QRコード
QRCODE
< 2018年07>
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
オーナーへメッセージ

コレクション ブログランキングへ

2018年07月22日

M-1943 イントレンチング・ショベル(M-1943 Intrenching shovel)

皆さんこんにちは。

猛暑の続く当地大阪(の中でも最高気温が府下ナンバー1を誇る枚方(ひらかた)の近く)から今回お届けしますのは、WWⅡ米軍がそれまでのTボーンショベル(M-1910イントレンチング・ショベル)に替えて採用したM-1943イントレンチング・ショベル(Shovel, Intrenching, M-1943)です。隔週日曜日の正午を定刻として投稿完了を目指している当ブログ、今回は定刻より少し早く投稿できました。

まずはキャリアーに収まっている図です。このキャリアーについては過去記事(→M-1943 ショベル・キャリア(Carrier, Shovel, Intrenching, M-1943)を参照ください。


↓フラップを開けて、


↓上へ引き上げて、


↓はい、引き上げて…、


↓取り出しました。柄は木製でブレード(匙部)は鋼製。全体がいわゆるOD色で塗装されています。



↓裏返してみました。柄の端っこやブレードの先端部分など、使用により塗装が剥げてきています。


↓ブレードのアップ。強度を持たせるため段が付いている中心部分は、より厚くなってます。


↓もう一度裏返し。柄とブレード部をつなぐ先細りのソケットと、固定ナット、ワッシャー、ヒンジ、ブレード。


↓ブレードの隅に刻印があります。「US」、「WOOD」、「1944」とあり、1944年WOOD社製であることが分かります。WOOD社のほか、AMES社(AMES BALDWIN WYOMING COMPANY)とA.F. & H. 社(AMERICAN FORK & HOE COMPANY)も製造していました。因みにA.F.&H.社は後にAMES社に吸収されています。


↓刻印が表側に少し浮き出ていますね。


↓まず、このアルミ合金製の固定ナットを緩めて、


↓これ位です。


↓横から見るとこんな感じです。


↓ブレードを直角に起こして…、


↓横から見るとこんな感じです。


↓ナットを締めて固定しますと…、


↓「鍬(くわ)」になりました。


↓さらに、同じ要領でナットを緩めてブレードを柄と直線になるようにして...、


↓固定すれば...、


↓はい、ショベルになりました。


↓ヒンジ部分の拡大です。


↓鍬にして別の角度から撮影。ブレードの表側からでも見えますが、ヒンジとブレードはこのように合計4つのリベットで固定されています。粗悪なレプリカ品はこの辺りでリベットを3つにケチったり、あるいはヒンジの形状やリベットそのものの大きさが小さかったりして十分な強度が期待できないモノとなっている例が多いです。


↓ブレードの厚みはこんな感じです。少し刃が付いています。


↓ソケットと柄を結合しているリベットは両サイドから2本打たれています。


以上いかがでしたか?
単なる使用説明書になってしまっていますね。
この「折り畳みショベル」は過去記事のキャリアーでも記しましたが、この先代にあたるM-1910イントレンチング・ショベル(通称Tボーン・ショベル)に替わって、ブレードを折りたたみ式にすることによって収納時の全体の長さを短くしたモノであり、ハッキリ言ってドイツ軍の折りたたみショベル「Klappspaten(クラップシュパーテン:折り畳み式スコップ)」のフルコピーです。ドイツ軍も1938年にその先代の「Kleines Schanzzeug(クライネス・シャンツォイク:小型塹壕構築具)」から折りたたみ式のKlappspatenを採用することになったのですが、その目的はどちらも省スペース化と多機能化でありました。

なお、このM-1943イントレンチング・ショベルは、後に「ツルハシ」パーツをも付加させた「M-1951イントレンチング・ツール」(←クリックで後日記事が別ウィンドウで開きます)へと発展を遂げていくことになります。

現在日本では状態のいいモノで5,000円くらいから入手可能でしょうか。アメリカでもそれほど高価ではありませんが、重く嵩張るので送料が割高になり、他に沢山まとめ買いをしないとお得感は感じにくいです。WWⅡ後期~ヴェトナム戦初期頃の米軍ファンの方は、国内で見つけたら入手しておいた方が良いと思います。あまり市場に多く出回ってはいないような印象がありますので。後継のM-1951も、あまり出物を見ないですが、同額ほどでいい状態のモノが国内で入手可能です。

このショベルですが、我が家では実用品としての「価値」があるので、他の軍装品とは違って存在自体は肯定的に見られています。
即ち花壇の手入れや庭木の植え替え時に重宝するからです。あと実用できるユテンシル類や普段着使いとして着るパッチや階級章の付いていないコート類等も何とか存在を認められていますし、時と場合と運によれば、その購入予算を廻してもらえることもあります。

それでは今回はこの辺で失礼いたします。熱中症には気を付けましょう。さようなら。










  

Posted by Sgt. Saunders at 10:01Comments(0)米軍(U.S.)Intrenching tools

2018年07月08日

M-1910 カートリッジ・ベルト(M-1910 Dismounted Cal..30 Cartridge Belt)

みなさん、こんにちは。
当地大阪で去る6月18日朝に最大震度6弱を観測する地震がありましたのはみなさんもうご存知の通りです。
不幸なことに震央近くでは防ぎ得たかもしれないブロック塀の崩壊で小学生が亡くなり、また他にも4名の方が亡くなり、残念です。
大阪で観測が始まって以来最大震度の地震だということですが、ガス・水道の供給が一部で止まったほかは、阪神淡路大震災の時の電車や自動車道の高架崩壊などといった大きなインフラ破壊は無かったのは幸いでした。「でした。」と言い切れていてよかったと後々思えるであろうことを願って止みません。
と、書いておりますところに今度は九州から近畿地方にかけての(沖縄や北海道でも台風に伴う大雨がありましたが)猛烈極まる雨で、鉄道は運休、道路は寸断され、また土砂崩れ・河川の氾濫で死者・行方不明者が出ています。当方の近くでも自治体から避難指示が出たり、「えらい難儀」な状態です。

さて今回お送りするモノは、前々々回お送りした「M-1923 カートリッジ・ベルト(M-1923 Dismounted Cal..30 Cartridge Belt)」の続きのような感じになります「M-1910 カートリッジ・ベルト(M-1910 Dismounted Cal..30 Cartridge Belt)」です。

↓上は参考としてのM-1923、下が今回見ていくM-1910です。外観はほぼ同じように見えますが、細かく見ますと違いが沢山あります。

なお、最初にお断りしておかないといけませんが、一口に「M-1910」と申しましても制式化当初時からWWⅠ(と言うか1917年のアメリカ参戦時)を経て、次の「M-1917」が開発されるまでの間に、いろんな特徴を持つバリエーションが数多く認められますので注意が必要です。
追い追いまた申しますが、「バリエーション分け」の大まかな着目点としては
①フラップの留め具、
②カートリッジ保持ストラップの有無、
③ハトメの形状                の3つがあります。
①のフラップの留め具は当初が「リム無しイーグル・スナップ・ボタン」、次いで1914年頃から「リム有りイーグル・スナップ・ボタン」、最終形の1917年3月頃からの「Lift-the-Dot」と遷移していきます。②のカートリッジ保持ストラップの有無ですが、WWⅠ中アメリカが1917年4月に参戦した後、同年後半には省略されるようになりました。③のハトメの形状ですが、これは左側ポケット部に限っての特徴で、左側ポケット部下辺のダブル・フック・ワイヤ装備を吊り下げるためのハトメ(グロメット)の形状が当初は「円型」ではなくて「横長円型」となっていて、これもWWⅠ中アメリカ参戦時の1917年中には廃止され、右側ポケット部と同様「円型」ハトメへと改められました。
で、今回ご覧頂く「M-1910」は、「『Lift-the-Dot留め』・『カート保持ストラップ有り』・『横長円形ハトメ』」バージョンということになります。
M-1910の次モデルであるM-1917は、ポケット下部にフリルの無い点以外はM-1910の最終形態(Lift-the-Dot、カート保持ストラップ無し、円型ハトメ)と同じ特徴を持っています。

↓裏側です。こちら側は左右のポケットを繋ぐ連結ベルトの「繋ぎ方」が大きく変化している様子が一目で分かります。連結ベルトの上辺のハトメ穴は、ハバーサックのフックを通すためのモノですが、一個で十分なのにM-1910の方に3つもある理由がつい最近分かりました。ハバーサックではなくM1907X型サスペンダーに吊るして使用する際にこの3つの穴のうち両端の2つのハトメ穴にサスペンダーの金具を引っ掛けるのです。


↓こうすると表裏面の違いが一目で分かりますね。細かく差異を見ていくことにしましょう。


↓M-1923のポケット部は、「台地」のウェブに別の「ポケット用ウェブ」を重ねてボックス型プリーツを作りながらポケットを作り出して縫製して出来ておりますが…、


↓このM-1910では「台地」と「ポケット」は2枚のウェブ生地の縫製ではなく、一挙に織り上げて出来ています。この個体の製造者Russell社と、少し製法が異なりますが、Mills社も同様の「一挙織り上げ」製法技術を持っていました。M-1910はこの2社のみが製造しました。このように細かいフリルを寄せつつ…


↓この通り表と裏とが1つの織物として出来上がっています。


↓M-1923ではこのように2枚のウェブ生地合わせです。WWⅠ末期に開発されたM-1917も同様です。


↓左側のポケット部です。フラップの留め具はLift-the-Dotです。カートリッジ保持ストラップがあり、下辺ハトメは横長円型となっています。先ほど触れました時期による特徴と照らすと大体1917年前半頃の製造かなと察しがつきます。


↓フロント・バックルに一番近いフラップの裏面のスタンプ。「楕円の中にRUSSELL」のRussell社の商標と、その上下に「JUNE」「1917」。1917年6月製造です。上で予想した製造時期と合致しました。


↓こちらはフロント・バックルから一番遠い方のポケットのフラップ裏面のスタンプです。「5」とありますが、何の意味か?多分単なるロット表示か何かだと思いますが分かりません。


↓左側のポケットの下辺ハトメですが、このように「横長円」になってます。同時期の衛生兵用のベルト(Belt, Medical Corpsman's, M-1910)の装備ぶら下げ用ハトメは全部が横長円でして、なるべくたくさんぶら下げられるようにと考えられたのでしたが、それに倣った...としても何故左側のポケットだけなのかという疑問は消えません。


↓もう少し拡大してみました。一つのハトメ穴にダブル・フック・ワイヤ・ハンガーを2本通すことが出来ますから、ぶら下げられる装備品を単純に増やせることに繋がりますが、左側だけにそんなに沢山装備をぶら下げなければならなかったような事は無いような...。しかもダブル・フック・ワイヤ・ハンガーを一つの横長円ハトメ穴に2つ通したとしても、装備品自体の横幅がありますから互いに干渉してしまって使い易いようには思えません。グチャグチャになりそうです。


↓右側のポケット全景です。こちら側の下辺のハトメ穴は見慣れた「円型」です。


↓こちら側もフロント・バックルに一番近いフラップの裏面に「楕円の中にRUSSELL」のRussell社の商標スタンプと、その上下に「JUNE」「1917」のスタンプがあります。Lift-the-Dotの右下の部分にステイプラー(いわゆるホッチキス)の針が留まって錆びついています。


↓フロント・バックルから一番遠い方のポケットのフラップ裏面のスタンプです。「57」とありまして、やはり多分ロット表示の類かと思います。


↓フラップ全てを開いた全景です。


↓右側ポケット部の一番後ろの下辺ハトメ穴のグロメットが脱落した跡です。この頃のハトメ穴は上辺のモノも下辺のモノも同じモノが用いられ、特に下辺ハトメ穴は酷使されるために、このように脱落している例が上辺ハトメ穴の場合より多いです。M-1923では容易に脱落しないように大型化されます。あと、この画像で触れておきますが、左右ポケットの連結ベルトを通すバックルがポケット部へ縫い付けられている場所ですが、のちのM-1910の最終形態やM-1923ではポケット部背面ですが、本個体以前のモノはこの画像のようにポケット部表側後端に貼り付ける形となっています。


↓裏側から見ました。注意して見ないとここにハトメ穴があったことを見落としてしまいます。


↓左右のポケットを繋ぐ連結ベルトとその連結具合が分かる画像です。画像の左に写っているバックルを通ってきた連結ベルトの先端に2つある鉤フックを、ポケット部裏側に2列で並ぶ小さいハトメ穴の何処に引っ掛けて繋いだらベルト全体が丁度良い長さになるか見当をつけてまず引っ掛けて、バックルとの間のタワミ・引きつれが無いように調整します。


↓ベルト借用者の記名「P6805」。「認識番号○○○・・・6805で、Pで始まる名前の人のモノ」の表示です。


↓連結ベルトのここにも。


↓右側ポケット部のこの部分にも。


↓左がM-1910、右はM-1923です。両方ともカートリッジ保持ストラップを有していますが、その長さがかなり違います。


↓用法に従ってストラップの前後に1つづつカートを収納してスナップ・ボタンを留めてみました。外見は両者とも差異がなく同じように見えます。


↓スナップ・ボタンを外しても見かけは同じですが…


↓左のM-1910は、ストラップを上に引き上げると手前のカート(人体側から見れば外側)が上へせり上がります。右のM-1923はストラップを引き上げることは出来ません。カートはそのままです。


↓外側のカートを抜き取りました。


↓M-1910もM-1923も、両方ともポケット1つにカート・クリップが2個収納できるようになっています。仮にこのストラップが無いと、フラップを開いてカート・クリップを1つ取り出そうとした時に、もう1つが不意に飛び出したりしてしまう恐れがあります。それを防止するため、フラップが開いた状態であっても、前後に収納したカート・クリップのうち前側(人体側から見れば外側)のカート・クリップを固定しておけるようにカートリッジ保持ストラップが備えられたのです。その目的のほか、M-1910の方の長いストラップには、もう一つ目的があったのです。↓ポケットを横から見た断面模式図で説明します。

模式図の右方向が人体側です。茶色の線はポケット、オレンジの線はカート保持ストラップです。
左のM-1910のカートリッジ保持ストラップはポケットの下から1インチほど上の部分(図の●印)が付け根で、そのストラップを上から踏ん付けるようにして前側のカート・クリップが収められ、ストラップは下から上へ、そして前へと廻ってポケット外側でスナップ・ボタン留めされます。ストラップの後ろ側にもう1つカート・クリップを収納して完了です(左図)。フラップを開けただけの状態では前側のカート・クリップはしっかり保持・固定されます。つまり実用上フラップを開けたら、まず後ろ側のカートから使用し、次にスナップ・ボタンを外してストラップを上へ引っ張り上げると、赤矢印の分だけ前側のカート・クリップがせり上げられ、容易に摘み取ることが出来ます(中図)。これが先程申し上げました「もう一つの目的」です。一方右図のM-1923では、カートリッジ保持ストラップの付け根がポケット底部の●印部分ですから引っ張り上げることは出来ません。単に前側のカート・クリップを保持・固定するためだけの役割しかありません。(注)M-1910では前側のカート・クリップは弾頭を上にして収める、とする資料もあります。

↓M-1910のポケット内部です。少し見難いですがストラップの付け根がポケットのLift-the-dotのオス(スタッド)の下1cm程のところにあります。


↓M-1923では底の縫い合わせ部分に付け根があります。


↓ストラップのメス・スナップ・ボタンの内側です。「CARR'S PAT. '13」と、UNITED CARR社の1913年特許表示があります。新型のスナップ・ボタンです。


↓ポケット側のオス・スナップ・ボタンの裏側です。緩い凸ドーム型です。


↓最後に参考資料を一つ。RUSSELL社と別のもう一つのM-1910製造者であったMILLS社の製品カタログの1ページです。一番下にM-1910(フラップの留め具が「イーグル・スナップ・ボタン(リムの有無は分かりません)」)が掲載されています。



今回のネタM-1910は私のメインのコレクションからは若干外れていますが、M-1923と並んでM-1917がWWⅡで使用されていて、そのまた前世代のM-1910ですから興味はありましたところに、これが比較的求めやすい値段で売りに出されていまして、「WWⅠ軍装も最低限一式揃えてみようかな」という浮気心が湧いてきてしまい、思い切って買ってしまいました。その後WWⅠ軍装最低限揃え作戦は頓挫してしまい今に至ります。
M-1917はWWⅡでも多用されましたが、さすがにM-1910はWWⅡの戦時写真では見たことがまだありません。WWⅡリエナクト用には向いていないかもしれません。

特徴によるバリエーションにより大きく価格は変わりますし、程度にも依りますが、中程度のモノならリム無しスナップ・ボタンのM-1910ならばUS$170辺り、リム有りスナップ・ボタンのM-1910なら若干それより廉価で、Lift-he-DotならUS$120程で十分入手可能です。


それではまた次回お会いしましょう。さようなら。