2021年04月25日
U.S. M-1910 イントレンチング・ショベル(M-1910 Intrenching Shovel)
みなさんこんにちは。
日中の最高気温が26℃を超える陽気が続いています。
緊急事態宣言を出すぞ、イベントは自粛してくれ、生活必需品以外の営業も自粛してくれ、夜屯して缶ビール缶チューハイを飲むな、街灯以外は消してくれ、部活動は止めてくれ、でも聖火リレーはやるぞ、オリンピック止める理由なんかある?といった感じです。医療態勢は当地大阪ではすでに崩壊しています。吉村知事は無策だといったところで仕方がなく、引き続き「マスク着用・手指消毒・3密を避ける」を守って罹患・蔓延防止に努めたいと思います。
さて定刻を30分余り過ぎてお送りする今回の題材は、WW2米陸軍一般歩兵の基本的装備品の1つであるM-1910イントレンチング・ショベル(M-1910 Intrenching Shovel)、通称「Tボーン・ショベル」です。
高校生時代、TV映画「COMBAT!」の何十回目かの再放送で、サンダース軍曹が分隊を率いて行軍するシーンなどであんまり中身の詰まって無さそうなM-1928(M-1917かも)ハヴァーサックに重ねて担っているのを見まして、あんな恰好で室池園地の森の中をトンプソンを携えながらピクニックしたいなーと沸々と想いが募るものの、そこはいつものように可処分所得の乏しい田舎の高校生の身、オイソレと購うことは能わず。コンバット・マガジンのミリタリーショップの広告にもそんな頻繁に掲載されるわけでもなく、他の歩兵装備品との入手優先順位との兼ね合いもあり、長く購入機会を待たねばなりませんでした。
↓先ずはキャリアーを纏ったままでご覧下さい。WW1より前の1910年に制式採用されたのでM-1910です。WW1でも当然使用されましたが、WW1終結から20年余り経って再びWW2でも使われることとなりました。

↓裏返しました。ハンドルとグリップはヒッコリー材製、ブレードなどの金属部は鋼製です。本来はオリーブ・ドラブの塗装がなされるのですが、本個体はもう殆どの塗装は剥げてしまってます。入手時には既にこんな感じでした。木目に僅かにOD塗装の痕跡が認められます。

↓では細かく見て参ります。ブレードから伸びてハンドルに被さる部分(ブレード・ストラップ)に「U.S.」の刻印があり、更にハンドルにも「U.S.」の刻印があります。ハンドルとグリップがTの字型になっていることから「Tボーン・ショベル」の俗称で呼ばれています。

↓ブレード・ストラップの「U.S.」刻印は結構粗い印象を受けます。あとで見ます図面では、この「U.S.」の右側のスペースに製造者と製造年の刻印がされることになっているのですが、この個体にはそれはありません。

↓ブレード・ストラップがハンドルに上下から被さり、2カ所でリベット留めされています。

↓塗装の痕跡が見えます。元々のOD塗装の上からサンド色が上塗りされていたようです。「緑味の強いOD色は砂地の多いアフリカ戦線で目立つのでカモフラージュのためにサンド色を上塗りした...」は私の勝手な憶測です。

↓ハンドルの「U.S.」刻印。ODやサンド色塗装が文字の溝や木目に僅かに残っています。

↓グリップとグリップ・ストラップ。こちらも2か所でリベット留めされています。グリップ、ハンドルとも丸棒で直径は1インチです。

↓Tの字になっています。ハンドルとグリップとがグリップ・ストラップでしか結合されていないように見えますが、実はグリップ・ストラップで隠れて見えてないところで、グリップからハンドルへ釘2本が打ち込まれて固定されています、というのは実はごく最近知った事です。

↓キャリアーを外してブレードを見ます。入手時は塗装は殆ど剥げ落ち、若干の錆が浮いていました。

↓裏側です。表側もですが地肌はかなり凸凹してます。

↓もう一回表側をアップで。上2枚の画像でも分かりますが、ブレード・ストラップとブレード本体との継ぎ合わせの山型の熔接痕が分かります。

↓ブレードの縁の前半分程は鋭く切削研磨加工されてます。

↓需品部(Quartermaster Corps)の1942年4月8日付改訂4号「M-1910 Intrenching Shovel」の図面です。構造・素材・仕上げなどの情報が載ってます。ショベル本体の重さは約29.75オンス(843.4グラム)ともあります。

↓次にキャリアを見てみましょう。「U.S.」と大きくプロパティ表示があります。本体はODシェード#3のコットン・ダック製。制式名称は「Carrier, Shovel, Intrenching M-1910」。キャリア内にショベルのブレードを収め、ストラップをショベルのハンドルに廻してからバックルへ通して固定します。

↓ストラップとバックルはハヴァーサックなどでも良く見られるモノです。幅0.625インチのコットン・ウェビングとダブル・バー・バックル(目型バックル)の組み合わせです。本個体ではストラップ(正式には「billet(ビレット)」と言うんだそうです)はODシェード#7で先端のエンド・クリップは亜鉛合金製、バックルの付いている方のウェビング(正式には「chape(チェイプ)」と言うんだそうです)はOD#3でパーカライズド仕上げの鋼製ダブル・バー・バックルです。本M-1910の前のモデル「M-1905キャリアー」では革製のベルトと尾錠バックルの組み合わせでした。

↓キャリア裏面です。ダブル・フック・ワイヤ・ハンガーを擁したハンガーが上部にあります。

↓ハンガーの下部に製造者と製造年のスタンプがなされるのですが、本個体では僅かに「何か書いてある」程度にうっすらとしか残っていません。「GEIB Inc.」?分かりません。

↓本個体のダブル・フック・ワイヤ・ハンガーは黒染めの鋼製です。若干ひしゃげてます。縁にステッチが見えますが、本来はステッチが表面に出るの事は無い筈ですが(袋物の裁縫では常識ですが、裏返しの状態で生地を縁で縫い合わせたあと、もう一度裏返して「完成」ですから)、本個体では補強のためでしょうか表側からも縫い合わせてあります。

↓はい、また出て来ました需品部の1942年7月28日付改訂3号「M-1910 Intrenching Shovel Carrier」の図面です。先ほど申しました「正式には『billet(ビレット)』と言うんだそうです」などの注釈は、これを見てのモノです。このような図面を見るまで全然知りませんでした。

如何でしたでしょうか。
冒頭で少し触れましたように、欲しいと思ってから入手までにはソコソコ時間は要しましたが、入手してからはもう20年以上経ちました。
不確かな記憶ですが、なるべくコストパフォーマンスの良いモノを追い求めていましたから入手価格は1万円チョットだったように思います。
現在市場での実物の出品はebayやヤフオク等でもあまり見かけません。その代わり良く出来たレプリカが色んなメーカーから出ていますし、実物に拘る方が少なくなってきたのでしょうかねぇ。もし実物の出品があれば1万円中頃から、程度によっては2万越えとかになるんでしょうか。
また、ショベル本体とキャリアーが別々に出ることが多いように思います。キャリアーについては実物の出品は今も結構多いです。程度によって価格はピンキリですが、「まあ良し」というモノでも最低5,000円位の値が付いているのを近時見ました。レプリカもかなり良く出来たモノから「何じゃこれ」というモノまで沢山ありますね。
また、ブリティッシュ・メイドのキャリアーもありますが、そこまで財政が許さないので私のコレクションに加わることは無いと思います。レアですし。
このTボーン・ショベル、WW2中空挺隊員がハンドルを切り詰めて短くコンパクトに改良したということも皆さんご承知だと思いますが、短くされたTボーン・ショベルをコレクションしようとまでは思いません。これももちろん懐事情がそれを許せないからなのですが。
「Tボーン・ショベルの全長が長く、ハヴァーサックに連結して座った時につっかえて不快だ」とのクレームなどを受け、より機能性・携帯利便性を高くしたM-1943イントレンチング・ショベル(M-1943 Intrenching shovel)(←クリックで過去記事が別ウィンドウで開きます)がWW2中1943年に登場し、Tボーン・ショベルは役割を終えます。
我が家ではTボーン・ショベル、M-1943イントレンチング・ショベルとも、「庭いじりの際に使える」という理由で、私の「非生産的」なコレクション群の中では優遇されています。
それでは今回はこの辺で失礼いたします。またお会いしましょう。
さようなら。
日中の最高気温が26℃を超える陽気が続いています。
緊急事態宣言を出すぞ、イベントは自粛してくれ、生活必需品以外の営業も自粛してくれ、夜屯して缶ビール缶チューハイを飲むな、街灯以外は消してくれ、部活動は止めてくれ、でも聖火リレーはやるぞ、オリンピック止める理由なんかある?といった感じです。医療態勢は当地大阪ではすでに崩壊しています。吉村知事は無策だといったところで仕方がなく、引き続き「マスク着用・手指消毒・3密を避ける」を守って罹患・蔓延防止に努めたいと思います。
さて定刻を30分余り過ぎてお送りする今回の題材は、WW2米陸軍一般歩兵の基本的装備品の1つであるM-1910イントレンチング・ショベル(M-1910 Intrenching Shovel)、通称「Tボーン・ショベル」です。
高校生時代、TV映画「COMBAT!」の何十回目かの再放送で、サンダース軍曹が分隊を率いて行軍するシーンなどであんまり中身の詰まって無さそうなM-1928(M-1917かも)ハヴァーサックに重ねて担っているのを見まして、あんな恰好で室池園地の森の中をトンプソンを携えながらピクニックしたいなーと沸々と想いが募るものの、そこはいつものように可処分所得の乏しい田舎の高校生の身、オイソレと購うことは能わず。コンバット・マガジンのミリタリーショップの広告にもそんな頻繁に掲載されるわけでもなく、他の歩兵装備品との入手優先順位との兼ね合いもあり、長く購入機会を待たねばなりませんでした。
↓先ずはキャリアーを纏ったままでご覧下さい。WW1より前の1910年に制式採用されたのでM-1910です。WW1でも当然使用されましたが、WW1終結から20年余り経って再びWW2でも使われることとなりました。

↓裏返しました。ハンドルとグリップはヒッコリー材製、ブレードなどの金属部は鋼製です。本来はオリーブ・ドラブの塗装がなされるのですが、本個体はもう殆どの塗装は剥げてしまってます。入手時には既にこんな感じでした。木目に僅かにOD塗装の痕跡が認められます。

↓では細かく見て参ります。ブレードから伸びてハンドルに被さる部分(ブレード・ストラップ)に「U.S.」の刻印があり、更にハンドルにも「U.S.」の刻印があります。ハンドルとグリップがTの字型になっていることから「Tボーン・ショベル」の俗称で呼ばれています。

↓ブレード・ストラップの「U.S.」刻印は結構粗い印象を受けます。あとで見ます図面では、この「U.S.」の右側のスペースに製造者と製造年の刻印がされることになっているのですが、この個体にはそれはありません。

↓ブレード・ストラップがハンドルに上下から被さり、2カ所でリベット留めされています。

↓塗装の痕跡が見えます。元々のOD塗装の上からサンド色が上塗りされていたようです。「緑味の強いOD色は砂地の多いアフリカ戦線で目立つのでカモフラージュのためにサンド色を上塗りした...」は私の勝手な憶測です。

↓ハンドルの「U.S.」刻印。ODやサンド色塗装が文字の溝や木目に僅かに残っています。

↓グリップとグリップ・ストラップ。こちらも2か所でリベット留めされています。グリップ、ハンドルとも丸棒で直径は1インチです。

↓Tの字になっています。ハンドルとグリップとがグリップ・ストラップでしか結合されていないように見えますが、実はグリップ・ストラップで隠れて見えてないところで、グリップからハンドルへ釘2本が打ち込まれて固定されています、というのは実はごく最近知った事です。

↓キャリアーを外してブレードを見ます。入手時は塗装は殆ど剥げ落ち、若干の錆が浮いていました。

↓裏側です。表側もですが地肌はかなり凸凹してます。

↓もう一回表側をアップで。上2枚の画像でも分かりますが、ブレード・ストラップとブレード本体との継ぎ合わせの山型の熔接痕が分かります。

↓ブレードの縁の前半分程は鋭く切削研磨加工されてます。

↓需品部(Quartermaster Corps)の1942年4月8日付改訂4号「M-1910 Intrenching Shovel」の図面です。構造・素材・仕上げなどの情報が載ってます。ショベル本体の重さは約29.75オンス(843.4グラム)ともあります。

↓次にキャリアを見てみましょう。「U.S.」と大きくプロパティ表示があります。本体はODシェード#3のコットン・ダック製。制式名称は「Carrier, Shovel, Intrenching M-1910」。キャリア内にショベルのブレードを収め、ストラップをショベルのハンドルに廻してからバックルへ通して固定します。

↓ストラップとバックルはハヴァーサックなどでも良く見られるモノです。幅0.625インチのコットン・ウェビングとダブル・バー・バックル(目型バックル)の組み合わせです。本個体ではストラップ(正式には「billet(ビレット)」と言うんだそうです)はODシェード#7で先端のエンド・クリップは亜鉛合金製、バックルの付いている方のウェビング(正式には「chape(チェイプ)」と言うんだそうです)はOD#3でパーカライズド仕上げの鋼製ダブル・バー・バックルです。本M-1910の前のモデル「M-1905キャリアー」では革製のベルトと尾錠バックルの組み合わせでした。

↓キャリア裏面です。ダブル・フック・ワイヤ・ハンガーを擁したハンガーが上部にあります。

↓ハンガーの下部に製造者と製造年のスタンプがなされるのですが、本個体では僅かに「何か書いてある」程度にうっすらとしか残っていません。「GEIB Inc.」?分かりません。

↓本個体のダブル・フック・ワイヤ・ハンガーは黒染めの鋼製です。若干ひしゃげてます。縁にステッチが見えますが、本来はステッチが表面に出るの事は無い筈ですが(袋物の裁縫では常識ですが、裏返しの状態で生地を縁で縫い合わせたあと、もう一度裏返して「完成」ですから)、本個体では補強のためでしょうか表側からも縫い合わせてあります。

↓はい、また出て来ました需品部の1942年7月28日付改訂3号「M-1910 Intrenching Shovel Carrier」の図面です。先ほど申しました「正式には『billet(ビレット)』と言うんだそうです」などの注釈は、これを見てのモノです。このような図面を見るまで全然知りませんでした。

如何でしたでしょうか。
冒頭で少し触れましたように、欲しいと思ってから入手までにはソコソコ時間は要しましたが、入手してからはもう20年以上経ちました。
不確かな記憶ですが、なるべくコストパフォーマンスの良いモノを追い求めていましたから入手価格は1万円チョットだったように思います。
現在市場での実物の出品はebayやヤフオク等でもあまり見かけません。その代わり良く出来たレプリカが色んなメーカーから出ていますし、実物に拘る方が少なくなってきたのでしょうかねぇ。もし実物の出品があれば1万円中頃から、程度によっては2万越えとかになるんでしょうか。
また、ショベル本体とキャリアーが別々に出ることが多いように思います。キャリアーについては実物の出品は今も結構多いです。程度によって価格はピンキリですが、「まあ良し」というモノでも最低5,000円位の値が付いているのを近時見ました。レプリカもかなり良く出来たモノから「何じゃこれ」というモノまで沢山ありますね。
また、ブリティッシュ・メイドのキャリアーもありますが、そこまで財政が許さないので私のコレクションに加わることは無いと思います。レアですし。
このTボーン・ショベル、WW2中空挺隊員がハンドルを切り詰めて短くコンパクトに改良したということも皆さんご承知だと思いますが、短くされたTボーン・ショベルをコレクションしようとまでは思いません。これももちろん懐事情がそれを許せないからなのですが。
「Tボーン・ショベルの全長が長く、ハヴァーサックに連結して座った時につっかえて不快だ」とのクレームなどを受け、より機能性・携帯利便性を高くしたM-1943イントレンチング・ショベル(M-1943 Intrenching shovel)(←クリックで過去記事が別ウィンドウで開きます)がWW2中1943年に登場し、Tボーン・ショベルは役割を終えます。
我が家ではTボーン・ショベル、M-1943イントレンチング・ショベルとも、「庭いじりの際に使える」という理由で、私の「非生産的」なコレクション群の中では優遇されています。
それでは今回はこの辺で失礼いたします。またお会いしましょう。
さようなら。
タグ :M-1910M-1910イントレンチング・ショベルエントレンチングツールTボーン・ショベルTボーンスコップTボーン・スコップTボーンショベルIntrenching shovelIntrenching toolEntrenching tool
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