いはここで挙げるもの以下にも膨大に存在します。あくまでも私が現在コレクションしているモノのみについて触れていますことをご理解ください。

①から③は色目の違いはありますが表ヅラはほぼ同じです。スペックの上では、色合いは当初はODシェード#9、1943年後期頃からはODシェード#7が用いられ始め、製造時期によりそれぞれのシェードを持つ縁取りテープや本体生地の部材等が入り混じって作られたモノ(「トランジション」)が発生しました。これはショベル・キャリアに限らず、この時期の装備品全般に共通する事です。①は本体生地・縁取りテープともODシェード#9です(縁取りテープの色調が若干本体よりも濃いのでODシェード#7かと誤認しそうになりますが、これは染められたモノ固有の色褪せ具合でそのように見えているだけです。)。一方②から④も褪色具合に由来して個体により若干の濃淡は認められますが、OD#7です。その他の大きな差異としては①から③のフラップの留め具はLift-the-Dotであるのに対し、④のみスナップ・ボタンとなっていることくらいです。

↓裏面です。裏面は①が固定のダブル・フック・ワイヤ・ハンガーを持っているのに対し、②から④はダブル・フック・ワイヤ・ハンガーの位置を高中低の3パターンから選択できるようになっています。また①ではショベルを収納した時に匙部先端が当たる下端部にウェブ生地(OD#7)が当てられて補強されていますが、②~④ではこの部分と背面側の両サイドはダック生地を2枚重ね構造にして強度を持たせてあります。①はフラップとそれに続く背面側、表面側すべてがダック生地1枚構造になっています。②は背面側両サイドがダック生地2枚重ね構造で、フラップと表面側は1枚構造になっています。③④も背面側両サイドがダック生地2枚重ね構造で、フラップが1枚構造(留め具部分だけ2枚構造)、表面側が上部4cm程だけが2枚構造になっています。


↓それでは2つづつ時系列に沿って見ていきます。外見はどちらも同じですが、差異が一点。①②の両方とも表面内側にはショベルを収納した時にブレードの縁が当たる部分に茶革の補強(青矢印)があり、その末端が表面に折り返されて1cm~2cm程見えています。一方①には背面内側にも茶革の補強(赤矢印)がありまして、②にはありません。これは元来①の全体構造がダック生地1枚構造になっており、ブレード縁が当たる部分の強度が足りず、その補強のために表面内側・背面内側の両方に革が当てられたもので、②に背面内側に補強革が無いのは上でも述べましたように背面側両サイドがダック生地2枚重ね構造になっており、背面内側には補強は必要ないとの判断によるものだと思われます。スタンプから①は1943年製、②は1949年製である事が分かります。


↓背面側から。既に触れましたように①の背面には背面内側にも革の補強が施されていることが分かるステッチ(黒矢印)が見えます。冒頭の画像の②から④の表側にも同じステッチがあり、表内側に補強革があるのが分かります。②ではダブル・フック・ワイヤ・ハンガーを任意の位置(高さ)に移動させられるようになっており、兵士の体格や何処にぶら下げるかを考えて位置を変えることが出来ます。


↓②と③の対比です。②では表内側の補強革の末端が表面へ折り返されて1cm程見えていますが、③では表面へ折り返されることなく、表内側の補強革は赤矢印のステッチの部分までしかありません。水色矢印のところまで上部4cm程がダック生地2枚構造になっているので強度は十分だと判断されたのだと思います。
他の差異としてはフラップ上端のLift-the-Dotのある部分が③では補強のためウェブ生地2枚構造になっているのと、フラップの内側のショベル収納時にヒンジが当たる部分の補強が、②ではウェブ・テープが縦にチョンと短く貼り付けられていたのが、③では横に大きく長く貼り付けられており、ヒンジだけでなくブレードの後端全部分をカバーするようになってます。


↓裏面です。ヒンジ部の補強のためのウェブ・テープ貼り付けのステッチが異なるのは当然ですね。他の差異としては③ではダブル・フック・ワイヤ・ハンガーの上にウェブ・テープのループが設えられています。


↓拡大しました。このループに背嚢(M-1944(正しくは「Pack, Field, Combat」)やその後継の「Pack, Field, Combat, M-1945」)のストラップを通して用います。


↓スタンプの拡大です。

CARRIER, SHOVEL, INTRENCHING M-1943
5140-261-4993              FIA-381
CHAMPION CANVAS CO.         1957
とありまして、1行目は制式名称ですが、2行目はまずFSN(Federal Stock Number)です。最初の4ケタ(Federal Supply Classification Group)が5140となっており「Hand Tools, Non-Edged, Non-Powered(ハンド・ツール、刃は無し、動力無し)」に分類されています。あとで見る④ではここが8456となって「Individual Equipment(個人装備品)」の括りに改めて分類されます。続く7ケタ(Federal Item Identification Number (FIIN))は同じです。そのずっと後ろの「FIA-381」の意味が不明です。どなたかお知恵を授けて下さいませんでしょうか。今回いろいろ調べましたが分かりませんでした。3行目は製造者名と製造年です。

↓次は③と④です。違いはフラップの留め具がLift-the-Dotからスナップ・ボタンに変わったことのみです。


↓④の裏面です。③と同じくダブル・フック・ワイヤ・ハンガーの上にウェブ・テープのループが設えられています。


↓スタンプです。一部かすれていますが、

M-1945 CARRIER
INTRENCHING TOOL
8456-261-4993
DSA100-68-C-321
1、2行目は制式名称、3行目はFSN、4行目はDSA(Defense Supply Agency )ナンバーです。契約が1968年会計年度であることが分かります。

↓最後に「M-1956 INTRENCHING TOOL CARRIER」を1つ。M1956は1つしかコレクションしてません。ダブル・フック・ワイヤ・ハンガーによる装備連結を主体とする「M-1910システム」から、新たにスライド・キーパーによる装備連結を導入した「M-1956システム(M-1956 Load-Carrying Equipment)」の構成要素の一つです。


↓フラップ裏面のショベルのヒンジが当たる部分の補強がこれまで見て来たものと違い、スナップ・ボタン周りの補強と併せて縦に長くウェブ・テープが貼り付けられています。それよりももっと大きく異なるのは見てお分かりの通り、銃剣を下げるためのアイレット・タブと固定ストラップが加えられたことです。ただでさえピストルベルトへ装着する装備品が多い中、ショベル・キャリアーをピストルベルトに装着したら銃剣はどこに吊ればいいのじゃとの声に応え、キャリアに銃剣を吊るという解決策を見出したのです。アイレット・タブの下側にはご丁寧に革で補強が施されています。

WWIIではドイツ軍が同じように銃剣をスコップに上手く纏めてましたね。それも参考にしたんでしょうね。

↓M8A1スキャバードを装着してみました。ダブル・フック・ワイヤ・ハンガーをアイレット・タブに装着し、バタつき防止ストラップで…


↓このように留めて完了。


↓銃剣を収めました。


↓裏面です。ピストルベルトへは2つのスライドキーパーで装着します。そのほかの構造は今までのモノと大差ありません。


↓スタンプです。

CARRIER, INTRENCHING TOOL
M-1956
DSA-1-143-E-62
FSN-8465-542-5842
制式名称、DSA(Defense Supply Agency)ナンバー(1962年会計年度契約である事が分かります)とFSN。Federal Item Identification Number (FIIN)がM-1943とは別の番号が割り振られているのは制式名称が別ですから当然ですね。サイズの大きい「07」は単なるロット番号です。

↓キャリア内側です。ブレード縁対策の革補強は②と同じパターンです。背面側はダック生地1枚仕立てであるのに内側の革補強がありません。ヒンジの当たる部分の更に下に革の補強が入れられています。これは中に収納するモノが、ショベルブレードのみを有しているM-1943イントレンチング・ショベルから、ツルハシ(ピック)が追加されたM-1951イントレンチング・ツールへと変化し、厚みが増した分テンションがより掛かることとなった部分に補強を加えて対応したのだと推察します。それ以外に補強を加える理由が分かりません。


如何でしたでしょうか?
サバゲにはこのエントレンチング・ツール・キャリアにしっかりショベルを格納してベルトから提げて或いは背嚢と共に担いで参加する方はあまりいないと思いますが、リエナクト的要素を入れるのが好きな方はその重さに耐えうる筋力が必要ですね。
最後に挙げたM-1956キャリアですと程度に拘らなければ現在でも単体で3,000円位から入手できます。海外でもそう困難無く手に入ります。

それでは今回はこの辺で失礼いたします。ありがとうございました。









  

Posted by Sgt. Saunders at 13:25Comments(0)米軍(U.S.)Intrenching tools

2018年09月02日

M-1951イントレンチング・ツール(M-1951 Intrenching Tool)

皆さんこんにちは。
台風21号が接近しつつあり、4日には雨風がとても強くなるとの予報が出ております当地大阪、今朝方は晴れて風もそれほど強くなく、時折ツクツクボウシの鳴き声が響き、至って平穏な晩夏を迎えております。定刻を3時間余り過ぎての投稿です。

さて今回採り上げますのは2回前にお送りしました記事「M-1943イントレンチング・ショベル(M-1943 Intrenching Shovel)」(←過去記事を別ウィンドウで開きます。今回の記事と並べてご覧頂くと相違点が良くお分かりいただけると思います。)の後継モデルとなります「M-1951イントレンチング・ツール(M-1951 Intrenching Tool)」です。土を掘るためのショベルに、固い地面を穿ち掘り起こすための「ピック・ブレード(ツルハシ)」を加えて、より一層塹壕を構築しやすく改良されました。また同時にこのM-1951イントレンチング・ツールは旧式のM-1910ピック・マトックの役割も引き継いで置換されることとなりました。

↓まずはキャリアーに収まっている図からご覧ください。


↓フラップを開けます。


↓上へ引き上げて、


↓はい、引き上げて…と、


↓抜き取りました。柄は木製でショベル・ブレード(匙部)は鋼製で、全体がOD色で塗装されているのはM-1943と同じです。OD色の色調はヘルメットの塗装等と同様WWII時のやや暗いODから、もっと明るいODへと変わりました。このM-1951は、畢竟「M-1943にピック・ブレードを追加したモノ」であると言えます。


↓M-1943と並べてみましょう。上は前回出たM-1943、下が今回登場のM-1951です。塗装の色調の違いがお分かりいただけると思います。また、M-1943はショベル・ブレードが角ばった五角形のホームベース型と言えるのに対し、M-1951は弾丸型と言いますか、角が丸められています。また、その趣旨が分からないのですが、M-1951のブレードの両隅には直径9mm程の孔が空けられました。何のためなのでしょうか?


↓ブレードの長さは全く同じです。上↑の画像では手前側のM-1951のブレードがM-1943よりも長く見えていますが、レンズの所為です。
M-1943では固定ナットが見えますが、M-1951では固定ナットがピック・ブレードに覆われて見えにくいですね。ピック・ブレードそのものが柄と色が同じなので溶け込んで見辛くくなっています。
ブレードとヒンジとはどちらも4つのリベットで結合されています。


↓柄を横から見ました。上で触れたピック・ブレードの位置関係がお分かりいただけます。M-1951の柄の末端には孔が穿ってあり、例えばフックに引っ掛けておける等、少し便利です。また、この画像では分かり辛いですが、柄の形状が、M-1943では太い部分・くびれている部分とも断面は円形なのに対して、M-1951ではくびれている部分は楕円形です。2つ上の画像ではどちらも同じ程度のくびれがありますが、本画像ではM-1951の横から見たくびれが小さいのがお分かりいただけますでしょうか?


↓再びM-1951を。この視点からは柄のくびれが大きいのが分かります。上の画像の角度からだとあまりくびれていないのがお分かりいただけると思います。
本個体はブレード先端に錆はありますが、それ程使い込まれてなかった様です。ブレードのOD塗装の剥げ具合が比較的少なく、柄の塗装もかなり残っています。

↓ショベル・ブレード裏側の拡大です。丸みを帯びた形状は、「イザとなれば白兵戦の武器になる」というのを忘れさせそうです。


↓ブレードの表側です。厚く頑丈なピック・ブレードがショベル・ブレードの反対側にセットされています。


↓ショベル・ブレード隅に施された刻印。

U.S.
H-W
1952
とあり、1952年H-W社製造であることが分かります。と言っておきながら、実はまだ「H-W」についてさっぱり分かっていません。
本個体はM-1951が世に出て間もない1952年製ですが、M-1951自体はその後ヴェトナム戦争後期の1969年に3つ折りの新型イントレンチング・ツールが採用されるまで同一スペックで製造・支給が続けられました。代表的な製造者としてはWWII時代から納入が続く「AMES」社が有名です。

↓ソケット・固定ナット・ワッシャー・ヒンジ部を横から見た図です。


↓まずは固定ナットを...、


↓普通のネジと同様回転して緩め…、


↓はい、緩めて…、


↓ピック・ブレードのみを起こして「片ツルハシ」として使うようにしてみましょうか。


↓この角度まで起こしてナットを…、


↓締めます。


↓はい、「片ツルハシ」になりました。


↓ナットを緩めてピック・ブレードを柄とに一直線になるようにしてナットを締めれば、これ何になったと言えますでしょうか?銛(モリ)?鎗(ヤリ)?ちょっと寸足らずですが銃剣術に使えるような...。


↓ショベル・ブレードも起こして、「ピック・マトック」になりました。


↓ショベル・ブレードのみ起こせば「鍬」になるのはM-1943と同様です。


↓ショベル・ブレードを伸ばして「ショベル・モード」です。


↓ヒンジ部分の拡大です。ショベル・ブレードのヒンジの外側にピック・ブレードのヒンジが被さる形になってます。


↓ピック・ブレードを拡大。先端には35度位で刃が付けられています。


↓反対側から。厚みは6~7mm程あり、朝鮮半島の高地凍土をも穿つのに十分そう?です。


↓M-1943イントレンチング・ショベル・キャリアに代わり、ヴェトナム戦争の勃発前に制式化されたいわゆるM1956装備(M1956 Individual Load-Carrying Equipment)の一構成要素としての、新しいキャリア「M-1956イントレンチング・ツール・キャリア」に収まった図です。


↓ピック・ブレードが付いていないM-1943イントレンチング・ショベルを収めるためのM-1943イントレンチング・ショベル・キャリアに、ピック・ブレードの付いたM-1951が収まるのか試しましたが、このように特に支障なく収まりました。若干パッツンパッツンな気もしないではないですが。



以上見て参りましたが、如何でしたでしょうか?

M-1943の後継・改良と併せ、旧式で重く嵩張る分解式のM-1910ピック・マトックとを統合して1951年に制式化され実際の支給・配備は1952年からとなった今回のM-1951ですが、実は既に1944年の終わり頃には需品部(QM)はM-1943にピックを追加するトライアルに着手しており、そうこうしているうちに大戦が終結してしまったのですが、その後研究が続けられてM-1951へと発展したのでした。

M-1943と同じく、あまり市場では人気がないのか出物は少ないですが、ある程度状態のいいモノが大体5,000円前後で入手可能です。ヴェトナム戦のモノは比較的見つけやすいです。今回の個体のように1950年代製のモノは見る機会が少なくなってきたと思います。



それでは今回はこの辺で失礼いたします。台風の襲来には十分気を付けましょう。さようなら。


  

Posted by Sgt. Saunders at 15:24Comments(0)米軍(U.S.)Intrenching tools