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2021年12月12日

US M6バイオネット(続き)(U.S. M6 Bayonet-Knife(Cont.))

みなさん、こんにちは。
師走に入り、イヤでも何か気忙しい雰囲気のなかで生活しなければなりません。
当地大阪郊外都市は気温は平年より暖かいんだそうで、そういえば少し前にかなり冷え込んだ朝以外はまだ手袋が欲しいと思いません。オミクロン株、どうなるんでしょうか。尾身さんは再び苦労なさるんでしょうか?


今回は前回記事「US M6バイオネット(U.S. M6 Bayonet-Knife)」の続きです。本来は続き物にするほどのボリュームじゃないんですが、準備不足で2回に分かれることになりました。

↓M8A1スキャバードに収まったM6バイオネットです。FSN(Federal Stock Number)は1005-722-3097です。スキャバードの方は過去記事「M8とM8A1スキャバード(M8 Scabbard, M8A1 Scabbard)」で少しだけ触れていますのでご覧下さい。スキャバードだけまたいつか纏めてみたいと思います。


↓前回記事の最後の画像から始めます。グリップ・スクリューを外してバラしました。刀身長は6.625インチ(約16.8cm)、刃長は6インチ(約15.2cm)、刃先の3インチ(約7.6cm)は両刃になっています。前回でも触れましたが、私が本個体を入手した30年程前は米軍物資払下店では銃刀法の定めにより刀身長が15cmに収まるように切先が2cm程切断された状態で販売されていました。お店によっては、その切断された切先部分も一緒に付けて送ってくれました。画像では切断された先っちょをセロテープでつなぎ合わせて、何とか一本の刀身のように見えるようにしてます。


↓グリップ部分は、左右のプラスティック製グリップが茎(なかご・中子)を挟み、2本のスクリューで固定されます。茎には銃への装着固定のためのラッチング・ロック・リリース・レバーが取り付けられています。仕組みは単純です。のちほど触れます。画像左にあるクロスガードは、茎にラッチング・ロック・リリース・レバーやアンダーカット・グルーブの部品、ポンメルを取り付ける前に後方から刀身後端まで通し入れられ、すぐ後ろに見える楔形の部品により固定され、中空のリベットで留められています。この中空リベットにはグリップを固定するスクリューが通ります。


↓これがその楔形の部品がクロスガードを押さえているの図です。


↓テクニカル・マニュアル(TM-9-1005-237-23&P)から引用のパーツ一覧・展開図です。7番に「M6 blade assenbly」として、刀身部分から茎、クロスガード(鍔)、アンダーカット・グルーヴを形成する部品、ポンメルまでがまとめて一体のモノとして銘打たれています。


↓2つ上で見たモノの反対面です。


↓グリップは左右に個別のパーツナンバーが割り振られています。先程のパーツ分解図にある通り、画像で上の右側グリップはパーツ・ナンバーが7267652、画像下の左側グリップはパーツナンバーが7267653です。このグリップはM1ガーランド小銃用のM5(M5A1)バヨネットと共通です。さらに言えばM6バイオネットは、クロスガード以外はM5(M5A1)バヨネットと同じモノです。


↓ポンメル部品の裏側に「B」(上下逆さまですが)の刻印があります。調べましたが何の「B」か、まだ突き止められていません。


↓M14ライフルへの脱着ラッチの仕組みは至極簡単です。シーソー状のラッチング・ロック‐リリース・レバーの後端が銃の着剣ラグに噛み合う鉤になっていて、前端はプッシュ・ボタンになっています。画像手前側のプッシュ・ボタンの内側に収まっているバネにより、中間の支点ピンを回転軸として、後端の鉤は常時ロック・オン位置にあるよう上向きにテンションが掛けられています。


↓常態がこの状態で…(シャレじゃないです)


↓レバー後端の鉤が銃の着剣ラグへ噛み合う位置にあります。


↓後方からアンダーカット・グルーブを見ると鉤が出っ張っているのが見えます。


↓プッシュ・ボタンを押さえると中間の支点ピンを回転軸として後端の鉤が下がり…


↓このように…


↓アンダーカット・グルーブからは鉤が下へ引っ込みました。


↓クロスガードのすぐ手前にラッチング・ロック‐リリース・レバー末端のプッシュ・ボタンが位置します。


↓先ほどグリップはM5(M5A1)バイオネットと共通の部品であると申しましたが、正しくは「M5(M5A1)バイオネットの後期グリップと同じパーツ」です。因みにM5(M5A1)バイオネットの初期グリップのパーツナンバーは右が7266552、左が7266553で、後期のモノよりも厚みがあり、チェッカリングがこの画像にある後期のモノのようにグリップ上面まで広がっていません。


↓米軍のフィールド・マニュアル「Field Manual(FM) 23-8 U.S. RIFLE 7.62MM, M14 AND M14E2」の1965年5月版の第7章「アクセサリー」のページです。本バイオネットと、収まるM8A1スキャバードの図およびM14ライフルへの着剣状態の図。着剣している図を見るとM1カービンとM4バイオネットの組み合わせと同じくらいの「華奢さ」を感じます。


↓クロスガードのオブバース側に施されたモデル名称の「U.S. M6」。


↓反対のリバース面には製造者「IMPERIAL」の刻印。他にはAERIAL社、MILPAR社が製造したそうです。



以上でございます。
銃への取付け・ロック・リリースの仕組み(グリップ中心部にレバーの軸を置き、クロスガードの直ぐ手前にリリース・ボタン、軸と反対側のポンメルの方にロックを置く)は、古くはM1903スプリングフィールド小銃用(のちにはM1ガーランド小銃も)のM1905バイオネットや、それを短くしただけとも言えるM1バイオネット、M1バイオネットを更に短くしたM5(M5A1)バイオネット・ナイフと同じ仕組み・構造・原理です。これに対してM1カービン用のM4バイオネット・ナイフやM16A1ライフル用のM7バイオネット・ナイフは、銃のバイオネット・ラグを洗濯バサミのように摘まんで固定する簡素な仕組み・構造・原理です。また「稿」をあらためてお示しできればいいなと思います。

2001年のアメリカ同時多発テロ事件以来銃剣の出物が少なくなったように感じています。ebayなど海外では結構売りに出されているのですが、日本へは通関時にアウトになりますので新規購入は不可能です。今国内にあるモノを大事にするしかありません。稀に刃の根元から3cm程のところで無残にも切断された銃剣の売り出しを見ることがありますが、切断面を見るにつけ悲しくなります。今私の手元にあるものもなるべく切断されたことを意識しないように切断面からは目を背けて触っています。キャンピング・ナイフなどは、必要・目的も無いのに市中で持つのは違法ですが、所持そのものは違法ではありません。銃剣もそうならないもんでしょうか?

それでは今回はこの辺で失礼いたします。また上手くいけば年内にお会いしましょう。大掃除は何からやり始めましょうか…。 ご機嫌宜しゅう。




  

Posted by Sgt. Saunders at 12:06Comments(0)Fire arms-RelatedBayonets, Knives

2021年11月28日

US M6バイオネット(U.S. M6 Bayonet-Knife)

みなさん、こんにちは。紅葉が色付きはじめて暫く経ちまして、当地の周辺でも南か北か・高いか低いかで「色付き始め」から「落葉近し」までバリエーション豊富な紅葉スポットが存在しますが、先週にまだ一回しか見物に行っておりません。投稿完了後どこかに行こうかと思います。

さて高気圧が広がって快晴の大阪某郊外から今回お届けするのは米軍が1957年に制式採用したM14口径7.62mmライフル(United States Rifle, Caliber 7.62 mm, M14)用の銃剣「M6バイヨネット(M6 Bayonet-Knife)」です。制式名称は「バイオネット-ナイフ」なんだそうで、バイオネットでもありナイフでもあるということでしょう。
私は外来語として「バイオネット」と言うよりも実は「銃剣」と言う方が好きなのですが、普段「グレネード・ローンチャー」と言っておいて「榴弾発射器」とはあまり言わない事に対比させると、やはり「バイオネット」と言うべきか…まぁそんなことはどうでもいい事ですね。済みません。

↓はい、M8A1スキャバードに収まったM6バイオネットです。


↓抜きました。みなさんお気付きでしょうが、銃砲刀剣類所持等取締法により、哀れにも刀身長が15cmに収まるように先端が切断されています。大昔は放出品のバイオネットを買うと、この切断された先っちょも一緒に付けてくれてました。セロテープでくっ付けてますが、見る度に悲しい気持ちになります。またこの個体の刀身部分は何か黒い塗料で塗られていて折角のパーカライジング仕上げが隠れてしまってます。これも悲しい事です。変に剥がすともっと見栄えが悪くなるかもと、「塗料剥がし剤」などは使ってません。どうしたらいいでしょう。


↓お尻(ポンメル)です。刀身のタン(tang:なかご)の延長部分がポンメルを突き出たところをカシメて固定してあります。これはM4バイオネット、M5バイオネットやM7バイオネットと同じです。上側の凸型の切り欠き部分(アンダーカット・グルーブ)にM14ライフルのバイオネット・ラグを挿し込んで装着します。


↓グリップの下にあるボタン状に加工されているラッチング・ロック・リリース・レバー先端を押して銃とのロッキングを開放します。仕組みはM1ガーランド小銃用のM1905やその子供のM1、孫のM5(M5A1)などと同じです。


↓グリップを上から。プラスティック製のグリップは左右分割のモナカ式パーツです。右の方に先程見たバイオネット・ラグを通すアンダーカット・グルーブがあります。


↓M14ライフルのバイオネット・ラグを…


↓アンダーカット・グルーブに噛み合わせて…


↓サプレッサー先端がクロス・ガード(鍔)のバレル・ホールに通るように真っ直ぐ最後まで押し込むとロックされます。


↓パーツを分解しました。


というところで投稿時刻になってしまいました。申し訳ありません。ちょっと準備が間に合いませんでした。
投稿を丸々来週に遅らせるよりは、一応「隔週日曜日の正午に新規記事投稿」という自己ルールを守ることに致します。厳密に言えば「守っている」のか疑念がありますが。
この続きは次回お送りしますので、どうかお許し下さい。それでは今回はこの辺で一旦失礼いたします。







  

Posted by Sgt. Saunders at 12:00Comments(0)Fire arms-RelatedBayonets, Knives

2021年05月23日

U.S. M1クリーニング・ロッド・ケース (M1 Cleaning Rod Case)

みなさん、こんにちは。
史上最も早く梅雨入りしたという当地大阪北河内の寓居から、ワクチン接種を受けられるのはまだまだずっと先になるのを甘受しつつ、もうコロナウィルス収束を神に祈るしかない状況を虚無の心で受け止めております。

さて、その梅雨の合間の本日晴天の下お送りする今回のネタは「M1クリーニング・ロッド・ケース(M1 Cleaning Rod Case)」です。
歩兵の全てが一人ひとり支給されていたのかはよく分かりませんが、まあ一つぐらいコレクションしておいた方が良いわなと、比較的最近入手したモノです。

↓M1クリーニング・ロッド・ケース(M1 Cleaning Rod Case)です。前回お送りしたM1 30口径継手式クリーニング・ロッド(M1 Cal..30 Jointed Cleaning Rod)を収めてます。同じドローイング・ナンバーでありながらも作りや部材に細かい差異があるバリエーション違いが沢山あります。バックルもその一つで、本個体のような「日」の字型のモノと、「目」の字型のモノとがあります。とても全パターンを蒐めることは出来ません。

本個体は、ケース本体の生地とバックルを擁する短ストラップ(正式には『チェイプ(chape)』と言うんだそうです)がODシェード#3で、縁取りテ—プとフラップを留めるための固定ストラップ(これも正式には『ビレット(billet)」と言うそうです)がODシェード#7となっている、いわゆるトランジションです。この画像では少ししか写っていませんが、背面のダブル・フック・ワイヤ・ハンガーを擁しているハンガーもODシェード#7です。

↓バックルからビレットを外して(何かしっくり来ませんね)フラップを開けました。バラしたロッドを各個収納するように袋状のケース部分がステッチで分割されています。M1クリーニング・ロッドが3分割式になる前の4分割式である時には、このケースもステッチで4分割され、ケース全長も本個体の3分割バージョンよりも若干短くなっておりました。まだ私はその4分割式バージョンのケースもロッドも持ってません。


↓ケース上部にはボア・ブラシ等を収納するポケットが設えられています。このポケットですが、本個体のようにケース本体の生地裁断の段階でポケット用の部分も含められて形成されているモノと、初期にはポケットだけを別生地で作ってケース表面に縫い付けてある形のモノがあります。


↓ケース裏側です。ダブル・フック・ワイヤ・ハンガーでベルトのアイレットに吊るして携行します。そして、兵器関係の装備品にありがちな、とてもデカデカとした制式名称「CASE, CLEANING ROD,M1」とドローイング・ナンバー「C6573」の表示。



M1 30口径継手式クリーニング・ロッドを収納してのご紹介となりましたが、M1ガーランド小銃用のM8ロッド等別のロッドを収納するのにも使われました。冒頭でも申しましたが、ロッドもケースもかなり頻繁にマイナー・チェンジが行われたために種類が数多くなりました。

国内・海外問わず結構市場に出ていますので、特に製造年やメーカー名の有無、色目にこだわりが無ければ入手は比較的容易です。国内だと3,000円前後、海外ではサープラス扱いで$10位からアンティーク扱いでの$30位で贖えます。「WW2米陸軍一般歩兵装備品コレクション」でのコレクション優先順位で言えばあまり高くは無いですが、あったら嬉しいレベルにはありますので、今後も適価で出品されてたらポチるかも知れません。

はい、今回はとてもコンパクトな記事となりました。モノがモノだけに切り口が少なかったです。バリエーション違いを沢山保有していたらそれなりに画も沢山晒すことも出来たでしょうけれども。
それでは今回はこの辺で失礼いたします。またお会いしましょう。
さようなら。


  

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2021年05月09日

U.S. M1 30口径継手式クリーニング・ロッド(M1 Cal..30 Jointed Cleaning Rod)

みなさん、こんにちは。

今日はコロナについてはアレコレ申し上げません。とにかく各人が「手指消毒・うがい手洗いの励行、密集しない」を実践して感染拡大防止に努めましょう。
当地大阪は雲が多めながらも良いお天気になりました。黄砂がやや気になるレベルですけれども。河川敷や広ーい公園でソロや家族単位でバーベキューでもしたいですね。風がやや強いので炭火じゃ焼けにくいかもしれません。

さて隔週日曜日の正午を投稿の定刻としております本ブログの今回のネタは銃器関連です。

実銃は所持不可能であるのは言うまでもありません。
実銃に合法化処理を施した無可動(不稼働)軍用銃は所持可能ですが、私が手にすることは財政的に困難ですので、銃器そのもののコレクション欲はモデルガン等のいわゆる模造銃をコレクションすることで満足させているのが現状です。
一方銃器そのものではなく、関連する「附属品」は合法所持できるモノも多く、価格面でも比較的入手が容易でありますので模造銃と併せて全体として銃器類コレクション欲を満たすのにひと役買っているところです。
この「附属品・関連品」のコレクションを私は「『実銃はダメなのでせめてアクセサリーくらいは…』コレクション」と呼んでおりますが、今回はその中からお送りします。

↓M1 30口径継手式クリーニング・ロッド(M1 Cal..30 Jointed Cleaning Rod)です。「30口径」とありますけれども、具体的にはブローニング・マシンガン用のクリーニング・ロッドです。3つに分かれており、使用時には繋いで長い一本にします。この「3本分割モデル」の先輩モデル「4本分割モデル」も存在しますが、ドローイング・ナンバーは変わりませんでした。


↓開封前の包装姿です。制式名称「(1-)Rod, Cleaning, Jointed Cal. 30, M1」、ドローイング・ナンバー「D6508237」、ストック・ナンバー「A6-6508237」、「調製対象:30口径マシンガン」、「製造者:ミネソタ州セントポールの『KOOLAIRE Inc.』」の表記。


↓表面はクラフト紙のようなもので、ロッドに塗布されたコスモリンが表面に浸出しないよう、引っ張ると伸びるビニルようのモノが裏打ちされています。


↓ハンドルに製造者略号の「KOL」のモールド。


↓裏側には何もありません。


↓ロッド先端部にはクリーニング・クロスを通すためのスリットがあります。


↓先端の先端にはネジが切られていて、と言われてもこの画像じゃよく分かりませんね


↓そのネジが切ってあるところにM2クリーニング・ブラシをねじ込んで…


↓この様にです。バレル内のお掃除が出来ます。


↓全部ジョイントさせました。スケールを並べると良かったですね。グリップ後端からクリーニング・ブラシの先端までの全長は約90cmです。画像下にあるのはこのロッドを収納・携帯するためのケース、「M1 クリーニング・ロッド・ケース」です。このケースも作りや仕様の細かい差異のあるいくつものバージョンがあります。



以上淡々と見て参りました。
実銃が汚れることは私の身にはありませんが、「クリーニングしているつもり」になって悦に入ることが出来ます。妄想して悦に入るのは楽しい事です。そう言えばM1919ブローニング機関銃まだやってませんね。

WW2中の銃器クリーニンググッズは、対応する銃の種類を問わずとても多くの改良が重ねられたため、その種類はとても多くなりました。今回のクリーニング・ロッドでもそうですが、同じドローイング・ナンバーでも「改訂」違いもあるなど、「全て」をコレクションするのは結構骨が折れそうです。
ただその分市場には多く流通していますので入手機会には困らないです。コレクターズ・アイテムにもなっているモノもありますが、サープラス品としてのモノも多いので価格的にも入手は容易です。eBayでもミリタリー・ショップのHPでも沢山の出品があります。

それでは今回はこの辺で失礼いたします。またお会いしましょう。



  

Posted by Sgt. Saunders at 12:00Comments(0)Fire arms-Related

2021年02月07日

U.S.アムニッション・キャリング・バッグ(後期型)(Bag, Carring, Ammunition(TypeII))

みなさんこんにちは。
当地大阪某郊外都市は毎日最低最高気温の変化が激しいです。昨日は風も少なく最高気温が15℃を超え「春」を感じました。また、そろそろ花粉の飛散時期ですので、その対策も必要になって来ました。
新型コロナウィルスの感染者数の増加を踏まえての緊急事態宣言下、ややその増加率が若干低下したかのような様相を見せたりそうでなかったり、ワクチン接種がようやく現実的なものとなってくるなど情勢は日々変化しています。

そんな中で東北新社の幹部が総務省幹部を接待した席に同社に勤める菅首相の長男も同席していたとか、非常事態宣言下での与党国会議員の深夜の飲食店訪問問題で当初「一人で訪れた」との説明が実はウソで、「一人ではなく後輩議員も連れて3人で行ってた」のがバレた問題、新型コロナウィルスの感染防止策として政府の後押しで導入された接触確認アプリCOCOAの3割が4カ月間も機能してなかった問題、東京オリ・パラ大会組織委員会の森喜朗会長が女性に関して不当な発言を行って、それに対する批判を受けての記者会見では逆ギレしたりと、「お前ら何やってんねん!」と言いたくなることが続発しています。

さて、今回は前回の続きで「U.S.アムニッション・キャリング・バッグ(後期型)(Bag, Carring, Ammunition(Type II))」をお送りします。隔週日曜日正午の投稿定刻通りにお届け出来ました。

↓前回も出ました画像。右が前回記事で詳解しました「初期型」、左が今回お送りする「後期型」です。


↓初期型・後期型の区別は、このキャリング・ストラップの各末端に設えられている金具の違いに由るものです、という事は前回でも申しました。右の初期型では両方ともスナップ・フックが付いているのに対し、左の後期型ではバッグ正面から見て左側のキャリング・ストラップにDリング、右のキャリング・ストラップにスナップ・フックが付いています。これもまた前回でも申しましたが、「『カーキ』が初期型、『OD』が後期型」という「色調(シェード)」のみを以て区別した訳ではありません。もっとも時系列的には『カーキ』の方が先なのですが。


↓後期型を正面から。


↓この図面も前回記事で掲げました。図面上でこのように仕様変更がなされる前後で区別しての「後期型」です。後期型の本図では本体左側の金具は青囲みの通りDリング、右側の金具は赤囲みの通りスナップ・フックです。初期型では金具は両側ともDリングです。残念ながら「初期型」の図面はまだ入手出来ていません。


↓キャリング・ストラップ同士を結合させて持ち手に出来るという点は初期型と同じです。


↓肩掛けにするために「ジェネラル・パーパス・キャリング・ストラップ(Stock No.74-S-333-50)」を繋ぎます。先輩モデルである「M-1936 od フィールド・キャンバス・バッグ・キャリング・ストラップ(Stock No.74-S-333)」は両端がDリングなので、バッグ本体の左側のキャリング・ストラップのDリングとは、Dリング同士になってしまうため繋ぐことが出来ません。


↓因みにこれが両端がDリングの「M-1936 od フィールド・キャンバス・バッグ・キャリング・ストラップ(Stock No.74-S-333)」です(補給部(需品部)Quartermaster Supply Catalog 1943年8月版 Sec.1より引用)。キャプションにあるようにM-1936 od フィールド・キャンバス・バッグやアムニッション・バッグ(赤下線)、ディスパッチ・キャンバス・ケース(いわゆるマップ・ケース)を担うのに使用されました。赤下線で言う所のアムニッション・バッグは必然的に「初期型」のバッグを指していることになります。後期型のバッグを担うにはバッグの左側キャリング・ストラップのDリングと繋ぐことのできるスナップ・フックが付いた上画像の「ジェネラル・パーパス・キャリング・ストラップ(Stock No.74-S-333-50)」が必要です。


↓上のQuartermaster Catalog 1943年8月版 Sec.1に掲載されていたM-1936 od フィールド・キャンバス・バッグ・キャリング・ストラップ(Stock No.74-S-333)は、後のQuartermaster Suply Catalog 1946年5月版 QM3-1 でこのように掲載されています。扱いがExpendable(消耗品)になり、「限定採用―費消限り支給」となります。キャプション下線部にもありますように、「このストラップは次のページで掲載のジェネラル・パーパス・キャリング・ストラップに替えられました。」


↓はい、次のページです。「ジェネラル・パーパス・キャリング・ストラップ(Stock No.74-S-333-50)」です。先輩モデルと同様にM-1936 od フィールド・キャンバス・バッグ、アムニッション・キャリング・バッグ、M-1938ディスパッチ・キャンバス・ケースを担うのに使用されました。こちらのキャプションでも赤下線部で先輩モデルたるM-1936 od フィールド・キャンバス・バッグ・キャリング・ストラップに替わるモノですと記されています。両端にスナップ・フックがありますので相手がDリングの場合は勿論、相手がスナップ・フックでも繋げます。


↓背面には特に何もありません。


↓側面も…


↓底面も、初期型と何ら変わるところはありません。


↓USのプロパティ表示。あとで見ますが、この個体は1951年製ですので省略記号の「.」無しの「US」表示が通常となった時期に突入した後のモノです。WW2中でもこの省略記号「.」無しの「US」表示は一部で見られましたが、殆どは「U.S.」でした。


↓上蓋を開けて内側を見ます。制式名称「Bag, Carrier, Ammunition」とストック・ナンバー「74-B-54-30」、製造者「TACOMA TENT & AWNING」、1951年製造、NYQMPA(New York Quartermaster Procurement Agency:ニューヨーク補給部(需品部)調達庁)」の表示。この個体はWW2後の1951年、すでに朝鮮戦争勃発後の製造ですが、「後期型」はWW2中の1944年には製造され始めています。私はまだWW2中製造分の「後期型」は入手出来ていません。また名称についてですが「carrying」ではなくて「carrier」となっている点に注意です。WW2後1945年前後から製造年と製造者名に加えてその装備品のストック・ナンバーやその名称も併せてスタンプ表記されるようになり始めるのですが、このような微妙な名称の表記違いや語の省略、簡素な言い換えはしばしば見られることです。


↓内部構造も初期型と全く同じです。右半分がポケット構造なのも同じです。


↓わざわざ区画を設けているのには、やはりそれなりの用途があるのでしょうが、私はまだ未解明です。


↓「初期型」の記事の時と同じように裏表をひっくり返しました。しっかりしたポケットです。


↓上蓋を留めるのに使うバックルは打ち抜き真鍮製。錨の刻印はNorth & Judd Mfg. Co.製であることを示します。


↓スナップ・フックも真鍮製。丸に錨のマーキング、これも上と同じNorth & Judd Mfg. Co.製でしょうか?丸が付いてるのでまた別の会社でしょうか?すみません。まだ未解明です。


↓はい、またまた出ました川越のりと先生による「コンバット・マガジン巻末イラスト・ポスター」シリーズの「ARMOURED INFANTRY」です。WW2ヨーロッパ戦線・1944年冬からのバルジの戦いで行軍中の小休止でしょうか。肩に掛けていたアムニッション・キャリング・バッグを傍らへ降ろして休息をとる兵士の図です。


↓ここに詳解されています。キャプションが「Ammunition Bag Cal..30(30口径弾薬バッグ)」となっていますが、表側・裏側の図と、スナップ・フック、肩掛けにするためのジェネラル・パーパス・キャリング・ストラップ(Stock No.74-S-333-50)が描かれています。


↓だがしかし、この兵士のイラストには「あれ?」と思う点がありました。緑丸の部分、肩掛け用のストラップの金具がDリングであります。これは青囲みの、両端の金具がスナップ・フックであるジェネラル・パーパス・キャリング・ストラップ(Stock No.74-S-333-50)とは異なる、その先輩モデルであるM-1936 od フィールド・キャンバス・バッグ・キャリング・ストラップ(Stock No.74-S-333)でありまして、となると、彼が傍らへ置いているアムニッション・キャリング・バッグは、どちら側の金具もスナップ・フックであるところの「初期型」バッグであらねばなりません。つまり、右下の赤囲いのモノは「後期型」でありながら、イラストの彼が使っているモノは「初期型」であるという点に「」あれ?」と思った次第です。イラストに接してからウン十年経って今気付きました。



2回に亘って「アムニッション・キャリング・バッグ」初期型・後期型についてお送りしました。

このアイテムも私の蒐集遍歴の中では比較的入手の遅かった部類に入ります。現在ではあんまり出物が無いようです。さっきebayやミリタリーショップのサイトを覗きましたが、レプリカは結構出ていましたが当時モノは少なかったです。大体US$40前後で入手出来そうです。前回も申しましたが、国内でも出物は少ない印象です。価格で言えば5,000円ほどあればソコソコ程度のいいモノが入手可能かなと思いますので、出物があれば即入手しておいた方が良いモノの一つだと思います。

それでは今回はこの辺で失礼いたします。ありがとうございました。



  

Posted by Sgt. Saunders at 12:00Comments(0)Fire arms-RelatedBags, Packs

2021年01月24日

U.S.アムニッション・キャリング・バッグ(初期型)(Bag, Carring, Ammunition(Type I))

みなさんこんにちは。
バイデン新大統領の就任式典が無事終わりました。トランプさんはバイデン新大統領にまみえてエールを送ることなく、やや控え目に最後っ屁を放ってフロリダへ去っていきました。
新型コロナウィルスの猛威の中、世界はどうなっていくのでしょうか。我が国日本はどうなっていくのでしょうか。我々はどうしていくのでしょうか。

さて、雨の当地大阪郊外某市の寓居から定刻を40分過ぎての新年2回目の投稿でお送りする今回はWW2US陸軍歩兵の一般装備品である「アムニッション・キャリング・バッグ(Bag, Carring, Ammunition)」についてのココロです。

↓タイトルにあります通り、「アムニッション・キャリング・バッグ(初期型)」です。過去記事で「やたらと『初期型』『後期型』だのという語を使って、いたずらに必要の無い分類をするべきではない・・・」云々と申しました事がありましたが、今回のネタでは初期・後期の語を使います。なぜ使うことになるかは一番最後にご説明致します。


↓キャリング・ストラップの末端部分です。このようにスナップ・フックが付いています。このスナップ・フック同士を結合させて短めの持ち手とすることも出来ますし、M-1936 od フィールド・キャンバス・バッグ(通称ミュゼット・バッグ)用のM-1936 od フィールド・キャンバス・バッグ・キャリング・ストラップ(Stock No.74-S-333)を連結してバッグを肩掛けにすることも出来ますし、スナップ・フックをピストル・ベルト等のハトメ穴(アイレット)に掛けてぶら下げることも出来ます。


↓いま上で見ましたキャリング・ストラップはバッグ両側面にチョンチョンと縫い付けられて終わり…ではなく、このように両側面から底面までグルッと1本の帯としてバッグ全体を取り巻くような形で縫い合わされています。
本バッグはその名の通り重量のあるアムニッション(ammunition:弾薬)を運ぶためのモノですので、キャリング・ストラップの末端が単純にバッグ本体に縫い付けられるだけでは荷重負荷がその部分に集中することにより縫い目が破損し易く、また、バッグ本体の生地に重量が掛かることによる生地の縫い目の裂け、若しくは生地自体の破れの恐れがあるため、それを防ぐべくこのように底面にまでキャリング・ストラップが廻る構造になっています。水抜用のハトメ穴が1つあります。


↓背面です。今まで見て来ましたが、バッグ本体はODシェード#3でストラップや縁取りテープがODシェード#7の、いわゆるトランジション(transition:変遷期)・モデルです。布製装備品全般に亘る1943年半ばからのODシェード変更によって異なるシェードの部材同士が組み合わさった結果ですので、多くの装備品で広く見られ、特に珍しくもありません。もちろん全ての部材がODシェード#3である個体もあります。


↓指で指している部分、本来は下方に見えているDリングが同じように在ってしかるべきなのですが、本個体ではタブからリングだけ綺麗に取り去られています。このDリングの使い道ですが、一例としては、パラトルーパーが先ほど触れましたようにキャリング・ストラップを用いて本バッグを肩掛けにして、バッグを太腿側面位置に来るようにし、Dリングに布テープを通して太腿に結わえ付ける、というのが挙げられます。


↓はい、またまた出ました川越のりと先生による「コンバット・マガジン巻末イラスト・ポスター」シリーズの「RHINE CROSSING」で太腿への固定の具合がバッチリお解り頂けます。


↓これです。このポスターでも左の赤囲いの通り本バッグが詳解されています。但しキャプションに「Ammunition Bag, Cal..30」と表示されています。また、冒頭で申しましたように「初期」「後期」の話に関わってくる箇所があるのですが、また後で。


↓軍の図面です。赤丸で示しましたように側面には上・下にDリングが設えられています。本個体では左右両方とも上部だけリングが取り去られています。

この図を含め、補給品部・需品部(Quartermaster Corps)の当時の図面(drawings)の画像データを入手出来ました。今後ちょくちょく引用すると思います。

↓再び正面です。上蓋は「目」の字型バックルとウェブ・テープによって留められます。上蓋の縁取りがODシェード#7です。


↓「U.S.」のプロパティ表示。アポストロフィありの表示です。


↓蓋の裏側です。製造者と製造年のスタンプはこの場所にするよう定められています。


↓本個体は製造者が「HARIAN」社、製造年は1944年製です。


↓内部です。私、まだこのバッグの使用法をマスター出来てません。理由はこの構造です。入手するまではただの袋(バッグ)だと思ってましたが、ご覧の通り右側の方に「ポケット」が設えられています。先ほど見た軍の製図でも、上の方で単に「POCKET」と表記されているだけです。


↓本体の生地よりも薄目の6.5オンス・コットン・ドリルで出来ています。


↓表裏をひっくり返しました。バッグ内部の「仕切り」ではなく、底も有する完全に独立した区画になっています。水抜きハトメ穴も設えられています。袋の中の袋という体です。バッグ容積の約半分はあろうかという大きさです。


↓上から見ました。


↓元へ戻しました。ポケットを側へ寄せますと弾薬箱がすっぽり入ります。弾薬箱ごと入ることからも分かりますが、バッグの厚みは5インチ±0.25インチで、30-06弾が楽々収まります。ポケットはどのように利用するのでしょうか?30-06弾に限らず手榴弾やら何やらかんやら運ばれるのに使われたのでしょうが、「正式」な利用法はどんな風だったんでしょう。


↓上蓋のバックルに目を遣ります。鋳造真鍮製、打ち抜きプレス真鍮製、打ち抜きプレス鋼製、鋳造亜鉛合金製などありますが、本個体は打ち抜きプレス鋼製です。錨のマーキングはNorth & Judd Mfg. Co.製の印です。


↓キャリング・ストラップのスナップ・フックは真鍮製で無銘です。


↓冒頭での『初期型』『後期型』のお話にかかる画像です。右は今まで見て来た個体、左は全体がODシェード#7のモノです。シェードの違いで『初期型』と『後期型』を区別するのではありません。まあ、勿論シェードに関しても大雑把に言えば「初期の『カーキ』、後期のいわゆる『OD』」という言い方もできますが、シェードの違いではなく、構造上(スペック上)の明確な差異(変更の前後)で区別しました。


↓その構造上の差異がコレです。キャリング・ストラップの末端の金具が、右の初期型はどちら側もスナップ・フックが付いてますが、左の後期型は向かって右側はスナップ・フック、左側はDリングが付いています。


↓再び図面を見ます。左の青囲みにはDリングが、右の赤囲みにはスナップ・フックが描かれています。実は今まで見て来ましたこの製図は後期型のモノで、右下の日付を見ますと1949年11月22日となっております。開発当初(1941年)の製図は未入手ですが、当初はキャリング・ストラップの両端ともスナップ・フックが付けられ、その後1944年にこの製図と同じように仕様変更がなされました。この仕様変更は、両端がDリングの付いていたM-1936 od フィールド・キャンバス・バッグ・キャリング・ストラップ(Stock No.74-S-333)がジェネラル・パーパス・キャリング・ストラップ(Stock No.74-S-333-50)に置き換えられるのと同様、この頃に行われた装備品のマイナー・チェンジの一環です。

川越のりと先生のポスターの中の本バッグのイラストは後期型になっています。画像が小さくて申し訳ないのですが、別画面で画像として開いて拡大して見てください。


以上です。いかがでしたでしょうか。
このバッグも「カーキ」か「OD」かで、若干の価格の高低はありますが、国内では5,000円もあれば程度の良いモノが入手出来そうです。ネットをちょっと覗いてみましたが、出物はあんまり無いようなものの、価格はまだ比較的落ち着いている印象です。私はebayで数年前にUS$35前後で落札出来た記憶があります。

それでは今回はこの辺で失礼いたします。次回は後期型について見て行きたいと思っています。





  

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2020年11月15日

U.S. M1カービン・オイラー(M1 Carbine Oiler)

みなさん、こんにちは。
このところ一週間くらいの内に新型コロナウィルス感染者数の増加率が大きくなっています。寒い気候になり閉鎖空間の換気率が低くなったからだとか、油断して3密回避を疎かにする人が増えてきてたからだとか色々言われていますが、とにかくマスクを着用し、手指の殺菌消毒励行で罹患回避に努めましょう。

さてそんな中地味に控え目に新規投稿いたします今回のネタは「M1カービン用オイラー(Oiler, Carbine, Cal..30, M1)」です。もちろんM1だけでなくパラトルーパー・モデルたるM1A1やM2、M3カービンにも使用されます。オイラーの名の通り、ガン・オイルを適宜塗布するためのツールで、M1小銃(ガーランド)やBARやトンプソンなど他の制式銃にもそれぞれ専用のオイラーが準備されました。オイラーはドラマーではありません。

↓はい、日本語で言えば単純に「油缶」です。メンテナンス用のオイルが本体に入り、塗布用のロッドの付いたネジ式の蓋とで構成される、とてもシンプルなモノです。なおオイル漏れしないよう蓋と本体との間のパッキン材としてはWW2中当初は革製でしたが後にゴム製になりました。本個体ではゴム製です。


↓本当はWW2中製造のモノが欲しいのですが、まだ入手出来ていませんで、本個体はヴェトナム戦末期製造の、透明のビニールで個別包装されている未使用未開封のデッドストックです。ですのでもうこの頃はパッキンはゴム製です。


↓ちょうどビニールが破れている部分が一部掛かっていますが、Federal Stock Number(FSN)は1005-556-4364、品名はシンプルに「OILER」とだけの表記。「EA」と「A」は? 「2/74」は1974年2月契約の意。


↓包装裏側。中に封入されている約3cm平方の紙片は何でしょうか。良く分かりません。何らの表記もありません。


↓鉄製のパーカライズド仕上げ。キャップの外周には縦と斜めにローレットが刻まれています。WW2期にはブルー仕上げのモノもあったそうです。


↓底部に円と「IS」の製造者を示す刻印マーキング。「IS」は「International Silver」社製造の意です。

ここで少し注釈をいたしますと、M1カービンのオイラーは殆どがInternational Silver社が作り、M1カービンの製造業者向けに納入していました。M1カービンが制式採用され製造が始まった当初は、International Silver社が作ったオイラーに、自社のイニシャルである「I」と、各納入先会社のイニシャルとを組み合わせた個別のマーキングを施して納入していました。例えば有名なところではInland社向けのオイラーには自社の「I」とInland社の「I」との組み合わせでマーキングは「II」、Winchester社向けのモノには自社「I」とWinchesterの「W」との組み合わせで「IW」、Rock-Ola社向けのモノには「IR」といった具合です。しかしそのうちにそんな面倒くさいことはやはり省略されていき、自社のイニシャル「IS」のみでマーキングをおこなうようになりました。
因みにInternational Silver社以外では「SW」とか「BK」とかのイニシャルのオイラーが存在するらしいですが、製造者名はまだ知りません…。また、無刻印のモノもあるそうですが、多くはWW2後の製造なんだそうです。以上本稿のデータはBruce N. Canfield著Complete Guide to the M1 GARAND and the M1 CARBINEからの引用情報です。

それでは今回はこの辺で失礼いたします。また2週間後にお会いしましょう。さようなら。




  

Posted by Sgt. Saunders at 12:03Comments(2)Fire arms-Related

2020年09月06日

M16系 20連マガジン保護EVAバッグ(M16 20rd. magazine protecive EVA bag)

みなさん、こんにちは。お久しぶりです。
安倍内閣総理大臣・自由民主党総裁が持病の悪化に因り職務遂行能力に支障があるとしてその職を辞任なさいました。
一人の人間として、国のトップとしての重責を担っての7年以上に及ぶそのご苦労ぶりには素直にお疲れさまでしたと申し上げます。その間の「功罪」についてはここでは敢えて触れません。と申しましょうか、当ブログの本旨からは外れますし、もし書き連ねるとしても、その量は膨大で一昼夜では書ききれません。

さて「隔週日曜日の正午に新規投稿する」という自主目標から外れて約1カ月ぶりに台風10号の接近に戦きながらお送りします今回のネタは米軍がヴェトナム戦争期から使用し始めたM16系ライフル用20連マガジンの保護バッグです。
弾薬装填済みの20連マガジンをこのバッグに封入して、弾薬をマガジンごと水濡れや汚れから守るというコンセプトに基づいて開発されたモノなのですが、今回色々調べてみましたが戦地で実際に使っている例はあったのかな?という印象を持ってます。

↓2種類持ってきました。右側はプレーンな一般モノ、左側は一般モノの空白スペースに何やら文字がウジャウジャ書かれてあるモノ。モノ自体は透明のEVA(Ethylene-vinyl acetate:エチレン酢酸ビニル)製の「封筒」で、封筒で言えばベロにあたる部分(画像では下端)には折り曲げ固定用の薄く細長い鉛製のテープが付されています。左端にあるのは20連マガジンです。どちらのバッグにも左下部に「4-70」、「1-70」と製造年月の表示があります。それぞれ1970年の1月、4月製造という意味です。


↓まず右側のプレーンなモノ。上が封筒の底で下が封筒の口になりまして、上の方にはマガジンを挿入する向きを指示するための弾薬のシルエットが印刷してあります。弾薬の向きが右になるようにマガジンを入れよ、という事です。


↓左側の文字ウジャウジャモノ。いわゆるチューホイ・プログラム(ヴェトコン等に対して政府軍側への転向を促す大プロパガンダ作戦と言うべきモノ)の一環でこのような文をバッグに印刷して、使用後のバッグに書かれてあるこの文をヴェトコンが見て政府軍側に転向・投降することを企図したということです。ですので、この文章のあるバッグは「チューホイ・バッグ」と呼ばれることがあるようです。空いてるスペースの有効活用です。「CHIÊU HỒI GIÚP BẠN GẶP LẠI CHA MẸ, VỢ CON TRONG CẢNH THANH BÌNH CÚA NƯỚC VIỆ̣T TỰ DO, DÂN CHỦ.」とありますが、私ベトナム語は全然不勉強で、何と書いてあるかは翻訳アプリに頼りましたが、大意としては「投降して平和で民主的なヴェトナムにいる両親や家族子供に再び逢おう。」と言ったところみたいです。


↓バッグの口から向きに注意してマガジンを入れて…


↓バッグの底までしっかりマガジンを押し込んで収納します。マガジンを銃に装着する際には、バッグに入れられたままのマガジンの下部分を持ち、ここに書いてあるように(「(矢印の)角をしっかり掴んでブチッと、この線に沿って空け給え。(GRASP CORNER FIRMLY AND SNAP TO OPEN ALONG THIS LINE)」)線から上を破り開けて、そのまま銃へ装着します。バッグの下半分は手を離すと重力で自然に下へ落ちます。


↓線の部分にはビニルが破れやすくするために筋状に薄く加工されてます。


↓封筒入り口の折り曲げ固定用の薄く細長い鉛製のテープですが、これを使ってどのように封をするのかが分かりません。画像のように鉛ですから形は変えやすく、そのままの形を保持できますが…。


↓こんな風にベロを折って巻いて、テープを折り曲げて留めてたんでしょうか?ベロを折って巻くだけではまた開きますから…。


↓裏面はプレーンモノも文字ウジャモノも、何の記載もありません。



はい、今回は小ネタでした。
今回ご覧いただいたのは1970年製造のモノでした。現在でもデッド・ストックが膨大にあるのか、国内でも比較的簡単に入手できます。さっき某ネットショップサイトを幾つか覗いたら1枚100円から110円で売られてました。海外ならもっと安く買えます。
ヴェトナム戦争コスプレには必須ではありませんが、脇役コレクションとしては、「あったら嬉しいな」程度のものです。


それでは今回はこの辺で失礼いたします。またお会いしましょう。さようなら。





  

Posted by Sgt. Saunders at 13:37Comments(2)Fire arms-Related

2020年07月12日

U.S. M2トライポッド・後期型(M2 Cal..30 Tripod Mount・Later-type)

みなさん、こんにちは。
新型コロナウィルス感染者が東京で一日3ケタの数で増えだしました今日この頃、当地大阪は梅雨入りしてからもう3週間余りが経とうとしています。
梅雨の雨自体は嫌いではありません。湿度が高くても気温が下がれば何とかしのげますし、本来はシトシトと降る雨音は静かに時を過ごすのにちょうどよい良いBGMになります。雨が少しだけ降って、気温の低下には繋がらず、その後陽が差してきて気温が上がり、ムシムシと高温多湿の状態になるのはイヤです。

しかし先週来の九州を中心とした線状降水帯の影響による豪雨は論外です。河川氾濫が発生し、多くの家屋が浸水・水没、土砂崩れによる倒壊・流失等甚大な災害が発生して多数の生命が失われることになってしまいました。謹んでお悔やみ申し上げます。行方不明の方も多くあり、一刻も早く発見されるよう願っております。

そしてまた、令和2年ももう7月も半ば近くになりました。一年の半分が過ぎ去ってしまいました。月日の経つのは実に速いです。先々週の日曜日の雨の止み間に近所の公園で蝉が「ジーーーーーーー」と鳴いているのに気付き、もうすぐ夏が来ることを教えてくれました。

もう一つ。先日当ブログの累積訪問者数が10万人を超えました。2013年8月11日にスタートして約7年。1日あたり約40名の方にご訪問頂いたことになります。今回の記事が159本目で、よくこんな7年も続いたなと思います。

さて、今回のネタは当ブログを始めた当初サラッとご覧いただいた事がありまして(記事タイトルは「M1919A4 続き 『Cal..30 M2 Tripod』」)、全く深掘りすることはありませんでしたM1919A4ブローニング30口径機関銃(M1919A4 Cal..30 Machine Gun)用のM2トライポッド(三脚)(M2 Cal..30 Machine Gun Tripod Mount)です。

↓まず全体画像です。拡げると家の中では撮影し辛いので外で撮りました。


↓真上から。Aの字型になります。


↓折り畳んだ状態です。拡げなければ家の中で画が撮れます。余分な汚い背景にはどうぞお目をお瞑り下さい。OD塗装ではないパーカライズド仕上げです。1943年中頃くらいまではOD塗装が一般的であったように考えております。重量は6.35kg。しかし本当に屋内と屋外ではこんなにも色合いが違って見えるんですねー。

ここで申し上げます。実は私、最近知ったのですが、M2トライポッドにも初期型(Early type)と後期型(Late type)とがあり、私の所有しているモノは後期型にあたるのだそうです。
と申しますのは、FM 23-45 Browning Machine Gun, Caliber .30, HB, M1919A4, Ground. の1943年4月12日版によれば、そのSECTION Ⅵ TRIPOD MOUNTING パラグラフ49のdで、「ピントル・ブッシングの縁に沿うようにして25ミルごとの小目盛、100ミルごとの大目盛が刻まれているトラヴァーシング・ダイヤルを持ち、トラヴァーシング・バー・スリーブ・ラッチが右側のトレイル・レッグの上面に付いているのが1942年の夏までに製造されたM2トライポッド初期型…」との記述があり、私の持っているモノにはそんなトラヴァーシング・ダイヤルはありませんし、トラヴァーシング・バー・スリーブ・ラッチは上面ではなく下面に付いています。「M2トライポッド」の中にトラヴァーシング・ダイヤルが付いている初期モノと、付いていない後期モノが存在している事を知りませんでした。まだまだ勉強が足りません…。

↓上記FM 23-45の中のFIGURE 16 ②「Late type, machine-gun tripod M2」として概要図があります。初期型の「トラバーシング・ダイヤル」は無く、トラバーシング・バー・スリーブ・ラッチは「下面」(図中では「UNDERNEATH」)にあると書かれています。よって私のモノはこの図のものに該当する「後期型」でありまして、ブログタイトルにもその旨表示いたしました。


↓ひっくり返しました。画像左側の前脚を起こし、後脚を左右へ開くとそれに伴ってトラヴァーシング・バー両端のスリーブが左右の脚をスライドし、「A」の字型を形成します。画像では下側の脚、つまり右脚のスリーブを右脚に見えているトラヴァーシング・バー・スリーブ・ラッチでしっかり留めてM1919A4を載せる準備完了です。


↓トライポッド・ヘッド。ピントルを差し込む円いブッシングの中に少しだけ見えているのはピントルの溝に噛み込んでトライポッドとピントルとを結合させるためのピントル・ラッチ。その右方にピントル・ラッチ・レバーがあります。あと何やらたくさん標記があります。この標記を1インチ×2インチくらいの銘板に収めて、マウント・ヘッドの前脚の付け根部分にネジ留めされているというパターンのM2トライポッドもあります。OD塗装になっているM2トライポッドは大体そのパターンになっているような気がします。


↓ドローイング・ナンバーはC 59336、「E.P.」はまたあとでも出て来ますが、製造者「EVANS PRODUCTS CO.」の略。
Noに続く長方形枠からはみ出しながらの「236705」は製造シリアルナンバー、右の小長方形枠からはみ出て、且つ薄い「ABQ」が意味するのは1942年から1946年まで武器科のデトロイト管轄区長であったAlfred Bixby Quinton Jr.准将による「検定合格印」です。

その下は制式名称「MOUNT, TRIPOD CAL..30 M2」、さらにその下に製造者名「EVANS PROD. CO.」と製造年「1944」。M2トライポッドのWW2中の製造分であることに嬉しさを感じるとともにイギリス軍やイスラエル軍などに払い下げられたりして変に刻印が改変されたりしていない事にも喜びを覚えます。

↓前脚(フロント・レッグ)はマウント・ヘッドにボルトとナットで開閉に支障が無く且つ不意に開いてしまわない程度の適度なタイトさで結合されているだけです。


↓前脚を展張させました。地面をしっかり掴むための大きく長い蹄が印象的です。


↓後脚も同様です。


↓トライポッド・ヘッド裏側です。円いブッシングの左側に見える爪切りの刃先のようなモノがピントル・ラッチで、このラッチを抜き差しするレバーが左側に伸びています。下方のドローイング・ナンバーC 59335はトライポッド・ヘッド・ボトム・プレートを指し、こちらにも製造者EVANS PRODUCTS CO.の略である「E.P.」の刻印が打たれています。ヘッド上下面のプレートの間に両脚を収めるための空間を確保するためのスペーサーが2つの小さい方のナットで留められています。大きい方の2つのナットは両脚の付け根をトライポッド・ヘッドに結合させるためのモノです。


↓ブッシングを固定するネジの直ぐ右上にOrdnance Corpsの検査済み証である兵科章「フレイミング・ボム」の小刻印。


↓ピントル・ラッチとレバー。ピントルが挿されて結合している状態の位置。


↓ラッチが引っ込んでピントルとの結合を解いた状態。


↓左脚とトラヴァーシング・バーの左スリーブとトラヴァーシング・バーの左端。右脚の下側にあるトラヴァーシング・バー・スリーブ・ラッチが少し見えてます。


↓トラヴァーシング・バーには水平射角を見るための5ミルの小目盛、100ミルの大目盛が刻まれています。


↓トラヴァーシング・バーの裏側にドローイング・ナンバーC-59333と製造者の略称「E.P.C.」が打たれてます。こっちにはCompanyのC.が付いてます。


↓トラヴァーシング・バーはブルー染めのモノもありますが、本個体は他の部分と同じくパーカライズド仕上げです。水平射角を定めるための目盛が左に450ミル、右に425ミルが刻まれています。


↓トラヴァーシング・バー・スリーブ・ラッチでスリーブを留めますと、A型のトライポッドがしっかり出来上がります。



以上微細に見て参りましたが、いかがでしたでしょうか。
さあ、今度はM1919A4本体を載せて…と行きたいところですが、まだまだ雨が続きますかね。錆が出ないようにしないといけないのでこの時期少し億劫です。オイルを吹いてプチプチで包んで保存しているのですが、ちゃんと錆が出ることなく綺麗な姿を保っているのか不安です。

それでは今回はこの辺で失礼いたします。




  

Posted by Sgt. Saunders at 12:08Comments(0)Fire arms-RelatedFire arms

2020年06月21日

U.S. M19A1 弾薬箱(再び)(U.S. M19A1 Ammunition Box(Reprise))

みなさん、こんにちは。
当地大阪は梅雨の中休み。朝晩は気温が18℃ほどまで下がって肌寒く感じるほどで日中はそこそこ晴れ間があり陽射しが暑く感じます。
「休業要請全面解除」とか「都府県境越境自由化」とかで、情緒面では何かホッとした感じがあって、それはそれで良いのですけれども、「お上のお許しが出た」と受け取っておられる方々が多いような気がして何か違和感を覚えます。同調圧力との親和性の高い日本国内の人民意識を、メディアを巧みに使って自粛を誘導した結果、今のところ海外のような爆発的ウィルス蔓延となるのを防ぐ作用が一定程度はあったことは歴然たる事実と見る事ができましょう。この点は事実上・結果に於いて良しとすべきものなのでしょうが…。戦時下の「贅沢は敵だ!」、「欲しがりません勝つまでは!」を想起して、同調圧力というのはこのようなものなのかなと考えさせられるここのところ数ヶ月間です。

さて今回は過去記事でも出ました「U.S. M19A1 弾薬箱(U.S. M19A1 Ammunition Box)」の補追版です。過去記事の最後で「欲を言えば1969年以前の表示モノ」が欲しいと申しておりましたのですが、今般1966年7月付ステンシルのモノが手に入りまして、その嬉しさの発露の記事投稿です。M19A1弾薬箱がどんなモノであるかは過去記事をご覧下さい。今回の記事は「ステンシル違い」の既出モノ紹介にとどまります。故に「補追版」です。

↓これです。モノとしては特に変哲の無いM19A1弾薬箱です。ステンシルが何を意味しているかは過去記事をご参照ください。


↓ココがこの個体を入手しようと思わせたポイントです。「7-66」とありまして、「1966年7月箱詰めした」とのステンシルです。ベトナム戦争中でも1970年より前のモノが何故か魅力を感じます。それは例えばWWII装備品でも1945年スタンプのモノよりも1944年スタンプのモノが欲しいというのと同じくらいの程度のもので、特に何か思い入れがあるという訳ではありません。


↓照明が反射してて済みません。蓋上面のステンシルは過去記事のものと同様です。


↓「蓋の開く側じゃなくてヒンジ側ですよ」との注意喚起黄色帯表示も同じです。


↓ヒンジ側の下方にある製造者表示。S.C.Fがどのようなメーカーなのかはまだ分かりません…。


↓錆が結構ありますが、比較的綺麗な方なので満足しています。



今回の記事は以上です。
弾薬箱のコレクションは場所を取りそうに思われがちですが、中に小物のコレクションを収納すれば良き保存庫となりますので便利です。ただ湿度管理は必要ですが。

それでは今回はこの辺で失礼いたします。さようなら。




  

Posted by Sgt. Saunders at 12:25Comments(2)Fire arms-RelatedFire arms

2020年05月24日

U.S. M1A1 30口径弾薬箱(U.S. M1A1 Cal. .30 Ammunition Box)

皆さん、こんにちは。
当地大阪府下某郊外都市の本日最高気温が29.5℃!真夏日寸前です。
新型コロナウィルスによる感染症の拡大の勢いが全国的に鈍り、緊急事態宣言の出ている8都道府県でも感染者がゼロの日も見られ、収束に向かい始めたのかなと若干安堵し掛かっておりますが、いや、まだまだ油断する事なく、はしゃぐ事無く、もう暫くは「控え目」に振舞おうと思います。サバゲは三密に当たるのか?よく分かりません。と書いてたら、今テレビの速報で東京都のウィルス感染者が14人に!と入ってきました。また増えだすのでしょうか?

さて、いつものように自宅に籠って定刻を3時間過ぎて今回投稿いたします蒐集品ネタは、以前の記事「M1 30口径弾薬箱(U.S. M1 Cal. .30 Ammunition Box)」、「M19A1 弾薬箱(U.S. M19A1 Ammunition Box)」(←それぞれクリックで過去記事が別ウィンドウが開きます)等に続く「弾薬箱シリーズ」第ウン段、「M1A1 30口径弾薬箱(M1A1 Cal. .30 Ammunition Box)」です。米軍の弾薬箱の進化・改善?を少しだけご覧いただけると思います。過去記事中でも申しておりましたが、念願のM1A1弾薬箱を今般やっと入手できました。錆や傷は多いですが満足しております。


↓念願のM1A1弾薬箱です。先代のM1と後継のM19の特徴が混ざったような、まあ当然ですが、そんな感じの風体です。近時のシャープでスマートなM19A1とは違う、グニャグニャ・ゴチョゴチョした造りが何とも言えない魅力です。リブを多用しての強度アップ、品名をわざわざモールドで表示、兵士の利便性に寄り添った小細工は先代のM1と相通ずるところです。


↓上が今回採り上げるM1A1、下が先代であるM1。こうして並べるとリブの角ばり具合や底の造りが違っているのがよく分かります。他にも違いが多くありますので、順に見て行きます。

   
↓拡大。「CAL .30 M1A1 BOX」と「M1A1 .30口径 箱」との表示。「弾薬」の語がありませんね。左下の小さいハンドルはM1と同じ。その上に製造者ARTCRAFT社のロゴマーク。右側には武器科徽章であるフレイミング・ボムがあります。


↓参考にM1の画像も。こちらには製造者やフレイミング・ボムはありません。


↓反対側。右が先代のM1、左がM1A1です。右のM1にはどちらの面にも品名のモールドがありましたが、M1A1になると片面だけになりました。


↓蓋です。どちらも左端がヒンジ(蝶番)になっていて、右端部が上方へ開きます。画像で上のM1A1の蓋の左右両端部には、中に収めるカートリッジの向きを示す凸モールドが施されるようになりました。下の先代M1の場合は、蓋にはこの様な指示モールドは無く、代わりに箱の内側底面部に凸モールドで弾薬の方向が示されていました。ブローニングM1919A4機関銃とセットで運用される場合に機関銃の左側に弾薬箱が位置する関係で、当然カートリッジは射出方向へ向けて収まっていないといけませんから、このような表示で注意喚起がなされました。これは同時期の別の口径の弾薬箱「M2 50口径用弾薬箱(M2 Cal..50 Ammunition Box)」(←クリックで過去記事が別ウィンドウが開きます)でも見られる特徴です。持ち手はどちらも同じモノです。

また、箱を上へ積み重ねる際に横にズレないようにするための溝がM1にはありましたがM1A1では無くなりました。

↓蓋のクランプ(留め具)が付いている面の比較です。左がM1A1、右がM1です。クランプの構造と言うか原理と言うか、仕組みが異なります。後で触れます。左のM1A1の下の方にある装置は…、次の画像を。


↓指でこのように動かせます。右のM1のクランプの下の方にあるスリット(切れ込み)と同じ位置にスリットが生まれます。このスリットは弾薬箱をM1917A1等のトライポッド(三脚)に搭載する際に、三脚側に備えてあるブラケットの突起を引っ掛けさせるためのモノです。M1ではスリットが開けられているだけでしたが、左のM1A1では指で動かした「ロック」が追加され、振動や衝撃でも容易に横擦れして外れないように改良されました。


↓斜め後ろから。バネが仕込まれていて、下のレバーを下げると、スリットに嵌めた三脚のブラケットが抜けないよう挟み押さえつけていた上端のロック部分が連動して下がり、ブラケットとの嵌合を解放できます。


↓トーション・バネが仕込まれている、とてもシンプルな仕組みです。


↓M1A1のクランプの拡大です。何やらロゴマークらしきモノの刻印。さっきお話ししました「M2 50口径用弾薬箱(M2 Cal..50 Ammunition Box)」でも見られます「N.L.Co.」、即ち「National Lock Company」社製であることを示すマーキングです。


↓クランプの下のここにも同じ刻印がありました。


↓クランプの仕組みです。蓋を閉めようと下ろしてきて…


↓クランプの先端を本体から伸びているカギ部分に引っ掛けて…


↓引っ掛かったところをテコの原理の支点として、そのままクランプの下端を下方へ押し下げて…


↓パチンっと留めます。


↓蓋を開けましょう。焦って写真が傾いてますね。


↓蓋の裏側です。プレスされた一枚物の板で出来ているのはM1と同じです。気密性を保つため黒いゴム製のガスケットが蓋の内側を巡らされています。


↓中はがらんどうです。


↓蓋と本体との結合部分、ヒンジです。


↓一定の範囲の角度に開いた状態で…


↓蓋を向こうへ押し出すと…


↓外せます。


↓シンプルな作りです。


↓蓋クランプと、M1917A1トライポッド等各種三脚への搭載時に使うブラケットとの嵌合カギなどの比較です。どちらの弾薬箱にもある、画像で斜めに起こしているワイヤー・ハンドルは三脚への搭載や蓋の開閉時に本体を支えるのに用います。


↓この上向きのカギを三脚のブラケットに嵌めます。

右のM1も同様です。↓


↓先ほど既に触れましたが、弾薬箱をM1917A1等のトライポッドに搭載する際に、トライポッド側にあるブラケットの突起にへ引っ掛けさせるためのスリット部分です。ピントがボケてて済みません。


↓底の比較です。右のM1ではあたかも缶詰の底のように側面板を底板で巻き締めてあるのに対して、左のM1A1では底板に四方から側面板を8mmほど貼り合わせるようにして熔接してあります。また、蓋のところでも述べましたように、右のM1A1の底板には弾薬箱を積み重ねる際に横ズレが起こらないようにと蓋の溝と噛み合うように底にも溝が施されていましたが、左のM1A1では省かれました。


↓クランプが付いている方とは反対側の面、蓋のヒンジがある方の面です。左のM1A1ではヒンジの金具ぐらいしかありませんが、右のM1ではヒンジの金具のほか、製造者のロゴや武器科徽章のフレイミング・ボムがあります。


↓最後に左からM1、M1A1と、さらにその後継であり現用されているM19A1を並べてみました。M19A1の前にはM19の存在があるのですが、これもまた希少品で、私はまだ蒐集しておりません。持ち手の形状にはずっと変化がありません。


↓左からM1、M1A1、M19A1。左二つのM1とM1A1ではあった下部の三脚搭載用のブラケット結合に関する細工は右のM19A1では無くなりました。機関銃の三脚への搭載方式が変わったためです。クランプの基本的な作りは真ん中のM1A1と右のM19A1とは同じです。


↓クランプの無い側の比較です。ヒンジの形状の変化が分かります。右のM19A1では製造者名がありますが、「M19A1」との名称表示がなされることもあります。




以上、やや冗長気味でしたが如何でしたでしょうか。
コレクションの対象が特定の一時期、例えば「WW1の米軍の装備品」などと限定していれば、同じ米軍の装備品であってもWW2モノには関心を示さないかも知れませんが、私は装備品の変遷の方にも興味が湧くタチで、コレクションのし始めはWW2米陸軍一般歩兵でしたけれども、その前後のWW1や朝鮮戦争、ヴェトナム戦争期に亘って興味の範囲が拡がってしまい、コレクションとしては何とも纏まりがないモノとなっています。
でもまぁ、今回入手出来たM1A1は長年探し求めていたモノで、錆がやや目立つとは言え比較的綺麗なモノだと自分では大変満足しています。


それでは今回はこの辺で失礼いたします。さようなら。




  

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2020年04月26日

U.S. M1923ウェブ・スリング(2)(U.S. M1923 Web Sling(2))

みなさん、こんにちは。自粛なさってますか。
いわゆるGW休暇に既に入られておられる方もあると思いますが、私は暦通りの休み・仕事です。テレワークに適さない業種ですので出勤しないことには仕事ができません。本日は休みです。

隔週日曜日の正午を当ブログの投稿定刻としておりますが、今回ボリュームも小さく、二番煎じ的なものですので先週に続き投稿いたします。
過去記事「U.S. M1923ウェブ・スリング(U.S. M1923 Web Sling) 」の中で、アメリカのドラム製造会社RCI Starlight Drumsが製造・販売している精巧なレプリカを紹介いたしましたが、その後また同社のHPを経由してeBayの出品リストへ辿り着きますと、何と「カーキ色バージョン」が出品されておりまして、思わず即買いしてしまいました。で、到着しましたモノが今回ご紹介するものです。ですので今回の投稿は過去記事の補追のようなもの、つまり二番煎じ的です。お許しください。


↓過去記事でも紹介しましたODバージョンと、今回入手したカーキ色バージョン。


↓ODかカーキか、細かく言えばodシェード#7か#3か(否、#9か?)の違いだけだ、と思って注文して届いたのですが、良く見るとちょっと違いました。この画像で既にお気づきかもしれませんが...


↓過去記事でも触れていますように、右のOD版では「S.M.Co. 1942」というもっともらしいスタンプのすぐそばに「本当はレプリカですよ」の意味のスタンプがあるので、良心的なレプリカ製造者だと感心してたのですが、今回入手した左のカーキ版には「本当はレプリカですよ」のスタンプが無く、「S.M.Co. 1942」スタンプがあるのみで、これでは適当にウェザリングして「本物!」と謳って悪銭を手に入れる輩が出てくるやんかと思います。セールス・ポリシーが変わったのでしょうか、単なる工程ミスでしょうか。


↓あと、バックルやキーパーなどのハードウェアはOD版と同じくしっかりしたモノなのですが、ウェブ自体がやや薄いような気がします。



それでは今回は非常に短いですが、この辺で失礼いたします。
引き続き不要不急な行動は慎み、手洗い・マスク着用の励行、規則正しい生活で新型コロナウィルスの拡散を防ぎましょう。



  

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2020年03月08日

U.S. M1923ウェブ・スリング(U.S. M1923 Web Sling)

みなさま、こんにちは。
少し前になりますが、今上天皇陛下誕生日の参賀が例のコロナウィルスの影響で中止になったり、東京マラソンでは一般参加者の参加を中止したりとウィルス対策のための「中止」「自粛」が全国的に広まり、何か閉塞感と言いますか暗ーい雰囲気に包まれています。
そして首相の小中高校などへの唐突な一斉休校「要請」。その「政治決断」に至った具体的根拠は示さず理解・協力を求めるのみで、2019年度予算から約2700億円の予備費を使っての経済対策を「10日のうちにとりまとめる」と述べたり、受けたくても受けられない人が多いウイルス検査については「必要な検査が確実にできるよう国が仲介する」としたり、「15分で検出できるキットを今月中に開発する」などと「ホンマかいな」と思われるような発言を繰り出しています。
その後には公務は無い土曜の夕方に急遽会見を設定した割には記者からの質問はあらかじめ台本の作られたモノだけに限られた、まさかの時間制限付きで、どう見ても国民の不安と向き合う覚悟があるようには映りません。
実際春休みを含む形で公立・私立の小中高がお休みとなり、終業式・卒業式が省略・簡略され、入試はどうするのかは各自治体や私学に丸投げ。「『要請』して、それを受けて実施するのはそちらの判断。だから責任はそちらにあるんだよ。」という論法でしょうけど、あまりに無節操・無責任です。
東京高検の黒川弘務検事長の定年延長について、検察官の定年は、検事総長以外は検察庁法で63歳と定められているにも拘らず、安倍政権は国家公務員法81条の2を強引に適用・解釈して「定年延長できる」と法解釈を「閣議決定」。法律を「閣議決定」で捻じ曲げたけれど、森雅子法相は過去の法解釈との相違を追及されてもシドロモドロで何度も答弁を「修正」。もう無茶苦茶です。
何か心が晴れるようなパッと良いニュースがありませんかね。横澤夏子さんに第一子が生まれたそうで、良かったですね。

さて定時を一週間過ぎての今回の投稿ネタは、「またトンプソン?もう飽きた!」と仰る勿れ。
トンプソンに付いているスリングにご注目ください。
↓以前の投稿「トンプソン短機関銃用Kerrスリング(Thompson Kerr Sling)」等の中で触れたことのある「M1923ウェブ・スリング(Sling, Web, M1923)」のレプリカです。

実物ではなく、何故レプリカでの入手に至ったかと言えば、実物の出物が今後期待しにくく且つ価格が高いであろうことと、このレプリカの製造者自身が「Limited Quantities(数量限定)」と謳い、今後再び製造販売されることが無いのではと思われたためです、今レプリカの形ででも入手しておく必要があると判断したからなのですが、まだ今もひっそりと売られています...。
実物はとてもレアな存在なようで、私自身国内・海外とも売りに出されているのを見たことは2度ほどしかありませんし、いくらで売りに出されていたかもよく覚えておりません。
今でこそこのM1923ウェブ・スリングは世界中の人々によってネットで俎上にあげられて広く認知されていますが、インターネットが普及し始める1996年頃以降でも、耳目を集めることはあまりなかったように思います。私自身こんなスリングがあった事を知ったのはほんの20年くらい前です。

↓トンプソンからKerrスリングを外す前にM1923ウェブ・スリングを沿わせてみました。


↓向きが違って対照し辛いですがM1903小銃のマニュアルから。冒頭からトンプソンに付けてみてますが、トンプソンに限る訳でなく、本来このM1923ウェブ・スリングは、M1903ライフル用の革製のM1907スリングの「代替廉価版」として開発され、その名の通り1923年に採用されたモノでして、WWIIまでにはM1ガーランド小銃やBARにも使われています。

WW1が終わったのち米陸軍装備品に若干の改修が「M1923シリーズ」として行われました。その一つでもあるのがこのスリング。要するに高価な革でなく安くて軽いコットン・ウェブで作るようにしたモノでありましたが、次の画像で見ますように「長ーくも出来るし、短くも出来るし、『精密射撃ポジション』にも出来る」というKerrスリングが持っていたコンセプトも受け継ぐように開発されましたので、その構造・造りが少し複雑で、銃に取り付けるのに面倒でひと苦労もふた苦労もする気がします。

↓これはその、未だ密かに販売されておられるネットからの引用画像です。上から「Parade, Short Carry, Long carry, Shooting」ポジションに出来ると説明されています。Kerrスリングでも同じように4つのポジションで使える!との売り文句がありましたが、それと同じです。
しかし、バックルに通っているストラップが一部外されて「バックルが半分遊んでいる」状態になっていて(画像下2つの「Long carry」、「Sniping and Shooting Position」で、銃口側(左)のバックルにストラップが通っていない部分がある)、個人的には「何か恰好悪い」と思います。


↓アメリカのナショナル・アーカイブからの画像です。1944年4月15日イタリアのアンツィオ・ビーチから3キロほどのCeretto Alto急襲作戦終息間際で撮られたそうで、第1スペシャル・サービス・フォースの軍曹がトンプソンにこのM1923ウェブ・スリングを付けているのが分かります。他のウェブ・スリングには無い特徴的なバックルで識別できます。


↓では、細部を見て行きます。革製のM1907スリングでも長・短2本のストラップと2つのフックがどのように組み合わさっているのかを理解するのに骨が折れましたが、このM1923ウェブ・スリングでも長・短2本のストラップが2つのバックルでどのように組み合わさって、どう働いているのか、一瞥しただけでは分かりませんでした…。


↓私が分かり難かったのはこのバックル群です。見るからにややこしそうな感じです。


↓裏返してみました。「こっちから来て戻ってバックルを通ってまた戻って長さはどうやって…?」と、脇に「出来上がり図」が無ければ組んでいく自信がありません。


↓はい、解剖してみました。本記事の上の方で掲げましたマニュアルでの用語を用いれば、大型バックルが末端に縫い付けられた長ストラップと自在キーパー、金属ループが末端に縫い付けられた短ストラップ、および小型バックルで構成されます。


↓拡大です。左上の自在キーパーは後のM1スリングでも見られるモノで良く見慣れています。右上の金属ループも特に気にはなりません。左下の「大型バックル」は本当に大きく、と言うかハシゴの数が多くて他に見覚えがありません。このスリングにおいてのみしか私は見たことがありません。右下の「小型バックル」は例えばM1928ハバーサックやM1936サスペンダーで見慣れています。

縫い糸の周りが黄色じみて写っているのは、私が染料で染めている作業の最中だからです。元々は真っ白な糸で余りにもレプリカ然として違和感があったので染めようとしています。上手くいくかどうか。

↓このキーパーはM16ライフル用のスリングなどでも使われましたし、何より簡便で使い易いですね。


↓これが問題の大型バックルです。外枠を除いて中のハシゴが4つありますが、右から2番目のモノは位置が低く、またストラップが巻かれることはありません。補強用のモノだと考えてます。


↓このリングは、特記無しです...。


↓その裏側にレプリカでありながら、「S.M. Co.」「1942」と本当に存在・製造したメーカー名が製造年とともにプリントされています。


↓しかし、このように「レプリカです!」とハッキリ分かるよう、また「当時モノの実物である」と誤認しないよう、別のスタンプが押されています。


↓見にくいですが、円の中にAFCのロゴマークとAmerican Fabrics Company 云々の標記があります。弄っているうちに掠れてしまいました。

このAmerican Fabrics Companyは、WWII当時別の装備品、例えばBag, Carrying, Ammunitionなどは製造しておりましたが、M1923ウェブ・スリングは製造していませんでした。そのAmerican Fabrics Companyの工場設備を現在所有している有名ドラム製造メーカー RCI Starlight Drumsが、ドラムとは全く関係の無いM1923ウェブ・スリングのレプリカを製造・販売しているという訳です。
スタンプされている「S.M. Co.」社はWWII当時このM1923ウェブ・スリングを製造しておりましたメーカーで、つまり、「ドラム製造会社RCI Starlight Drumsが、American Fabrics Companyの工場設備を使って、WWII当時M1923ウェブ・スリングを製造していたS.M.Co.社のスタンプを施してレプリカを製造・販売している」という事です。
American Fabrics Companyの歴史のページ←別ウィンドウが開きます。但しこの会社が直接このレプリカを販売している訳ではありませんのでご注意を。
販売しているのはRCI Starlight Drumsです。←別ウィンドウが開きます。

今回の投稿に当たっていろいろ調べましたが、WW1とWWIIとの間ではまだKerrスリングや革のM1907スリングの在庫が沢山あったのでM1923ウェブ・スリングの製造はあまりなく、WWIIが始まってから製造されはじめ、しかもその中には、レンド・リースとしてソビエトやイギリスなどに多く渡った可能性もあり、そのために現存数が少ないのではと考察している方がありました。しかもWWII末期か終了後には前述のもっと簡素なM1ウェブ・スリングも出て来ましたし、M1923ウェブ・スリングの製造時期は短く、それ故製造数はもともとそれほど多くなかったのではないかと推察いたします。

それでは今回はこの辺で失礼いたします。また2週間後にお目に掛りたく思います。ご機嫌よう。さようなら。




  

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2020年02月16日

自衛隊M25曳光弾(JGSDF .30-06(7.62mm x 63mm))

みなさん、こんにちは。

コロナウイルスに関して連日報道が続いていますが、インフルエンザでも年間に千人単位で亡くなられる方がいるという統計を見れば、このウィルスだけを特別視し過ぎではないかと思います。致死率はより高いと雖も必要以上の恐怖感が蔓延してパニック状態を惹き起こすような印象を持ちます。

春本番か?というような日中の最高気温が18度になったり、逆に日中の最低気温が1度となったり、まあ気温変動のとても激しい当地大阪から今回投稿いたしますのは、近時入手したモノの中から前々回の「自衛隊M80普通弾:減装薬の箱(Carton of JGSDF 7.62mm NATO)」と同族の自衛隊関連モノです。M25曳光弾の箱と、ダミー・カートも年代は違えど一応揃いで入手出来ました。

↓箱の表です。まず1行目の「A230J」ですが、「A230」はDODIC(「防衛省規格改正票 弾薬用語」では「弾薬識別番号」です。そもそもの由来はカートリッジの種類やカートン入りなのかクリップ付きなのかベルトリンク連結されているのかバラなのか等を示すアメリカ国防総省(DoD:Department of Defense)アイテムコード(Item Code)です)の丸写しで、「Cartridge, Caliber .30, Tracer, M1/M25 Single round」つまり「M1若しくはM25 .30口径曳光弾 バラ」の意味です。その後の「J」はJapanのJです。日本製のA230であるという意味です。
で、2行目「7.62mm(30), M25曳光弾:」は、「(口径が)7.62mm(.30口径)、M25曳光弾です」という意味です。上の「A230」を具体的に示しています。
ここで注意すべきは、このM25曳光弾は、同じ.30口径でも7.62 x 51mm NATO弾(.308ウィンチェスター弾)ではなく、その前世代である.30-06弾(7.62 × 63mm スプリングフィールド弾)の曳光弾であるという事です。つまりこの弾薬は、我が自衛隊の国産64式小銃用のモノではなく、米軍から供与を受けていたM1ガーランド小銃等に用いられていたモノなのです。ですから最新の「陸上自衛隊 小火器弾薬共通仕様書」の国連番号対照表には最早この「A230J」は搭載されていません。1975年には未だ.30-06弾を使っていたんですね。

米陸軍がM1903スプリングフィールド小銃用に開発してM1ガーランド小銃に至るまで用いていた.30-06弾(7.62 × 63mmスプリングフィールド弾)を短縮化させて、M1ガーランド小銃に代わって1950年代中期に新たに採用するM14ライフル用の弾薬として開発したモノが7.62 × 51mmNATO弾であるのはご承知の通りです。それに追随する形で我が自衛隊も米軍からの供与M1ガーランド小銃から64式7.62mm小銃へ代わるのに合わせてM14ライフルと同じNATO規格の弾薬を採用しました(厳密にいえば減装してますが。前々回の記事「自衛隊M80普通弾:減装薬の箱(Carton of JGSDF 7.62mm NATO)」をご参照ください)。
3行目以下は「20発入り」、製造ロット記号AOは「旭精機工業株式会社 本社工場」製の意で、ロット番号が1201、「75-06」は1975年6月製を示します。

↓裏です。上部の指欠きくらいしか特記事項無しです。


↓底面です。前々回の記事「自衛隊M80普通弾:減装薬の箱(Carton of JGSDF 7.62mm NATO)」と同様、なぜワザワザこんな切込み差込み式にしたのでしょうか。


↓上蓋を開けました。カートの底部、ヘッド・スタンプが見えます。中身のダミー・カートリッジが少なくとも自衛隊モノでありましたところは嬉しいポイントです。


↓拡大。箱の表書きとは製造年は合っておりませんが、自衛隊モノであることは確かです。次の画像では1976年製造のダミー・カートを掲げてますが、この画像の真ん中のカートには「W84」と、1984年製であるモノがあり、1984年に於いても未だ自衛隊で.30-06弾が使われていたのだと知り、少し驚きました。M1ガーランド小銃用に?儀仗銃用でしょうか?門外漢なので良く存じません。


↓一発取り出しました。「J-AO」は「日本・旭精機工業株式会社 本社工場製」の意。「W76」のWは武器科(weaponry)のW、76は1976年製を意味します。


↓底には凸型の中敷きがありました。箱の中でカートが整列するようにだと思います。


↓その中敷きです。これも前々回の「自衛隊M80普通弾:減装薬の箱(Carton of JGSDF 7.62mm NATO)」と同じです。


↓底は本稿3番目の画像でも触れましたが差込み式です。


↓左が前々回の記事「自衛隊M80普通弾:減装薬の箱(Carton of JGSDF 7.62mm NATO)」でご紹介しましたM80の箱とダミー・カートリッジ、右は今回のM25曳光弾の箱とダミー・カートリッジ。薬莢長が12mm短くなりました。本当は右のM25曳光弾の弾頭の先半分ほどは曳光弾であることを示すオレンジ色に着色されていなければなりません。1950年代中期頃までのM1曳光弾では、曳光弾であることを示す色は赤色でした。


↓さらに拡大。


↓左が今回ご紹介のA230J、右が前々々回の記事「M1906 30口径弾ダミー・カートリッジ(US M1906 Cal..30 Dummy Cartridges)」のM1906 30口径ダミー・カートリッジの箱です。どちらも同じ.30-06弾ですので、箱の丈のサイズが同じです。



以上、投稿定刻時刻を意識して駆け足気味に見て参りました。

軍用の薬莢が構成要素となっているダミー・カートと聞くとついつい食指を動かされます。入手できる機会がドンドン減っているので、これからも多分そうでしょうね。

それでは今回はこの辺で失礼いたします。またお会いしましょう。さようなら。



  

2019年12月29日

M1906 30口径弾ダミー・カートリッジ(US M1906 Cal..30 Dummy Cartridges)

みなさん、こんにちは。
歳末のお忙しいところご訪問頂きありがとうございます。
私も家の大掃除の合間を縫って、2019年(令和元年)を締めくくるべく、投稿定刻の隔週日曜日の正午に間に合わせようと奮闘しておりましたが、3時間余り過ぎてしまいました。
みなさんは迎春準備は如何ですか?

さて今年最後にお送りしますのは、最近になってオリジナルのカートン入りでの入手が叶いましたダミー・カート、「M1906 30口径弾ダミー・カートリッジ(M1906 Cal..30 Dummy Cartridges)」です。私の「実銃は持てないので、せめてアクセサリーは実物を...」コレクションに新たに仲間入りした子です。

↓まずカートンの全体像です。カードボード製の箱に内容物を記したラベルが貼ってあります。


↓全体的にやや程度はくたびれていますが私的には「Acceptable」。この時代まで良く生きながらえていてくれたことに感謝です。画像では分かり難いですが、ラベルはダミー・カートであることを意味する緑色です。もうかなり褪色してしまってます。

「20発ダミー・カートリッジ」の表示のほか、製造者「フランクフォード造兵廠(Frankford Arsenal)」製、ロット番号「101」との表示があります。

↓入手時には既に開封されていました。


↓保管状況が良くなかったみたいで錆?オイル?で若干美観は損ねていますが、私は満足しています。


↓ラベルは上面を廻って背面まで及んでいます。


↓横からべりッと開けます。嘘です。既に開いてました。


↓クリップにまとめられたダミー・カートがカードボードを挟んで上下互い違いに逆さまに収まっていました。


↓カートンの中ではこのように収まっていました。いわゆる30-06弾で、M1903スプリングフィールド小銃やM1917エンフィールド小銃用の5発組クリップに収まって、クリップ4つで計20発です。


↓ダミーであることが視覚・触覚でも分かるよう薬莢部分がコルゲート加工されています。


↓一発取り出して簡単ですが磨いてみました。磨くのと磨いていないのと、やっぱり見栄えが全然違いますね。


↓30-06弾ですからM1903スプリングフィールド小銃やM1917エンフィールド小銃、M1ガーランド小銃、将又M1917A1やM1919A4機関銃の動作に使えます。


↓ヘッドスタンプ「43」、「FA」。1943年Frankford Arsenal製である事が分かります。


↓クリップです。下の方に指紋痕が付いてます。ちょっと磨いたぐらいじゃ落ちませんでした。


↓クリップ側面。M1903スプリングフィールド小銃やM1917エンフィールド小銃の装填に使う際の「ここまで突っ込んだら十分」ポッチがあります。


↓クリップの構造が分かります。真鍮製のガワと板バネ。


↓もっと接近して真横から。


↓カートのリムをこの様にガワと板バネの間に挟み込ませて保持させます。ま、こんなのはどんなクリップも同じ仕組みです。


↓板バネをガワにどう固定しているかは、クリップの種類により様々で、本クリップではガワ両末端の切り欠きに板バネの凸を噛みこませて固定しています。画像では板バネを1cm程引き出しています。



以上慌ただしく見て参りましたが如何でしたでしょうか。

「実銃は持てないので、せめてアクセサリーは実物を...」コレクションとして今回のような軍純正のダミーカートや軍用薬莢に弾頭を付けたダミーカート、またカードボード製の箱だけであっても貴重な資料としてコツコツと集めてきていますが、種類が多くてとても全種類をコンプリートするのは無理なので、ある程度のところで打ち止めになるべきではありますが、目の前にあるとつい欲が出てしまいます。
因みにカードボード製の箱は海外で実物を精巧にコピーしたモノが廉価で売られていますので、雰囲気を楽しむにはそれで十分だと思います。しかしながら、私はやはり「実物」にしかない重みと言いますか凄みと言いますか、そちらの方も捨てがたく、今後も適切な価格であればまた心を動かされると思います。


今年も公私ともに色んなことがありました。
日本の各地を襲った自然災害や、政治に関する醜聞など思い返せば沢山ありすぎてあっという間に記憶のかなたに置き去りにしてしまっています。私事では身内・縁者に大病をした者等は無く、不幸事はありませんでしたが、本当に有難いことです。みなさんはどの様な一年でしたか?

それでは今回はこの辺で失礼いたします。今年もご覧いただきありがとうございました。
来年もまた徒然なるままに駄文を書き連ねて参りますが、どうぞよろしくお願いします。さようなら。


  

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2019年11月17日

7.62×51mm NATO弾とM13リンク(7.62 NATO & M13 Belt Cartridge Link)

みなさん、こんにちは。
当地大阪でも朝晩の通勤帰宅時にはコートが必要になって来ました。しかしながら日中の気温は20度近くまで上がることもあります。
近所の児童公園の桜もほぼ紅葉となり、ハラハラと落ちていってます。

さて、今回の投稿ネタは「実銃は持てないのでせめてアクセサリーは…」コレクションから「M13リンク」で繋いだ「7.62×51mm NATO弾(以下「7.62 NATO」とします)」であるところの「米軍制式名称:M80 7.62mm Ball Cartridge(ボール・カートリッジ)(以下「M80ボール」とします)」のダミー・カートリッジ」をお送りします。最近まとまった量を入手する機会に恵まれましたので記事に致します。

1950年代後半にM14ライフルやM60機関銃が制式採用されますが、それらに用いられ、1970年代後半からはM60機関銃に替わるM240機関銃にも引き続き使用されているのがM80ボールです。民生品の名としては一般的に「.308ウィンチェスター」と呼ばれています。
ミリタリア・コレクターとしては、やはり「.308ウィンチェスター」ではなく、M80ボールをコレクションしたいところですが、当局による近年のダミー・カート排斥キャンペーン?により海外からの実弾撃ち殻薬莢の個人輸入が難しくなる中、M16系ライフルやM249LMG(SAW)等用の5.56×45mm NATO弾とM27リンク(←クリックで過去記事が開きます)に比べてより一層入手が難しい状況です。
そんな中、ちょっとまとまった量を入手する機会を得まして、今回記事として投稿いたします。

↓このような画はいつ見てもワクワクします。なんて事を書くと公安にマークされるんでしょうか。全部磨くのは大変でしたので3発だけ磨いて一番上に乗っけました。


↓はい、磨いてないカートとリンクです。リンクで繋いでいるという事はM60機関銃にフィードさせるという事です。後ろに写っている弾薬箱の表記に従えば、本当はM62トレーサー弾1発とM80ボール4発の組み合わせになっていなければならないのですが、すみません。全部M80ボールです。M62トレーサーに見せるには弾頭をオレンジ色に着色する必要があります。


5.56×45mm NATO弾とM27リンク(←クリックで過去記事に飛びます)で見たM27リンクと同様裏側は薬莢部分の露出が多い作りです。まあ5.56×45mm NATOもM27リンクもこの7.62 NATOとM13リンクをスケールダウンしただけのものですからね。当然と言えばそれまでです。


↓カートは色んな製造年のモノが混じりあってます。


↓端っこから3発外して磨きました。でも真鍮も銅も磨いたあと数日経つとすぐに曇ってきます。


↓タンブラーなんて持ってませんのでピカールで一つずつ磨きました。真鍮の金色の輝きとあかがねのコントラストはいつ見ても美しいですね。例によって手指の指紋・掌紋には画像加工を施しています。


↓ヘッド・スタンプを見ます。12時の位置にNATO規格弾であることを表す「〇に十」の丸十マーク。7・8時の「LC」は「Lake City Army Ammunition Plant」製、4・5時の「63」は1963年製であることを示します。1963年と言えばビートルズが1月にリリースした2枚目のシングル「プリーズ・プリーズ・ミー」が3月2日付けのメロディー・メーカー誌のシングル・トップ50で1位を獲り、公民権運動の指導者マーティン・ルーサー・キング・ジュニアが4月に遊説先のメンフィスで白人に暗殺され、5月にはヴェトナムのユエで行われた反政府デモで警察がデモ隊に発砲して死者が出、6月には仏教徒に対する抑圧を世界に知らしめるため、僧侶のティク・クァン・ドクがサイゴンのアメリカ大使館前で予告焼身自殺をしました。11月にはケネディ大統領がテキサス州ダラスで暗殺されます。日本ではアニメ鉄腕アトムが放映開始、エースコックのワンタンメンが発売され、梓みちよの「こんにちは赤ちゃん」がヒットし、映画「史上最大の作戦」が公開されたそうです。


↓別の例です。12時の位置にNATO規格弾であることを表す「〇に十」の丸十マーク。7・8時の「RA」はRemington Arms Company製の意、4・5時の「70」は1970年製であることを示します。1970年と言えば隣国カンボジアで内戦が始まりました。ヴェトナムを巡ってはアメリカのニクソン大統領が北ベトナム政府との「パリ和平会談」を開始させました。 日本では大阪万博が開幕し、日本航空よど号ハイジャック事件が発生、銀座にマクドナルド日本第1号店がオープンし、皆川おさむの「黒ネコのタンゴ」がヒットしたそうです。4月にはポール・マッカートニーがイギリスの大衆紙『デイリー・ミラー』でビートルズからの脱退を発表しました。


↓カートを保持するのはM27リンクと同様、画像右手前にあるスプーン上の突起がカート後端のエクストラクション・グルーヴに掛かるようになっています。


↓後方に引き抜くか、前方へ押し出すか、どちらでも抽筒できるのもM27リンクと同じです。


↓リンクの接続は…


↓輪っかに合わせて…


↓カートを蝶番の軸のように差し込んで…


↓スプーンの形状になっているところがカート後端のエクストラクション・グルーヴに掛かるまで…


↓差し込んで…


↓完了です。


↓M13リンクを見ます。名称の刻印と「GCK」の刻印。GCKがどんなメーカーなのか、ちょっと調べましたが分かりませんでした。


↓ココにもNATO規格準拠を示す丸十マークがあります。


↓もう一つ別のリンク。「M13」の名称表示と「WM」の製造者表示。WELLS MARINE INC.という会社はWW2以前よりメタル・リンクを製造・供給しています。「4」はロット番号です。


↓こちらにもNATO規格準拠を示す丸十マークがあります。



以上見て参りました。
7.62 NATOはヴェトナム戦コレクションに欠かせません。既に申しましたがM14ライフルやM60機関銃の脇役に必要です。M14ライフルについては彼の東京マルイ製電動ガンとホビーフィックス製の無発火モデルガンを持っていますが、モデルガンのマガジンに7.62 NATOのダミーをフル装填したくてその入手は必然でした。M13リンクで繋いだ7.62 NATOはM60機関銃の脇役になりますが、私はまだ電動ガン・モデルガン・不可動実銃等いずれの形でもM60機関銃は持ってません。いつの日か手に入れたいと思っています。
また、M19A1弾薬箱の中身を埋めるためにも7.62 NATOのダミー・カートは必要で、どちらかと言うとそのために7.62 NATOを蒐めてきました。そこそこの量を手に入れる事ができたので満足しています。

最近は5.56 NATO弾はオークションやショップのHPでも売りに出されていることが多いですが、7.62 NATO弾はそれに比して出品・販売されているのを見る機会が圧倒的に少ないように感じます。出ているのを見ると、即購入を考えてしまいます。欲を言えば、出来れば60年代~70年代前半の製造分が良いですねぇ。


それでは今回はこの辺で失礼いたします。またお会いしましょう。さようなら。











  

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2019年07月21日

U.S. M2 50口径用弾薬箱(U.S. M2 Cal..50 Ammunition Box)

みなさん、こんにちは。
当地大阪は遅くなった梅雨入りの影響で今もまだ梅雨の最中でして、雨が降ったり止んだりの日々が続いております。
本日は参議院議員選挙の投票日で、みなさまは投票は終えられましたでしょうか。私はまだです。午後8時が投票締切時刻です。必ず行こうと思います。
自主目標である「隔週日曜日の正午の新規投稿」から今回も大幅に遅れての投稿です。


今年の1月と2月に亘ってWWII時に使われた30-06弾用のM1 弾薬箱(M1 Cal. .30 Ammunition Box)とその後継の後継たるM19A1 弾薬箱(US M19A1 Ammunition Box) をお送りしました。その記事中でも触れていましたように、WWII中にそれまでの木製の50口径弾用の弾薬箱「M17」やその金属製版とも言うべきM3に代わる後継の金属製弾薬箱「M2 50口径弾薬箱(M2 Cal..50 Ammunition Box)」をいつかは手に入れたいなぁと思っていましたら、つい先日オークションで程度の良いものが出品されているのを偶々見かけまして、この好機を逃したら次はいつ機会が訪れるかと思うと居てもたってもいられず、入札の結果なんとか落札できました。

↓M2 50口径弾用弾薬箱(M2 Cal..50 Ammunition Box)です。

当ブログへお越しの方なら恐らく多くの方が50口径弾とは何ぞやと訊かれても難無く答えられると思うのですが、ご存じない方向けにご説明しますと、50口径の「50」とは「0.50インチ」の事で、約12.7mmの直径を持つ弾頭を有するカートリッジ(銃弾)を意味し、米軍の場合はWWI中にドイツ軍の13.2mm対戦車ライフル弾に対抗するために開発が始められ採用に至ったM2 Ball Cal..50 Cartridgeを始めとする「.50 BMG(12.7mm x 99mm(12.7 x 99 NATO)」弾の事を言います。WWI後その銃弾と一心同体で開発が進んだM1921 Machine Gunとその後継のM2 Caliber .50 Browning Machine Gun用のカートリッジで、現在でもBrowning Machine Gun, Cal. .50, M2, HB, Flexibleを始めとする所謂重機関銃弾として使われています。


↓正面、と言いますか、蓋を留めるクランプ、ラッチのある側。機関銃の横に据えて使う時に射手側を向く面です。制式名称「AMM. BOX CAL..50 M2」と下辺にプレス刻印されています。「AMM.」は「ammunition」の略です。

それまでの金属製のM17 弾薬箱(M17 Cal..50 Ammunition Chest)に代わって1942年9月(資料によっては8月とするものもあります)に採用されました。強度・防湿性が向上しています。

↓少し上側から。


↓ラッチ・プレートを下ろして上蓋を閉めるのですが、確実に閉めた状態を保持するために、ラッチ・プレートに開けられた小さなスリットから、本体に熔接留めされているポストが突き出しておりまして、そこにあけられた孔に…


↓このように本来はピンを通して、ラッチ・プレートが不意に開かないようにします。この個体にはピンは残っていませんでした。画像はピンの代わりに細い六角レンチを通しています。すぐ横に写っているOリングにピン(普通のコッター・ピン)が付いていた筈なんです。手榴弾の安全ピンのような具合で、です。「不意に開かないように」するためですが、ラッチ・プレートがそんなに簡単に開くようにも思いません。

で、このOリングとピンは、紛失してもMkII手榴弾のような手榴弾の安全ピンで代用できます。実際戦場でもそうしていました。オリジナルのOリングか手榴弾の安全ピンのOリングかを見分ける方法は簡単。オリジナルのOリングは手榴弾の安全ピンのモノのようにリングの線材が円一周を超えて重なっていません。完全に「一重」の円です。手榴弾の安全ピンのOリングは「一重と半」ぐらいになってますよね。
ただ、この「ピン・ロック・システム(←私が勝手に名付けました)」で、このピンとOリングを紛失しないように、Oリングを弾薬箱から離れないようにするために、上の画像でもお分かり頂けると思いますが、ラッチ・プレート右下最下端に細目型の穴が開けられていて、そこにOリングを通してぶら下げる形にして弾薬箱から離れないようにして紛失を防ぐようになっているのですが、この細目穴が、今回いろいろ調べましたが、メーカーによってあったり無かったり、同じメーカーでも製造時期によってあるモノと無いモノがあったりします。
どちらが「進化形」なのか、当初は無くてOリングの紛失が多くて困ったのでこの細目型の穴を開けてOリングを通して紛失を防ぐように改良したのか、当初からあったけど、それ程役立たずだったかで省略されたのか、どなたかご存じないですか。

↓横から見た図です。ポストの小さな孔にピンを閂の要領で通します。


↓閉まっている状態。


↓ラッチ・プレートを起こし、


↓ほぼ90度くらい起こすと、


↓蓋から繋がるワイヤー・ループが解放され、


↓上方へ引っ張って、


↓蓋を開きます。


↓閉める時は当然逆のプロセスで、蓋を閉め…


↓ワイヤー・ループをラッチの爪に掛かるようにして…


↓ラッチ・プレートを下方におろして…


↓閉めます。


↓蓋の裏側です。縁にはゴムのパッキンが施されています。後でも触れますが両側にカートリッジの形のエンボスがあります。


↓蓋と本体を繋ぐヒンジ部分は、30口径弾用のM19A1弾薬箱のそれと同じ構造で…


↓蓋を小さく開け閉め動作をしながら左へコキコキずらしていけば...


↓このように蓋を外せます。


↓蓋の上面です。運搬用のハンドルの周りに補強のためのリブが施されています。


↓さっき見ましたカートリッジの形のエンボスです。これも他の米軍の弾薬箱と同じく、中に収めるカートの向きを示すためのモノです。


↓30口径弾用のM1弾薬箱と同じ作りの運搬用ハンドル。


↓フラットになって、上へ箱を積み重ねる際に邪魔になりません。


↓気になるのはコレ。「50 H.C.」?何を意味するか分かりません。「50」は口径で、「H.」は「High」?「Heavy」?「C.」は?サッパリです。


↓「C」のプレスが甘くて本当にC? L?


↓ラッチ・プレートを正面にしたときに左側となる面の製造者名「MODERN」と「US」とOrdnance Department(兵器局)のシンボル「フレイミング・ボム」。良く見るモノよりちょっと変わったデザインです。


↓ラッチ・プレートのある面とは反対の面。この面に内容物を示すステンシルが施されます。しかしながらこの個体はステンシルの上からODが再塗装されているか、ステンシルが落とされたかで、ハッキリ残っていません。が、…


↓よく見ると2種類のステンシルの痕が確認できます。


↓一つはスペース一杯に大きく左詰めで施され、もう一つは中央揃えでやや小さく施されています。

大きい方が
105 CAL. .50
A.P.I. M8
LOT
DM-L-21832

小さい方が
105 CAL..50
4 A.P.I.-1TR. M17-LINKED
REPACKED LOT
D.M.L- 102267
フォントの大きさが違うので判読はし易いです。
大きい方が曰く、「105発の50口径のM8徹甲焼夷弾、ロット番号DM-L-21832」、
小さい方が曰く、「105発の50口径の、リンクで組み合わされた『4発徹甲焼夷弾-1発M17曳光弾』、再梱包ロット番号DML-102267」。


↓反対側には運搬補助用のワイヤー・ハンドルがあります。


↓底面です。積み重ねる時に滑らないように蓋とカッチリ合う足があります。


↓本体は、側面の4面は一枚の鋼板がここで合わさって熔接され、底面の鋼板は底の四辺で熔接されて出来ています。メーカーによって若干違いがあります。


↓具に確認をしているとラッチ・プレート裏とラッチ・プレートに覆われている本体部分の色が違っていることに気が付きました。


↓ラッチ・プレート裏・覆われていた本体の部分はやや明るく艶の少ないグリーンで、隣り合わせの艶の若干強いやや暗いグリーンとの違いがよく分かります。ラッチ・プレートをめくって再塗装するのを忘れたんでしょうか。


↓ラッチ・プレートの裏に何やら刻印が。


↓「N.L.Co.」「Rockford」「MADE IN USA」とあります。National Lock Companyのマーキングです。本体の「MODERN」とはどう関わっているのか調べましたら、弾薬箱の金具のほか、航空機用のファスナー金具の製造者でありました。イリノイ州ロックフォードの会社です。部品の製造はN.L.Co.で、その部品を使ってMODERN社が弾薬箱を製造した、と推認いたします。


↓内側はかなり綺麗です。


↓ここにも何やら刻印があるのを見つけました。


↓これです。


↓目一杯の接写です。


↓上下ひっくり返しました。ちょっと見にくいですが、ここにも「N.L.Co.」と同社のロゴマーク、「MADE IN USA」とありました。



以上見て参りました。
やはりまだまだ知らないことが多いです。
WWII米陸軍一般歩兵装備品コレクションというよりも、米陸軍弾薬箱コレクションの一つとして念願が叶いました。
あとはM1A1を入手すれば一応私の弾薬箱コレクションは終結すると思います。珍しいステンシルのモノがあれば別ですが。

それでは今回はこの辺で失礼いたします。またお会いしましょう。さようなら。




  

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2019年05月19日

「グレネードと信号弾」(GRENADES AND PYROTECHNIC SIGNALS)

みなさん、こんにちは。
ゴールデンウィークの最終日の朝からどうも体調がすぐれず、「風邪?インフル?」と素人診断に基づいてパイロンPL顆粒を服用し、1週間ほどで症状は落ち着きましたが喉・鼻がまだ何かすっきりしません。
平年よりもやや気温の高い日の続く大阪から、そろそろエアコンフィルターの掃除をしておかないと急に暑くなった時に慌てないといけないなぁと思いつつ、前回の投稿から3週間振りにお送りします。

さて今回お届けするのは久々に紙モノです。
アメリカ陸軍の1969年12月16日付発行のField Manual(FM)23-30 「GRENADES AND PYROTECHNIC SIGNALS(グレネードと火工術信号(つまり信号弾))」です。それ以前に既に同じ「FM 23-30」として1959年10月28日に発行されていた同じ番号のFMを更改・再編集されて作られました。もっと遡ればFM 23-30 「Grenade」にまで行き着きますが。


↓表紙です。リプリントではなくオリジナルです。この時期くらい以降のモノであればリプリントでなくオリジナルが比較的廉価で入手可能なケースが多いです。



↓目次です。手榴弾、手榴弾トレーニング、ライフル・グレネードとアクセサリー、ライフル・グレネード・トレーニング、地上信号弾などのチャプターに分かれています。


↓全ページ全項目について触れていく訳には参りませんのでココは!という所だけピックアップして見ていきます。まずヒューズとセイフティ・クリップについての図とM30訓練用手榴弾が目に入ります。WWII時代のMk2グレネードにはまだ無かった安全クリップが見えます。

ヒューズについては、Mk2、M26、M26A1破片手榴弾用のM204A1やM204A2ヒューズ、Mk3A2攻撃手榴弾やM34 WP(白リン)発煙手榴弾用のM206A2ヒューズ、M33(のちのM67の祖先)破片手榴弾用のM213ヒューズ、M56破片手榴弾用のM215ヒューズ、M57、M59(M33A1)破片手榴弾用のM217インパクト・デトネート(衝撃爆発)ヒューズ、M6やM7等の暴動鎮圧手榴弾やAN-M8 HC 発煙手榴弾、AN-M14 TH3サーメート焼夷手榴弾用のM201A1ヒューズ等についての説明が続きます。

↓続いて破片手榴弾としてMk2から始まり、M26、…


↓M26A1、M56、M57、M33、M59(M33にM217インパクト・デトネート・ヒューズを付けたM33A1の、のちの呼称)と、説明と合わせてイラストによる図説があります。


↓化学発煙手榴弾もM34 WP(White Phosphorous(白リン))手榴弾、AN-M8 HC(Hydrochloric)(塩化水素)発煙手榴弾、M18発煙手榴弾について説明・図説があります。また、催涙ガスとしてよく知られているCNガス(chloroacetophenone:クロロアセトフェノン)や、アダムサイトという名称で知られる催吐剤であるDMガス(diphenylaminechlorarsine:ジフェニルアミンクロルアルシン)を使った暴動鎮圧用のM6 CN-DM、M6A1 CN-DM、M7 CN、M7A1 CN、CNガスより更に催涙効果が強く灼熱感や鼻汁、涙の流出等を惹き起こさせるCSガス(2-chlorobenzylidenemalononitrile:クロロベンジリデンマロノニトリル)を用いたABC-M7A2、ABC-M7A3、3種混合のABC-M25A1、ABC-25A2について説明されています。


↓特殊用途手榴弾としてAN-M14 TH3(サーメート)焼夷手榴弾、M26系の訓練用であるM30訓練用手榴弾、Mk1照明手榴弾、Mk3A2攻撃手榴弾が説明されています。


↓続いては手榴弾のトレーニングについて。握り方、投げ方、投擲姿勢、運搬方法、取扱い上の注意点・チェックポイント等について触れています。


↓次いで各種の教練コースについて触れられており、まず基礎的なモノとしての「距離・正確性コース」から始まり…、


↓「襲撃技能コース(原語がassault quaification courseで、日本語に訳しにくいです)」を経て「習熟コース(familiarization course)」、「確信コース(confidence course)」、時間遅延ヒューズやインパクト・ヒューズを用いる手榴弾の使用を習得する「クック-オフ・インパクト コース」に至ります。


↓ライフル・グレネードの章から。「現役軍の制式ライフルはM14、M16A1ライフルとなっているが、M1ライフル(ガーランド)も予備役や同盟軍で今も尚使用されていることからM1ライフルのアクセサリーについての情報もこのマニュアルの中に含める。」としてM7A3グレネード・ローンチャー(画像の①)の説明から入ります。次いで②のM14ライフル用のM76グレネード・ローンチャー、③のM16/M16A1用のグレネード・リテイナー・スプリングについての説明が続きます。


↓ライフル・グレネード用の専用カートリッジについて。画像左側の①がM1ライフル用のM3、②がM14ライフル用のM64、③がM16/M16A1用のM195。また画像右側ではM14ライフルに装着したM15グレネード・ローンチャー・サイトの図とそのピープ・サイトについての説明図。M15グレネード・ローンチャー・サイト(←クリックで過去記事が別ウィンドウで開きます)はWWII時代に既にM1カービン、M1ライフル、M1903/M1903A1/M1903A3ライフル用に開発されていました。時代を経てM14ライフルにも利用されることになりましたが、M16/M16A1用には使えません。M16/M16A1も当初はM14ライフルまでと同じように銃身の先にグレネードを挿して、専用カートリッジの燃焼ガスによる推進力を用いて発射するスタイルで、先ほど触れたグレネード・リテイナー・スプリングを使ってライフル・グレネードを発射できるようにしていましたが、専用のサイトはこのマニュアルが発行された時点では存在しませんでした。のちにライフルの銃身を使って榴弾を飛ばす「ライフル・グレネード」という概念から決別し、銃身とは別個独立した形でハンド・ガード下部に取り付けて使用する40mm口径のM203グレネード・ローンチャーが開発されます。ではM16/M16A1ライフルではライフル・グレネードの照準はどうしてたのかというのは、またあとで触れます。


↓左ページの図はM14ライフルのスピンドル・バルブの説明。グレネード・ローンチャー使用時はスピンドル・バルブ・スロットを銃身と平行になるようにし、ライフルのパーツ破損を防ぐと共に、推進ガスがガス・シリンダーへ流入しないようにしてグレネード発射のためにフル活用出来るようにせよとの説明があります。右ページの図は手榴弾をライフル・グレネードとして利用する際に用いるアダプター2種の説明。①はM1A2グレネード・プロジェクション・アダプター(←過去記事が開きます)で、Mk2、M26/M26A1破片手榴弾やM30訓練用手榴弾、M34 WP 発煙手榴弾、Mk1照明手榴弾に用いられます。②のM2A1はM6系、M7系の暴動鎮圧用手榴弾やAN-M8 HC 白煙手榴弾、AN-M14 TH3 焼夷手榴弾、M18発煙手榴弾に用いられます。本文はライフル・グレネードの種類の解説へと続き、M31 HEAT(High Explosive Anti-tank)グレネードから始まり…、


↓M19A1 WP(白リン)発煙グレネードは上で既に出ているM34 WP(白リン)発煙手榴弾に取って代わられていきました。赤・緑・黄の3色展開のM22発煙グレネード(図にはありませんが)、M23A1発煙ストリーマー・グレネードも赤・緑・黄の3色です。訓練弾としてM11A4はM19A1とM23A1の訓練用、M29は元々は後にM31 HEATグレネードに取って代わられるM28 HEATグレネードの訓練用、M31は文字通りM31 HEATグレネードの訓練用です。


↓ライフル・グレネード・トレーニングの章から。画像の①はM14ライフル、②はM16/M16A1ライフルですが、それぞれのライフルのスリングに「30度」「45度」「60度」マークを付けておきなさい、という「知恵」についての解説です。これはM14ライフルについて、例えM15グレネード・ローンチャー・サイトを無くしてしまったり壊してしまったりした場合でも、あらかじめM15グレネード・ローンチャー・サイトを装着して銃床を地面に着けた状態でそれぞれの射角を保持した時に、付けているスリングが地面との間でピンと張るように足で踏み付け、その部分に目印を付けておけば、サイトが無くても目印を踏んでスリングをピンと張るようにすれば必要とする射角が得られるという事です。M14ライフルにはM15グレネード・ローンチャー・サイトを取り付けて見て実際に射角を確かめながら目印を付けられますが、専用サイトの無いM16/M16A1ライフルの場合は画像の②で示されているようにスリングを最短にした状態で各射角の目印を付けておけば、実際に射角を付ける時にはスリングを最長に伸ばした状態にして、銃床を地面に着け、各射角目印の部分を足で踏んでスリングが張るように銃口を上げれば必然的に必要な射角になるという事です。


↓信号弾についての詳解。①Star cluster(「星団」:照明・信号弾として)、②Star parachutes(パラシュート吊りの照明・信号弾)、③Smoke streamer(流煙弾)。イラストの画像はあげてませんが手持ちのバージョンとも言うべき①②③の説明が続きます。


↓巻末の方には附録として、各トレーニングのための具体的な施設・設備とその方法についての図説や…、


↓これもです。


↓これは各手榴弾の本体素材、「中身」、対応ヒューズ、重量、投擲距離などのデータ表です。他にも同じくライフル・グレネード等についてのデータ表、グレネード本体に施す塗装や文字色を定めたカラー・コードが続きます。


↓次いで各種トレーニングのスコア記録についての解説。


最後の最後には画像に上げてませんが「グレネードと火工術の履歴(Historical resume of grenades and pyrotechnics)」として一項があり、「最も古いグレネードは、西洋文明による利用記録のある更に何世紀も前の古代中国に起源がある」、「grenadeという語はラテン語のGRANATUSに由来する」、「スペイン人がグレネードを『GRANADA(ザクロ)』と呼ぶのは、スペインで初めてのグレネードの形状がザクロの実に似ていたから」、「紀元前250年にローマ軍がイピルス王ピエールの象軍団に対抗するために使った」等や、「1904年、1905年の日露戦争で、攻守のどちらにおいても史上初めての大規模でグレネードが使用された」、「日本軍が初めて遅延ヒューズを採用した」云々(うんぬん)…とあります。



以上私が特に興味があるところを中心に見て来ました。今回のモノに限らずマニュアルは必要に応じて改変・補追され、或いはある程度改変
・補追が重なったりするとフル改訂されると同時にタイトルも大きく変わります。ですから例えば今回のモノのマニュアル番号「FM 23-30」で検索すると、色んな時代(色んな版)・タイトルのモノがヒットしますので、自分が求めている時期のモノか確かめる必要がありますので注意が必要です。

私のコレクション対象のメインはWWII米陸軍歩兵なのでマニュアル類もその時代のモノが欲しいのですが、やはりどんどん価格も高騰し、目にする機会も減って来てます。もっともウェブ上でいろんな方・公的機関が公表してくれてますので参照するのは容易ですが、やはり何となく自分の手にもって置きたくなります。モノへの執着心がやっぱり残っている証左ですね。以前に「モノを持ってるコレクターよりも、モノを知ってるコレクターでありたい」などと申しましたが。


それでは今回はこの辺で失礼いたします。  

Posted by Sgt. Saunders at 15:28Comments(0)Fire arms-RelatedManuals

2019年02月17日

U.S. M19A1 弾薬箱(U.S. M19A1 Ammunition Box)

皆さんこんにちは。
平年より少し冷えている大阪から定刻より一週間と3時間ほど遅れての投稿となりました。

前回の投稿画像で次の投稿ネタを予測できた方は少なくないと思います。
はい、前回お送りした米軍の「M1弾薬箱」の改良型である「M1A1」の後継モデル「M19」に、更に改良を加えた「M19A1 弾薬箱(Box, Ammunition, M19A1)」です。
WWII終結直後の1946年にはM1A1に替わりM19が登場しましたが、耐久性やその他の性能を向上・改良して1953年後半に新たに登場したのがこの「M19A1」です。現在でもなお製造され現役で使用されているため、サープラス品としても沢山出回っています。

↓まず、斜め横顔から。M1やM1A1と異なる点として側面に補強リブなどの加工は無いノッペリした容貌であること、および蓋の縁から側面へ伸びている斜めのスカートの存在が挙げられます。


↓中身が何であるかは黄色のゴムスタンプかステンシルで表されています。数量、口径、姿態、弾種、製造者などの情報が示されます。表記の仕様は年代により現在まで数度に亘り変更されています。


↓この個体では1975年までの表記方法で情報が記されています。(1行目)そのまま「200発のカート」、(2行目)「〇の中に+」の、薩摩藩・島津氏の「丸に十の字」の家紋そっくりのマークは「NATO規格」に準拠した弾薬であることを示します。「7.62MM」の「NATO弾」が「M13」リンクで繋がっていて(『串に団子2つ』みたいなシンボルは『リンクで繋がっている』という意味です)、(3行目)「CARTONS」はボール紙包装(カートン)のことで弾薬箱の中で100発ごとに1箱で包装されているという意味です(Vノッチの照門が逆さになったようなシンボルは『カートンに入っている』ことを示します)。

(4行目)M62曳光弾1発とM80普通弾4発の交互組み合わせ(M62の前の横長四角は曳光弾を示すシンボル、M80の前の●は普通弾を示すシンボルです)。(5行目)FANCTIONAL LOT(機能的ロットとでも訳しましょうか、カートリッジ・リンク全体としてのロット)は「RA L 30-50(製造者はRemington Arms、『L』は『リンクされた』の意、ロット番号は30-50である)」との表示。 (6行目)M62曳光弾のロット番号はRA 10-23、(7行目)M80普通弾のロット番号はRA 1-50、その後ろ「70」は1970年梱包したとの意、「A131」はDODIC(Department of Defense Identification Code:国防省弾薬識別番号)で、「Cartridge, 7.62MM 4 BALL M80/1 TR M62(M80普通弾4発とM62曳光弾1発の交互組み合わせ)」であることを示します。

↓上面から蓋を見ます。取っ手(持ち手)の造りはWWIIのM1以来変わりません。側面と同じく黄色文字で「FOR M.G. M60 - M73」と、供用するべき銃器名が記されています。M60機関銃と、その車載用版であるM73機関銃への供用向きであるということです。また初期のM19A1の蓋には、蓋を閉じるためのクランプの付いている方の縁に、中に収める弾薬の向き(弾頭をどっち向けにして収めるか)を示すカート型の凸モールドが施されていましたが、いつ頃かは分かりませんが、この個体のように省かれていきました。恐らくリンク連結した弾薬だけにとどまらず、バンダリヤに入れたクリップ、「バラ」状態でのモノ、カートンに入れたモノ等々中に収める形態が多様になった頃から省かれていったのだと思います。M19ではカートの向きがペイントで表示されていました。


↓『串に団子2つ』のリンク連結シンボルと『カートン入り』シンボルがここにもあります。


↓蓋を留めるクランプが右側にあります。


↓円い穴の開いたレバーを起こすと


↓円い爪が鉤から解放されて


↓外してそのまま


↓上へ持ち上げて開きます。クランプの構造・原理がM1とは異なり、M1A1と同じです。


↓型押しされた薄い鋼板が蓋の裏面にスポット溶接されて、その周り・蓋の縁沿いに黒いゴムパッキンでシーリングされています。


↓内側です。底面には長方形の凸プレスが施されています。先代のM19には無かったものです。何の為かは後で。


↓留め金クランプを正面から。


↓四角いリングは運搬・荷役用の持ち手です。指で示しているのは本体の鋼板が熔接留めされている部分です。クランプのある面にこれがあるモノと、クランプとは反対側の面で熔接留めされているモノとがあります。色々調べましたが、メーカーにより違っているようです。


↓本体の鋼板が熔接留めされる側とは反対の側です。こちらにはメーカーのエンボス表示があります。いつ頃からかは未だ突き止めていませんが、メーカー名とともに「M19A1」とのモデル名と製造年の表示がされ始め、現在に至っています。この個体のメーカーが「YSE」とのことですが、実はまだそのメーカーの正式名称を知りません。


↓蓋と本体との結合部分(ヒンジ)を左のM1と比較しました。左のM1は大きいクリップに蓋のピンを噛ませているだけの簡単な構造で、蓋を開いた状態で力技でグイッと外せます。右のM19A1は正に「蝶番」で、蓋を開いて右方向へ少しずつずらしてやれば取り外すことができます。


↓さっき少し触れました底面の窪み(内側では凸)。箱を積み重ねる際に取っ手の部分がココに収まるようにするためです。


↓底面と側面との接合。M1での巻き締め加工とは異なり、M1A1と同じように「貼り合わせ熔接」みたいな形になってます。


↓蓋に戻ります。蓋のヒンジ側から開閉クランプ方向へと斜めに伸びているスカートとダミーカート先端で指している1cm程のディンプル。私初めてこれを認識した際は「蓋を開けようとしてクランプを外した際でも、ある程度は蓋と本体との間に摩擦テンションを掛けておいて、クランプを外しておいただけの状態でも蓋が不意にパカパカ開かないようにするためのモノだ」と思っておりました。しかし今回投稿するにあたっていろいろな資料を見ておりましたら、その役目だけでなく、スカートと一体となった共同目的があるということを知りました。それは…


↓給弾準備完了状態となった際に、斜めスカートは箱内部への雨水や砂塵等の侵入を防ぎながら、蓋のディンプルは本体の縁に掛かって蓋を少しだけ開いた状態に保ち、蓋がカートに干渉することを無くすという目的です。なるほど。それでスカートが斜めだったのですね。知りませんでした。


↓見やすいようにカートを除きました。


↓左のM1と右のM19A1のクランプ側部分の比較。製造工程が簡略化されてるなと素直に感じます。


↓画像上がM19A1、下がM1。

M19A1は横11インチ(約28cm)高さ7.25インチ(約18.4cm)奥行3.81インチ(約9.7cm)。
M1は横10.75インチ(約27.3cm)高さ7.25インチ(約18.4cm)奥行3.75インチ(約9.5cm)と、ほぼ同じ大きさです。


今回のモノは1970年のロット表示があるヴェトナム戦中モノです。欲を言えば1969年以前の表示モノ、上でも触れました蓋に弾薬収納方向のモールドのある初期生産モノをも狙っていますが、なかなか良い出物がありません。
また、黄色文字の内容表記も初期にはM1ガーランド銃用の「8発en-blocクリップ」や、時を経てM80 Ballばっかりのリンク、「OVERHEAD FIRE」表示のモノなどなどバリエーションが豊富で、その種類だけコレクションの対象としても面白いと思います。
色調はWWIIに比べるとやや暗く茶色が強くなってます。最近のモノは逆に明るくグレーの強いOD?になっています。

WWIIでの50口径用の弾薬箱「M2」とその後継「M2A1」もコレクションしていきたいのですが、M2A1は今回のM19A1同様現在も現役でサープラス品としても市場に沢山出回っていて1個だけ入手していますが、M2は非常に出物が少なくまだ入手出来ていません。見つけ次第狙っていきたいと思います。(←入手できました!記事(←クリックで別ウィンドウで開きます。)にしてますのでご覧ください。)

弾薬箱は道具箱、収納ケースとして生活雑貨としての居場所があるので、綺麗なメーカー初出モノや廉価なサープラスモノの購入には一般家計から予算捻出させることも容易ですが、ヴィンテージモノの購入となると費目が私の「趣味・娯楽」になり、一般家計からの支出は無い訳で、なかなか費用工面が難しいところです。
ヴェトナム戦頃のモノは出物が少なくなってきていますが、価格の面ではまだ比較的入手しやすいです。オークションなどでは3,000円前後で程度の良いものが入手可能です。実は私も今回のM19A1は最近ヤフー・オークションで入手しました。90年代以降モノなら2,000円前後で入手可能です。送料を除けばアメリカ本土のミリタリーショップやサープラス業者などで、一箱800円!という価格で売られていることもあります。
ミリタリー・コレクションとしてではなく、機能面だけで弾薬箱を利用したい方であれば、日本でもハナから民生品として製造販売されているモノが新品で2,000円程で手に入ります。私はあくまでもミリタリー・コレクションとして見ていますので、傷があり、少々の錆もある弾薬箱の方が魅力的です。

それでは今回はこの辺で失礼いたします。またお会いしましょう。さようなら。




  

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2019年01月27日

U.S. M1 30口径弾薬箱(U.S. M1 Cal. .30 Ammunition Box)

年明けからもうやがて1カ月経とうとしていますが、新年のご挨拶が未だでございます。明けましておめでとうございます。
今年も健気に細々とコレクションについて徒然なるままに書き連ねて参ります。ご意見・ご指摘等忌憚なく頂戴したいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。


さて2019年最初の投稿ネタはWWIIに米軍で広く使用されたM1弾薬箱(M1 Cal..30 Ammunition Box(ドローイング#44070))です。
WWII米陸軍一般歩兵装備品・制式採用銃器アクセサリーを蒐集のメインとしている私としては、この弾薬箱はこの趣味を始めた当初から欲しておりました。もう20年程以上も前か、当時沖縄にあった某米軍払下げ店で何と2,000円だったか2,500円だったかで売りに出されていた際に迷わず購入したのが今回皆様のご面前に晒すモノであります。
以下詳細に見て参ります。

↓まず斜め横顔。フラッシュを発光させて撮影しました。この後出てくる画像の中で一番太陽光の下での現物の色に近いモノとなっています。太陽光の下ではこの画像での色が一番近いです。WWII時に一番多く見られるODシェード#24087に最も近いように思います。

このモデルのような金属製の弾薬箱が開発される前は、弾薬箱は木製で防塵・防湿効果は低かったため、箱の内側で弾薬を錫や亜鉛メッキの鉄箔板で覆ったり、弾薬を缶詰にしたうえで弾薬箱に収めたりという方法で対処していました。

↓フラッシュ無しだとこんな感じです。太陽光の下では ↑ 、蛍光灯の下では ↓ というところです。


↓真正面。歪み防止のための二重の四角形のリブが型押しされている中に「CAL..30 M1 AMMUNITION BOX」とエンボスされています。この個体にはエンボスのほかには何も表記がありませんが、ステンシルで中身が何であるかを表記してある事も多くあります。左下方には四角形の小さなワイヤー・ハンドルがあります。上面の蓋は左上のヒンジを軸にして右上が上方から左へ回転して開きます。蓋は右側でクランプにより留められます。


↓M2トライポッド(三脚)に載せたM1919A4にフィードしてるの図で言えば、手前側の面がこの四角形の小さなワイヤー・ハンドルが付いている面になります。同じ画を撮ろうと思えば撮れるんですけど、場所が…。(画像引用元:browningmgs.com)


↓ボックスを縦に積み上げたり、M1917A1トライポッド(三脚)に搭載する際にこれがあるとやり易いと思います。思います、と言うのはM1917A1トライポッドを持ってませんのでやったことが無いからです。


↓反対側の面です。先ほどと同じ文言のエンボスと歪み防止のための二重の四角形のリブがあります。こちらの面には四角形の小さなワイヤー・ハンドルはありません。


↓蓋です。画像では取っ手の右側を上げてますが、ペタンと下ろして蓋上面に張り付かせることができます。蓋の縁の内側を一周している溝ですが、これは上に弾薬箱を積み重ねる際に左右にズレないよう箱の底面の凸凹パターンと合わさるようになっています。


↓蓋の留め金(クランプ)。


↓最下端が外側へ曲げられているバーを起こして…


↓蓋の端から繋がる四角のリングとの結合を外して…


↓蓋を開くことができます。


↓蓋の裏側です。密閉性を高めるため茶色~オレンジ色のフォーム材が縁沿いに充填されています。程なくもっと耐久性のあるゴム製のガスケットに替わります。M1の後継M1A1ではほぼ完全にゴム製となります。


↓蓋と本体とはこのようなヒンジで結合しています。少し力を入れれば外せます。ヒンジは製造者・時期により若干構造の異なるものがあります。まだ蒐集していません…。


↓ヒンジの下には製造者「CANCO」の楕円のロゴと「U.S.」、兵器部(Ordnance Department)のシンボル「フレイミング・ボム」。製造者は他にも「REEVES」とか「CROWN」、「Owens Illinois Can Company」などがあるそうです。REEVESとCROWNは見たことがあります。


↓閉める時は単純に逆の手順です。


↓バーの爪に四角リングを掛けて…(指で示しているのは先ほど見た広い方の面に付いている四角形のワイヤー・ハンドルと同じ「取っ手」です。蓋を開けた状態でM1917A1トライポッドに据え付ける際に使用します。蓋の開け閉めには関与しません。)


↓バーを下へグッと下げて…


↓バチンと閉めます。


↓バーの付け根のこの鉤状になっている部分は、M1917A1トライポッド(三脚)に搭載する際にブラケットへ引っ掛けて使います。この画像では見えませんが(2つ上の画像で見えます)、バーの下端近くにあるスリットもM1917A1トライポッドに搭載する際にブラケットの半円状突起に引っ掛けさせて使います。


↓一応真正面からも。


↓金属製リンクで連結された30-06弾なら250発が一まとめにされて収納されます。その場合の重さは約10キロです(22ポンド)。


↓箱の内側です。底には蓋の説明のところで触れましたように蓋の上面の凸凹溝に合わさるような凸凹溝があります。また、右寄りのところに弾薬の前後方向を正しく収納出来るよう弾薬のシルエットのエンボスがあります。


↓機関銃にフィードする上で、弾薬の向きが反対だったらエライことになりますわな。


↓底面です。上で見た「弾薬の向き」表示モールドと、蓋のところで触れましたように、積み重ねた時にズレないようにするための、蓋の凹に合う凸リブが設えられています。



以上細かく見て参りましたが如何でしたでしょうか?
M1の改良版である後継のM1A1については私、未だ蒐集出来ていません。数年前に一度結構廉価で出物があったのですが、そのうちに…と思っておりましたら最近は出物も少なく価格も高騰してきてまして、もういいかなとも思っております。(令和2年5月24日追記します。やっとM1A1弾薬箱を入手できました。「U.S. M1A1 30口径弾薬箱(U.S. M1A1 Cal. .30 Ammunition Box)」で取り上げましたのでご覧ください。)
M1A1のさらに改良版と言いますか改定版であるM19、M19A1もコレクションに入れたいと思い、M19A1は入手できたもののレアなM19は未だ入手出来ていません…。

弾薬箱は「容器」ですので、家の中でも色んな用途に使え、しかも密閉性が良いので重宝します。
この記事を書いてると、やっぱりM1919A4をM2トライポッドに載せてこのM1アンモボックスと合わせて画像を撮ってみたくなりました。
でもその場所が問題で、建売住居の狭い「庭」ではなかなか難しく、どこか他所へもって行かないとならないので実行する障壁が多々あり困難です。


それでは今回はこの辺で失礼いたします。ありがとうございました。






  

Posted by Sgt. Saunders at 12:20Comments(0)Fire arms-Related