2015年08月23日
M-1956 コンバット・フィールドパック(US M-1956 Combat Field Pack)
こんにちは。
24時間TVの是非は置いといて、隔週刊の当ブログにお越し下さった皆さま、ありがとうございます。
さて今回取り上げますのは、USヴェトナム戦装備には欠かせない(事も無い)「M-1956コンバット・フィールドパック」です。
1956年にそれまでの旧式なM1910装備システムに代わり採用されたM1956装備システム(M1956 Load-Carrying Equipment)の構成要素のうちの一つです。
兵士が戦場で使うこまごました物を収納・携帯するのに使われた小間物入れ的パックで、通常はピストル・ベルトの背面部に装着します。

↑M-1956 Load-Carrying Equipment の一つで、レーションやユテンシル、靴下、タオル、下着その他いろいろ収納するのに使われました。
画像は「水筒1個じゃ飲み水が足りないから2個装備する!」となった頃以降の装備レイアウト例。
↓M1956 Load-Carrying Equipmentとはこれです(軍マニュアルから抜粋)。

今回取り上げましたのは「6」です。

↑パック背面の2つのスライド・キーパーでピストル・ベルトに固定し、上部両端のハトメ・タブにサスペンダーの後ろストラップのフックを繋いで支えます。

↑真上から見ています。本体はコットン・ダック製。左上、手で支えているのが上述のサスペンダー後ろストラップのフックに繋いだハトメ・タブ。中央横に一本ある少し暗いトーンのOD色のコットン・ウェブ・テープはキャリング・ストラップ。

↑このように掴めるので便利です。

↑この白っぽい四角はIDカード・スロットになっていて、このパックが誰の持ち物であるか分かるように名前を書いた紙片等を入れられるようになっています。

↑正面から。全体的な形態はWWⅡ時のM-1936 od キャンバス・フィールド・バッグ(通称ミュゼット・バッグ)に似ていますが、大きさはかなり小さくなっています。USスタンプがフラップにあります。

↑下に2本ストラップがありますが、これはポンチョなどを丸めてこのパックに結わえ付けるのに使います。

↑後ろから前に廻してバックルで留めます。

↑フラップの正面向かって右側にはハトメがあります。銃剣の鞘などダブルフック・ワイヤーを持つ装備品を吊るすことが出来るようになっているのはM-1910/1928ハバーサックを彷彿とさせます。左右が逆ですけど。

↑内側には補強の当て布(ウェブ・テープ)があります。

↑パックの両側面には冒頭の画像のようにスライド・キーパーを持つ装備品を装着できるようにウェブ・ベルトが設えられています。

↑このようにです。水筒をピストル・ベルトに装着すると、ピストル・ベルトのハトメにダブルフック・ワイヤーを持つ装備品(銃剣やグレネード・ポケットなど)をぶら下げる場所が無くなるので、このようにパックの側面に水筒を装着してベルトに空きスペースを作りました。

↑こんな風になります。

↑内側を見ていきましょう。フラップを開けるとパック両側面から伸びたベロがあり、フラップと本体の隙間からの雨水の侵入を防ぐのに役立ちます。

↑ベロを開きました。

↑右のベロの内側にスタンプがありました。製造者によってはスタンプが左のベロにあるケースもあります。

↑曰く、
FIELD PACK, COMBAT, M-1956
8465-577-4921
DA-36-243-QM(CTM)4742-E-60
18 SEPTEMBER 1959
2行目はおなじみFSNと3行目のDAナンバーなど。4行目は契約日。1960年度第1四半期になりますね。

↑内側です。後継のM-1961コンバット・フィールドパックのようなゴム引き内張りはありません。

↑後継のM-1961コンバット・フィールドパックを大きさ比較用に並べました。M-1961はM-1956を改良して容量を大きくするなど、幾つかの改良を施す形で新たに制式名称が与えられて制式化されたパックです。
巷ではM-1956が「初期型」でM-1961のことを「後期型」と紹介しているのを良く見かけますが、モノ的には制式名称の違う、全く別物であることに留意下さい。世に出た順番としては確かに前後の関係にありますが、両者は別モノです。ただ、M-1961の名称スタンプの中には「FIELD PACK, CANVAS」と表記され、「COMBAT」が「CANVAS」に変わり、更にM-〇〇〇〇の部分が省略されているものもあり、その辺が混乱の一因になっているのは事実です。
以上見て参りました。いかがでしたでしょうか?
「前期型・後期型」の話の他にもう一つ。巷では(有名ショップにおいても)このパックの事を「ブット・パック」などと表記していることがあります。恐らく英語表記のスペルを見て間違ったのだと思いますが、どうせ言うなら正しくは「バット・パック」です。バット(butt)とは米俗語でお尻(ケツ)という意味で(元々はbuttocks)、兵士たちはこのパックのことを俗称で「butt pack(ケツ袋)」と言っていました。スペルを見てそのまま「ブット」と、最初にこう表記した人も人ならそれを盲信した人も・・・。でも、今ではかなりブット・パックで通ってしまっているので最早何ともしようが・・・。
そういえばミュゼット・バッグ(musette bag:M-1936 od キャンバス・フィールド・バッグの通称)のことも、「musette」を「マセット」と読んで「マセット・バッグ」などと表記しているお店がありますねぇ。 これもなんだかなぁ・・・。
それでは次回「M-1961コンバット・フィールドパック」につづきます(予定)・・・。
24時間TVの是非は置いといて、隔週刊の当ブログにお越し下さった皆さま、ありがとうございます。
さて今回取り上げますのは、USヴェトナム戦装備には欠かせない(事も無い)「M-1956コンバット・フィールドパック」です。
1956年にそれまでの旧式なM1910装備システムに代わり採用されたM1956装備システム(M1956 Load-Carrying Equipment)の構成要素のうちの一つです。
兵士が戦場で使うこまごました物を収納・携帯するのに使われた小間物入れ的パックで、通常はピストル・ベルトの背面部に装着します。

↑M-1956 Load-Carrying Equipment の一つで、レーションやユテンシル、靴下、タオル、下着その他いろいろ収納するのに使われました。
画像は「水筒1個じゃ飲み水が足りないから2個装備する!」となった頃以降の装備レイアウト例。
↓M1956 Load-Carrying Equipmentとはこれです(軍マニュアルから抜粋)。

今回取り上げましたのは「6」です。

↑パック背面の2つのスライド・キーパーでピストル・ベルトに固定し、上部両端のハトメ・タブにサスペンダーの後ろストラップのフックを繋いで支えます。

↑真上から見ています。本体はコットン・ダック製。左上、手で支えているのが上述のサスペンダー後ろストラップのフックに繋いだハトメ・タブ。中央横に一本ある少し暗いトーンのOD色のコットン・ウェブ・テープはキャリング・ストラップ。

↑このように掴めるので便利です。

↑この白っぽい四角はIDカード・スロットになっていて、このパックが誰の持ち物であるか分かるように名前を書いた紙片等を入れられるようになっています。

↑正面から。全体的な形態はWWⅡ時のM-1936 od キャンバス・フィールド・バッグ(通称ミュゼット・バッグ)に似ていますが、大きさはかなり小さくなっています。USスタンプがフラップにあります。

↑下に2本ストラップがありますが、これはポンチョなどを丸めてこのパックに結わえ付けるのに使います。

↑後ろから前に廻してバックルで留めます。

↑フラップの正面向かって右側にはハトメがあります。銃剣の鞘などダブルフック・ワイヤーを持つ装備品を吊るすことが出来るようになっているのはM-1910/1928ハバーサックを彷彿とさせます。左右が逆ですけど。

↑内側には補強の当て布(ウェブ・テープ)があります。

↑パックの両側面には冒頭の画像のようにスライド・キーパーを持つ装備品を装着できるようにウェブ・ベルトが設えられています。

↑このようにです。水筒をピストル・ベルトに装着すると、ピストル・ベルトのハトメにダブルフック・ワイヤーを持つ装備品(銃剣やグレネード・ポケットなど)をぶら下げる場所が無くなるので、このようにパックの側面に水筒を装着してベルトに空きスペースを作りました。

↑こんな風になります。

↑内側を見ていきましょう。フラップを開けるとパック両側面から伸びたベロがあり、フラップと本体の隙間からの雨水の侵入を防ぐのに役立ちます。

↑ベロを開きました。

↑右のベロの内側にスタンプがありました。製造者によってはスタンプが左のベロにあるケースもあります。

↑曰く、
FIELD PACK, COMBAT, M-1956
8465-577-4921
DA-36-243-QM(CTM)4742-E-60
18 SEPTEMBER 1959
2行目はおなじみFSNと3行目のDAナンバーなど。4行目は契約日。1960年度第1四半期になりますね。

↑内側です。後継のM-1961コンバット・フィールドパックのようなゴム引き内張りはありません。

↑後継のM-1961コンバット・フィールドパックを大きさ比較用に並べました。M-1961はM-1956を改良して容量を大きくするなど、幾つかの改良を施す形で新たに制式名称が与えられて制式化されたパックです。
巷ではM-1956が「初期型」でM-1961のことを「後期型」と紹介しているのを良く見かけますが、モノ的には制式名称の違う、全く別物であることに留意下さい。世に出た順番としては確かに前後の関係にありますが、両者は別モノです。ただ、M-1961の名称スタンプの中には「FIELD PACK, CANVAS」と表記され、「COMBAT」が「CANVAS」に変わり、更にM-〇〇〇〇の部分が省略されているものもあり、その辺が混乱の一因になっているのは事実です。
以上見て参りました。いかがでしたでしょうか?
「前期型・後期型」の話の他にもう一つ。巷では(有名ショップにおいても)このパックの事を「ブット・パック」などと表記していることがあります。恐らく英語表記のスペルを見て間違ったのだと思いますが、どうせ言うなら正しくは「バット・パック」です。バット(butt)とは米俗語でお尻(ケツ)という意味で(元々はbuttocks)、兵士たちはこのパックのことを俗称で「butt pack(ケツ袋)」と言っていました。スペルを見てそのまま「ブット」と、最初にこう表記した人も人ならそれを盲信した人も・・・。でも、今ではかなりブット・パックで通ってしまっているので最早何ともしようが・・・。
そういえばミュゼット・バッグ(musette bag:M-1936 od キャンバス・フィールド・バッグの通称)のことも、「musette」を「マセット」と読んで「マセット・バッグ」などと表記しているお店がありますねぇ。 これもなんだかなぁ・・・。
それでは次回「M-1961コンバット・フィールドパック」につづきます(予定)・・・。
2015年08月09日
US M8 グレネード・ランチャー(US M8 Grenade launcher)
こんにちは。
今日は長崎に原爆が投下された日からちょうど70年になります。
毎年この日はその犠牲者の追悼式典が開催されます。原爆の、兵器としての非人道性云々の議論も重要ですが、戦争そのものの犠牲者は、戦地においても内地においても、敵も味方も、結局は大勢の「一市民」であることを忘れることなく安全保障法制について論じる必要があることを肝に銘じていたいと思います。
さて、今回定時を半日遅れで投稿しますのは、前回の「M15 グレネード・ランチャー・サイト」つながりで、M8 グレネード・ランチャー(擲弾発射器)についてです。
M8グレネード・ランチャーはM1カービン銃系用のグレネード・ランチャーです。

↑スプリングフィールド小銃用のM1や、エンフィールド小銃用のM2と同じく、銃身先端にクランプで取り付けるシンプルな構造です。
上面には「1」から「6」の数字があります。グレネード発射の際の飛距離等に応じて、グレネードをどの数字に合わせて装着するかを示すものです。前回記事「M15 グレネード・ランチャー・サイト」で触れていますのでご覧下さい。

↑下面です。

↑このようにM1カービンの銃身先端に合わせてクランプ留めします。

↑こちら側を銃身先端に被せます。

↑正面から。

↑先端部。先端の黒っぽい部分がナットで、すぐ後ろにあるスプリット・リングを留めています。このスプリット・リングが、グレネードが装着された時に適度なテンションを与えて、グレネードが抜け落ちないよう保持します。M8グレネード・ランチャーには大別してこのスプリット・リング&ナットバージョン(EARLY MANUFACTURE:初期製造分)と、このスプリット・リングとナットを廃し、代わりにM1ライフル用のM7グレネード・ランチャーのように、ランチャー本体の切り込みにコイル・スプリングを入れて、同じ役割をさせているバージョン(NEW MANUFACTURE:新製造分)の2つのタイプがあります。前者は10万4千個余りが製造され、後者は1943年の12月には既に設計図が出来、1945年8月までに約28万3千個が順次製造されました。

↑1,2,3,4,5,6,と来て「7」となりそうなところの黒くて割れ目の有るのが上述のスプリット・リングです。本体よりもほんの僅か径が太くなっていて、グレネードが抜け落ちない程度のテンションが掛かります。

↑クランプ部品の拡大。左端に☆の中にRのマークと「GRENADE LAUNCHER M-8」の刻印があります。☆にRのマークはReliance Machine & Tool Company社のモノです。
以上見て参りました。私がこのランチャー(くどいですが、本来の発音としては「ランチャー」ではなく「ローンチャ」がより原語に近いので、英語で話す時は留意して下さい)を入手したのはもう15年ほども前になります。
現在ならば個人輸入は恐らく不可能だと思われます。前回のサイトですら1年前位に個人輸入しようとした時「銃の部品である」という理屈でハネられましたからね。
それでは、また・・・。
今日は長崎に原爆が投下された日からちょうど70年になります。
毎年この日はその犠牲者の追悼式典が開催されます。原爆の、兵器としての非人道性云々の議論も重要ですが、戦争そのものの犠牲者は、戦地においても内地においても、敵も味方も、結局は大勢の「一市民」であることを忘れることなく安全保障法制について論じる必要があることを肝に銘じていたいと思います。
さて、今回定時を半日遅れで投稿しますのは、前回の「M15 グレネード・ランチャー・サイト」つながりで、M8 グレネード・ランチャー(擲弾発射器)についてです。
M8グレネード・ランチャーはM1カービン銃系用のグレネード・ランチャーです。

↑スプリングフィールド小銃用のM1や、エンフィールド小銃用のM2と同じく、銃身先端にクランプで取り付けるシンプルな構造です。
上面には「1」から「6」の数字があります。グレネード発射の際の飛距離等に応じて、グレネードをどの数字に合わせて装着するかを示すものです。前回記事「M15 グレネード・ランチャー・サイト」で触れていますのでご覧下さい。

↑下面です。

↑このようにM1カービンの銃身先端に合わせてクランプ留めします。

↑こちら側を銃身先端に被せます。

↑正面から。

↑先端部。先端の黒っぽい部分がナットで、すぐ後ろにあるスプリット・リングを留めています。このスプリット・リングが、グレネードが装着された時に適度なテンションを与えて、グレネードが抜け落ちないよう保持します。M8グレネード・ランチャーには大別してこのスプリット・リング&ナットバージョン(EARLY MANUFACTURE:初期製造分)と、このスプリット・リングとナットを廃し、代わりにM1ライフル用のM7グレネード・ランチャーのように、ランチャー本体の切り込みにコイル・スプリングを入れて、同じ役割をさせているバージョン(NEW MANUFACTURE:新製造分)の2つのタイプがあります。前者は10万4千個余りが製造され、後者は1943年の12月には既に設計図が出来、1945年8月までに約28万3千個が順次製造されました。

↑1,2,3,4,5,6,と来て「7」となりそうなところの黒くて割れ目の有るのが上述のスプリット・リングです。本体よりもほんの僅か径が太くなっていて、グレネードが抜け落ちない程度のテンションが掛かります。

↑クランプ部品の拡大。左端に☆の中にRのマークと「GRENADE LAUNCHER M-8」の刻印があります。☆にRのマークはReliance Machine & Tool Company社のモノです。
以上見て参りました。私がこのランチャー(くどいですが、本来の発音としては「ランチャー」ではなく「ローンチャ」がより原語に近いので、英語で話す時は留意して下さい)を入手したのはもう15年ほども前になります。
現在ならば個人輸入は恐らく不可能だと思われます。前回のサイトですら1年前位に個人輸入しようとした時「銃の部品である」という理屈でハネられましたからね。
それでは、また・・・。
タグ :M8 grenade launcherrifle grenadeM1 CarbineM8Knapp MonarchSun RayReliance Machine ToolM8 グレネードランチャーグレネードランチャーgrenade launcher