2021年01月24日
U.S.アムニッション・キャリング・バッグ(初期型)(Bag,Carrying, Ammunition(Type I))
みなさんこんにちは。
バイデン新大統領の就任式典が無事終わりました。トランプさんはバイデン新大統領にまみえてエールを送ることなく、やや控え目に最後っ屁を放ってフロリダへ去っていきました。
新型コロナウィルスの猛威の中、世界はどうなっていくのでしょうか。我が国日本はどうなっていくのでしょうか。我々はどうしていくのでしょうか。
さて、雨の当地大阪郊外某市の寓居から定刻を40分過ぎての新年2回目の投稿でお送りする今回はWW2US陸軍歩兵の一般装備品である「アムニッション・キャリング・バッグ(Bag, Carrying, Ammunition)」についてのココロです。
↓タイトルにあります通り、「アムニッション・キャリング・バッグ(初期型)」です。過去記事で「やたらと『初期型』『後期型』だのという語を使って、いたずらに必要の無い分類をするべきではない・・・」云々と申しました事がありましたが、今回のネタでは初期・後期の語を使います。なぜ使うことになるかは一番最後にご説明致します。

↓キャリング・ストラップの末端部分です。このようにスナップ・フックが付いています。このスナップ・フック同士を結合させて短めの持ち手とすることも出来ますし、M-1936 od フィールド・キャンバス・バッグ(通称ミュゼット・バッグ)用のM-1936 od フィールド・キャンバス・バッグ・キャリング・ストラップ(Stock No.74-S-333)を連結してバッグを肩掛けにすることも出来ますし、スナップ・フックをピストル・ベルト等のハトメ穴(アイレット)に掛けてぶら下げることも出来ます。

↓いま上で見ましたキャリング・ストラップはバッグ両側面にチョンチョンと縫い付けられて終わり…ではなく、このように両側面から底面までグルッと1本の帯としてバッグ全体を取り巻くような形で縫い合わされています。
本バッグはその名の通り重量のあるアムニッション(ammunition:弾薬)を運ぶためのモノですので、キャリング・ストラップの末端が単純にバッグ本体に縫い付けられるだけでは荷重負荷がその部分に集中することにより縫い目が破損し易く、また、バッグ本体の生地に重量が掛かることによる生地の縫い目の裂け、若しくは生地自体の破れの恐れがあるため、それを防ぐべくこのように底面にまでキャリング・ストラップが廻る構造になっています。水抜用のハトメ穴が1つあります。

↓背面です。今まで見て来ましたが、バッグ本体はODシェード#3でストラップや縁取りテープがODシェード#7の、いわゆるトランジション(transition:変遷期)・モデルです。布製装備品全般に亘る1943年半ばからのODシェード変更によって異なるシェードの部材同士が組み合わさった結果ですので、多くの装備品で広く見られ、特に珍しくもありません。もちろん全ての部材がODシェード#3である個体もあります。

↓指で指している部分、本来は下方に見えているDリングが同じように在ってしかるべきなのですが、本個体ではタブからリングだけ綺麗に取り去られています。このDリングの使い道ですが、一例としては、パラトルーパーが先ほど触れましたようにキャリング・ストラップを用いて本バッグを肩掛けにして、バッグを太腿側面位置に来るようにし、Dリングに布テープを通して太腿に結わえ付ける、というのが挙げられます。

↓はい、またまた出ました川越のりと先生による「コンバット・マガジン巻末イラスト・ポスター」シリーズの「RHINE CROSSING」で太腿への固定の具合がバッチリお解り頂けます。

↓これです。このポスターでも左の赤囲いの通り本バッグが詳解されています。但しキャプションに「Ammunition Bag, Cal..30」と表示されています。また、冒頭で申しましたように「初期」「後期」の話に関わってくる箇所があるのですが、また後で。

↓軍の図面です。赤丸で示しましたように側面には上・下にDリングが設えられています。本個体では左右両方とも上部だけリングが取り去られています。

この図を含め、補給品部・需品部(Quartermaster Corps)の当時の図面(drawings)の画像データを入手出来ました。今後ちょくちょく引用すると思います。
↓再び正面です。上蓋は「目」の字型バックルとウェブ・テープによって留められます。上蓋の縁取りがODシェード#7です。

↓「U.S.」のプロパティ表示。アポストロフィありの表示です。

↓蓋の裏側です。製造者と製造年のスタンプはこの場所にするよう定められています。

↓本個体は製造者が「HARIAN」社、製造年は1944年製です。

↓内部です。私、まだこのバッグの使用法をマスター出来てません。理由はこの構造です。入手するまではただの袋(バッグ)だと思ってましたが、ご覧の通り右側の方に「ポケット」が設えられています。先ほど見た軍の製図でも、上の方で単に「POCKET」と表記されているだけです。

↓本体の生地よりも薄目の6.5オンス・コットン・ドリルで出来ています。

↓表裏をひっくり返しました。バッグ内部の「仕切り」ではなく、底も有する完全に独立した区画になっています。水抜きハトメ穴も設えられています。袋の中の袋という体です。バッグ容積の約半分はあろうかという大きさです。

↓上から見ました。

↓元へ戻しました。ポケットを側へ寄せますと弾薬箱がすっぽり入ります。弾薬箱ごと入ることからも分かりますが、バッグの厚みは5インチ±0.25インチで、30-06弾が楽々収まります。ポケットはどのように利用するのでしょうか?30-06弾に限らず手榴弾やら何やらかんやら運ばれるのに使われたのでしょうが、「正式」な利用法はどんな風だったんでしょう。

↓上蓋のバックルに目を遣ります。鋳造真鍮製、打ち抜きプレス真鍮製、打ち抜きプレス鋼製、鋳造亜鉛合金製などありますが、本個体は打ち抜きプレス鋼製です。錨のマーキングはNorth & Judd Mfg. Co.製の印です。

↓キャリング・ストラップのスナップ・フックは真鍮製で無銘です。

↓冒頭での『初期型』『後期型』のお話にかかる画像です。右は今まで見て来た個体、左は全体がODシェード#7のモノです。シェードの違いで『初期型』と『後期型』を区別するのではありません。まあ、勿論シェードに関しても大雑把に言えば「初期の『カーキ』、後期のいわゆる『OD』」という言い方もできますが、シェードの違いではなく、構造上(スペック上)の明確な差異(変更の前後)で区別しました。

↓その構造上の差異がコレです。キャリング・ストラップの末端の金具が、右の初期型はどちら側もスナップ・フックが付いてますが、左の後期型は向かって右側はスナップ・フック、左側はDリングが付いています。

↓再び図面を見ます。左の青囲みにはDリングが、右の赤囲みにはスナップ・フックが描かれています。実は今まで見て来ましたこの製図は後期型のモノで、右下の日付を見ますと1949年11月22日となっております。開発当初(1941年)の製図は未入手ですが、当初はキャリング・ストラップの両端ともスナップ・フックが付けられ、その後1944年にこの製図と同じように仕様変更がなされました。この仕様変更は、両端がDリングの付いていたM-1936 od フィールド・キャンバス・バッグ・キャリング・ストラップ(Stock No.74-S-333)がジェネラル・パーパス・キャリング・ストラップ(Stock No.74-S-333-50)に置き換えられるのと同様、この頃に行われた装備品のマイナー・チェンジの一環です。

川越のりと先生のポスターの中の本バッグのイラストは後期型になっています。画像が小さくて申し訳ないのですが、別画面で画像として開いて拡大して見てください。
以上です。いかがでしたでしょうか。
このバッグも「カーキ」か「OD」かで、若干の価格の高低はありますが、国内では5,000円もあれば程度の良いモノが入手出来そうです。ネットをちょっと覗いてみましたが、出物はあんまり無いようなものの、価格はまだ比較的落ち着いている印象です。私はebayで数年前にUS$35前後で落札出来た記憶があります。
それでは今回はこの辺で失礼いたします。次回は後期型について見て行きたいと思っています。
バイデン新大統領の就任式典が無事終わりました。トランプさんはバイデン新大統領にまみえてエールを送ることなく、やや控え目に最後っ屁を放ってフロリダへ去っていきました。
新型コロナウィルスの猛威の中、世界はどうなっていくのでしょうか。我が国日本はどうなっていくのでしょうか。我々はどうしていくのでしょうか。
さて、雨の当地大阪郊外某市の寓居から定刻を40分過ぎての新年2回目の投稿でお送りする今回はWW2US陸軍歩兵の一般装備品である「アムニッション・キャリング・バッグ(Bag, Carrying, Ammunition)」についてのココロです。
↓タイトルにあります通り、「アムニッション・キャリング・バッグ(初期型)」です。過去記事で「やたらと『初期型』『後期型』だのという語を使って、いたずらに必要の無い分類をするべきではない・・・」云々と申しました事がありましたが、今回のネタでは初期・後期の語を使います。なぜ使うことになるかは一番最後にご説明致します。

↓キャリング・ストラップの末端部分です。このようにスナップ・フックが付いています。このスナップ・フック同士を結合させて短めの持ち手とすることも出来ますし、M-1936 od フィールド・キャンバス・バッグ(通称ミュゼット・バッグ)用のM-1936 od フィールド・キャンバス・バッグ・キャリング・ストラップ(Stock No.74-S-333)を連結してバッグを肩掛けにすることも出来ますし、スナップ・フックをピストル・ベルト等のハトメ穴(アイレット)に掛けてぶら下げることも出来ます。

↓いま上で見ましたキャリング・ストラップはバッグ両側面にチョンチョンと縫い付けられて終わり…ではなく、このように両側面から底面までグルッと1本の帯としてバッグ全体を取り巻くような形で縫い合わされています。
本バッグはその名の通り重量のあるアムニッション(ammunition:弾薬)を運ぶためのモノですので、キャリング・ストラップの末端が単純にバッグ本体に縫い付けられるだけでは荷重負荷がその部分に集中することにより縫い目が破損し易く、また、バッグ本体の生地に重量が掛かることによる生地の縫い目の裂け、若しくは生地自体の破れの恐れがあるため、それを防ぐべくこのように底面にまでキャリング・ストラップが廻る構造になっています。水抜用のハトメ穴が1つあります。

↓背面です。今まで見て来ましたが、バッグ本体はODシェード#3でストラップや縁取りテープがODシェード#7の、いわゆるトランジション(transition:変遷期)・モデルです。布製装備品全般に亘る1943年半ばからのODシェード変更によって異なるシェードの部材同士が組み合わさった結果ですので、多くの装備品で広く見られ、特に珍しくもありません。もちろん全ての部材がODシェード#3である個体もあります。

↓指で指している部分、本来は下方に見えているDリングが同じように在ってしかるべきなのですが、本個体ではタブからリングだけ綺麗に取り去られています。このDリングの使い道ですが、一例としては、パラトルーパーが先ほど触れましたようにキャリング・ストラップを用いて本バッグを肩掛けにして、バッグを太腿側面位置に来るようにし、Dリングに布テープを通して太腿に結わえ付ける、というのが挙げられます。

↓はい、またまた出ました川越のりと先生による「コンバット・マガジン巻末イラスト・ポスター」シリーズの「RHINE CROSSING」で太腿への固定の具合がバッチリお解り頂けます。

↓これです。このポスターでも左の赤囲いの通り本バッグが詳解されています。但しキャプションに「Ammunition Bag, Cal..30」と表示されています。また、冒頭で申しましたように「初期」「後期」の話に関わってくる箇所があるのですが、また後で。

↓軍の図面です。赤丸で示しましたように側面には上・下にDリングが設えられています。本個体では左右両方とも上部だけリングが取り去られています。

この図を含め、補給品部・需品部(Quartermaster Corps)の当時の図面(drawings)の画像データを入手出来ました。今後ちょくちょく引用すると思います。
↓再び正面です。上蓋は「目」の字型バックルとウェブ・テープによって留められます。上蓋の縁取りがODシェード#7です。

↓「U.S.」のプロパティ表示。アポストロフィありの表示です。

↓蓋の裏側です。製造者と製造年のスタンプはこの場所にするよう定められています。

↓本個体は製造者が「HARIAN」社、製造年は1944年製です。

↓内部です。私、まだこのバッグの使用法をマスター出来てません。理由はこの構造です。入手するまではただの袋(バッグ)だと思ってましたが、ご覧の通り右側の方に「ポケット」が設えられています。先ほど見た軍の製図でも、上の方で単に「POCKET」と表記されているだけです。

↓本体の生地よりも薄目の6.5オンス・コットン・ドリルで出来ています。

↓表裏をひっくり返しました。バッグ内部の「仕切り」ではなく、底も有する完全に独立した区画になっています。水抜きハトメ穴も設えられています。袋の中の袋という体です。バッグ容積の約半分はあろうかという大きさです。

↓上から見ました。

↓元へ戻しました。ポケットを側へ寄せますと弾薬箱がすっぽり入ります。弾薬箱ごと入ることからも分かりますが、バッグの厚みは5インチ±0.25インチで、30-06弾が楽々収まります。ポケットはどのように利用するのでしょうか?30-06弾に限らず手榴弾やら何やらかんやら運ばれるのに使われたのでしょうが、「正式」な利用法はどんな風だったんでしょう。

↓上蓋のバックルに目を遣ります。鋳造真鍮製、打ち抜きプレス真鍮製、打ち抜きプレス鋼製、鋳造亜鉛合金製などありますが、本個体は打ち抜きプレス鋼製です。錨のマーキングはNorth & Judd Mfg. Co.製の印です。

↓キャリング・ストラップのスナップ・フックは真鍮製で無銘です。

↓冒頭での『初期型』『後期型』のお話にかかる画像です。右は今まで見て来た個体、左は全体がODシェード#7のモノです。シェードの違いで『初期型』と『後期型』を区別するのではありません。まあ、勿論シェードに関しても大雑把に言えば「初期の『カーキ』、後期のいわゆる『OD』」という言い方もできますが、シェードの違いではなく、構造上(スペック上)の明確な差異(変更の前後)で区別しました。

↓その構造上の差異がコレです。キャリング・ストラップの末端の金具が、右の初期型はどちら側もスナップ・フックが付いてますが、左の後期型は向かって右側はスナップ・フック、左側はDリングが付いています。

↓再び図面を見ます。左の青囲みにはDリングが、右の赤囲みにはスナップ・フックが描かれています。実は今まで見て来ましたこの製図は後期型のモノで、右下の日付を見ますと1949年11月22日となっております。開発当初(1941年)の製図は未入手ですが、当初はキャリング・ストラップの両端ともスナップ・フックが付けられ、その後1944年にこの製図と同じように仕様変更がなされました。この仕様変更は、両端がDリングの付いていたM-1936 od フィールド・キャンバス・バッグ・キャリング・ストラップ(Stock No.74-S-333)がジェネラル・パーパス・キャリング・ストラップ(Stock No.74-S-333-50)に置き換えられるのと同様、この頃に行われた装備品のマイナー・チェンジの一環です。

川越のりと先生のポスターの中の本バッグのイラストは後期型になっています。画像が小さくて申し訳ないのですが、別画面で画像として開いて拡大して見てください。
以上です。いかがでしたでしょうか。
このバッグも「カーキ」か「OD」かで、若干の価格の高低はありますが、国内では5,000円もあれば程度の良いモノが入手出来そうです。ネットをちょっと覗いてみましたが、出物はあんまり無いようなものの、価格はまだ比較的落ち着いている印象です。私はebayで数年前にUS$35前後で落札出来た記憶があります。
それでは今回はこの辺で失礼いたします。次回は後期型について見て行きたいと思っています。
タグ :アムニッション・キャリング・バッグAmmunition carrying bagアムニッション・バッグ弾薬バッグパラトルーパーparatrooper空挺隊員装備アムニッションバッグアムニッションポーチWW2 US 装備
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。