2014年09月07日
M3双眼鏡とM17キャリング・ケース(U.S. M3 Binocular & M17 Carrying Case)
日中の気温は30度を切るようになってきました。やっと朝晩は少し涼しくなり、虫の声がやさしく聞こえてくる今日この頃です。みなさまの処はいかがでしょうか?
さて今回は前回のUSJレポートで採り上げた米海軍 マーク33 双眼鏡(U.S. Navy BU. Ships MkXXXIII)からの双眼鏡つながりで、WWⅡ時以降米陸軍で使用されたM3双眼鏡とM17キャリング・ケース(M3 Binocular & M17 Carrying Case)を採り上げます。

↑まずはM3双眼鏡から……、
と、思いましたが、ケースに収まっている状態から取り出しながら見ていく形にします。
↓まず、M17キャリング・ケースから。

この画像では全体のシルエットがかなりきつい逆台形になってますが、これはカメラのレンズのせいです。実際は底へ向かってこれほどはすぼんでいません。
↓蓋上面。革製の握りが設えてあります。蓋を含むケース表面の全体が石目模様になってます。

↓やや小ぶりですが、このようにして掴むことができます。

この握りも本体もレプリカでどこかから売られてますねぇ。やはり消耗が激しいのでしょう。本品ではさほど傷んでいません。
↓更に拡大。「CASE, CARRYING, M17」の文字が刻まれています。

↓蓋の留め具。「LIFT THE DOT」の付いたタブです。

↓更に拡大。他の装備品にも幅広く使われているこの「LIFT THE DOT」、このようにしっかりと「私がLIFT THE DOTだぞ」と表記されているモノもあります。

↓側面から。ケースはストラップで首や肩掛けすることもできます。そのストラップはケース本体左右側面に各2つ、合計で4つ設えられたループを通ってケースを支えます。

↓反対側の側面。画像左方で指が触れているのは、ケース背面に設えられたベルト・ループ。蓋の握りで手提げもでき、ストラップで首・肩掛けもでき、ベルト・ループにベルトを通して腰付けにして携行することもできるという造りです。

↓ケース本体の背面と底面。ベルト・ループの下端は3つのリベット留め。また底部には側面にあるような、ストラップが通るループはありません。

↓首・肩掛け用ストラップの詳細。ベルトの幅は約15mm、厚みは約2.5mm。黒染めの真鍮製バックルで長さを調節できます。ストラップの全長は約193cm。一番長くなるように調節した場合の有効最大長は約188cm。一番短くした時の長さは約158cm。調節のためのストラップにあけられた穴の数は11個で、穴の間隔は約33mm。


調節した結果余るストラップを束ねる革ループは2個です。
↓蓋をあけると、それまで隠れていた本体正面上端部に「D44160」の刻印が。この品のドローイング・ナンバーです。

↓蓋を開けます。

対物レンズが当たる蓋の裏側は、薄い革の下に薄くクッション材(綿?よく分かりません)が入ったような手触りです。
↓蓋の内側の縁部分に刻印。

↓拡大。「WESTINGHOUSE」と製造者名が刻まれています。

↓蓋は先ほど見た背面にあるベルト・ループの上端にリベットで留められています。

↓内側から見る。4つのリベットで留まっています。

↓あらためて双眼鏡が収まっているところを真上から。

↓本体内側はフェルトで内張りされています。

これでケースについては終わりです。続いてやっと双眼鏡へ…。
↓M3双眼鏡です。首に掛けるための革ストラップが付きます。

軍用の双眼鏡でなくても備えている機能などについてもいちいち触れますが、ウザいと思わずお付き合いください。
↓使用者個々人の両眼の間隔に合わせられるよう、真ん中のヒンジを支点にして両眼の接眼レンズのなす角度の大小を調節することができます。
画像は一番両眼の間隔を短くしたところ。両眼間隔(56mmから74mm)を示す目盛り(Interpupillary scale)が打ってあります。因みに私は「70mm」位がちょうどよい感じです。↓

↓左の接眼レンズ側を見る。制式名称「BINOCULAR M3」と、倍率×対物レンズ径「6×30」の表示。

↓左の接眼レンズの方にレティクルが入っています。

レティクルは、視野の下の方に1本水平方向に引かれ、中心から左右に50ミルずつ10ミル間隔の目盛りが5つずつあります(一の桁は省略して1,2,3,4,5となってます)。利便性向上のため、中心部分に上方向に2本、左端部分に上方向に4本、5ミル毎の小さい横線の目盛りがあります。垂直のレティクルが右側30ミルの処にあり、1目盛りが100ヤード毎にあり、1800ヤードの処で水平レティクルと交差しています。長距離間接砲撃と不可視目標砲撃時に使います(TM9-575 「AUXILIARY FIRE-CONTROL INSTRUMENTS (FIELD GLASSES, EYEGLASSES, TELESCOPES AND WATCHES) 1942年5月4日版 パラグラフ2(3)のマル写し翻訳です… )。
↓右の接眼レンズ側。製造者「WESTINGHOUSE」と製造年「1943」。製造者は他にもNash-Kelvinator、Bausch & Lomb、 Universal Camera corp.、Wollensak がありました。

あと、「H.M.R.」が何の略で何を意味しているか、実はまだ未解明です。今般いろいろ調べましたが、明確な結論を出すに至っておりません。陸軍が納品を受けた民間会社からの軍需品を検査するような部署の略(Headquarters Maintenance Requirement、Headquarters Modification Request など)であるとか、もしくは"High Moisture Resistance"(高防水性)の略だとする説等々あって、どれが正しいのか分かりません。今後調べを続けます。
↓接眼レンズのアイ・ピースは硬いプラ製です。ゴム製ではありません。

ジオプトリー調整目盛りとインジケーターが見えます。一段太くなっている焦点リングを回して調節します。
↓ネック・ストラップと取付用のループ。このストラップは長さの調節は出来ません。

↓拡大。取付用の部品は真鍮のスタッド型ボタン。ストラップに開けられたスリットは片方に2つずつです。

↓ストラップの幅は約9mm。

↓以下、寸法の分かる画像です。




かなりコンパクトだと思います。
以上駆け足で見てまいりましたが、如何でしたでしょうか?
附け加えですが、双眼鏡自体やケースを陸軍が組織的にOD色にペイントした例がありますので、そのようなモノも決して粗末に扱わないでください。
「H.M.R.」の謎(知らないのは私だけだったりして)を今後も追究していくことを課題として参ります。
今回はこの辺で。それでは、また……。(今回も遅刻投稿でした・・・・・)
さて今回は前回のUSJレポートで採り上げた米海軍 マーク33 双眼鏡(U.S. Navy BU. Ships MkXXXIII)からの双眼鏡つながりで、WWⅡ時以降米陸軍で使用されたM3双眼鏡とM17キャリング・ケース(M3 Binocular & M17 Carrying Case)を採り上げます。

↑まずはM3双眼鏡から……、
と、思いましたが、ケースに収まっている状態から取り出しながら見ていく形にします。
↓まず、M17キャリング・ケースから。

この画像では全体のシルエットがかなりきつい逆台形になってますが、これはカメラのレンズのせいです。実際は底へ向かってこれほどはすぼんでいません。
↓蓋上面。革製の握りが設えてあります。蓋を含むケース表面の全体が石目模様になってます。

↓やや小ぶりですが、このようにして掴むことができます。

この握りも本体もレプリカでどこかから売られてますねぇ。やはり消耗が激しいのでしょう。本品ではさほど傷んでいません。
↓更に拡大。「CASE, CARRYING, M17」の文字が刻まれています。

↓蓋の留め具。「LIFT THE DOT」の付いたタブです。

↓更に拡大。他の装備品にも幅広く使われているこの「LIFT THE DOT」、このようにしっかりと「私がLIFT THE DOTだぞ」と表記されているモノもあります。

↓側面から。ケースはストラップで首や肩掛けすることもできます。そのストラップはケース本体左右側面に各2つ、合計で4つ設えられたループを通ってケースを支えます。

↓反対側の側面。画像左方で指が触れているのは、ケース背面に設えられたベルト・ループ。蓋の握りで手提げもでき、ストラップで首・肩掛けもでき、ベルト・ループにベルトを通して腰付けにして携行することもできるという造りです。

↓ケース本体の背面と底面。ベルト・ループの下端は3つのリベット留め。また底部には側面にあるような、ストラップが通るループはありません。

↓首・肩掛け用ストラップの詳細。ベルトの幅は約15mm、厚みは約2.5mm。黒染めの真鍮製バックルで長さを調節できます。ストラップの全長は約193cm。一番長くなるように調節した場合の有効最大長は約188cm。一番短くした時の長さは約158cm。調節のためのストラップにあけられた穴の数は11個で、穴の間隔は約33mm。


調節した結果余るストラップを束ねる革ループは2個です。
↓蓋をあけると、それまで隠れていた本体正面上端部に「D44160」の刻印が。この品のドローイング・ナンバーです。

↓蓋を開けます。

対物レンズが当たる蓋の裏側は、薄い革の下に薄くクッション材(綿?よく分かりません)が入ったような手触りです。
↓蓋の内側の縁部分に刻印。

↓拡大。「WESTINGHOUSE」と製造者名が刻まれています。

↓蓋は先ほど見た背面にあるベルト・ループの上端にリベットで留められています。

↓内側から見る。4つのリベットで留まっています。

↓あらためて双眼鏡が収まっているところを真上から。

↓本体内側はフェルトで内張りされています。

これでケースについては終わりです。続いてやっと双眼鏡へ…。
↓M3双眼鏡です。首に掛けるための革ストラップが付きます。

軍用の双眼鏡でなくても備えている機能などについてもいちいち触れますが、ウザいと思わずお付き合いください。
↓使用者個々人の両眼の間隔に合わせられるよう、真ん中のヒンジを支点にして両眼の接眼レンズのなす角度の大小を調節することができます。
画像は一番両眼の間隔を短くしたところ。両眼間隔(56mmから74mm)を示す目盛り(Interpupillary scale)が打ってあります。因みに私は「70mm」位がちょうどよい感じです。↓

↓左の接眼レンズ側を見る。制式名称「BINOCULAR M3」と、倍率×対物レンズ径「6×30」の表示。

↓左の接眼レンズの方にレティクルが入っています。

レティクルは、視野の下の方に1本水平方向に引かれ、中心から左右に50ミルずつ10ミル間隔の目盛りが5つずつあります(一の桁は省略して1,2,3,4,5となってます)。利便性向上のため、中心部分に上方向に2本、左端部分に上方向に4本、5ミル毎の小さい横線の目盛りがあります。垂直のレティクルが右側30ミルの処にあり、1目盛りが100ヤード毎にあり、1800ヤードの処で水平レティクルと交差しています。長距離間接砲撃と不可視目標砲撃時に使います(TM9-575 「AUXILIARY FIRE-CONTROL INSTRUMENTS (FIELD GLASSES, EYEGLASSES, TELESCOPES AND WATCHES) 1942年5月4日版 パラグラフ2(3)のマル写し翻訳です… )。
↓右の接眼レンズ側。製造者「WESTINGHOUSE」と製造年「1943」。製造者は他にもNash-Kelvinator、Bausch & Lomb、 Universal Camera corp.、Wollensak がありました。

あと、「H.M.R.」が何の略で何を意味しているか、実はまだ未解明です。今般いろいろ調べましたが、明確な結論を出すに至っておりません。陸軍が納品を受けた民間会社からの軍需品を検査するような部署の略(Headquarters Maintenance Requirement、Headquarters Modification Request など)であるとか、もしくは"High Moisture Resistance"(高防水性)の略だとする説等々あって、どれが正しいのか分かりません。今後調べを続けます。
↓接眼レンズのアイ・ピースは硬いプラ製です。ゴム製ではありません。

ジオプトリー調整目盛りとインジケーターが見えます。一段太くなっている焦点リングを回して調節します。
↓ネック・ストラップと取付用のループ。このストラップは長さの調節は出来ません。

↓拡大。取付用の部品は真鍮のスタッド型ボタン。ストラップに開けられたスリットは片方に2つずつです。

↓ストラップの幅は約9mm。

↓以下、寸法の分かる画像です。




かなりコンパクトだと思います。
以上駆け足で見てまいりましたが、如何でしたでしょうか?
附け加えですが、双眼鏡自体やケースを陸軍が組織的にOD色にペイントした例がありますので、そのようなモノも決して粗末に扱わないでください。
「H.M.R.」の謎(知らないのは私だけだったりして)を今後も追究していくことを課題として参ります。
今回はこの辺で。それでは、また……。(今回も遅刻投稿でした・・・・・)