2015年03月01日
M1936 ピストル・ベルト(M1936 PISTOL OR REVOLVER BELT)
こんにちは。
2月があっという間に過ぎ去り、もう3月です。3月とは言え、雨が冷たく降る大阪から定刻を少し過ぎてお送りします。
今回は私のメイン蒐集対象であるWWⅡ米陸軍歩兵装備から、M1936ピストル・オア・リヴォルヴァ・ベルト(制式名称:Belt, Pistol or Revolver, M1936(ストック・ナンバー74-B-265)、以下「M1936ピストル・ベルト」とします)を採り上げます。


一般の歩兵はM1923 dismounted Cal..30 cartridge belt(M1923 カートリッジ・ベルト)を用いていましたが、M1ライフル・M1903ライフルを持たない者、つまりカービン銃とピストルで武装する将校や、兵・下士官でもサンダース軍曹のようにライフル銃ではなくカービン銃やサブマシンガンで武装する者、あるいは医療部隊兵(Medics)などがこのベルトを用いておりました。
実は前回の投稿で少し触れましたが、ある方(Oさん)から次のような質問メールを頂戴していたのでした。
「US M1936ピストルベルト・・・1936という割には、1940年以前の年号スタンプのある物は見たことがありませんが、M1912の在庫が大量にあって、生産・支給がスタートしたのは1941年からということなのでしょうか??」
そこで、私のコレクションを調べたところ、スタンプがかすれたりフェードアウトしていて見辛くなっており、1936~1939年製のものであるといえる個体がありませんでした。おそらくOさんのおっしゃる通り、本格的な量産が始まったのは1941年頃だったからだと私も推測します。1941年の参戦前は、正規軍・州兵(ナショナルガード)の数も参戦後に比べるとまだその数は格段に少なく、M1936ピストル・ベルトの前身であるM1912の在庫量で十分賄えていたと思われます。1936年から1940年頃のスタンプを持つM1936ピストル・ベルトは、その間全く製造されていないというのも変ですから、存在するとは思われますが、その数はとても少ないのではないかと思います。実際今もネットで1940年以前のスタンプを持つM1936ピストル・ベルトを探してみましたが見つけられませんでした。
さきほど「M1936ピストル・ベルトの前身であるM1912」と書きましたが、それらの大きな違いはバックルが容易に外れないような若干の改良が加えられた程度です。ピストルベルトに限らず、特に著しい支障が無ければ在庫品をそのまま無くなるまで使い続けるのは米陸軍では普通に行われていましたので、M1936が制式化されるや否や直ちにM1912の使用・支給が止まったのではなく、M1936が生産・支給されながらも、M1912もその在庫が無くなるまでは支給され続けられていたと考えられます。多くの場合、新制式モノが出ると旧式モノは「Limited Standard(限定採用)」とされ「to be issued until exhausted(在庫が尽きるまで支給される)」として無駄なく利用されました。そのような理由で1940年以前のスタンプを持つ個体はとても少なく、貴重であるという結論に至りました。Oさん、メール有難うございました。
↓前置きが長くなりましたのでもう一度。
M1936ピストル・ベルトの一例です。色目以外はほとんど同じですが(当然といえば当然ですが)細かく見ると差異があります。

一番上はODシェード#7(いわゆるOD色)、2、3、4番目はODシェード#3(いわゆるカーキ色)のモノです。
また、バックルは、一番上と2番目のモノは真鍮製、3、4番目のモノは亜鉛合金製です。他の装備品にも共通しますが、大戦中半になると真鍮は貴重品になり、亜鉛合金などに代替されるようになりました。
↓バックルを外して拡げました。メーカー等のスタンプは大体この辺りに施されます。

以下、順に見ていきましょう。
↓まず一番上のモノ。あれ?文字が上下逆さまです。

画像を上下ひっくり返しました↓

↑雌スナップボタンの上に制式名称である「BELT PISTOL (ハトメを一つ越えて)REVOLVER M1936」、2段目にストック・ナンバー「74-B-265」。雌スナップボタンの下は、恐らくメーカー名が2段に分けてスタンプされているのだと思われます。その右側、ハトメを超えたところに多分「6 OCT 19**」との製造年月スタンプが施されているのではと思われますが、判然としません。手書きの文字は使用者「C.W.RUSSELL」(?)の個人名だと思います。私はこの個体はWWⅡ時の製造ではないと考えています。形質・特徴はWWⅡ時と全く同じですが、メーカー名・製造年だけでなく、制式名称や製造月日、ストック・ナンバーまでもがスタンプされ始めるのは朝鮮戦争時ぐらいからだからです(製造年月だけであれば一次大戦以前にはスタンプがありました)。
↓2番目のモノ。

恐らく「S.F.CO.Inc」と省略しない「S. FROEHLICH Co., Inc.」だと思うのですが。雌スナップのすぐ上のスタンプは恐らく製造年を示していると思いますが判然としません。
↓3番目のモノ。「S.F.CO. Inc」「1942(1943?)」のスタンプ。

↓一番下のモノ。スタンプの類は全くフェードアウトしています。表の「U.S.」も微かに跡があるという程度です。

因みにこの個体は私がWWⅡUS装備品を蒐めだして間もない時に大阪のM.A.S.H.さんで破格で入手したモノです。ベルト・キーパーは一つは欠品、ハトメも一部欠損、全体的にクタクタで品質は低いものの、その頃の私の可処分所得(まだお小遣いしかありませんでした)で何とか買える金額でした(もう25年程も前、確か2,500円だったと記憶しています)。カーキ色のピストル・ベルトが手に入ってとても喜んでおりました。その頃はまだ、いわゆる「カーキ病(OD色よりもとにかくカーキ色のモノの方を強く求める偏執狂的症状をしめす疾病)」に囚われていました。
↓反対側、長さ調節側を見ていきます。まず4つまとめて。

一番上は「リブ付き真鍮板爪ロック」ベルト・キーパー。
2番目は「のっぺら真鍮板ろう付け」ベルト・キーパー。
3番目は「のっぺら鋼板爪ロック」ベルトキーパー。
4番目一番下は、画像で右側のグレイ色の方は「のっぺら鋼板爪ロック」、左側のは「リブ付き鋼板爪ロック」。「」内は私個人の勝手な命名です。
↓まず一番目のモノ。先ほどこの個体が「朝鮮戦争時のモノ」と申しました幾つかの根拠の別の一つでもあるのですが、ベルト・キーパー、長さ調節用の「ベルト末端被せ金具」、バックルとも潤沢に真鍮が用いられています。大戦終了後再び物資が豊富に使えるような時代になったからです。

↓「リブ付き真鍮板爪ロック」ベルト・キーパーの拡大。リブの有無と材質のほかは3番目のモノのキーパーと同じ「爪ロック」です。

↓2番目のモノ。ベルト・キーパーが「のっぺら真鍮板ろう付け」で、長さ調節用の「ベルト末端被せ金具」も真鍮製であることから、まだ真鍮を贅沢に使えていた大戦初期の製造だと思われます。


↓3番目のモノ。「のっぺら鋼板爪ロック」ベルトキーパーと鋼板製長さ調節用の「ベルト末端被せ金具」です。大戦中半には真鍮は貴重品になり、亜鉛合金や鋼などに代替されました。この辺はドイツ軍と同様ですね。


↑一番目のモノと同じロック方法です。穴に爪を通して反対側に折り返してプレスして固定。
↓4番目のモノ。左のキーパーは「のっぺら鋼板爪ロック」。右のキーパーは「リブ付き鋼板爪ロック」ですが、これは実は中田商店製のレプリカWWⅡODピストルベルトのキーパーを移植したものです。私がこの個体を入手した際左のキーパーしか残存していなかったので、外見を改善するつもりで移植したのですが、左のモノと全くマッチしていません。

長さ調節用の「ベルト末端被せ金具」は鋼板製。
最後になりますが、マガジン・パウチ固定用の雌スナップ・ボタンは私の蒐集品では全て真鍮でした。
以上見て参りましたが、物資の欠乏はアメリカにもあったという事を再認識することになりました今回の記事、いかがでしたでしょうか?
最近はeBayなどで「U.S.」スタンプの無い、Lend-Lease法に基づく「ソ連向けのM1936ピストル・ベルト」が大量に出回っているみたいですが、あまり人気は無いようですね。私は一つは手に入れてみたいなと思っています。入手の暁にはまたご紹介したいと思います。
それでは、また・・・。
2月があっという間に過ぎ去り、もう3月です。3月とは言え、雨が冷たく降る大阪から定刻を少し過ぎてお送りします。
今回は私のメイン蒐集対象であるWWⅡ米陸軍歩兵装備から、M1936ピストル・オア・リヴォルヴァ・ベルト(制式名称:Belt, Pistol or Revolver, M1936(ストック・ナンバー74-B-265)、以下「M1936ピストル・ベルト」とします)を採り上げます。


一般の歩兵はM1923 dismounted Cal..30 cartridge belt(M1923 カートリッジ・ベルト)を用いていましたが、M1ライフル・M1903ライフルを持たない者、つまりカービン銃とピストルで武装する将校や、兵・下士官でもサンダース軍曹のようにライフル銃ではなくカービン銃やサブマシンガンで武装する者、あるいは医療部隊兵(Medics)などがこのベルトを用いておりました。
実は前回の投稿で少し触れましたが、ある方(Oさん)から次のような質問メールを頂戴していたのでした。
「US M1936ピストルベルト・・・1936という割には、1940年以前の年号スタンプのある物は見たことがありませんが、M1912の在庫が大量にあって、生産・支給がスタートしたのは1941年からということなのでしょうか??」
そこで、私のコレクションを調べたところ、スタンプがかすれたりフェードアウトしていて見辛くなっており、1936~1939年製のものであるといえる個体がありませんでした。おそらくOさんのおっしゃる通り、本格的な量産が始まったのは1941年頃だったからだと私も推測します。1941年の参戦前は、正規軍・州兵(ナショナルガード)の数も参戦後に比べるとまだその数は格段に少なく、M1936ピストル・ベルトの前身であるM1912の在庫量で十分賄えていたと思われます。1936年から1940年頃のスタンプを持つM1936ピストル・ベルトは、その間全く製造されていないというのも変ですから、存在するとは思われますが、その数はとても少ないのではないかと思います。実際今もネットで1940年以前のスタンプを持つM1936ピストル・ベルトを探してみましたが見つけられませんでした。
さきほど「M1936ピストル・ベルトの前身であるM1912」と書きましたが、それらの大きな違いはバックルが容易に外れないような若干の改良が加えられた程度です。ピストルベルトに限らず、特に著しい支障が無ければ在庫品をそのまま無くなるまで使い続けるのは米陸軍では普通に行われていましたので、M1936が制式化されるや否や直ちにM1912の使用・支給が止まったのではなく、M1936が生産・支給されながらも、M1912もその在庫が無くなるまでは支給され続けられていたと考えられます。多くの場合、新制式モノが出ると旧式モノは「Limited Standard(限定採用)」とされ「to be issued until exhausted(在庫が尽きるまで支給される)」として無駄なく利用されました。そのような理由で1940年以前のスタンプを持つ個体はとても少なく、貴重であるという結論に至りました。Oさん、メール有難うございました。
↓前置きが長くなりましたのでもう一度。
M1936ピストル・ベルトの一例です。色目以外はほとんど同じですが(当然といえば当然ですが)細かく見ると差異があります。

一番上はODシェード#7(いわゆるOD色)、2、3、4番目はODシェード#3(いわゆるカーキ色)のモノです。
また、バックルは、一番上と2番目のモノは真鍮製、3、4番目のモノは亜鉛合金製です。他の装備品にも共通しますが、大戦中半になると真鍮は貴重品になり、亜鉛合金などに代替されるようになりました。
↓バックルを外して拡げました。メーカー等のスタンプは大体この辺りに施されます。

以下、順に見ていきましょう。
↓まず一番上のモノ。あれ?文字が上下逆さまです。

画像を上下ひっくり返しました↓

↑雌スナップボタンの上に制式名称である「BELT PISTOL (ハトメを一つ越えて)REVOLVER M1936」、2段目にストック・ナンバー「74-B-265」。雌スナップボタンの下は、恐らくメーカー名が2段に分けてスタンプされているのだと思われます。その右側、ハトメを超えたところに多分「6 OCT 19**」との製造年月スタンプが施されているのではと思われますが、判然としません。手書きの文字は使用者「C.W.RUSSELL」(?)の個人名だと思います。私はこの個体はWWⅡ時の製造ではないと考えています。形質・特徴はWWⅡ時と全く同じですが、メーカー名・製造年だけでなく、制式名称や製造月日、ストック・ナンバーまでもがスタンプされ始めるのは朝鮮戦争時ぐらいからだからです(製造年月だけであれば一次大戦以前にはスタンプがありました)。
↓2番目のモノ。

恐らく「S.F.CO.Inc」と省略しない「S. FROEHLICH Co., Inc.」だと思うのですが。雌スナップのすぐ上のスタンプは恐らく製造年を示していると思いますが判然としません。
↓3番目のモノ。「S.F.CO. Inc」「1942(1943?)」のスタンプ。

↓一番下のモノ。スタンプの類は全くフェードアウトしています。表の「U.S.」も微かに跡があるという程度です。

因みにこの個体は私がWWⅡUS装備品を蒐めだして間もない時に大阪のM.A.S.H.さんで破格で入手したモノです。ベルト・キーパーは一つは欠品、ハトメも一部欠損、全体的にクタクタで品質は低いものの、その頃の私の可処分所得(まだお小遣いしかありませんでした)で何とか買える金額でした(もう25年程も前、確か2,500円だったと記憶しています)。カーキ色のピストル・ベルトが手に入ってとても喜んでおりました。その頃はまだ、いわゆる「カーキ病(OD色よりもとにかくカーキ色のモノの方を強く求める偏執狂的症状をしめす疾病)」に囚われていました。
↓反対側、長さ調節側を見ていきます。まず4つまとめて。

一番上は「リブ付き真鍮板爪ロック」ベルト・キーパー。
2番目は「のっぺら真鍮板ろう付け」ベルト・キーパー。
3番目は「のっぺら鋼板爪ロック」ベルトキーパー。
4番目一番下は、画像で右側のグレイ色の方は「のっぺら鋼板爪ロック」、左側のは「リブ付き鋼板爪ロック」。「」内は私個人の勝手な命名です。
↓まず一番目のモノ。先ほどこの個体が「朝鮮戦争時のモノ」と申しました幾つかの根拠の別の一つでもあるのですが、ベルト・キーパー、長さ調節用の「ベルト末端被せ金具」、バックルとも潤沢に真鍮が用いられています。大戦終了後再び物資が豊富に使えるような時代になったからです。

↓「リブ付き真鍮板爪ロック」ベルト・キーパーの拡大。リブの有無と材質のほかは3番目のモノのキーパーと同じ「爪ロック」です。

↓2番目のモノ。ベルト・キーパーが「のっぺら真鍮板ろう付け」で、長さ調節用の「ベルト末端被せ金具」も真鍮製であることから、まだ真鍮を贅沢に使えていた大戦初期の製造だと思われます。


↓3番目のモノ。「のっぺら鋼板爪ロック」ベルトキーパーと鋼板製長さ調節用の「ベルト末端被せ金具」です。大戦中半には真鍮は貴重品になり、亜鉛合金や鋼などに代替されました。この辺はドイツ軍と同様ですね。


↑一番目のモノと同じロック方法です。穴に爪を通して反対側に折り返してプレスして固定。
↓4番目のモノ。左のキーパーは「のっぺら鋼板爪ロック」。右のキーパーは「リブ付き鋼板爪ロック」ですが、これは実は中田商店製のレプリカWWⅡODピストルベルトのキーパーを移植したものです。私がこの個体を入手した際左のキーパーしか残存していなかったので、外見を改善するつもりで移植したのですが、左のモノと全くマッチしていません。

長さ調節用の「ベルト末端被せ金具」は鋼板製。
最後になりますが、マガジン・パウチ固定用の雌スナップ・ボタンは私の蒐集品では全て真鍮でした。
以上見て参りましたが、物資の欠乏はアメリカにもあったという事を再認識することになりました今回の記事、いかがでしたでしょうか?
最近はeBayなどで「U.S.」スタンプの無い、Lend-Lease法に基づく「ソ連向けのM1936ピストル・ベルト」が大量に出回っているみたいですが、あまり人気は無いようですね。私は一つは手に入れてみたいなと思っています。入手の暁にはまたご紹介したいと思います。
それでは、また・・・。
タグ :M1936M1936 ピストルベルトM1936 Pistol or revolver beltPistol beltピストル・ベルトピストルベルトM1936ピストル・ベルトM1936 Pistol belt
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