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2020年12月27日

FM 21-100 ソルジャーズ・ハンドブックNo2(FM 21-100 Soldier's Handbook #2)

みなさん、こんにちは。
「勝負の3週間」で勝ったのか負けたのか。結果は明白です。新型コロナウィルス感染者数の増加傾向は全く衰えることなく、寧ろ勢い付いています。Go toが外出自粛と矛盾した政策であったことは、だれの目にも明らかです。外出自粛を続け、手指消毒・マスク着用等の感染予防策に努め、感染・拡散防止を図るしかありません。家庭内での感染予防も必要です。
桜を観る会問題について安倍前総理大臣が国会で何やら話しましたが、私はあの内容では不十分だと思いました。皆さんは如何ですか?

今年最後の土日、申し訳程度に「大掃除」を「少し」やりつつ、今回の投稿を今年最後の記事と致します。明日月曜から30日までお勤めの身でありますので、記事作成と投稿するには今日という機会しかありません。

↓前回の続き「FM(Field Manual) 21-100 Soldier's Handbook」(1940年版)です。

前回はChapter 6 まで見ました。今回はその続きChapter 7 からです。

↓第7章 兵士の学校 武装無し(徒歩部隊)(School of the soldier without arms(Dismounted))。第1節・姿勢、第2節・ステップと行進。


↓気を付け(Attention)の図です。体育の時間に習った事が蘇ります。


↓第8章 兵士の学校 武装あり(徒歩部隊)(School of the soldier with arms(Dismounted))。第1節・総則、第2節・ライフルの取り回し、第3節・装填と発火、第4節・自動小銃の携行、第5節・ピストルの取り回し。


↓「Sling Arms」の図(左ページ)とオーダー・アームズからポート・アームズへの動作(右ページ)。この辺の用語は旧軍の控え銃、担え銃、捧げ銃などのどれに相当するか、専門家の解説をご参照下さい。私はその辺はキッチリ勉強できていません…。この章は新兵が一番勉強する部分なのかと思います。ここに揚げたイラストのほか沢山の解説イラストが載っています。ORDER ARMS, TRAIL ARMS, SLING ARMS, PRESENT ARMS, (RIGHT/LEFT) SHOULDER ARMS, PARADE RESTといった基本動作を叩き込むための重要な章です。

第4節で自動小銃(BAR)について特別に第2節にある他のライフルとは異なる所作が定められています。

↓第9章 分隊と小隊の教練(Squad and platoon drill)。第1節・分隊、第2節・小隊。分隊レベル、小隊レベルでのFALL INや叉銃や行進が解説されています。


↓叉銃の動作。


↓叉銃の完成。


↓第10章 営内の衛兵の仕事(Interior guard duty)。衛兵としての心得11か条を覚えさせられます。また歩哨の居眠りや不適切な職務遂行は軍法会議によって厳罰に処されるとのキツイ注意喚起がなされています。


↓第11章 行軍・キャンプ・露営(Marches, camp and bivouacs)。第1節・行軍、第2節・キャンプと露営。


↓(上)兵士ひとり1枚支給されるテント(シェルター・ハーフ)を2人分2枚使ってテント1張りを作ります。(下)そのテントを縦に2つ繋ぐと4人用テントが作れます。


↓第12章 コンパスと地図の使用法(Use of compasses and maps)。第1節・コンパスの使い方、第2節・地図の使い方。


↓伝統的地図記号(左)と軍用のシンボル(右)。


↓第13章 安全と防御(Security and protection)。第1節・総則、第2節・個人の安全、第3節・小部隊の安全。


↓地形に関する軍隊用語。


↓正しい掩護法。


↓家屋への接近法、渡河法。


↓第14章 軍隊の衛生と応急処置(Military sanitation and first aid)。第1節・軍隊の衛星、第2節・応急処置。


↓止血のポイント(左)と止血帯の使用法(右)。


↓第15章 糧食。garrison ration(駐屯地での糧食)とfield ration(野戦糧食)とがあることや、「我が政府は世界の他のどんな国よりも兵士の食料にお金を使っている…などと書かれています。


↓第16章 給料と手当(Pay and allowances)。最初の4か月は月21ドル、その後月30ドルとなり、以降は頑張りに応じたモノとなる…となっています。


↓1940年9月16日付の法定月給が記されています。曹長は126ドル、技術軍曹と1等軍曹は84ドル、2等軍曹は72ドル、3等軍曹は60ドル、伍長が54ドル、1等兵が36ドル。2等兵は前述のとおり30ドル。


↓1等兵、2等兵では電気、機械、無線、打鋲、木工、事務、調理といった「専門職」にはそのグレードに応じて6段階で手当が付加されました。休暇、積立、天引き、政府保険、減額、埋葬費についての定めが続きます。


↓第17章 最期の意志と遺言(Last will and testament)。このページの空欄に書き込む形で遺産の処分権限を与えて遺贈者を定める遺言状が出来上がります。2人の証人の署名が必要です。


↓附録(Appendix)。一般的軍隊用語集で、今でも十分通じる(使われている)ものも沢山あります。




はい、こんなところです。軍隊専門用語が多いので「的確」に訳すのは難しいです。英文に相当慣れ親しまないと、独特の語感やニュアンス・用法は体感できないです。まあ大体の意味が掴めればいいかなと思っております。全ての専門用語(術語(テクニカル・ターム))が旧軍と米軍に共通しているとは限りませんしね。こういった軍発行の「紙モノ」からは軍公式の用語の使い方や「正しい」情報が得られるので、兵士の実際の経験談と同様コレクションや当時の「兵隊文化」の理解に有益です。


それでは今回はこの辺で失礼いたします。今年もおっさんの戯言・繰言にお付き合いくださいましてありがとうございました。
また来年もどうか暖かい目でお付き合いくださいますようよろしくお願い申し上げます。
みなさま、どうぞ良いお年をお迎えください。







  

Posted by Sgt. Saunders at 11:59Comments(0)Manuals

2020年12月06日

FM 21-100 ソルジャーズ・ハンドブック(U.S. FM 21-100 Soldier's Handbook)

みなさん、こんにちは。
ご存知の通り新型コロナウィルスの感染者数の増加傾向がもの凄い勢いになって来ました。
マスク着用・手指等の消毒励行・不要不急外出の抑制の徹底で、お上からの禁止令が無くとも増加傾向の上昇を抑え、減少へと向かわせたいところです。その中でビジネスがどうにかこうにか回ればいいのですが、上手くいかないものですかねぇ。とうとう当地大阪では医療非常事態宣言とやらが出ました。「できる限りの不要不急の外出自粛」をして欲しいそうです。

さて、私も不要不急の外出を控え、まだまだ平年の気温と比べて暖かい日が続く当地大阪郊外の寓居から定刻を大きく遅れてお送りします今回のネタに、アメリカ陸軍のマニュアルの中から「FM(Field Manual) 21-100 Soldier's Handbook」(1940年版)を持ってきました。
アメリカ陸軍のマニュアルと聞けば、一般的な手引書たるField Manual(FM)と、兵器・装備品の技術的・取扱説明書的なTechnical Manual(TM)をまず想起します。

FM 21-100 Soldier's Handbookはその名の通り「兵士のハンドブック」、兵士が知っておくべき基本的な事項について書かれています。マニュアルに代表される紙モノコレクションは、ともすれば軽視されがちなような感がありましたが、資料的な意味では十分コレクションの対象になり得ます。ただ現存数が少ないので海外のWEBアーカイブに頼らざるを得ないのも現状でして、なかなか現物のコレクションは難しいところです。しかし今回採り上げますFM 21-100は基本中の基本、ほとんどの兵士が持っていたモノであるため、その入手は比較的容易で廉価な部類に入ります。

↓表紙です。寸法は縦18.5cm×横11.5cm程で、この寸法は1940年版のモノであって、後の版では縦が1.5cm程短くなっていきます。表紙のデザインもWW2中に変化します。WAR DEPARTMENT(陸軍省)発行の「ベーシック・フィールド・マニュアル」とあります。


↓表紙をめくって本扉には書名SOLIER'S HANDBOOK、その下に「Prepared under direction of the Chief of Staff(参謀総長の指導により作成)」、中央に(旧)陸軍省の紋章。


↓その裏。1940年12月11日付で参謀総長ジョージ・C・マーシャルによる「巻頭の辞」のようなものがあります。曰く「FM21-100『SOLDIER’S HANDBOOK』は関係者全員の情報と手引として出版された。その目的はアメリカ合衆国陸軍に新たに登録されたメンバーに基本的な軍事情報の便利でコンパクトな情報源を与え、よってより効率的に職務を遂行するのを助けるものである。 陸軍長官の命により:G.C.マーシャル」


↓前書きです。「貴君は今合衆国陸軍の一員となった。」から始まって徐々に兵士としての心構えを意識させ自覚を促すような記述が並んでいます。


↓前書きが終わったら(左ページ)、「兵士の記録」欄があります。


↓目次のページ。全17章立てで巻末に附録として「一般的軍事表現の用語集」と索引があります。



↓第1章 一般知識(General information)(以下、原語からの邦訳は私の拙い知識経験からの「最適訳」ですので、その拙さはどうぞお許しください。)第1節・集団生活における責任、第2節・下士官・将校との関係、第3節・市民との関係、第4節・軍務、第5節・戦争条項、第6節・屯所・駐屯地の活動。


↓第2章 軍の規律と礼儀(Military discipline and courtecy)。第1節・軍の規律、第2節・軍の礼儀。


↓第3章 徽章(Insignia)。第1節・兵科、第2節・将校と下士官。 


↓第4章 組織(Organization)。squad、section、platoon、company、troop、battery、battalion、squardronといった「グループ」について解説されています。


↓第5章 被服(Clothing)。第1節・支給、第2節・被服の手入れ。第3節・制服の着用。


↓第6章 武器と装備(Arms and equipment)。第1節・手入れの責任、第2節・M1ライフルの各部名称と手入れと清掃、第3節・M1911オートマチック・ピストルの各部名称と手入れと清掃および安全装置、第4節・安全上の注意、第5節・ガスマスク、第6節・野戦装備、第7節・歩兵用背嚢、第8節・馬上の個人装備パッキング、第9節・装備品の供覧。


↓ここでピックアップ。第2節の解説写真。文字だけでは分かり難いモノについては適宜このような写真があるので参考になります。


↓こちらも。第3節の解説イラスト。M1911オートマチック・ピストル、所謂ガバメントの縦断面図です。こんなのを見ながら、「longitudinal」は「縦軸の」という意味なのか…と、英単語を自然に覚える事ができるのも、マニュアルを読むことの有益な効果の一つです。


↓第5節の解説イラスト。簡易ではありますが、機構・仕組みが分かります。このイラストのガスマスクは1941年には限定採用となったM1A2です。ちょっと古いです。


↓第6節の兵用装備品目録のようなモノ。どのように装備するか、徒歩部隊、乗馬部隊、車両ドライバーなど別に説明されています。


↓第7節の解説イラスト。このイラストにあるハヴァーサックも、このマニュアルが出た頃には既にM1928が出ていましたが、何故か後ろのベルトサスペンダーが1本の旧式のM1910となっています。まあWW2に突入した際に旧式のM1910の在庫が沢山あって多く支給されましたが。

↓同じく第7節の解説イラスト。左のページにはパックキャリアでロールも巻き込んだフル状態のハヴァーサックとカートリッジベルト・水筒・ファーストエイド・パケット・パウチとのセット。右ページはオーバーコートを折る第一段階の図。袖を内側に裏返しにして…


↓と、オーバーコートを巻物状にして(左ページ)、右ページのようにハヴァーサックの上に積み重ねられるようにする手順が説明されています。


↓左ページは第8節の解説イラスト。これは砲兵の馬上への装備品積載図。右ページは第9節の装備品の供覧図(徒歩部隊)。このイラストもWW2としては超初期の装備が幾つかあります。ミート・カン、ヘルメット、ファーストエイド・パケット・パウチ、ガスマスクなど。ライフルは最新のM1(ガーランド)ですのに。



このまま最終章まで行きますとちょっと長くなりますので、この続きはまた次回にお送りします。



  

Posted by Sgt. Saunders at 15:40Comments(0)Manuals

2019年05月19日

「グレネードと信号弾」(GRENADES AND PYROTECHNIC SIGNALS)

みなさん、こんにちは。
ゴールデンウィークの最終日の朝からどうも体調がすぐれず、「風邪?インフル?」と素人診断に基づいてパイロンPL顆粒を服用し、1週間ほどで症状は落ち着きましたが喉・鼻がまだ何かすっきりしません。
平年よりもやや気温の高い日の続く大阪から、そろそろエアコンフィルターの掃除をしておかないと急に暑くなった時に慌てないといけないなぁと思いつつ、前回の投稿から3週間振りにお送りします。

さて今回お届けするのは久々に紙モノです。
アメリカ陸軍の1969年12月16日付発行のField Manual(FM)23-30 「GRENADES AND PYROTECHNIC SIGNALS(グレネードと火工術信号(つまり信号弾))」です。それ以前に既に同じ「FM 23-30」として1959年10月28日に発行されていた同じ番号のFMを更改・再編集されて作られました。もっと遡ればFM 23-30 「Grenade」にまで行き着きますが。


↓表紙です。リプリントではなくオリジナルです。この時期くらい以降のモノであればリプリントでなくオリジナルが比較的廉価で入手可能なケースが多いです。



↓目次です。手榴弾、手榴弾トレーニング、ライフル・グレネードとアクセサリー、ライフル・グレネード・トレーニング、地上信号弾などのチャプターに分かれています。


↓全ページ全項目について触れていく訳には参りませんのでココは!という所だけピックアップして見ていきます。まずヒューズとセイフティ・クリップについての図とM30訓練用手榴弾が目に入ります。WWII時代のMk2グレネードにはまだ無かった安全クリップが見えます。

ヒューズについては、Mk2、M26、M26A1破片手榴弾用のM204A1やM204A2ヒューズ、Mk3A2攻撃手榴弾やM34 WP(白リン)発煙手榴弾用のM206A2ヒューズ、M33(のちのM67の祖先)破片手榴弾用のM213ヒューズ、M56破片手榴弾用のM215ヒューズ、M57、M59(M33A1)破片手榴弾用のM217インパクト・デトネート(衝撃爆発)ヒューズ、M6やM7等の暴動鎮圧手榴弾やAN-M8 HC 発煙手榴弾、AN-M14 TH3サーメート焼夷手榴弾用のM201A1ヒューズ等についての説明が続きます。

↓続いて破片手榴弾としてMk2から始まり、M26、…


↓M26A1、M56、M57、M33、M59(M33にM217インパクト・デトネート・ヒューズを付けたM33A1の、のちの呼称)と、説明と合わせてイラストによる図説があります。


↓化学発煙手榴弾もM34 WP(White Phosphorous(白リン))手榴弾、AN-M8 HC(Hydrochloric)(塩化水素)発煙手榴弾、M18発煙手榴弾について説明・図説があります。また、催涙ガスとしてよく知られているCNガス(chloroacetophenone:クロロアセトフェノン)や、アダムサイトという名称で知られる催吐剤であるDMガス(diphenylaminechlorarsine:ジフェニルアミンクロルアルシン)を使った暴動鎮圧用のM6 CN-DM、M6A1 CN-DM、M7 CN、M7A1 CN、CNガスより更に催涙効果が強く灼熱感や鼻汁、涙の流出等を惹き起こさせるCSガス(2-chlorobenzylidenemalononitrile:クロロベンジリデンマロノニトリル)を用いたABC-M7A2、ABC-M7A3、3種混合のABC-M25A1、ABC-25A2について説明されています。


↓特殊用途手榴弾としてAN-M14 TH3(サーメート)焼夷手榴弾、M26系の訓練用であるM30訓練用手榴弾、Mk1照明手榴弾、Mk3A2攻撃手榴弾が説明されています。


↓続いては手榴弾のトレーニングについて。握り方、投げ方、投擲姿勢、運搬方法、取扱い上の注意点・チェックポイント等について触れています。


↓次いで各種の教練コースについて触れられており、まず基礎的なモノとしての「距離・正確性コース」から始まり…、


↓「襲撃技能コース(原語がassault quaification courseで、日本語に訳しにくいです)」を経て「習熟コース(familiarization course)」、「確信コース(confidence course)」、時間遅延ヒューズやインパクト・ヒューズを用いる手榴弾の使用を習得する「クック-オフ・インパクト コース」に至ります。


↓ライフル・グレネードの章から。「現役軍の制式ライフルはM14、M16A1ライフルとなっているが、M1ライフル(ガーランド)も予備役や同盟軍で今も尚使用されていることからM1ライフルのアクセサリーについての情報もこのマニュアルの中に含める。」としてM7A3グレネード・ローンチャー(画像の①)の説明から入ります。次いで②のM14ライフル用のM76グレネード・ローンチャー、③のM16/M16A1用のグレネード・リテイナー・スプリングについての説明が続きます。


↓ライフル・グレネード用の専用カートリッジについて。画像左側の①がM1ライフル用のM3、②がM14ライフル用のM64、③がM16/M16A1用のM195。また画像右側ではM14ライフルに装着したM15グレネード・ローンチャー・サイトの図とそのピープ・サイトについての説明図。M15グレネード・ローンチャー・サイト(←クリックで過去記事が別ウィンドウで開きます)はWWII時代に既にM1カービン、M1ライフル、M1903/M1903A1/M1903A3ライフル用に開発されていました。時代を経てM14ライフルにも利用されることになりましたが、M16/M16A1用には使えません。M16/M16A1も当初はM14ライフルまでと同じように銃身の先にグレネードを挿して、専用カートリッジの燃焼ガスによる推進力を用いて発射するスタイルで、先ほど触れたグレネード・リテイナー・スプリングを使ってライフル・グレネードを発射できるようにしていましたが、専用のサイトはこのマニュアルが発行された時点では存在しませんでした。のちにライフルの銃身を使って榴弾を飛ばす「ライフル・グレネード」という概念から決別し、銃身とは別個独立した形でハンド・ガード下部に取り付けて使用する40mm口径のM203グレネード・ローンチャーが開発されます。ではM16/M16A1ライフルではライフル・グレネードの照準はどうしてたのかというのは、またあとで触れます。


↓左ページの図はM14ライフルのスピンドル・バルブの説明。グレネード・ローンチャー使用時はスピンドル・バルブ・スロットを銃身と平行になるようにし、ライフルのパーツ破損を防ぐと共に、推進ガスがガス・シリンダーへ流入しないようにしてグレネード発射のためにフル活用出来るようにせよとの説明があります。右ページの図は手榴弾をライフル・グレネードとして利用する際に用いるアダプター2種の説明。①はM1A2グレネード・プロジェクション・アダプター(←過去記事が開きます)で、Mk2、M26/M26A1破片手榴弾やM30訓練用手榴弾、M34 WP 発煙手榴弾、Mk1照明手榴弾に用いられます。②のM2A1はM6系、M7系の暴動鎮圧用手榴弾やAN-M8 HC 白煙手榴弾、AN-M14 TH3 焼夷手榴弾、M18発煙手榴弾に用いられます。本文はライフル・グレネードの種類の解説へと続き、M31 HEAT(High Explosive Anti-tank)グレネードから始まり…、


↓M19A1 WP(白リン)発煙グレネードは上で既に出ているM34 WP(白リン)発煙手榴弾に取って代わられていきました。赤・緑・黄の3色展開のM22発煙グレネード(図にはありませんが)、M23A1発煙ストリーマー・グレネードも赤・緑・黄の3色です。訓練弾としてM11A4はM19A1とM23A1の訓練用、M29は元々は後にM31 HEATグレネードに取って代わられるM28 HEATグレネードの訓練用、M31は文字通りM31 HEATグレネードの訓練用です。


↓ライフル・グレネード・トレーニングの章から。画像の①はM14ライフル、②はM16/M16A1ライフルですが、それぞれのライフルのスリングに「30度」「45度」「60度」マークを付けておきなさい、という「知恵」についての解説です。これはM14ライフルについて、例えM15グレネード・ローンチャー・サイトを無くしてしまったり壊してしまったりした場合でも、あらかじめM15グレネード・ローンチャー・サイトを装着して銃床を地面に着けた状態でそれぞれの射角を保持した時に、付けているスリングが地面との間でピンと張るように足で踏み付け、その部分に目印を付けておけば、サイトが無くても目印を踏んでスリングをピンと張るようにすれば必要とする射角が得られるという事です。M14ライフルにはM15グレネード・ローンチャー・サイトを取り付けて見て実際に射角を確かめながら目印を付けられますが、専用サイトの無いM16/M16A1ライフルの場合は画像の②で示されているようにスリングを最短にした状態で各射角の目印を付けておけば、実際に射角を付ける時にはスリングを最長に伸ばした状態にして、銃床を地面に着け、各射角目印の部分を足で踏んでスリングが張るように銃口を上げれば必然的に必要な射角になるという事です。


↓信号弾についての詳解。①Star cluster(「星団」:照明・信号弾として)、②Star parachutes(パラシュート吊りの照明・信号弾)、③Smoke streamer(流煙弾)。イラストの画像はあげてませんが手持ちのバージョンとも言うべき①②③の説明が続きます。


↓巻末の方には附録として、各トレーニングのための具体的な施設・設備とその方法についての図説や…、


↓これもです。


↓これは各手榴弾の本体素材、「中身」、対応ヒューズ、重量、投擲距離などのデータ表です。他にも同じくライフル・グレネード等についてのデータ表、グレネード本体に施す塗装や文字色を定めたカラー・コードが続きます。


↓次いで各種トレーニングのスコア記録についての解説。


最後の最後には画像に上げてませんが「グレネードと火工術の履歴(Historical resume of grenades and pyrotechnics)」として一項があり、「最も古いグレネードは、西洋文明による利用記録のある更に何世紀も前の古代中国に起源がある」、「grenadeという語はラテン語のGRANATUSに由来する」、「スペイン人がグレネードを『GRANADA(ザクロ)』と呼ぶのは、スペインで初めてのグレネードの形状がザクロの実に似ていたから」、「紀元前250年にローマ軍がイピルス王ピエールの象軍団に対抗するために使った」等や、「1904年、1905年の日露戦争で、攻守のどちらにおいても史上初めての大規模でグレネードが使用された」、「日本軍が初めて遅延ヒューズを採用した」云々(うんぬん)…とあります。



以上私が特に興味があるところを中心に見て来ました。今回のモノに限らずマニュアルは必要に応じて改変・補追され、或いはある程度改変
・補追が重なったりするとフル改訂されると同時にタイトルも大きく変わります。ですから例えば今回のモノのマニュアル番号「FM 23-30」で検索すると、色んな時代(色んな版)・タイトルのモノがヒットしますので、自分が求めている時期のモノか確かめる必要がありますので注意が必要です。

私のコレクション対象のメインはWWII米陸軍歩兵なのでマニュアル類もその時代のモノが欲しいのですが、やはりどんどん価格も高騰し、目にする機会も減って来てます。もっともウェブ上でいろんな方・公的機関が公表してくれてますので参照するのは容易ですが、やはり何となく自分の手にもって置きたくなります。モノへの執着心がやっぱり残っている証左ですね。以前に「モノを持ってるコレクターよりも、モノを知ってるコレクターでありたい」などと申しましたが。


それでは今回はこの辺で失礼いたします。  

Posted by Sgt. Saunders at 15:28Comments(0)Fire arms-RelatedManuals

2016年05月01日

FM 21-25 「基礎の地図および航空写真の見方」

こんにちは。
熊本地震による犠牲者の方々・被災者の方々に対し、謹んでお悔やみ・お見舞い申し上げます。僅かですが「義捐金」という形で支援させて頂きました。少しでもお役に立てればいいなと思います。


今回は前回記事「US WWⅡレンザティック・コンパス(US WWII Lensatic Compass)」の中でチラッと出てました「FM(Field Manual)21-25 ELEMENTARY MAP AND AERIAL PHOTOGRAPH READING(基礎の地図および航空写真の見方)」です。
当ブログ開設以来やっと2度目の「紙モノ」についての記事です。

前回の「US WWⅡレンザティック・コンパス(US WWII Lensatic Compass)」の中でコンパスの説明に用いる形で少しだけしか中身を紹介しませんでしたが、本マニュアル自体はコンパスの使い方のみならず、表題にあるように地図と航空写真の見方の初歩についての概説となっています。

私自身は戦地に赴いたことはありませんで、以前述べましたようにオリエンテーリングでしか本格的にコンパスを使った事はありません。本マニュアルの中身と同じような事を習って実践して使い方を学びました。
例えば昨今ヒストリカル・リエンナクトメントが多く開催されていますが、その中での歩兵のドリルなんかで、このような地図とコンパスの使い方の訓練を行なってみてもいいかも知れませんね。もうやってらっしゃるのかな?そんな時には本マニュアルがうってつけです。

↑1944年8月15日刊、大戦終期発刊分のFM 21-25です。初刊は1941年4月12日で、それ以降発出された回状1号から3号までをまとめて一新されました。

↓ページをめくっていきます。左側のページに「陸軍省長官の命により―陸軍参謀総長 ジョージC.マーシャル(大将(当時))」とあります。右のページには目次があり、13章立てで初学者向けの構成になっています。順に見て行きましょう。


↓第一章 「何故地図の読み方を学ぶのか(Why learn to read a map?)」では、「市民生活において道は人に聞けばよいが、異国の地では地図に聞くことになる。地図が読めれば全ての答えを地図が持つことになり、地図が読めればそれは貴君の最良の友人の一人になる…云々」と説いてます。


↓第二章 「地図とは何か(What is a map?)」では、フットボールのスタジアムの写真と飛行場とその周辺の写真を例に、地上での見え方、少し上からの見方、もっと上空からの見え方、真上からの見え方について説き、「地図は真上からモノを捉えたものである。」ということを覚えよ、としています。


↓第三章では「地図には何がある?(What's on a map?)」として、地図記号について書かれてあります。



↓第四章 「どれくらいの高さか(How high is it?)」では、地形は等高線によって分かるのだという事について説かれています。



↓第五章 「どのくらいの距離なのか(How far is it?)」ではM1銃剣の写真を例に、「写真に写った刀身の長さが2.5インチで、その写真が実際の四分の一だと教えてもらったら、刀身の本当の長さは2.5インチ×4=10インチだ、とわかるよな。地図の場合でも、実際の何分の一で描かれてあるかが示されているから、地図の上で何インチあるか測って計算したら本当の距離が分かるのだ。」と説いています。


↓第六章 「それはどこだ(Where is it?)」では、「『5番街3番通り』ではなく、代わりに『グリッド(grid)』を用いて地点を特定するのだ。」と説いています。


↓第七章 「それはどっちだ(Which way is it?)」では、北を0度として全方位を360度で表わす方位角の規則が解説されてます。




↓第八章 「地面と地図を合わせる2つの方法(Two ways to line up your map with the ground)」として目視による方法とコンパスを用いる方法、磁北線と地図上の北、コンパス無しで北を見出す方法...が説かれています。




↓第九章 「地図とコンパスが仕事をする(Your map and compass go to work)」では地図とコンパスを使っての実践例の解説がなされています。



↓第十章 「道路上で(On the road)」では、車両のマイレージ・ゲージをチェックしておかないと今自分が何処にいるかが分からなくなることについての解説。


↓第十一章 「航空写真と写真地図」。航空写真での見え方、位置の示し方についての解説です。




↓第十二章 「地図上での陸軍(Army on the map)」。部隊の種類、規模のほかさまざまな記号が解説されています。




↓銃器の射線記号も。



↓第十三章 「地図の取扱(Taking care of your map)」.。戦場では地図は武器と同じくらい重要なものであると説いてます。敵の手に地図を渡してはならないとし、「捕虜になる恐れのある時は燃やす、燃やせない時は小さく裁断して広く撒き散らす、どちらも出来ない時は出来るだけ小さく折り畳んで埋めよ」と説いています。



いかがでしたか?
今回のFM 21-25はサバゲにはあんまり役に立ちませんが、当時の兵士の気分になりきる一助にはなります。

一口に「マニュアル」と言っても、米軍では本記事で挙げたような、野外・戦場でのHow to的なものであるFM(Field Manual(『野戦マニュアル』とでも訳しておきましょうか))と、特定のモノ(典型例は武器)についての取扱説明書的なTM(Technical Manual(『技術マニュアル』とでもしておきましょうか))があります。また、服制や服務規定などについての陸軍規則(Army Regulations、略してAR)も当時の兵士の在り様を偲ぶのにこの上なく大切です。

私がコレクションを始めた当初も「紙のマニュアルなんてどうでもいい、とにかく先ずは装備品の蒐集だ」とばかりに紙モノを軽視しておりましたが、何かのFMを手に入れる事があって以来、紙モノもコレクションの対象として重視するようになりました。何といっても軍による「正しい情報」の塊ですから。もっとも当時の兵士がマニュアル外で工夫し編み出した技・モノがあるのも事実で、マニュアル至上主義と言う訳ではありませんが、正確な知識の確認をする拠り所として有用です。

それでは今回はこの辺で失礼いたします。


  

Posted by Sgt. Saunders at 11:00Comments(0)Manuals

2013年11月09日

軽んじられる?紙モノ

その昔「コンバット・マガジン」の別冊で「PXマガジン」という軍装品に特化した雑誌がありました。
その中に「コレクター」向けの連載がありまして、「コレクションするに当たっては、まずコレクションの対象とするものには何があるのかを知り、まだ集めていないものは何かを把握していなければ、ただ『集める』だけでは単なる『集合物』であり、『コレクション』たり得ない・・・旨の教示がありました。

まぁ、ある分野のコレクションを完全なものにしようという、まさに「蒐集家」の立場であれば、自分の蒐集対象のうち、どれ程を既に蒐集していて、あと何を蒐集していかなければならないかを把握するのは必須でしょう。上記の連載の筆者のかたは、ある展示会かなんかの場で自分のコレクションの対象である「日本軍の軍票」の保有リストとそこで展示してあった軍票とを照らし合わせてチェックしていると、男がやってきて「軍票を集めているのか。おれは『全部』持っているぜ」と言うのを聞いて、ゼンブという言葉に驚き、その男に「それでは世界的に希少な〇〇軍票は持っているか?」、「◇◇軍票は?」、「△△軍票は?」と尋ねると、その男は「持ってない」、「ない」、「・・・。」と最後には無言になった・・・という事例を引いて「何が全部であるかを知らぬ愚かさ」を説いておられました。

100%のコレクションを目指す蒐集家であれば蒐集対象全てを知らなければ上の男のように「全部持ってる」などと言ってしまい同好の士からの失笑は避けられないでしょう。しかし私のような、「蒐集家」ではなくて「『集めていくこと』が好き」レベルの者としては、もともと「全部」持てる筈がないので(財力の問題もあって)、軽々しくも「ゼンブ」持っているなどとは言いません。ただ、「全部『知っている』」レベルには近づきたいなとは思います。「物を知らないコレクター」より「物を持たない物知り」でありたいとも私は思います。
コレクションに「完全」というプレミアムをつけて「権威性」を持たせて広く外部に披露したいのならばしっかり集めていかなくてはなりませんが、私は知りながら集める楽しみを求めます。最初にコレクションリスト(集めるべきものリスト)を作り、手に入れたモノに〇印をして、まだ集めていないものは何かチェックし、それを探し求めるというスタイルの楽しさも分かりますが、「集めなくては」という強迫観念にとらわれるようで少し苦しく思います。お金や時間の問題もあります。「こんなものもあったのかぁ」と勉強しながら集めていくのも一つのスタイルとして良いのではないでしょうか。

めちゃくちゃ前置きが長くなりましたが、「それが何であるか」を確認する方法の一つとして、軍発行のマニュアル類が挙げられます。自分がコレクションしているものが何であるかを確認するために大変重要な資料になります。モノに執着しがちですが、こういった紙の資料も資料としてだけではなく、十分コレクションの対象になり得ます。

私のメインたるコレクション対象は2次大戦時の米陸軍兵士装備です。

↑これはリプリント(復刻版)なのですが、1943年8月発行の「Quartermaster Supply Catalog 」のSection 1 - Enlisted Men's Clothing and Equipment - です。


↑目次に続いて概要説明があります。

OQMG(Office of Quartermaster General) 回状4号として発行された「The Quartermaster Supply Catalog」が、1943年8月に5つのセクションに分割されました。ここにあるセクション1は「Enlisted Men's Clothing and Equipment(兵下士官用衣類及び装備」を扱っており、制式名称・ストックナンバーとともに幾つかの品にはそれについての簡潔な説明が掲載されています。

以下、ブーツ、靴、靴下、スーツ、コート・ジャケット、…とグループ順に並んで掲載されています。これらを見ていくと、外見は同じように見えるモノであっても、細かい差異があり、制式名称も異なることが分かったり、いわゆる俗称と制式名称との照らし合わせができます。
↓たとえば有名なところでは「M-41フィールド・ジャケット」と称しているものは、正しくは「od フィールド ジャケット(Jacket, Field, od)」であることが分かります。(画像の左端)

「ボタンとジッパー閉じのフランネル裏地付き耐風防水コットンポプリン製短丈戦闘ジャケット」との説明書きがあります。
↓また、「水筒」にも、この画像の左側「fig.2」にあるように、「M-1910」、「M-1942」、 「plastic」、 「stainless steel」の4種があることがわかります。





一般的な歩兵装備は一通り網羅しているので重宝します。

それでは今回はこれにて失礼します。


  

Posted by Sgt. Saunders at 14:59Comments(0)Manuals