2015年03月29日
U.S.ピストル・ベルト・30's~60's(The evolution of U.S. pistol belts)
こんにちは。
近所の公園の桜に、ほんの少し花が付きました。春ですね。
花見にはまだ早いですが、心が逸ります。でも今朝からしとしとと雨が降っております。定刻を2時間ばかり過ぎての投稿です。
さて、今回は1930年代から1960年代頃までU.S.陸軍及び海兵隊が使用したピストル・ベルト(正式な名称は変化していますが)を採り上げます。
前々回の記事「M1936 ピストル・ベルト(M1936 PISTOL OR REVOLVER BELT)」ではタイトル通りM1936ピストル・ベルトに特化してお送りしましたが、今回はそれ以降のピストル・ベルトを幾つかご覧いただきます。
↓まず、これをご覧ください。一見すると同じように見えます。↓

いちいち「〇番目」というのは分かりにくいので、番号を付けました。↓

上2つ①②はM1936ピストル・ベルト(Belt, Pistol or revolver, M1936)、③は海兵隊用の通称M1961ベルト(Belt, Individual Equipment)、④⑤は通称M1956ベルト(Belt, Individual equipment, M-1956 )です。以下順番に見ていきましょう。
↓まず①②③です。

①と②はM1936の単なる色目違いです。前々回の記事「M1936 ピストル・ベルト(M1936 PISTOL OR REVOLVER BELT)」をご覧ください。
③は、そのM1936に1つだけ設けられていたマガジン・ポケット連結用のスナップ・ボタンをもっと沢山設けただけのモノと言ってもよい通称「M1961」個人装備ベルトです。あとで触れますが、これは海兵隊(Marine Corps)が主力ライフルを陸軍同様M1(ガランド)からM14へ変更するにあたって陸軍とは全く別のマガジン・ポケットを開発するのに併行して、海兵隊用に開発されたものです。
↓②(M1936)と③(M1961)ではマガジン・ポケット連結用のスナップ・ボタンの数以外は「US」スタンプも同じです。

↓ベルトの長さを調節するための「折り返し」が、身につけた時に右側のみである点も同じです。

↓細かいことを言えば、「折り返し」の部分の「スライド・キーパー」の形状が改良されています。

↓「折り返し」部分の拡大です。

折り返して末端のサイズ調節ワイヤー・フックをベルトの中段に設けてある小さいハトメ穴に引っ掛けてベルト長を調節する仕組みはWWⅠ以来の伝統です。
↓もう少し拡大しました。

ベルト・キーパーの形状の違いがお解りいただけますでしょうか?上の旧型のモノはハトメを越えて動かそうとするときは少々タイトなので「えいやっ」と気合を入れないとだめですが、下の新型のモノはハトメの出っ張りの分だけ凸に曲げてあるので楽にハトメ越えが出来ます。
↓表から見たサイズ調節ワイヤー・フック。

↓ベルト内側のスタンプ。装着した時に左側に来る方の内側にありますので、バックルが画像右側にくるようにした方が見た感じがしっくりくる筈なんですが、スタンプが天地逆さまに施されているので、このようにしました。

↓まず②M1936を拡大。

「BELT PISTOL (ハトメを一つ越えて)REVOLVER M1936」、2段目にストック・ナンバー「74-B-265」。雌スナップボタンの下は、2段に分かれてメーカー名がスタンプされていると思います。その右側、ハトメを超えたところに多分「6 OCT 19**」との製造契約日のスタンプが施されているのではと思われますが、判然としません。手書きの文字は所有者個人名だと思います。
↓③「M1961」の拡大。

1段目「BELT, INDIVIDUAL EQUIPMENT」は制式名称。
2段目の「DSA100-67-C-1041」は、Diffence Supply Agency(国防供給庁とでも訳しましょうか)で定める管理番号です。DSAは1962年1月から合衆国軍への衣服・食糧・装備の調達任務を担っていた官庁です。なおDSAは1977年1月にDLA(Defense Logistics Agency(国防補給庁あるいは国防兵站庁とでも訳しましょうか) )と公式に名称が変更されます。
3段目「8465-823-6937」はFSNです。FSNとは「Federal Stock Number(連邦備品番号)」のことで、1953年から1974年まで用いられた11桁のコードです。政府所管の物品一つひとつに付与される管理番号です。
右端にやや大きく「M」とサイズ表記。Mはウェストが30インチ(約76cm)以下の人向けです。なお、これは着膨れした時も想定しての設定なので、Mだからと言って、例えばウェストが80cmの人だと装着できないという訳ではありません。目いっぱい長く調節した時は105cm位の腹回りまでは対応できます。その下の「-2-」は、恐らくメーカーのロット番号の類だと思います。
↓海兵隊用のM14小銃マガジン・ポケット(POCKET, AMMUNITION MAGAZINE, M14 RIFLE)を取り付けてみました。

↓マガジン・ポケットはこの様に裏側がループ構造になっていて、ループの内側に設えられた雄スナップをベルトの雌スナップに嵌めて連結します。因みにこのマガジン・ポケットにはご覧の通りループが上下2段に設えられています。どちらに通してもベルトに連結できます。兵士個人の体格に応じて、ポケットの上下位置を定めるのに有益です。

↓ベルトの隣り合う雌スナップに合わせてマガジン・ポケットを連結しますと、

この様にぴったり2つが密着します。
↓表側。ワイヤー・フックにより銃剣や手榴弾携行ケースなどを腰にぶら下げるには、ベルトの下列のハトメ穴がポケットで塞がっていてもマガジン・ポケットの下部に設けられたハトメ穴を使えるので問題は無いですが、サスペンダーでベルトを吊ろうとする場合には、このようにベルトの上部のハトメ穴がポケットにかなり邪魔されます。スナップ1つおきにポケットを装着するといいですね。

↓もう一つ「うーん」と思うのがこれです。

サイズ調整側(人体右側)へマガジン・ポケットを装着するには、スナップを活用しようと思えば、このようにスライド・キーパーをずらしてサイズ調整フックを外してポケットのループを通し・・・、
↓裏から覆い被せるようにして

再びフックを掛けなくてはなりません。もしくは・・・、
↓スナップを無視して単純にループにベルトを通すことになります。

↓こんな具合です。

↓M14ライフル用マガジン・ポケットだけでなく、雄スナップを擁するマガジン・ポケットであれば何でもスナップに連結できます。

例えばこのようにM1カービン用マガジン・ポケットであれば隣同士のクリアランスの関係で、やはりスナップ1つおきでないと装着できません。
↓余談ですが、この画像のように雌スナップにはバリエーションがあります。

③は楯状火山型で真ん中に穴が空いています。③´のモノは準フラット・穴空き型。あと、①②のような完全ドーム型のスナップを擁しているタイプのモノもあります。
↓③の拡大。

↓③´の拡大。

メーカーは著名な「RAU FASTENER CO」。
すみません。④⑤まで一気にとも思いましたが、長くなりますのでこの辺で一旦終わり、次回④⑤について触れたいと思います。
それでは次回また・・・。
近所の公園の桜に、ほんの少し花が付きました。春ですね。
花見にはまだ早いですが、心が逸ります。でも今朝からしとしとと雨が降っております。定刻を2時間ばかり過ぎての投稿です。
さて、今回は1930年代から1960年代頃までU.S.陸軍及び海兵隊が使用したピストル・ベルト(正式な名称は変化していますが)を採り上げます。
前々回の記事「M1936 ピストル・ベルト(M1936 PISTOL OR REVOLVER BELT)」ではタイトル通りM1936ピストル・ベルトに特化してお送りしましたが、今回はそれ以降のピストル・ベルトを幾つかご覧いただきます。
↓まず、これをご覧ください。一見すると同じように見えます。↓

いちいち「〇番目」というのは分かりにくいので、番号を付けました。↓

上2つ①②はM1936ピストル・ベルト(Belt, Pistol or revolver, M1936)、③は海兵隊用の通称M1961ベルト(Belt, Individual Equipment)、④⑤は通称M1956ベルト(Belt, Individual equipment, M-1956 )です。以下順番に見ていきましょう。
↓まず①②③です。

①と②はM1936の単なる色目違いです。前々回の記事「M1936 ピストル・ベルト(M1936 PISTOL OR REVOLVER BELT)」をご覧ください。
③は、そのM1936に1つだけ設けられていたマガジン・ポケット連結用のスナップ・ボタンをもっと沢山設けただけのモノと言ってもよい通称「M1961」個人装備ベルトです。あとで触れますが、これは海兵隊(Marine Corps)が主力ライフルを陸軍同様M1(ガランド)からM14へ変更するにあたって陸軍とは全く別のマガジン・ポケットを開発するのに併行して、海兵隊用に開発されたものです。
↓②(M1936)と③(M1961)ではマガジン・ポケット連結用のスナップ・ボタンの数以外は「US」スタンプも同じです。

↓ベルトの長さを調節するための「折り返し」が、身につけた時に右側のみである点も同じです。

↓細かいことを言えば、「折り返し」の部分の「スライド・キーパー」の形状が改良されています。

↓「折り返し」部分の拡大です。

折り返して末端のサイズ調節ワイヤー・フックをベルトの中段に設けてある小さいハトメ穴に引っ掛けてベルト長を調節する仕組みはWWⅠ以来の伝統です。
↓もう少し拡大しました。

ベルト・キーパーの形状の違いがお解りいただけますでしょうか?上の旧型のモノはハトメを越えて動かそうとするときは少々タイトなので「えいやっ」と気合を入れないとだめですが、下の新型のモノはハトメの出っ張りの分だけ凸に曲げてあるので楽にハトメ越えが出来ます。
↓表から見たサイズ調節ワイヤー・フック。

↓ベルト内側のスタンプ。装着した時に左側に来る方の内側にありますので、バックルが画像右側にくるようにした方が見た感じがしっくりくる筈なんですが、スタンプが天地逆さまに施されているので、このようにしました。

↓まず②M1936を拡大。

「BELT PISTOL (ハトメを一つ越えて)REVOLVER M1936」、2段目にストック・ナンバー「74-B-265」。雌スナップボタンの下は、2段に分かれてメーカー名がスタンプされていると思います。その右側、ハトメを超えたところに多分「6 OCT 19**」との製造契約日のスタンプが施されているのではと思われますが、判然としません。手書きの文字は所有者個人名だと思います。
↓③「M1961」の拡大。

1段目「BELT, INDIVIDUAL EQUIPMENT」は制式名称。
2段目の「DSA100-67-C-1041」は、Diffence Supply Agency(国防供給庁とでも訳しましょうか)で定める管理番号です。DSAは1962年1月から合衆国軍への衣服・食糧・装備の調達任務を担っていた官庁です。なおDSAは1977年1月にDLA(Defense Logistics Agency(国防補給庁あるいは国防兵站庁とでも訳しましょうか) )と公式に名称が変更されます。
3段目「8465-823-6937」はFSNです。FSNとは「Federal Stock Number(連邦備品番号)」のことで、1953年から1974年まで用いられた11桁のコードです。政府所管の物品一つひとつに付与される管理番号です。
右端にやや大きく「M」とサイズ表記。Mはウェストが30インチ(約76cm)以下の人向けです。なお、これは着膨れした時も想定しての設定なので、Mだからと言って、例えばウェストが80cmの人だと装着できないという訳ではありません。目いっぱい長く調節した時は105cm位の腹回りまでは対応できます。その下の「-2-」は、恐らくメーカーのロット番号の類だと思います。
↓海兵隊用のM14小銃マガジン・ポケット(POCKET, AMMUNITION MAGAZINE, M14 RIFLE)を取り付けてみました。

↓マガジン・ポケットはこの様に裏側がループ構造になっていて、ループの内側に設えられた雄スナップをベルトの雌スナップに嵌めて連結します。因みにこのマガジン・ポケットにはご覧の通りループが上下2段に設えられています。どちらに通してもベルトに連結できます。兵士個人の体格に応じて、ポケットの上下位置を定めるのに有益です。

↓ベルトの隣り合う雌スナップに合わせてマガジン・ポケットを連結しますと、

この様にぴったり2つが密着します。
↓表側。ワイヤー・フックにより銃剣や手榴弾携行ケースなどを腰にぶら下げるには、ベルトの下列のハトメ穴がポケットで塞がっていてもマガジン・ポケットの下部に設けられたハトメ穴を使えるので問題は無いですが、サスペンダーでベルトを吊ろうとする場合には、このようにベルトの上部のハトメ穴がポケットにかなり邪魔されます。スナップ1つおきにポケットを装着するといいですね。

↓もう一つ「うーん」と思うのがこれです。

サイズ調整側(人体右側)へマガジン・ポケットを装着するには、スナップを活用しようと思えば、このようにスライド・キーパーをずらしてサイズ調整フックを外してポケットのループを通し・・・、
↓裏から覆い被せるようにして

再びフックを掛けなくてはなりません。もしくは・・・、
↓スナップを無視して単純にループにベルトを通すことになります。

↓こんな具合です。

↓M14ライフル用マガジン・ポケットだけでなく、雄スナップを擁するマガジン・ポケットであれば何でもスナップに連結できます。

例えばこのようにM1カービン用マガジン・ポケットであれば隣同士のクリアランスの関係で、やはりスナップ1つおきでないと装着できません。
↓余談ですが、この画像のように雌スナップにはバリエーションがあります。

③は楯状火山型で真ん中に穴が空いています。③´のモノは準フラット・穴空き型。あと、①②のような完全ドーム型のスナップを擁しているタイプのモノもあります。
↓③の拡大。

↓③´の拡大。

メーカーは著名な「RAU FASTENER CO」。
すみません。④⑤まで一気にとも思いましたが、長くなりますのでこの辺で一旦終わり、次回④⑤について触れたいと思います。
それでは次回また・・・。