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2017年12月17日

M-1938 キャンバス・レギンス(Leggings, Canvas, M-1938, Dismounted, od)

みなさん、こんにちは。
当地大阪府下某市での午前10時現在の気温は4.6度。西南西の風、風速は3.1m/s。快晴です。M1941フィールド・ジャケットだけでは寒いです。走り回ったら別ですが。
前回の投稿からほぼ2カ月も空けてしまいました。隔週日曜日の正午に投稿という自主目標はどこへやら。体調や仕事の関係もありましたが、ネタについての調べ物に結構手こずりまして、やっと本日どうにか投稿します。

さて今回採り上げますのは米軍地上部隊兵士のWWⅡ初期~後期までのコスプレには必須アイテムであるM-1938 od 徒歩部隊用キャンバス・レギンス(Leggings, Canvas, M-1938, Dismounted, od)です。
トラウザースの裾と、くるぶしまでのコンバット・ブーツ腰上部とを覆うレギンスは、巻き脚絆(ゲートル)と並んで種々の軍で採用されていましたが、米陸軍の場合大戦末期にはいわゆる2バックル・ブーツ(←過去記事に飛びます)が現れ、儀仗兵やMP等を除いて、レギンスはやがて過去の遺物となって行きます。

↓右はM-1938 od 徒歩部隊用キャンバス・レギンスです。左のモノもそうですが、ふくらはぎ・脛部分にグルッと巻き付けてレースをフックに引っ掛けて留め、ストラップを内くるぶしからヒールの前を通して外くるぶしへと廻してバックルで固定して使用します。

では左のモノは何?となりますね。左のモノも色目以外はM-1938 od 徒歩部隊用キャンバス・レギンスの特徴を備えており、外見は同じように見えます。レースの通るハト目穴(アイレット)の数やフックの数が違いますが、同じ物品に見えるモノでも、製造時期によりこのようにハト目穴やフックの数が異なるモノもあり、また、QMカタログ上では「別物」とはなっていなくても、細かく仕様変更が行われた結果、多くのバリエーションが存在することになりました。コレクター間ではハト目穴やフックの少ないものを「エコノミータイプ」等と呼んで区別することがあります。ただ、上の画像の左のモノは「Leggings, Canvas, M-1938, Dismounted, od」の「ハト目穴やフックの数が異なるバージョン」であるとは断言できません。なぜなら、そのようにスタンプされていないからです。下の方で詳解します。

↓アイレットの数の違いと、それによるレースの通し方の違い。


↓右の方のM-1938 od 徒歩部隊用キャンバス・レギンスの内側のスタンプ。「LEGGINGS DISMOUNTED M-1938」と略式の表記。サイズが「3R」。製造者はWERMAN LEGGING CORP(ORATION)で、1942年9月28日付でジェファーソンヴィル・クオーターマスター・デポ(Jeffersonville Quartermaster Depot)との契約。「W431 Q.M. 10219 0.I. 2170」はジェファーソンヴィル・クオーターマスター・デポが起案した契約書に基づき陸軍省が需品部向けに、ナンバー10219 O.I. 2170で契約したものであることを意味します。「W」はWar Department(陸軍省)、「431」はジェファーソンヴィル・クオーターマスター・デポを表すコードです。ストック・ナンバーは72-L-61895。


↓毎度おなじみQMカタログ(Quartermaster Supply Catalog)を見てみます。まず1943年8月版です。

ピンク色で囲っている部分が、この個体が「M-1938 od 徒歩部隊用キャンバス・レギンス(Leggings, Canvas, M-1938, Dismounted, od」であると断定できる根拠です。スタンプで名称の一部が省略表記されていても、ストック・ナンバーからその個体が何であるか識別することができます。
キャプションに曰く「このレギンスは全ての兵・下士官により使用される。No.6ズック製で丈は12と3/4インチ(約32.4cm)。フックとハト目穴で紐締めされ、ウェブ・ストラップでサービス・シューズに取り付けられる。オリーブ・グリーン色で、R1からR4の4サイズで供される。」
緑色で囲っているモノは名称に「Protective」という語が付いただけです。因みにこの「Protective(防護処理済)」というのは化学戦部(Chemical Corps)により衣類一般にガス攻撃防御のためのガス検知剤が塗布・浸潤加工されたモノであることを意味し、元の物品とはまた別のストック・ナンバーを割り当ててしっかり区別されています。

↓こちらは1946年5月版です。赤線で囲っているモノは、上の画像のピンク色で囲っている「Leggings, Canvas, M-1938, Dismounted, od」の「od」の部分が「od No.7」に変わり、且つストック・ナンバーも変えられています。で、キャプションは同じ(「This legging is」が「These leggings are」になっている点は除く)。つまり、単に「od」と表現されていたものがしっかりと「od シェード#7」へと変更され、新たに「別物」として誕生したということです。odと一口に言っても「カーキ」、「タン」、「オーカー」、「オリーブドラブ」等々様々な色調になっているのはWW2米軍ファンならご存知の通りですが、ピストルベルトやカートリッジ・ベルト、M-1938 od キャンバス・フィールド・バッグ(ミュゼット・バッグ)等、他の米軍装備品と同様、「od シェード#3(少し緑味のあるカーキ色)」あるいは「odシェード#9(WWI以来からのカーキ色)」から「od シェード#7(緑色の強いOD色)」へ明確に変更されたということが分かります。ピストルベルトやカートリッジ・ベルト、M-1938 od キャンバス・フィールド・バッグ等は、このような名称やストック・ナンバーの変更は特に無いままシェード#7に替わって行きました。
また。この1946年5月版にも引き続き緑色のモノが載っています。水色のモノと合わせて紫色下線で示しているように(上の画像でも)「防護処理がなされていること以外はM-1938 od 徒歩部隊用キャンバス・レギンスと同じで、乗船港においてのみ支給される」と説明されています。

画像に出せませんが(単にまだ掲載されているカタログを入手していないからなのですが)上記のモノが出る前のレギンスとして「Leggings, Canvas, Dismounted, M-1938(ストック・ナンバー:72-L-60591-72-L-60598)」と「Leggings, Canvas, Mounted, M-1938(ストック・ナンバー:72-L-618??-72-L-618??)」が存在します。また、これまた姿形が全く同じの「Leggings, Canvas, Women's (ストック・ナンバー:72-L-62305-72-L-62315)」がありますので要注意です(Army Service Forces Catalog - QM 3-2 (WAC's and Nurse's Clothing & Equipment)に掲載)。

↓左の、もう一方のレギンスの内側のスタンプです。サイズは「3」となっており、 陸軍の場合の「R」が欠落していること、「Leggings,Canvas, Dismounted, M-1938」等の名称スタンプが無いことから、海軍/海兵隊用であると思われます。思われます、というのは確実な根拠が無いからです。偏に知識不足であることに他なりません...。製造者はDIANA LEGGING CORP(ORATION).。Purchase Order No. M8(?)-510 (改行)DATED-June 25 1942(?)とあります。Purchase Orderというのは陸軍では通常の契約手続きを取っている時間的余裕がない場合にしばしば取られた調達法ですが、海軍/海兵隊でもそうだったのでしょうか。



↑ストラップを留めるバックル。上でさっき見た左の海軍/海兵隊モノはハト目・フックも含め金具は全て真鍮製、↓下の陸軍のモノは銅もしくは鋼製です。



ストラップがバックルで留まっている状態。↑上がさっき見た左の海軍/海兵隊モノ。↓下が陸軍モノ。


↓縫製のパターンも同じです。

但し、フックの付いている側(画像では右側)の上端のハト目穴が、上の海軍/海兵隊用のモノには一つだけ、下の陸軍のモノには2つ設えられています。これも上のモノが陸軍用のモノではなく海軍/海兵隊用のモノであると思われるとした根拠の一つです。



前述のとおり、同じM-1938でも大戦後期になるとフックやハト目穴の数が減っているモノが出てきますが、決して上掲のようなカタログ上では、特にそれについての言及はありません。コレクターが「エコノミータイプ」などと区別して呼ぶのはこのためです。
また、「od No.7」も途中から丈が詰められて製造されるようになりました。もちろん物資節約のためです。

陸軍のレギンスにはスタンプされている情報量が比較的多く、そのモノが何であるかを識別するのが容易です。またスタンプのほかに生地の縫い目にサイズ表記(例えば「3R」とか)のある1cm角ほどのタグが縫い込まれているモノもあります。これは使用によりスタンプが薄くなってサイズが判読できないようになってもサイズはタグで確認できるようにして、回収・補修に回ったモノが再び支給される時にサイズが分からずに困るということを回避するためです。海軍/海兵隊のモノはスタンプの量が少なくて簡素で且つ時期によって表記内容が様々なので、まだ全容が掴みきれていません。

私が最初に入手した米軍のレギンスは海兵隊用のモノでした。フィラデルフィア・デポのタグが付いたサイズ3のデッドストックで、コレクションを始めたばかりの時期で海兵隊用とは知らずにです。今からもう30年ほど前のことで当時2,500円位だったような記憶があります。購入先はサムズミリタリ屋さんでした。

現在、中古・良品のモノなら4,000円もあれば十分入手可能です。出物は少ないようですがデッド・ストックでも6,000円ほども出せば比較的容易に入手できるようです。
最近はとても高品質なレプリカが出ており、リエンナクトではそれを使用される方が多くいらっしゃいます。レプリカのままならいいのですが、適度なウェザリングが施されて「実物」になってしまっているモノがオークション等でも非常に多く見られます。気を付けたいものです。

それではまた、お会いしましょう。





  

Posted by Sgt. Saunders at 12:19Comments(0)Boots, Shoes, Footwear

2016年01月31日

WWⅡU.S. 2バックル・ブーツ(WWⅡU.S. Buckle Boots)

こんにちは。先週末は40年振りの大寒波到来で交通・ライフライン等への影響は如何に!と危惧した割には、当地大阪は、ただ寒かっただけ~という結果に終わり、胸を撫で下ろしております。
皆さまのところは大丈夫でしたか?

以前にも触れましたが、私儀、入院・外科手術を経て退院を果たし、現在ようやく従前の生活パターンに戻ってきました。
この間しばらくお休みを頂いておりました当ブログ、今後また健気に細々と続けて参りますので、どうぞ宜しくお付き合い下さいますようお願い申し上げます。

さて長い口上には何卒ご容赦いただいて、本年最初のネタとして、WWII U.S.陸軍歩兵装備ファンなら一度は欲しくなる(?)俗称「2バックル・ブーツ」、制式名称「Boots, Service, Combat, Composition Sole」を採り上げます。

バックルが2つあるから2バックル・ブーツ、何ともまぁ安直なあだ名で呼ばれてますが、それ以前の、レギンスとの組み合わせで用いられていたサービス・ブーツと区別する言い方としては外見の違いと特徴とを十分言い表せていますね。
かのTV映画「COMBAT!」で、サンダースの分隊に、この見慣れない新型のブーツを履いている補充兵がやって来るや隊員が目ざとくそれを見つけ、たちまち分隊中の皆の羨望を集め、サンダース軍曹も「金を出すから譲ってくれ」と冗談交じりでその新兵を弄るエピソードがありましたね。

↓2足持ってますが、より程度の良い方です。

これが制式採用されるまでは、くるぶしの上までのいわゆる「アンクル・ブーツ」とレギンスの組み合わせで足元をガードしていましたが、この2バックル・ブーツによりレギンスが不要になりました。

↓本ブログでたびたび出てきますQuartermaster Supply Catalogの1946年5月版のQM3-1, ENLISTED MEN'S CLOTHING AND EQUIPMENTから。

制式名称は「Boots, Service, Combat, Composition Sole」、直訳すると「合成底戦闘用サービス・ブーツ」です。「バックル」の文字はありません。
キャプションに曰く、
「このブーツは、腰革の上部に付けられた、レギンスの必要性をなくすバックル留めの長さ5インチのレザーカフを有していることを除いては『Shoe, Service, Reversed Uppers, Composition Sole(合成底裏革仕様サービス・ブーツ)』に似ている。」
レギンスは、装着に時間が掛かって面倒臭かったんだなぁという事が良く分かるキャプションです。

↓外側と内側を。

この個体は程度とサイズ(8E)がとても良いので気に入っています。

↓腰革はカタログのキャプションにもあったように、『Shoe, Service, Reversed Uppers, Composition Sole』同様に裏革仕様です。


↓後ろです。こう見るとバックルの付け根はほとんど真後ろに付いていますね。


↓バックルが付いているカフの内側はこの個体では白色のコットン内張りです。もう一足持っておりますが、そちらではOD色(と言うか濃緑色)の内張りです。


↓ベロの部分も裏革仕様です。


↓カフの拡大です。

バックルは真鍮製。調節穴のハトメはアルミ?亜鉛合金?比較的軟らかい金属で出来てます。

↓バックルの拡大。革ストラップが通り易いように反っています。


↓バックルの裏側。天地が逆になっていますが、かの有名なファスナー・メーカー、「RAU F. CO.(RAU FASTENER COMPANY)」と、その所在地「PROV. R.I.(PROVIDENCE, ROADISLAND:ロードアイランド州 プロヴィデンス)」の刻印があります。


↓カフの内側。サイズ「8E」と検査官のイニシャル「HN」のエンボス、メーカーなどのスタンプ。


↓もう片方側のカフにも全く同じエンボスとスタンプが。つまり「左右マッチング」です。片方ずつ違うメーカー・異サイズのモノが一まとめで売られていることも多い中、左右がマッチしているのは嬉しいです。


↓メーカーなどのスタンプ。


↓カフの内側だけでなく、腰革の内側にも全く同じ表記のスタンプがあります。


↓更に拡大。

「A. S. KREIDER SHOE MFG. CO」、「8E 726529」、「BOSTON DEPOT」、「MAY 15 1945」、「W19-074 QM-3719」との表記です。製造者名「A. S. KREIDER SHOE MFG. CO」、サイズは「8E」で、その後の「726529」が何を表してるのかが分かりません。「BOSTON DEPOT」は文字通りボストン(クオーターマスター)デポが仕様責任を持っているという意、「MAY 15 1945」は契約年月日、「W19-074 QM-3719」はボストン・クオーターマスター・デポが起案した契約書に基づき陸軍省が需品部向けに、ナンバー3719で契約したものであることを意味しています。「W」はWar Department(陸軍省)、「19-074」はボストン・クオーターマスター・デポを表すコードです。「QM」の部分は陸軍のどの兵科向けのものであるかを示す略号で、Quartermaster即ち需品部の意。ここがもし例えば「ac」なら航空隊向けという具合です。最後の番号は契約番号です。

↓真上から底を覗いてみました。


↓暗いのでストロボを焚きました。


↓更に拡大。

表革(スムース・アウト)の内底にサイズ「8E」、「U.S.A. NO.85」との刻印があります。

↓最後に底です。

さほど擦り減ってはおりません。

↓ヒールです。上下逆さまですが「BFG」の文字を意匠化したロゴマークは「B F Goodrich」社のもの。タイヤメーカーとして世界初の空気入り自動車用タイヤを開発したB F Goodrich社製のヒールです。ベンジャミン・フランクリン・グッドリッチ博士が1870年に創立した会社で、現在はミシュランによってそのブランドが引き継がれています。「HBNSA」との表記の意味は分かりません。


↓ソールの土踏まず部の拡大です。

ここにも「BFG」の文字を意匠化したロゴマーク。マークの中に「1870」とあるのは上述の通りB F Goodrichが創立した年です。


以上縷々見て参りましたが如何ですか?
サービス・シューズとレギンスの組み合わせよりも洗練された感があるこの2バックルブーツ、最近は出物がとても少なく、程度の良いものはeBayでも年々高騰しています。まぁ、色んな業者から高品質なレプリカが多く製造・販売されているので、サバゲやリエンアクトに躊躇なく使うにはレプリカを使えば良いのですが、やはり本物にはレプリカには無い凄みを感じます。
また、WWII後にフランス軍がこの米軍の2バックル・ブーツによく似たブーツを採用するのですが、構造が違ってます。20メートルくらい離れた所からなら同じモノのように見えるかもしれませんが、フランス軍のモノは米軍のモノのようにカフ部分が別パーツになっていなくて、腰革がそのまま長靴のように延びてカフ部分を構成しています。つまりカフ部分と腰革を繋ぐ縫い目がありません。バックルに通すベルトを含むカフの前側の部分のみが別パーツになっています。フランス軍のモノと米軍のモノを並べてみればその違いは一目瞭然です。「全く同じ形」というのは間違っています。底のパターンも全く違います。ご注意下さい。

それでは今回はこの辺で失礼します。



  

Posted by Sgt. Saunders at 08:00Comments(0)Boots, Shoes, Footwear