2016年01月31日
WWⅡU.S. 2バックル・ブーツ(WWⅡU.S. Buckle Boots)
こんにちは。先週末は40年振りの大寒波到来で交通・ライフライン等への影響は如何に!と危惧した割には、当地大阪は、ただ寒かっただけ~という結果に終わり、胸を撫で下ろしております。
皆さまのところは大丈夫でしたか?
以前にも触れましたが、私儀、入院・外科手術を経て退院を果たし、現在ようやく従前の生活パターンに戻ってきました。
この間しばらくお休みを頂いておりました当ブログ、今後また健気に細々と続けて参りますので、どうぞ宜しくお付き合い下さいますようお願い申し上げます。
さて長い口上には何卒ご容赦いただいて、本年最初のネタとして、WWII U.S.陸軍歩兵装備ファンなら一度は欲しくなる(?)俗称「2バックル・ブーツ」、制式名称「Boots, Service, Combat, Composition Sole」を採り上げます。
バックルが2つあるから2バックル・ブーツ、何ともまぁ安直なあだ名で呼ばれてますが、それ以前の、レギンスとの組み合わせで用いられていたサービス・ブーツと区別する言い方としては外見の違いと特徴とを十分言い表せていますね。
かのTV映画「COMBAT!」で、サンダースの分隊に、この見慣れない新型のブーツを履いている補充兵がやって来るや隊員が目ざとくそれを見つけ、たちまち分隊中の皆の羨望を集め、サンダース軍曹も「金を出すから譲ってくれ」と冗談交じりでその新兵を弄るエピソードがありましたね。
↓2足持ってますが、より程度の良い方です。

これが制式採用されるまでは、くるぶしの上までのいわゆる「アンクル・ブーツ」とレギンスの組み合わせで足元をガードしていましたが、この2バックル・ブーツによりレギンスが不要になりました。
↓本ブログでたびたび出てきますQuartermaster Supply Catalogの1946年5月版のQM3-1, ENLISTED MEN'S CLOTHING AND EQUIPMENTから。

制式名称は「Boots, Service, Combat, Composition Sole」、直訳すると「合成底戦闘用サービス・ブーツ」です。「バックル」の文字はありません。
キャプションに曰く、
「このブーツは、腰革の上部に付けられた、レギンスの必要性をなくすバックル留めの長さ5インチのレザーカフを有していることを除いては『Shoe, Service, Reversed Uppers, Composition Sole(合成底裏革仕様サービス・ブーツ)』に似ている。」
レギンスは、装着に時間が掛かって面倒臭かったんだなぁという事が良く分かるキャプションです。
↓外側と内側を。

この個体は程度とサイズ(8E)がとても良いので気に入っています。
↓腰革はカタログのキャプションにもあったように、『Shoe, Service, Reversed Uppers, Composition Sole』同様に裏革仕様です。

↓後ろです。こう見るとバックルの付け根はほとんど真後ろに付いていますね。

↓バックルが付いているカフの内側はこの個体では白色のコットン内張りです。もう一足持っておりますが、そちらではOD色(と言うか濃緑色)の内張りです。

↓ベロの部分も裏革仕様です。

↓カフの拡大です。

バックルは真鍮製。調節穴のハトメはアルミ?亜鉛合金?比較的軟らかい金属で出来てます。
↓バックルの拡大。革ストラップが通り易いように反っています。

↓バックルの裏側。天地が逆になっていますが、かの有名なファスナー・メーカー、「RAU F. CO.(RAU FASTENER COMPANY)」と、その所在地「PROV. R.I.(PROVIDENCE, ROADISLAND:ロードアイランド州 プロヴィデンス)」の刻印があります。

↓カフの内側。サイズ「8E」と検査官のイニシャル「HN」のエンボス、メーカーなどのスタンプ。

↓もう片方側のカフにも全く同じエンボスとスタンプが。つまり「左右マッチング」です。片方ずつ違うメーカー・異サイズのモノが一まとめで売られていることも多い中、左右がマッチしているのは嬉しいです。

↓メーカーなどのスタンプ。

↓カフの内側だけでなく、腰革の内側にも全く同じ表記のスタンプがあります。

↓更に拡大。

「A. S. KREIDER SHOE MFG. CO」、「8E 726529」、「BOSTON DEPOT」、「MAY 15 1945」、「W19-074 QM-3719」との表記です。製造者名「A. S. KREIDER SHOE MFG. CO」、サイズは「8E」で、その後の「726529」が何を表してるのかが分かりません。「BOSTON DEPOT」は文字通りボストン(クオーターマスター)デポが仕様責任を持っているという意、「MAY 15 1945」は契約年月日、「W19-074 QM-3719」はボストン・クオーターマスター・デポが起案した契約書に基づき陸軍省が需品部向けに、ナンバー3719で契約したものであることを意味しています。「W」はWar Department(陸軍省)、「19-074」はボストン・クオーターマスター・デポを表すコードです。「QM」の部分は陸軍のどの兵科向けのものであるかを示す略号で、Quartermaster即ち需品部の意。ここがもし例えば「ac」なら航空隊向けという具合です。最後の番号は契約番号です。
↓真上から底を覗いてみました。

↓暗いのでストロボを焚きました。

↓更に拡大。

表革(スムース・アウト)の内底にサイズ「8E」、「U.S.A. NO.85」との刻印があります。
↓最後に底です。

さほど擦り減ってはおりません。
↓ヒールです。上下逆さまですが「BFG」の文字を意匠化したロゴマークは「B F Goodrich」社のもの。タイヤメーカーとして世界初の空気入り自動車用タイヤを開発したB F Goodrich社製のヒールです。ベンジャミン・フランクリン・グッドリッチ博士が1870年に創立した会社で、現在はミシュランによってそのブランドが引き継がれています。「HBNSA」との表記の意味は分かりません。

↓ソールの土踏まず部の拡大です。

ここにも「BFG」の文字を意匠化したロゴマーク。マークの中に「1870」とあるのは上述の通りB F Goodrichが創立した年です。
以上縷々見て参りましたが如何ですか?
サービス・シューズとレギンスの組み合わせよりも洗練された感があるこの2バックルブーツ、最近は出物がとても少なく、程度の良いものはeBayでも年々高騰しています。まぁ、色んな業者から高品質なレプリカが多く製造・販売されているので、サバゲやリエンアクトに躊躇なく使うにはレプリカを使えば良いのですが、やはり本物にはレプリカには無い凄みを感じます。
また、WWII後にフランス軍がこの米軍の2バックル・ブーツによく似たブーツを採用するのですが、構造が違ってます。20メートルくらい離れた所からなら同じモノのように見えるかもしれませんが、フランス軍のモノは米軍のモノのようにカフ部分が別パーツになっていなくて、腰革がそのまま長靴のように延びてカフ部分を構成しています。つまりカフ部分と腰革を繋ぐ縫い目がありません。バックルに通すベルトを含むカフの前側の部分のみが別パーツになっています。フランス軍のモノと米軍のモノを並べてみればその違いは一目瞭然です。「全く同じ形」というのは間違っています。底のパターンも全く違います。ご注意下さい。
それでは今回はこの辺で失礼します。
皆さまのところは大丈夫でしたか?
以前にも触れましたが、私儀、入院・外科手術を経て退院を果たし、現在ようやく従前の生活パターンに戻ってきました。
この間しばらくお休みを頂いておりました当ブログ、今後また健気に細々と続けて参りますので、どうぞ宜しくお付き合い下さいますようお願い申し上げます。
さて長い口上には何卒ご容赦いただいて、本年最初のネタとして、WWII U.S.陸軍歩兵装備ファンなら一度は欲しくなる(?)俗称「2バックル・ブーツ」、制式名称「Boots, Service, Combat, Composition Sole」を採り上げます。
バックルが2つあるから2バックル・ブーツ、何ともまぁ安直なあだ名で呼ばれてますが、それ以前の、レギンスとの組み合わせで用いられていたサービス・ブーツと区別する言い方としては外見の違いと特徴とを十分言い表せていますね。
かのTV映画「COMBAT!」で、サンダースの分隊に、この見慣れない新型のブーツを履いている補充兵がやって来るや隊員が目ざとくそれを見つけ、たちまち分隊中の皆の羨望を集め、サンダース軍曹も「金を出すから譲ってくれ」と冗談交じりでその新兵を弄るエピソードがありましたね。
↓2足持ってますが、より程度の良い方です。

これが制式採用されるまでは、くるぶしの上までのいわゆる「アンクル・ブーツ」とレギンスの組み合わせで足元をガードしていましたが、この2バックル・ブーツによりレギンスが不要になりました。
↓本ブログでたびたび出てきますQuartermaster Supply Catalogの1946年5月版のQM3-1, ENLISTED MEN'S CLOTHING AND EQUIPMENTから。

制式名称は「Boots, Service, Combat, Composition Sole」、直訳すると「合成底戦闘用サービス・ブーツ」です。「バックル」の文字はありません。
キャプションに曰く、
「このブーツは、腰革の上部に付けられた、レギンスの必要性をなくすバックル留めの長さ5インチのレザーカフを有していることを除いては『Shoe, Service, Reversed Uppers, Composition Sole(合成底裏革仕様サービス・ブーツ)』に似ている。」
レギンスは、装着に時間が掛かって面倒臭かったんだなぁという事が良く分かるキャプションです。
↓外側と内側を。

この個体は程度とサイズ(8E)がとても良いので気に入っています。
↓腰革はカタログのキャプションにもあったように、『Shoe, Service, Reversed Uppers, Composition Sole』同様に裏革仕様です。

↓後ろです。こう見るとバックルの付け根はほとんど真後ろに付いていますね。

↓バックルが付いているカフの内側はこの個体では白色のコットン内張りです。もう一足持っておりますが、そちらではOD色(と言うか濃緑色)の内張りです。

↓ベロの部分も裏革仕様です。

↓カフの拡大です。

バックルは真鍮製。調節穴のハトメはアルミ?亜鉛合金?比較的軟らかい金属で出来てます。
↓バックルの拡大。革ストラップが通り易いように反っています。

↓バックルの裏側。天地が逆になっていますが、かの有名なファスナー・メーカー、「RAU F. CO.(RAU FASTENER COMPANY)」と、その所在地「PROV. R.I.(PROVIDENCE, ROADISLAND:ロードアイランド州 プロヴィデンス)」の刻印があります。

↓カフの内側。サイズ「8E」と検査官のイニシャル「HN」のエンボス、メーカーなどのスタンプ。

↓もう片方側のカフにも全く同じエンボスとスタンプが。つまり「左右マッチング」です。片方ずつ違うメーカー・異サイズのモノが一まとめで売られていることも多い中、左右がマッチしているのは嬉しいです。

↓メーカーなどのスタンプ。

↓カフの内側だけでなく、腰革の内側にも全く同じ表記のスタンプがあります。

↓更に拡大。

「A. S. KREIDER SHOE MFG. CO」、「8E 726529」、「BOSTON DEPOT」、「MAY 15 1945」、「W19-074 QM-3719」との表記です。製造者名「A. S. KREIDER SHOE MFG. CO」、サイズは「8E」で、その後の「726529」が何を表してるのかが分かりません。「BOSTON DEPOT」は文字通りボストン(クオーターマスター)デポが仕様責任を持っているという意、「MAY 15 1945」は契約年月日、「W19-074 QM-3719」はボストン・クオーターマスター・デポが起案した契約書に基づき陸軍省が需品部向けに、ナンバー3719で契約したものであることを意味しています。「W」はWar Department(陸軍省)、「19-074」はボストン・クオーターマスター・デポを表すコードです。「QM」の部分は陸軍のどの兵科向けのものであるかを示す略号で、Quartermaster即ち需品部の意。ここがもし例えば「ac」なら航空隊向けという具合です。最後の番号は契約番号です。
↓真上から底を覗いてみました。

↓暗いのでストロボを焚きました。

↓更に拡大。

表革(スムース・アウト)の内底にサイズ「8E」、「U.S.A. NO.85」との刻印があります。
↓最後に底です。

さほど擦り減ってはおりません。
↓ヒールです。上下逆さまですが「BFG」の文字を意匠化したロゴマークは「B F Goodrich」社のもの。タイヤメーカーとして世界初の空気入り自動車用タイヤを開発したB F Goodrich社製のヒールです。ベンジャミン・フランクリン・グッドリッチ博士が1870年に創立した会社で、現在はミシュランによってそのブランドが引き継がれています。「HBNSA」との表記の意味は分かりません。

↓ソールの土踏まず部の拡大です。

ここにも「BFG」の文字を意匠化したロゴマーク。マークの中に「1870」とあるのは上述の通りB F Goodrichが創立した年です。
以上縷々見て参りましたが如何ですか?
サービス・シューズとレギンスの組み合わせよりも洗練された感があるこの2バックルブーツ、最近は出物がとても少なく、程度の良いものはeBayでも年々高騰しています。まぁ、色んな業者から高品質なレプリカが多く製造・販売されているので、サバゲやリエンアクトに躊躇なく使うにはレプリカを使えば良いのですが、やはり本物にはレプリカには無い凄みを感じます。
また、WWII後にフランス軍がこの米軍の2バックル・ブーツによく似たブーツを採用するのですが、構造が違ってます。20メートルくらい離れた所からなら同じモノのように見えるかもしれませんが、フランス軍のモノは米軍のモノのようにカフ部分が別パーツになっていなくて、腰革がそのまま長靴のように延びてカフ部分を構成しています。つまりカフ部分と腰革を繋ぐ縫い目がありません。バックルに通すベルトを含むカフの前側の部分のみが別パーツになっています。フランス軍のモノと米軍のモノを並べてみればその違いは一目瞭然です。「全く同じ形」というのは間違っています。底のパターンも全く違います。ご注意下さい。
それでは今回はこの辺で失礼します。
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。